打ちのめされるようなすごい本 (文春文庫 よ 21-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 136
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  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167671044

作品紹介・あらすじ

「ああ、私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」。2006年に逝った著者が最期の力をふり絞って執筆した壮絶ながん闘病気を収録する「私の読書日記」(「週刊文春」連載)と、1995年から2005年まで10年間の全書評。ロシア語会議通訳・エッセイスト・作家として活躍した著者の、最初で最後の書評集。

感想・レビュー・書評

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  • 米原さんの書評エッセイ
    こちらは、他のボリューム感のある頭を使う読書の息抜きに…と選別したのだが…
    いつの間にかこの本がメインに進行していた
    結局同時に読んでいた何冊かの本をぶっちぎりに抜き去りゴール!
    まるで吸引力のような見えない力にすぅっと引き込まれ、そしてパワーにやられまくった
    だからと言って読んで疲れるわけではないのがこれまた不思議

    90%近くは未読の本の書評であるのに、すいすい面白く読める
    読んだことのない本の書評を延々読めますか?普通…
    圧巻の読書量と鋭い洞察力、変幻自在な表現力
    確固たるご自身の考えや意見がズバババっと書いてある
    まったくブレが感じられない
    一方で繊細な優しさも感じられ感受性豊かで魅力的だ


    いくつかをご紹介

    ■東海林さだお氏の「ダンゴの丸かじり」
    ごくごく普通の日本の食生活を記載されている感じなのだが…
    〜この丸かじりシリーズが楽しめるほど理解できて、ここで描写された食べ物が無性に食べたくなるような人
    いてもたってもいられなくなるような人
    そういう人は、私が勝手に太鼓判を押しましょう、立派な愛国者です〜

    読んだことなくても…美味しそうで素朴な和食たち(丸かじりだから調理なんかされてないものもあるだろう)と想像できてしまう!
    こんな本を海外生活の長い日本人に渡した米原さんはこっぴどく恨まれる(笑)

    ■「少年少女世界文学全集」他
    「古事記」、「竹取物語」、「平家物語」、「今昔物語」、「源氏物語」、「南総里見八犬伝」などなどあらゆる日本の古典作品をお読みになっている
    そんな日本人がいったい日本で何%いらっしゃるのだろう?
    私は日本文学を専攻したので、それなりにかすめてはきたものの、完読できたものなんてあるだろうか…
    通訳さんだから…というのもあると思うが日本をまた日本人のアイデンティティを大切にされているのも伝わりとても好感が持てる

    ■子供時代のソビエト学校での図書館の話し
    返す時に司書が本の感想ではなく、内容を尋ねる
    本を読んでいない人に理解できるように内容を客観的に手短に伝える訓練がされ、積極的攻撃的な読書になる

    日本の学校もこんな司書さんが居ればなぁ
    そうしたら日本人の子供たちはみんな図書館に行かなくなる⁉︎…(笑)

    ■スタンレー・コーレン氏「犬語の話し方」

    犬が紛れもなく言語を持つ、と言うことを証明するために、専門家による実験や観察の成果を紹介するにとどまらず世界各地の文学作品の中に登場する犬の言語能力に関する記述を総動員し、進化論と動物学、言語学とコミニケーション論の最新の成果をふんだんに取り入れている
    そもそも人間が音声言語を発達させることができたのは犬のおかげだ
    と言う興味深い仮説
    犬が人間の家畜となったのは、10万年前からと推測され、おかげで人間は嗅覚を犬に分担させることで、喉頭と声帯の形態的進化が促進され、複雑な音声を使い分けることができるようになったと言うのだ…

    〜興味深い仮説ではないか!
    たくさんの犬猫ちゃん達をお飼いになっていた米原さんならでは
    こんな感じの犬猫たちの生物学的ないくつか面白いものも有る

    他、アメリカのイラク攻撃や小泉内閣の郵政民営化(なかなかの批判ぶりであるが)
    この辺りが旬の時代だ
    もちろんロシアのネタも多く世界は広がる
    あらゆるジャンルの本がある
    社会派、歴史、文学、小説、エッセイ…
    シリアスなものから、ユーモアたっぷりのものまで見事な乱読ぶりである
    こんな本があるんだ!という驚きも…
    (障害者の性についてや、イエスの弟、ブルマー←そうあの体育で女子がはかされた…について などなど)
    幅広く、数珠つなぎで知識があふれる
    自身の考えを、こちらにそそられる表現で伝えてくださり飽きさせない
    読書意欲をそそられる本が結構あり、困ってしまった
    (だって…)読みたい本が読書ペースにまったく追いつかない…(泣)

    またこちらは、がん闘病記でもある
    極めて冷静に綴っておられ、弱音を吐かれてもいないのだが、抑えられた感情が溢れてしまう部分が見え隠れし、なんとも胸が痛む
    これほどのパワー溢れる文章からは想像つかないがこの人は今まさに身体を蝕まれているのだ…


    圧倒的な文章に、ただただ「参りました!」
    見事に「あっぱれ」な本!

  • この本は齋藤孝さんの『超速読術』という本を読んでいたら、速読な方の例として『打ちのめされるようなすごい本』を書かれた米原万里さんは1日に7~8冊読まれるそうです。と書いてあり、たまたま私はこの本を積んで手元に置いていたので、すぐに読みました。

    でも、この本すごいです。この本にこそ打ちのめされます。
    私がレビューなどするのは10年、いえ100年早いといわれそうな気がします。感想文だと思ってください。

    米原さんはロシア語通訳者であり、作家です。惜しくも2006年に亡くなられています。
    この本は二部構成で、第一部が私の読書日記(目次をよんでいるだけで楽しくなります)第二部が書評です。日記は2001年1月より2006年5月まで、書評は1995年~2005年までのもので、主に新聞連載されたものです。

    国際情勢については、もう少しやさしい本から学びたいと思いました。米原さんの専門のロシアや、私にとって特になじみの薄い中東が気になりました。
    主に政局は小泉政権で、アフガニスタン問題、北朝鮮の拉致問題が大きく取り上げられていたころの記録なので、現在の情勢とは異なる点が残念ですが(私がもっと早く本書を読めばよかったのですが)私はその時代のことも無知なので、書評と日記を読んでいるだけで勉強になりました。
    もちろん日本や海外の小説もたくさん載っています。やはりロシア中心ですが。

    そして、書評というものは、こんな風に書くものなのかとも何度も思わされました。自分とはあまりにもレベル違いで参考にすらできないと思いました。
    米原さんの作家としての作品やこの本で紹介されている本は是非、興味のあるものから読んでみたいと思いました。早逝されたのが惜しまれます。まだお元気でしたら、今の時代のどんな本を選んでくださっていたでしょうか。

    日記の後半部分は、癌治療の闘病記録でもあり、その簡単でない苦しみが伝わってきました。

    • Macomi55さん
      フォローして下さって有難うございます。「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」、「オリガ・モリソブナの反語法」で米原万里さんに惹かれ、私もこの本を読...
      フォローして下さって有難うございます。「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」、「オリガ・モリソブナの反語法」で米原万里さんに惹かれ、私もこの本を読みました。
      米原さんはお父様のお仕事の都合で子どものころ東欧に暮らされ、冷戦時代の東欧を生で体験されました。ですので東欧の良かった所も悪かった所も彼女の小説やエッセイを読むと、実感があります。
       米原さんはゴルバチョフ時代のソ連、エリツィン時代のロシアの時代の国際会議でそれぞれ通訳を務めてられました。ニュースで見た総理大臣の横で通訳されていたポニーテールの美しい米原さんの姿は今でも記憶に残っています。
      米原さんが何かに書かれていたことで「当時のロシア学校(だったと思う。米原さんがチェコかどこかで通われていた小学校)で使っていた教科書は物語のように面白くのめり込んで読めるものだった。」と書かれていました。私は子供が「社会が嫌い」と言う度に「日本の教科書ではしようがないか」と思うようになりました。米原さんの頭脳はめちゃくちゃ素晴らしいものですが、育たれた文化的土壌も影響していたのかなと思います。
      2020/09/18
    • まことさん
      Macomi55さん。初めまして

      こちらこそ、フォローありがとうございます!
      米原万里さんの、その二冊は、私も家の本棚に積読してあり...
      Macomi55さん。初めまして

      こちらこそ、フォローありがとうございます!
      米原万里さんの、その二冊は、私も家の本棚に積読してあり、いつか読みたいと思っています。
      私は、米原さんの本はまだ、この本しか読んでいません。
      でも、この本からも、米原さんの才女ぶりはうかがわれました。
      一日7冊も本を読まれるとのこと。
      「ロシア学校の教科書は物語のように面白い」のですね!
      日本の教科書も、いい所は、どんどん他の国を真似てより良いものになるといいですね。

      コメントありがとうございました!
      これからもどうぞよろしくお願いいたします(__)
      2020/09/18
    • Macomi55さん
      こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
      こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。
      2020/09/18
  • 私がブクログを好きなのは、さりげなく他人の書評に共感しながら、論をぶつけ合うような機能と空気がなく、更には、自己顕示欲を満足させるよりも、自己の記録を残す方に重きを置けるからだ。つまり、他人を期待した使い方ではなく、あくまで自己の作業に浸りながら、しかし、共感した相手にささやかな発信ができるという所が、読書の所為と重なる部分があり、気に入っている。また、気になる書評から辿り、相手の本棚を覗き見できる機能も良い。

    故米原万里の書評、読書日記は、ブクログのようなものだ。日記形式で、日常に読んだ本を絡め、紹介していく。紹介される本は抜群の面白さだし、まだ読んだ事のない本も、読みたい気持ちを擽られる。メモを取りながら読む。勿論、自分が買いたくなった本のリスト。しかし、後半、彼女が癌と闘病している様が綴られ始める。そういえば、日記は全て、X月X日になっている。彼女が亡くなったのは2006年。あ、だめだ。思った時には、泣きはしないが、全身が震えた。彼女、書ききっていないのでは…。

  • 著者、米原万里さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    米原 万里(よねはら まり、女性、1950年4月29日 - 2006年5月25日)は、日本のロシア語同時通訳、エッセイスト、ノンフィクション作家、小説家である。少女期をプラハで過ごす。ロシア語の同時通訳で活躍。また、異文化体験を綴った文筆家としても知られる。

    ---引用終了

    56歳で亡くなられています。


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    「ああ、私が10人いれば、すべての療法を試してみるのに」。2006年に逝った著者が最期の力をふり絞って執筆した壮絶ながん闘病気を収録する「私の読書日記」(「週刊文春」連載)と、1995年から2005年まで10年間の全書評。ロシア語会議通訳・エッセイスト・作家として活躍した著者の、最初で最後の書評集。

    ---引用終了

  • 米原万里の書評集。週刊文春に連載していた「私の読書日記」と、各誌・紙に書いていた書評を集めたもの。文庫本には、井上ひさしと丸谷才一の解説がついている。
    「打ちのめされるようなすごい本」という題名の書評集であるが、本書を読んだ人は、米原万里のすごさに打ちのめされる部分があるのではないか。その読書量、博覧強記さ、歯に衣着せぬ表現、書かれていることの鋭さと独特の感性。米原万里の本を読むのは5-6冊目だと思うが、あらためてすごい人だったのだと感じた。

    週刊文春の「私の読書日記」の連載は、2006年5月18日号まで続いている。一方で、米原万里が癌で亡くなったのは、2006年5月25日。亡くなる直前まで連載を続けていたことが分かる。
    「私の読書日記」の最後の方は、癌治療に関しての本の紹介と共に、ご自身の治療記録が書かれている。闘病記と呼んでも良いだろう。これだけの闘いに勝てずに亡くなってしまうことが分かりながら読む闘病記は切ないものがある。

  • あちこちの本棚でこの本を見かけ
    「読みたい。いつか読まなければ。」
    と、ずーっと思っていました。
    やっと読めました。

    確かに本当に素晴らしい本なのですが
    15年以上前に週刊文春に連載されたものなので
    古いと感じる。
    歴史も科学もどんどんアップデートされていますから。

    自分、新刊中毒の禁断症状が出てしまって
    第二部を読む余裕がありませんでした。
    でも本当に読んで良かったのです。
    三つ紹介しておきます。

    まず、私がこの8年ちょっとで100冊以上読んだ佐藤優さんについて彼女の感想。
    〈今年わが国で誕生した作家たちの中で私的には№1のデビュー作〉
    〈類稀なる作家の誕生は、生来の才能が獄中で研ぎ澄まされたおかげかも。私も拘置所に行きたくなった〉

    二つ目。読んでみたい本はたくさんあるけど一つだけ選ぶなら甲野善紀/田中聡著『身体から革命を起こす』(新潮社)
    〈現代の運動生理学とは、正反対の身体感〉

    最後に。
    この「第一部私の読書日記」は米原万里さんの絶筆となりました。
    〈そもそも二年半前に卵巣癌を摘出して以降、とくに一年前に左鼠径部リンパ節へ転移して以降は、何とか肉体へのダメージが大きい手術と放射線と抗癌剤治療だけは避けようと、癌治療に関する書籍を読みまくり、代替療法と呼ばれる実にさまざまな治療法を検証してきたとも言える。結果的に抗癌剤治療を受けざるを得なくなったその経緯は、万が一、私に体力気力が戻ったなら、『お笑いガン治療』なる本にまとめてみたいと思うほどに、悲喜劇に満ちていた〉

    もっと早く出会いたかったです。

  • 出会ったきっかけがなんとも奇妙。

    司馬氏の「菜の花の沖」読了直後、ゴロヴニン著の「日本幽囚記」の訳本を検索したらその脇にこの本が表示されていた。まずタイトルに引きこまれ、そして著者の略歴をみているうちにさらに引きこまれ、まずはお気軽にと彼女の「ガセネッタ&シモネッタ」を手にとったところさらに引きこまれ、本書に至ることに。文庫本の厚さに一瞬ひるむもその小気味の良い斬り方に軽快さを覚え、気がつけばこの本の索引片手に本屋を駆けずり回りたくなっている自分がそこにいた。

    今回こうして書評本という新しい分野に挑戦してみて新たな開きがあった。ここで紹介されている本はあくまで彼女が興味を持って手に取り、彼女の琴線に触れたからそのふるいにひっかかったもの。人の琴線とは千差万別で、それをどこまで当てにするかというのはその評価する側の人となりにかかっている。彼女はそれを見事に備えていた。最盛期、1日7冊というハイペースでページをめくり続けていたというとても真似できない読書量が裏付けとなり、ゴルバチョフに同時通訳者として指名されたこともあるという、決して書斎にこもって脳内活動だけを行なっていたわけではない社会貢献度の高さ、確かな知的教養度、死を見据えながらも保たれる精神の健康度等々…がさらなる後押しとなって、いつの間にか彼女の薦めるわけを聞きたくてしょうがなくなっている。

    昨日もついこの書籍名群から一冊を手にとってしまった。

    しばらく続けてみよう。

  • 書評のあつまりです。
    一つ一つが重く、息苦しい感があり、ぎゅっと固まったチーズを薄くそぎながら前に進むイメージです。
    鋭い論評と、博学で、事実と経験に裏付けられた内容にて、圧倒されます。
    他の書も読んでみたくなりました。

  • 「私の読書日記」という題で連載されていた書評をまとめた第一部と、1995~2005に雑誌や新聞等へ寄せた書評文をまとめた第二部の二部構成の書評集。

    文章に人柄が現れる人、という印象を前から持っていましたが、この本は殊更顕著だと思ったのは前半が日記調で書かれているせいかもしれません。圧倒的な読書量と博学な知識、幅広い好奇心と、何より強い個性。書評ひとつひとつに本への情熱が込められていて、こちらも真剣に読まないと蹴倒される気分に。でもその強さが心地良かったりします。

    井上ひさしさんによる解説も秀逸。
    「書評は常に著者と読者によって試されている。(中略)すぐれた書評家というものは、いま読み進めている書物と自分の思想や知識をたえず混ぜ合わせ爆発させて、その末にこれまでになかった知恵を産み出す勤勉な創作家なのだ。」
    ロシア語通訳者として大変優秀であった著者が、さらなる舞台として選んだ書評の世界。個性を堪えて人と人を介する通訳という仕事をしていたからこそ、自己が遺憾なく発揮できる書評という仕事は、彼女にとって仕事の枠を超えたステイタスだったかもしれません。
    お会いしたことはないけれど、思わず肩を借りたくなるような包容力を文章から感じていました。早逝が残念でなりません。

  • やや古い本だが目は通しておきたいなと思いブックオフで文庫本で購入。100円か200円かで入手したが新品だった。
    前半が日記、後半が書評で、日記の中には多数の本が随時紹介されている。

    何しろ1日に7冊を読まれるのだから。確か本書の日記の中にも出てきたが、「ここ20年間は1日7冊をキープしている」とあったから、たまに7冊読むのではなく、コンスタントに7冊をキープされていたわけだ。そこには「最近目が悪くなって、本代の元を取るために最後まで読み切るとういうのも、やめることにした」というようなことが書かれていたから、きちんと読み切って1日7冊をキープされていたんだろう。恐るべき読書量だ。

    内容は、やはりロシア語通訳(しかも当時のゴルビーやエリツィンからご指名のかかるほどの凄腕通訳)だっただけに、本書の中身の半分はロシア情勢、対米情勢、あるいはロシアの文学や書籍にかかわる内容だった。

    当時のロシアの事件・モスクワ劇場占拠事件に触れられたページがあったが、この当時のプーチンの人を人と思わぬ対応は現在と全く変わらないことが確認できる。20年前からあの人格はずっとそのままだということだ。

    また、当時の湾岸戦争の記事なども出てくるが、湾岸戦争でのイラクの庶民・子供の犠牲になる様子も描かれており、著されて20年も経過しているのに、人間の行為の本質は変わっていないなという寂しい読後感もあった。

    結構分厚い本だけれども、まず当時の情勢などについての評論的なものは、今更あまり読んでもしかたないし、当時の本の紹介も20年前となると新鮮さもなく、すーっと読み流してしまった(巻末に本書に登場する書籍と著者の索引がついているので、興味がわけば後からいくらでもその日記や書評にたどりつけるようになっている)。

    やっぱりロシアとアメリカで言えば、ロシアびいきの記述、膨大な知識を背景にちょっと高飛車な評論と感じる記事も少なくもないなと感じたが、興味の傾向として、猫好き、斉藤美奈子好き、丸谷才一好き、そして日本文学好き、性の話好き、、かなという感じがした。

    後半のほうで出てきた「もっとも苦痛の少ない外国語学習法」というパートでは、父親の転勤で9歳でいきなりソ連大使館付属八年制普通学校に放りこまれたときからの、まったく言葉のわからないところから生活環境の記録がとても興味深かった。

    日本文学に興味をもったのも、この外国生活を強制的に強いられた環境にあったからのようだ。日本文学への興味の持ち方など、普通に日本で暮らしている人間より、よっぽど強いなと感じた。

    ロシアに精通し、日本にも興味を持ち、どちらの語学も達者ということになれば、ロシア通訳としてものすごいアドバンテージ。それに加え、1日7冊の読書によるハイスピードのインプットが加われば、もう通訳は天職としかいいようがないなと感じる。

    一方、著者は、こうした優れた才能の裏側でがんと闘っていた。本書の1割は、癌と戦う姿にページが割かれている。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。作家。在プラハ・ソビエト学校で学ぶ。東京外国語大学卒、東京大学大学院露語露文学専攻修士課程修了。ロシア語会議通訳、ロシア語通訳協会会長として活躍。『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)ほか著書多数。2006年5月、逝去。

「2016年 『米原万里ベストエッセイII』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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