螺旋階段のアリス (文春文庫) (文春文庫 か 33-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167673017

感想・レビュー・書評

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  • 「螺旋階段のアリス」は
    ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」に登場するキャラクターたちが
    そこかしこに絡められた、加納朋子さんならではのソフトで優しいミステリー。

    大企業を脱サラし
    憧れの私立探偵に転職したものの、事務所で暇を持て余している
    仁木順平の前に、飼い猫"ダイナ"を追ってきた....という少女が突然現れる。
    "ダイナ"とは、なんでも"不思議の国"のアリスが飼っていた猫と同じ名前だとかで
    どうやら彼女は「不思議の国のアリス」びいきらしい....。
    そしてこの仁木氏こそ、何を隠そう(?笑)密かな「不思議の国のアリス」フリーク
    だったことが偶然して、この二人の探偵コンビが誕生(?!)するのです.....

    仁木ご夫婦の、お互いの愛情のあり方を確かめ合う形での終わりが
    とても印象に残ります。続きも読みたいな...。

    子供の頃に読んだきりの「不思議の国のアリス」も、もう一度
    読んでみたくなりました。

  • 大手企業を早期退職した仁木順平は憧れの私立探偵を始める。
    突然あらわれた助手志望の美少女、市村安梨沙の機転と知恵で日常の謎を解く。

    アリスの世界を現実の事件に重ねていくんだけど、つい、そこまでアリスにこだわるのはなんで?と思ってしまう。
    アリス好きな人にはたまらないだろうけど。
    事件のたびに出てくるアリスの登場人物の解釈が面白い。
    「ハートのクィーンは、おそらく知らなかったのだーー首をはねられた者が、それっきり死んでしまうということを」
    話が進む度に深まる安梨沙の謎。

    仁木さんの交友関係や会社への思い、部下の扱いをみていると仕事や会社がイヤで辞めたのではなかったのかなとじんわり感じる。
    そしてそれはそのまま奥さんのこととも重なる。
    読後はちょっと寂しく、ちょっと心温まった。

    螺旋階段のアリス
    裏窓のアリス
    中庭のアリス
    地下室のアリス
    最上階のアリス
    子供部屋のアリス
    アリスのいない部屋

  • 加納さんのミステリーは、殺人事件が起こったり、ドロドロした人間関係だったり…が無く、凄く優しいお話が多いから好き。

    最上階のアリス、なんてもう…

  • この作者の本、中古本屋の100円の棚に色々置いてあるので行く度に買っていたら、いつの間にやら3冊も積読に入っていた。
    まずは1冊手に取って、サクサクと読了。

    「転身退職者支援制度」なるものに応募し自ら起業して私立探偵になった仁木順平。
    この本が出た200年代初頭、私が在職した会社でも同じように「転身支援」の名の下に体の良い退職勧奨がなされたけれど、何だか時代を感じるなぁ。
    携帯電話は出回り始めた頃だが、まだカメラ付きは無く、こうした時代の探偵はなかなか大変ね。

    時折舞い込む依頼は珍妙な事件ばかりで、それらを押し掛け助手の安梨紗ともに解決していくといったお話。
    7つの話からなるが、謎解き自体は取り立ててのことはなく、読み終わってみれば色々な夫婦の姿が描かれていたことに気づかされる。
    ゲームのように離婚と結婚を繰り返す妻とそれでも自分なりに彼女を愛する夫、業績の悪化とは裏腹に会社は順調だと威張るばかりの夫とその心情を察することも出来ず現を抜かす妻、ありもしないことを信じていられる妻と彼女をその世界に留め置くために骨を折る夫、社会的なことは何も出来ない夫とそれを承知で彼の人生に関わる全てを取り仕切きろうとする妻、そして世間に知られるシナリオライターの仁木の妻と違う自分になりたくて会社を辞めて私立探偵になった仁木。
    色々な夫婦の形があるが、こうして見れば、私たち夫婦はそこそこ幸せな間柄かもしれないな。
    4番目の奥さんなんか凄く夫思いのように描かれているけど、私からするとあまりゾッとしないし。
    最後の話の、仁木夫婦の互いの変わったところ変わらないところを確かめ合う姿にはグッと来た。

    依頼者や出来事に「不思議の国のアリス」のキャラクターやエピソードが模される趣向だがそれほど意味があるとも思えず、取って付けたような仁木のハードボイルドな探偵への拘りも話のテイストからは違和感あり。

  • サラリーマンから探偵に転身した年配の男と20歳前位の美少女がいくつかの謎を解いていく話だけど、不思議の国のアリスと絡めて話がすすんでいくところとか、主人公と美少女の身辺の謎も溶けていく様子がゆったりとして面白かった。こういうミステリーもいいよね。

  • 前回読んだのは2010/10/23!
    9年前だからか、内容全然覚えてなかった…。
    そして気づいたら新装版出てた。
    オフィスは20年前の仕様なので、丁度バブル崩壊あたりの時期なのかな。

    大手企業のアラフォーを対象にした「転身退職者支援制度」を利用し私立探偵となった仁木。
    古いビルにあるオフィスで居眠りしていた所に、猫ダイナを抱っこした安梨沙が現れる。まるでアリスのような出で立ちで仁木の助手をパートタイムで勤めると言い出す。

    アリスネタが毎度出て来て、作中の会話とアリスの登場人物に付いていけなくなったので、一度不思議の国のアリスを読んで、再度トライ。
    あぁやっと意味が繋がった。しかし鏡の国のアリスは未読なので、白い騎士やトィードルデイーの話は相変わらず不明。

    不思議の国のアリスと鏡の国のアリスを読んでからの方が楽しめる作品。

    ミステリとルイス・キャロルと女性の自立がキーワード。


    螺旋階段のアリス…夫と離婚と再婚を繰り返している老婦人が依頼者第一号。4回目の離婚をしたまま夫が亡くなり、遺産相続や財産分与のために、家のどこかにある貸金庫の鍵を探す必要があるという。家の事は何もわからない仕事人間だった夫が、スーパー主婦の目を盗んでどこに鍵を隠したのか。同じく主婦の心理に通じる20歳の人妻安梨沙が解決!
    (トランプの女王様=無邪気な暴君=依頼主)

    裏窓のアリス…鮮やかなオレンジ色のスーツのミカン嬢が、自分は浮気していないということを証明する調査を依頼してきた。本人の依頼による本人の素行調査という気楽な仕事であるが、ミカン嬢の依頼の後に、ミカン嬢の夫が依頼をしに現れる。なんとミカン嬢は夫の会社で機密を暗号を使ってライバル会社に漏洩しており、そのせいで夫の会社が傾きかけている事を知る。
    (トランプの兵士=ミスを隠そうとごまかそうとする=依頼主)

    中庭のアリス…安梨沙の父親が高級少女服メーカーの社長という事実が発覚する。依頼主は行方不明となった飼い犬のサクラを探して欲しいというマダム・バイオレット。
    ところが住み込みメイドや庭師に話を聞いてもどうも時系列が合わない。実はサクラは2代目で、代替わりしたことも依頼主は気付いていないらしい。どうやらマダムバイオレットは見たいものしか見ない性分らしい。はたして、サクラは本当の飼い主の元にいた。代わりのコリー犬を渡して依頼終了。
    (チェシャ猫=幻=サクラ)

    地下室のアリス…仁木が勤めていた会社の地下の事務室に勤める男から依頼があった。地下室の番人は、地下の書庫にある電話が延々と鳴るらしい。
    台車で紙の入った段ボールを制服の女性社員がガラガラ…うーん、今では見ないなぁ。
    談合資料等を公正取引委員会の査察の日に隠す(日程はあらかじめ通達されている…)
    (トカゲのビル=使い走り=ヤバい仕事を任された哀れな人身御供)

    最上階のアリス…大学時代の知人の真栄田夫婦の自宅に呼ばれると、真栄田は探偵となった仁木を心配し、依頼してくれるという。依頼内容は妻が最近やたらと具体的なお使いを頼んでくる理由を調べて欲しいというもの。お使い先の共通点は電波塔があること。
    (鏡の国のアリスの白い騎士=夫を支える妻=余命短いから夫の方に先に死んでもらわないと…)

    子供部屋のアリス…産婦人科の医者の依頼は新生児の面倒をみること。うちは託児所じゃないと断ろうとする仁木だが、なんと仁木の妻の紹介という事で断れない。育児は妻に任せきりの仁木だったため、育児初心者二人でなんとかこなしているが、誰の赤ちゃんで、何故隠すようにしているのかが不明。気になった二人は調査をすることに。
    二人が世話していた赤子は双子で毎日交互にいれ変わっていた。母親は暴行された末の妊娠で、産まれた双子の片方を認められない。事情が事情で公に出来ない為、
    (トイードルダムとトィードルデイー=双子)

    アリスのいない部屋…安梨沙が姿を消した。父親には仁木の所で、仁木にはしばらく仕事を休むと連絡を入れて。心配になった仁木が調べてみるとなんと安梨沙に婚約者(有名会社の子息)があてがわれるという噂があった。自分を商品やモノとしか見ない男達に怒った安梨沙が自分の意思で失踪するのも仕方がない、が彼女はどこに消えたのか?
    失踪先が仁木の娘の部屋かい!
    有名人な妻と男勝りな娘にタジタジな仁木。
    商社に長年身を置いてバリバリ働いてきたのに、
    変に我を張らずにいられるのは、この妻のおかげなのかな。

  • 大企業サラリーマンから探偵へと転身した仁木。彼の前に突如現れた、アリスと一文字違いの美少女、安梨沙。彼女を助手に、事件という程でもない依頼を、彼女の閃きによって解決していく。
    穴に落ちたのはアリス、君ではなくて僕のほうさ。ぐるぐると螺旋階段を駆けおりるかの如く飲み込まれて行ったのさ。不思議の国の迷宮へ。帽子屋もこの私も、君のいれてくれる紅茶とドレスのフリル擦れる囁きにメロメロだ。
    だからもう屋根を突き抜けたり、涙の海で溺れたりしなくていいのだ。等身大の君で耳打ちして欲しいんだ。さあ、この問題を開く鍵は何処だい。
    癇癪持ちの女王がこう叫ぶその前に。『この首をはねよ!』
    お願いだから、チェシャ猫の様に現れたと思ったら消えたりしないでおくれ。君が可愛いだけのお人形じゃないことはわかったからさ。
    せめて、この夢から醒めるまでは。

  • 探偵ものと『不思議の国のアリス』がどう結びつくのかと思ったら・・・こうなるのか。
    日常系の事件なのに、どこかファンタジーっぽい印象を受けるのは書き方が巧いからだろうなぁ。加納朋子さんの文章、好きです。

  • 最後がなー

  • アリスファンではないし、ルイス・キャロルもそんなに読んでないので、アリスのフレーズが出てきても反応できなかった。日常系ミステリーと聞いてたけれど、読後感はほのぼのしていない。「最上階のアリス」なんて、いい奥さんぶってるけど結局は・・・だったんでしょ?仁木と奥さんの関係は良かったけど、アリスの家族とか読み終えていろいろモヤモヤした。

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著者プロフィール

1966年福岡県生まれ。’92年『ななつのこ』で第3回鮎川哲也賞を受賞して作家デビュー。’95年に『ガラスの麒麟』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)、2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。著書に『掌の中の小鳥』『ささら さや』『モノレールねこ』『ぐるぐる猿と歌う鳥』『少年少女飛行倶楽部』『七人の敵がいる』『トオリヌケ キンシ』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』『二百十番館にようこそ』などがある。

「2021年 『ガラスの麒麟 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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