対岸の彼女 (文春文庫)

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著者 : 角田光代
  • 文藝春秋 (2007年10月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167672058

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対岸の彼女 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • 今この本に出会えて本当によかったと思う。

    前に進むことに迷いが生じる年齢に差し掛かった自分に、また新たな一歩を踏み出す原動力をくれた気がします。

    「なぜ私たちは年齢を重ねるのか。生活に逃げこんでドアを閉めるためじゃない、また出会うためだ。出会うことを選ぶためだ。選んだ場所に自分の足で歩いていくためだ。」 (本文より)

    人付き合いというものは、一歩社会に踏み出したら、ずっとついて回る悩みの種である。どことなく周囲に合わせ、集団の中に自分の居場所を作ることに必死になる。それは学生時代から、いや、もしかしたらもっと幼い頃から始まっていたのかもしれない。

    それに疲れ、安定を求めるような年齢に差し掛かったとき、立ち止まってこれまでの自分の選択が正しかったのかを振り返ってしまう。そうなるともう、次に足を踏み出すのが億劫になってしまう。

    そんな、人付き合いに疲れ、新しい出会いに怯んでしまっている人には是非読んで欲しいと思う。

    目指すべき場所の答えは見つからなくても、もやもやした気分が少し晴れるかもしれません。

  • 途中、読むのがとてもつらかった。
    いじめに脅える葵の不安に同調し、心ない一言を放る小夜子の夫に怒り、なんかつらいなと思ってしまっていた。

    「ぜーんぜんこわくないの。そんなとこにあたしの大切なものはないし」と、言い切ったナナコに感動しながらも、じゃあ、どこにあるの?何が大切なの?と聞きたくなっていた。
    あぁ、情けない…。

    「なんのために私たちは歳を重ねるんだろう。」
    小夜子が繰り返すこの問いかけに優しい回答が用意されていて心底ほっとした。
    でも、その答えはタフであることが求められているのだと思わせるものでもあった。

    葵と小夜子はタフだ、と思う。ナナコもそうであってほしい。
    そして、私もタフになりたいものだな、と思った。
    葵のように人を軽やかに信じられる人間になりたい。

  • 私が大学生の頃から気になっていた本。
    今頃になって思い出し購入しましたが、読む時期が今で良かったと思いました。

    私事ですが、就職、結婚、妊娠を通して女性である喜びを感じつつ、また複雑な想いをする事もありました。
    学生の頃「お互いにおばあちゃんになってもずっと一緒だ」と約束を交わした親友がおりました。ずっと親友でいられる、同じ目線で物事を見ていられる、そう信じていた矢先、終わりは突然にやってきました。

    この本に書いてある様なほんの些細な状況の違いや考え方の温度差が2人の距離を遠ざけてしまったようです。
    ページをめくるにつれ彼女との思い出が蘇り涙が溢れてしまいました。葵とナナコのように笑い合えた日々があったのに、どうしてでしょうね。

    葵の過去と現在そして小夜子との関わりをを交差しながら展開されていくお話ですが、正直最後まで読むのが怖かったです。また同じ道を歩かなければならないのかと。でもこの本は最後にそっと希望の光を照らしてくれるお話でした。

    まだ子供が生まれていないため、小夜子の子育てに対する考え方や立場がいまひとつ納得できない
    部分もありますが、子供が生まれ同じ立場になった時にまた読み返したいと思います。

  • 『ひとりぼっち恐怖症』
    その言葉、すごくよく分かります。

    私も葵やナナコと同じ年の頃、ひとりぼっちになるのがとても怖かったんですよね。

    ただ二人のように、見えない何かに追い詰められるようなことはなかったけれど、でも自分が立ってるその場所に必死にしがみついて、とにかく振り落とされないように。って思いながら生きてたような気がします。

    しかも、大人になれば何かが変わるだろうと淡い期待を抱いていたのに、結局のところ待っていたのは子育ての悩みとあの頃と変わらない人間関係の悩みばかり。

    だから小夜子が抱く焦燥感が、手に取るように分かるんですよね。

    『なぜ私達は年齢を重ねるのか。生活に逃げ込んでドアを閉めるためか。それとも出逢うことを選び、選んだ場所に自分の足で歩いて行くためか。』

    人に傷つけられれても、それでもまた誰かと出逢いたい。
    なんか、人間って不思議だな。と思うけど、でも誰かに出逢いたいという思いこそが、前に進もうとする原動力なのかな。なんて思ったりしました。

    ラストがすごく良かったです。

  • 夫と幼い娘を持つ専業主婦が公園ジプシーが嫌で娘を保育園に入れるため仕事を始めた

    その仕事先の女社長の高校時代の話

    交互に続く。そして、一本の線になる。

    高校時代の女子らは確かに幾つかグループを形成していた。しかし、どこかのグループに属していなければならない、という脅迫観念紛いのものまであったのか。知らなかった。

    読後は前向きに明日も頑張ろうと思った気がしたが、3日ぐらい経つと何の印象も残っていなかった。ただ、35歳前後の専業主婦にこの本を読ませてみたいと思った、という記憶があった・・・。

  • 夏の暑さとか強い日差しは、ある場面を強烈に脳裏に焼き付ける効果もあるような気がしている。葵とナナコの夏は、お互いに強く刻みつけられたのではないだろうか。少なくとも葵にとっては。

    その刻みつけられた強烈な印象が、時を経て葵によみがえってくる瞬間がある。それは本当に一瞬だったけれど、読んでいる側には強く印象付けられた。「対岸」という言葉も深く読み手側に落ちてくる。

    小説を読んでいると、小説の筋とは全く関係ない自身の過去のちょっとした感覚が蘇ったり、忘れていたことをひょっこり思い出したりする。その瞬間が訪れるのが、自分にとっての読書の楽しみの一つなのだけれど、『対岸の彼女』ではそれが多かった。とてもよい読書の時間であったと思う。

  • 不覚にも涙がこぼれた。

    大人になってからの友人こそ、本当の友人なんだろう。
    しかし、大人になってからでは、本当の友人なんてなかなか出来ない。
    仕事、金、名誉、打算…
    子供の時には、考えられなかった障壁が次々と現れる。

    家庭を持つ主婦と、シングルの女社長というキャラクター設定だが、これは男でも置き換えられる部分がある。
    昔あれほど仲がよかった友人達。今はどこで何をしているのだろうか。そんなことを考えながら読んだ。

    痛いほど切実な思いが伝わってくる物語なのだった。

  • 私は小学校からずっと嫌われ者でした。今もクラスで孤立気味です。そんな中この本を読んで、肩の力が抜けた感じでした。別に無理して周りに溶け込もうとなんて全然しなくていいんだと気付かしてもらいました。それにしてもなんなんだろう、このリアルさ。女子の集団の残酷さをとてもリアルにえがいているなと感じました。

  • なぜ私たちは年齢を重ねるのか。
    その問いかけにこの本がすべて答えてくれている。
    何かを抱え込んだり、孤独に失望したりしても、扉だけは閉めちゃいけないなぁと実感させてくれる。

  • 人と出会うことについて。確かに歳を重ねると煩わしく思うこともあったり、学生時代は必要以上に必要としすぎてビクビクしていたり。
    とりあえず考えすぎず前に進むことが大事と思った。

  • 同い年、同じ青春時代を別の場所で過ごしていた2人の女性が、違う人生を歩んでいた中で交わった、1つの共通点。
    そこからの急速に増していく親密さと、しかしあることをきっかけに急速に覚める関係…

    帯にもあるけど、「結婚してる・してない」だけでも女性はだいぶ価値観が変わる。
    関係を支えていた交わる一点だけでは、きっかけにはなれど、本当には分かり合えない。
    「違うからいい」とは方便で、本音は同じような人とつるむことを求めているのかも。

    学生時代を歪んで過ごしたのち、社会人になる前に自分の歪みに気づき、軌道修正できた人にとっては、ややわかりにくい世界かもしれないけど、女性、とくに女子だった人たちにとっては、とてもリアルな小説だと思った。

    自分が選んだ人生を、人と違う、交わらないからといって否定する必要はない。
    女という生き物特有の、何かがあって、この小説はそれを敏感に察知できる人にしかわからない気がする。

    入院中、しかも妊娠中に読んだせいか、あまりよい読後感はなかった。独身の時に読んだら、また違ったのかもしれないと思った。

  • 2016年10月9日読了。感想に困る作品です。考えさせられるというか。女の友情って何だろうと思う。魚子と葵の友情は熱くて羨ましい部分もあったんだけど、魚子は何故手紙を送らなかったんだろう。私なら絶対に送るのに。それが悔やまれてならない。葵がいつまでも時間が止まってしまったような生活を送っているのは魚子のせいなんじゃないかって魚子を責めたりしました。あと小夜子の最後の決断。あれも納得いかない。なんで小夜子はそこまでして葵に心酔するのか。こんな納得いかないことがあっても、面白かったと思えるのは、角田さんの女の心情を緻密に描くのがうまいからなんだろうなぁ。女の友情ってあるようでないものなんだろうか。私はそうじゃないと思いたい。今回の感想はうまく言葉が見つかりません。

  • 内容も勿論良かったけど
    森絵都さんの解説が非常に良かった。


    人と人が出会い寄り添うことで生まれる
    喜びや衝突や葛藤。

    それでも人と出会いたい
    社会の中に一歩踏み出したい

    そんな思いが伝わってくる作品。


    葵も小夜子もナナコも
    今笑って何処かで生きてくれてるといいな。

  • 角田さんは出来すぎない女性像を絶妙に描写する。
    なかなか面白かったです。

    私も仲良くしていた女友達がかつていたけれど、
    今では、そのころの様に、恋人同然のべったりした女友達はいない。

    これから、一人ぼっちが耐えられなくなってまたそんな友達ができるんだろうか?

  • 久しぶりに、続きが気になって仕方が無くなる本に出会えた。
    星4つにしたけど、本当は4.5位。
    女同士の友情をテーマにした小説なのだが、本書は二人の主人公の話が交互に切り替わり進んでいく。
    主婦の小夜子が主人公の話と、小夜子の働き出した職場の女社長の葵という、彼女の女子高時代の頃の話だ。
    主婦の小夜子は世間から取り残されているような、今の現状を打開する為、掃除代行の仕事を始める。
    小夜子の話は少し退屈な個所もあったものの、高校生の葵の章になると学生時代の共感も多い。
    新学期が始まると女子のグループがいくつか形成され、無視等いじめの対象にされる子が出てくる。
    地味な子や、ほんの些細な出来事が原因でターゲットにされるのだ。その中で葵は魚子(ナナコ)という、どのグループにも属しておらず、ちょこまかと色々なグループ間を行き来している、好奇心旺盛な明るい子と友達になる。
    葵の章では、どんな結末を迎えるのか気がかりだった。
    小夜子→葵→小夜子……と、交互に主人公と場面が切り替わるので、ぐんぐん引き込まれていく葵の章が、やや地味な展開である小夜子の章を引っ張り、難なく読み終える事が出来た。まさに作者の思惑通りという感じだ。

    中学の頃、いじめられていた葵。引っ越した先の学校でナナコと友達になり、葵の部屋に上がりこんでくる。
    無邪気に話しかけてくるナナコを見ていたら、泣きそうになった場面があったのだが、欲を言えば感情が高ぶる場面だからこそ、過去に遭ったいじめを、より綿密に描写して欲しかった。
    物が無くなる、クラス全員に無視される、机と椅子がいつも教室の外に出されるという説明がさらりと書かれているだけなのだ。
    ここを詳細に描いていれば、こうしてナナコが家に遊びに来ている現実がより感慨深いものとなり、この場面も活きてくるのではないか。
    どうでもいいのだが「なんかお腹空いた。なんか食べてかない?」というナナコの発言で、「なんか」を2度使っているのが気になった。
    細かいが、「お腹空いた。なんか食べてかない?」で、良いような気がする。
    気づけばナナコとは、言いたい事を言い合える仲になっていた。それほど親しく無い人だと失礼になってしまうような会話も遠慮せず言える程の仲に。
    話を進める毎に移り変わっていく女子高の描写は、リアリティがあった。
    たまたま席が近かった者同士でグループになり、それが強固なものとなる。特に趣味が合うわけでも、共通の話題があるわけでもないのに、グループからはじき出されないよう、どこか必死になって一緒に行動をする。そして、些細な事でいじめのターゲットになってしまう子が出てくる。
    グループに属していないナナコが、いつか村八分にされ、ナナコといる事で自分もとばっちりを受けるのではと、葵は学校では彼女に近寄らず、そんなずるい自分に嫌悪していた。
    しかし、ナナコはそんな葵に対して責めたりせず、寧ろとばっちりを受けさせないように距離を置いて構わないようだった。
    そんな明るくて性格の良いナナコはてっきり綺麗なものばかり見てきたように感じられた。だが、ナナコの家を訪問すると、グレた妹、台所のシンクや流し台にカップラーメンや弁当の空容器、冷蔵庫以外家具や電化製品がない……そこは、人が生活しているという感じがしなかった。作中に詳しい家庭環境は綴られていないものの、家の様子だけで、あまり良い家庭ではないと想像させる。
    この異常な家の様子が、後に葵が掃除代行サービスをするきっかけになったのだろう。
    ナナコは綺麗なものばかり見てきたわけでもなく、それどころかまったく正反対の環境で生きてきた女の子だった。
    二人は家を出て、髪を染め、カツアゲをし、各地のラブホテルを転々とする生活を送る。ナナコと二人で何も悩まなくていい、上手くいく場... 続きを読む

  • 夫が読んだ感想は、女は大変そう、男でよかった。とのことだった。私は主人公2人に共感できることが多かった。歳をとるって生きやすくなるのかなと思った。

  • 環境が異なる2人の女性の視点を通して、生きにくい世の中での葛藤を描いている小説。
    以下ネタバレあります。
    2人ともイジメにあったり、周囲に溶け込めなかった過去を持ち、1人は独身で社長になり、1人は結婚して専業主婦で幼稚園に上がる前くらいの娘がいる。
    そんな既婚/未婚、社長/主婦、その他諸々の人々がカテゴライズされ、対岸にいるような人生観を持ち、お互いに容認したり非難したりする。
    そんな中2人心の葛藤と、微妙に交錯する人生の奮闘を描いている。
    女性の気持ちが良くわからない部分も多々あるけど、参考になる部分も多く、男性でも楽しめる作品だと思う。
    人生にモヤモヤしている人にオススメです。

  • 角田光代さんの小説は、これが初めて。
    2人の主人公の話が、交互にされていくが、なぜ「対岸」なんだろう?と思いつつ読み進めていて
    最後の方で意味がわかりました。
    が、私にはあわないみたいです。

    ところでナナコさんはどうなったのか気になります。

  • 考えされられた。
    「だってあたしさ、ぜんぜんこわくないんだ、そんなの。無視もスカート切りも、悪口も上履き隠しも。そんなとこにあたしの大切なものはないし」という少女。なんで人は仲間はずれを作って安心したがるんだろう。
    暗い展開かと思いきや主人公が一歩踏み出してちょっと意外なラストに。読後感がポジティブ寄りで救われた感じです。

  • 「女」という生き物の生態の生々しさというか、「女の群れ」の濃密な人いきれの感じが、迫ってくる…
    私のように女として異端の者には、少々息苦しい。

  • 再読。気づけば登場人物と同い年になっていたことにまず驚き…。
    みんなと同じてなくていいんだと、山田詠美の小説で覚醒し、女同士のもろい友情ごっこからやっと解放されたと思っていたのに、また周囲と違う自分に焦りを感じ始めている。思い描いていた大人になれていないのはなぜだろう。
    角田光代の本を読むと本当の自分の気持ちにいつも気付かされる気がします。
    友だちに何を求めているのだろう。
    よりどころ?承認?弱さ?
    物語から飛び出す感想が浮かびました。
    初めて読んだ感想もこのブクログにありますが、捉え方変わっててうけた。
    今度読み返したときは何を感じるのでしょう。

  • きっと、彼女たちのことは
    彼女たちにしかわからない。

    いや、もしかしたら(もしかしなくても)
    彼女たち自身にもわかっていないのかもしれない。


    賛否両論、いろいろあるようですが
    私はすごく面白く読めました。

    すれ違い、家庭の歪み。
    似ているからこその苛立ちと共感、共有。自己嫌悪。
    女性が二人以上集まったときのあの独特な空気感を
    すごく精密に描いていると思います。

    空回りと思い込みで、世界はできているのかもしれない。

    **

    一番多感で、繊細だった時期に
    同じように「二人」だったことがある人にしか
    楽しめないのかもしれないなぁ。

  • ハブられないように、集団に帰属し、目立たぬように学生時代を過ごした葵と、集団に帰属できずそんな自分を好きになれない小夜子が、葵の立ち上げたプラチナプラネットという会社の社長と、そこへの入社希望者として出会う。独身者と妻帯者。雇う側と雇われる側。陽気でオープンでルーズな性格 と内に篭り生真面目できっちり屋の性格。まるっきり対岸にいる葵は実はこちら岸から対岸にいったのだと気づき、彼女のの言動から、小夜子は生き続ける意味はひとと出会うことだと悟り、生きる意味を見出す。小夜子もきっと対岸への行き方を見つけるであろう。

  • 女の世界だー。ところどころ、息苦しさを感じる女臭さでした。

  • 私の読後感は、「焦り」の一言です。
    「女同士の友情」を縦糸に、
    「生きにくい世の中を女性として如何に生きるか」を横糸に構成されている、分かりやすく、読みやすい小説です。
    設定は、現実と過去とが入り組みながら、
    二人の主人公が交差していく中で、それぞれの抱える問題がクローズアップされてきます。
    そして、その問題の多くは、
    女性が抱える、あるいは直面している問題でもあります。
    独身女性は独身であるがゆえに、
    既婚女性は、自分以前に家族の一部分であることの閉塞感ゆえに、
    悩み、苦しむ場面は、女性作家ならではの細かい描写で描かれています。
    ふとした時、それは家事の合間とか、
    子どもとの会話とか、
    夫との表現の違いとか、、、
    そんな時に、ふと感じる「自分の人生とは何か」という疑問。
    あるいは、
    過去の思い出に出てくる女子高校生。
    もう、涙が出てくるくらい哀しい。
    ささいなことがきっかけでイジメられる。
    みんな、自分が対象になるのは、イヤだから強い者に従っていく。
    しかし、自分で自分をしきりに撞着する。
    その描写がリアルで、泣けてきます。
    思春期の傷つきやすい少女たちが、短いスカートの裾を翻しながら
    足早に、その時代を駆け抜けていきたがる、そんな思いがジンジンと伝わってきます。
    人は決して一人では生きることが出来ない。
    人間関係の最初に出会うのは親。
    青春時代の幕は親との相克から始まる、
    そして友達。
    それは必ずしも嬉しくも楽しくもなく、むしろ苦い。
    記憶の底に沈めて、日の光はあてたくない思い出や、
    彼方にある記憶が引きずり出してくるような小説の中の高校生の彼女たち。
    およそ誰でもが経験する「イヤな体験」。
    自分のそれは大きくて、負いきれなくて、いきおい蓋をするのだけれど、
    実は、
    「皆同じ」
    という、当たり前のことを思う主人公に、
    読者は自分を重ねる。
    そして、
    過去の上に今があり、
    今の延長に未来がある。
    過去の亡霊は対岸にいるが此岸にいる主人公には、
    もう、思い出の空間はいらない、、、
    小説の中の主人公たちも、
    それぞれに成長していく。
    独身女性は、自分の空間の広がりを求めて。
    既婚女性は、家族の中での空間の広がりを求めて。
    少々、焦りを感じながらも、
    生きていくことのもどかしさと、苦しさと、やりきれなさと、
    そして未来に居場所を求めて
    物語は終わります。

    自分にウ〜〜〜ンと引き当てた本でした。


    と、いうわけで、
    私はこの本を閉じた瞬間に出た言葉は、
    「悩みは深い、煩悩は深い」
    フッ====
    です。
    何も犠牲にする必要はないの。
    今のままで、ほんのちょっと理解を示す夫と、
    ほんのちょっと分かりやすい子どもと、
    ほんのちょっと自分に出来る仕事があれば、
    私は、
    文句なんか言わないの。
    そうそう、
    多くはいらないの、一人でもいいから私をわかってくれる同性のお友達と。

    と、まぁ誰でもが行きあたっている壁の厚みが、
    改めて思い知らされた本でした。

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対岸の彼女 (文春文庫)の作品紹介

専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが…。結婚する女、しない女、子供を持つ女、持たない女、それだけのことで、なぜ女どうし、わかりあえなくなるんだろう。多様化した現代を生きる女性の、友情と亀裂を描く傑作長編。第132回直木賞受賞作。

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