日本の「敵」 (文春文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167656829

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  • 小泉政権下で書かれた、いくぶん時評的な性格のエッセイを収録しています。ただし時評的といっても、著者の議論はつねに百年、二百年を単位とする文明史的な観点が取られており、小手先の「改革」によっては達成することのできない、文明史上の危機への対処がどのようにしてなされるべきかという課題に答えるものになっています。

    著者が日本の「敵」と目しているのは、もちろん中国など「外」なる敵でもあるのですが、それ以上に、「親中反米」を策動する「内」なる敵に対処しなければならないという主張が掲げられています。そして、「内」なる敵であるような日本人が生まれる精神的・社会的背景への取り組みが緊要の課題だと指摘します。

    ただ、こうした点へ注目しているのは、著者とは異なる政治的立場に立つ内田樹も同様ではないかと思います。うろ覚えなのですが、尖閣諸島などで日本と中国の軍事的な衝突が起こった場合、日本では軍を出すことについて賛否が割れるのに対し、中国は軍を出すことに対する分裂はないだろうと内田が指摘していたと記憶しています。著者の言う「内」なる敵を叩いて、日本国民が一致団結して戦うというのは不可能であり、そのことを前提に日本の外交と安全保障を組み立てていく方が、現実的というのであればより現実的だと思うのですが。

    そもそも「内」なる敵というレッテル貼りは、悪質なプロパガンダに類する言い方です。彼らに誤りがあるというのであれば、それを冷静に指摘することで要は足ります。

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著者プロフィール

1947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学教授を歴任。石橋湛山賞(1990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(1997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(1999年、2005年)受賞。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。主な著書に『帝国としての中国――覇権の論理と現実』(東洋経済新報社)、『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『国民の文明史』(扶桑社)。


<第2巻執筆者>
小山俊樹(帝京大学教授)
森田吉彦(大阪観光大学教授)
川島真(東京大学教授)
石 平(評論家)
平野聡(東京大学教授)
木村幹(神戸大学教授)
坂元一哉(大阪大学名誉教授)
佐々木正明(大和大学教授)

「2023年 『シリーズ日本人のための文明学2 外交と歴史から見る中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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