神のロジック 人間のマジック (文春文庫 に 13-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 973
感想 : 129
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  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167674021

感想・レビュー・書評

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  • 家族の元から離され、学校(ファシリティ)にて閉鎖的ながらも平穏に暮らす多国籍な六人の子供たち。
    施設の職員である校長(プリンシバル)、寮長(RA)、食事番のミズ・コットンと共に
    授業と実習の日々を送る中、彼等は各々の「自身が置かれた環境の真相」を推理してゆく。まるで実習(ワークショップ)で行う探偵ごっこの延長のように。
    ある日、疑惑と平凡が共存する日々に一人の新入生が加入する。そこから急速に崩れ出す日常と現れる真相。
    この学校(ファシリティ)の存在とは。彼等の共通する記憶の欠如が示す意味とは。
    ーーーーーーーーーーー
    ベタながらもそそられる設定。と言えどこれは読み終えたからこそのあらすじであり、
    今回はなんの事前情報も無しで手に取ったので前半はちんぷんぷんかんぷんぷん。
    半分は学校(ファシリティ)での六人の子供たちの健気で活発的な日常描写。
    複数の謎と伏線は設置されるものの、果たして向かう先が悲劇なのか、喜劇なのか、はたまた永遠の平穏なのか。やれ全く想像出来ず(想像の放棄)本棚整理の使命感のみで読み進めた本作品。

    結果から言うと
    前半ページに二日かかり、後半ページは一時間での読了。そうです、後半からの読了スピードはベン....そろそろレパートリーを増やしましょう。ウサイン・ボルト。

    テーマは〈ファンタジー〉
    黒い物を黒と言えど、10人中9人が白といえばそれは白となる。
    「この世の中の全ては嘘なのよ」
    主人公マモルの母の言葉を借りるなら、私達の安定(と思っている物)そのものが 思い込み、すなわちファンタジー で成り立っているのかもしれない。
    この 思い込み の不安定さを見事にミステリーとして成立させた本書は前半に設置したハードルを軽々と飛び越えて行った。
    しかし敢えて言うなら、前半の丁寧な土台作りの割に後半のスピード感には少し粗を感じる。
    粗と言うと語弊があるが、前半と同じ割合で後半のスケールを閉じ込めるのは少しばかり勿体なく感じた。
    二日と一時間だもの、単純計算でも48倍のスケールでないと割に合わない(笑)

    この勿体無さと着地点のボヤーっとした感じは私の好みでは無かったが、
    ほぼノーガード状態の頭では十分に楽しめた。

    ファンタジーの共同錯誤、異なる思想を持つ物は異教徒。「宗教戦争」の始まりだ。
    これは現代の至る所で勃発している、と私は思う。自身のファンタジーを脅かす存在に対しての敵対心には言葉は悪いが異常さを感じてしまう。

    いきなりの語彙力爆弾を投下するが、
    やっぱ平和が良い。平和が理想であり私のファンタジーだ。威圧に額の筋肉使うより、笑顔でほっぺた酷使して皆で仲良くリフトアップしたいものである。

    • りまのさん
      NORAさんのレビュー、いつもながら、サイコーです。好きです。
      NORAさんのレビュー、いつもながら、サイコーです。好きです。
      2021/09/12
    • NORAxxさん
      あふん。
      りまのさんからコメント来るとテンション上がっちゃいます。いつもありがとうございます‪(っ ¨̮ )╮=͟͟͞͞‬ 好
      あふん。
      りまのさんからコメント来るとテンション上がっちゃいます。いつもありがとうございます‪(っ ¨̮ )╮=͟͟͞͞‬ 好
      2021/09/12
  • 緻密に殺人事件を解き明かす推理パートと、世界を転覆させる大技が光る #神のロジック人間のマジック

    家族と引き離されてしまった主人公は、とある学校に引き取られる。同じような境遇の仲間たちと生活を共にし、一風変わった探偵の授業が行われていた。ここはいったいどんな学校なのか?
    素朴な疑問を胸に暮らしていた主人公だったが、新入生が入ってきた時、その学校に不穏なことが訪れて…

    だまされたー!というレビューが多く、皆さん読書を楽しんでおられますね。
    それ自体は喜ばしいことなんですが、さて、この本の「真の恐ろしさ」にお気づきでしょうか。

    なんとも謎に包まれた不思議な世界、森に迷い込んでしまったような雰囲気で進む物語。真相がわかったとき、この世界観の本当の意味がわかる…
    読者のこれからの人生に直接訴えかけてきているんです。よく考えてください、決して他人ごとではないのですよ。

    と、説教臭いことはさておき、面白い作品でしたね!

    物語の導入から、どんどん不可思議な世界観を煽っていく描写はお見事。どういうことなのか、知りたくて知りたくて、読む手がとまりませんでした。

    登場人物もホントよくできている、各々キャラクターが立っていて、主人公たちが迷い込んだ世界に思いっきり感情移入してしまいした。

    そして本作はなんといってもミステリー要素が素晴らしい。
    綿密な事件を解決していく様は、がっつり本格ミステリーで読み応えはバッチリ。そして最後には大技で、とてつもなくしびれる衝撃度に見舞われます。

    なお本作は絶版となっており、改題されて再販されているようです。
    改題の書名は「神のロジック 次は誰の番ですか?」です。

    ほら、怖いでしょ。

    意味が分かると本当に怖い本作、ミステリー好きには超オススメしたい作品でした。

  • 目に見える物が真実とは限らない。寄宿学校に隔離された子供達。最初は探偵養成所,仮想世界を想像。7人目の新入生が入り平和な学園生活が壊れる。自分の世界を守ろうとする狂気が殺人事件を誘発。

  •  これは前の題名。現在は題名がマイナーチェンジされて出てるので、間違えてもう一度買ってしまった。でも、面白く再読した。自分は、本作を現代ミステリーのベスト1候補だと思っている。意外性の爆発力がすごい。
     子供たちの部屋に運営側が時折忍び込み、食べ物を盗んでいくという謎の面白さ、解決のなるほど感が凄い。
     この前に読んだ歌野正午の「葉桜の季節に君を想うということ」とたまたま同工の真相だったので驚いた。推理小説としての活かし方は本作の方が上。ひたすら救いのない結末を迎える本作と違い、前向きなメッセージが感じられる「葉桜...」も好きなのだが。
     題名が酷似しているにもかかわらず、疑わず買ってしまったのは自分が本作を歌野作品だと信じていたからで、それは葉桜が歌野作品だからだったと今は気付いた。

  • 「七回死んだ男」など面白い作品が多い作家さんなので、期待が大きすぎたかも。
    謎の学園に集められて謎の授業を受ける生徒達…なんてめちゃくちゃ面白そうな設定なのに、いまいちページが進まなかった。
    主人公以外の登場人物の呼び名を統一して欲しかった。主人公が心の中でつけたあだ名と、本名とが入り混じるので単純に読みにくい。
    全体的にあんまり盛り上がらずに終わった。

  • 久々にオチで素直に驚くことができるどんでん返しものの小説に出会えた。
    通常どんでん返しと言えば叙述トリックもので、登場人物と読者の認識の齟齬から生まれるものが多い。しかし本作は登場人物すらも騙しているという点から、人によっては不満に思うかもしれないが、自分は絶妙に納得できるラインだった。
    施設の正体の仮説として、探偵養成所や前世の記憶持ち、VR説などが出たときに、メタ的に推理するとどれも間違っているところまでは予想できるが、その流れで非現実的な状況にあるという考えになってしまっていた。しかし実際には現実世界の話で、まずい食事や近未来の電話ボックス、学校に潜む怪物などの謎もすべて解決される。
    簡単に言ってしまえば、記憶を無くした老人が妄想に囚われたまま暴れ狂う話なのだが、作中に出て来る宗教戦争という捉え方が面白い。片方から異常に見えることは、もう一方からも異常に見えているということだ。自分が当たり前で正しいと思っていることが、実はファンタジーだと言われたらと考えると恐ろしい。ステラほど逆上するとは思えないけれど。

  • 面白かったんですが帯や宣伝文句のせいで所々謎が残るにしても大元の「子供」じゃないというトリックには気付いてしまう人多いんじゃないかなぁと思いました(自分がそうでした)
    とはいえ哀愁漂う読後感は読んで良かったと心から思わせてくれる素敵な作品でした。

  • 家族と引き離され学校(ファシリティ)に連れて来られ、隔離されて暮らす6人の多国籍の子供たち。毎日の授業と実習、遅刻にきびしい校長先生(プリンシパル)と寮長(RA)、ミズ・コットンの半流動食の食事。そこに新入生が加わることになるが。

    夢の中でも異次元でも通りそうな不思議な謎の場所・状況。謎というより、納得させる説明をどう組み立てるか、みたいな。

  • メインのネタだけ覚えていた状態で再読。意外と伏線は張ってあったのだな、と思うがアンフェアであることは変わらない。しかしアンフェアさを越える魅力が本書にはあるのも事実。面白かった。

  • 違和感ある話ですが、グイグイ引き込まれました。おもしろかったです。
    私の感じた違和感は、少年少女の会話、「学校」の体育です。このてのどんでん返しの、極々小さいものは感じたことがあります。

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著者プロフィール

1960年高知県生まれ。米エカード大学創作法専修卒業。
『聯殺』が第1回鮎川哲也賞の最終候補となり、1995年に『解体諸因』でデビュー。同年、『七回死んだ男』を上梓。
本格ミステリとSFの融合をはじめ、多彩な作風で次々に話題作を発表する。
近著に『夢の迷い路』、『沈黙の目撃者』、『逢魔が刻 腕貫探偵リブート』などがある。

「2023年 『夢魔の牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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