少年とアフリカ 音楽と物語、いのちと暴力をめぐる対話 (文春文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679040

感想・レビュー・書評

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  • 坂本龍一のいう「ダウンタウン(以下、DT)理論」はこの20年のこの社会のムードを見抜いた言葉だと思った。
    この本が上梓されたのは2001年なのだけれど、既に”DT自身が一生懸命「DT」を演じている”と指摘しているのは流石。


    DT以前以降とオウム以前以降で日本人の心は大きく変容してしまったと思うと続けられているけれど、90sをどう総括するかという話ではないか。この本が出てから20年経っても未だに出来ているとはいいがたいけれど…。


    DT理論の件で想起したのは悪趣味ブームだったり、2ch的な冷笑仕草。少数派のカウンターだったものがメインに出た時(出ざるを得なくなった時)にどう振る舞うか。

  • かなり前に読んだ本だけど、天童荒太さんの精神的タフさ・忍耐強さは並大抵のもんじゃないな、ってのがとても印象に残ってる。

  • 先日、実際にアフリカに行ったけれど、
    まだ訪れてもいない学生時代に感じていたアフリカよりも遥かに遠く感じてしまった。
    というか、ごくごく身近なことでさえも、全てがアフリカとなってきていると改めて思ってしまった。
    分かってはいるつもりだけれど、どんどん視野が狭くなってきているなと感じる今日この頃。

    何か初めないといかんですな。。

  • 極端な話もあったけど、おもしろかったです。
    才人同士の対談はやはり興味深い。

  • -「否認」せずに人間や世界を見つめることは、最初はきついし、苦しいはずだ。支えがいる。仲間の励ましがいる。この本が、その支えの一つになればと願っている-

    「永遠の仔」の後に読んでほしい本ですが、これだけでも、児童虐待などの社会問題を、親として、大人として、共に考えるのに良い。こういう話題を自分には関係ない、と切り捨てない、余裕と力を持っていたいものです。

  • 天童荒太という人を少しでも知りたくて読んでみた。坂本龍一との接点は、永遠の仔のドラマの主題歌を手がけたことから。ふたりとも子ども時代は、集団生活が苦手というか、疑問に思って、孤立するようなことがあったらしい。まあ、大人から見たら、ませた扱いにくい子どもだったんだろう。最初は、映画が撮りたかったんだけど、多くの人との関わりや、自分の思うように出来ないやらで、作家に転身。昨今の青少年の犯罪や、親のあり方について、熱く語る。教授はちょっと過激に走るところがあるけれど、天童さんはあくまで、冷静で常識的で優等生だな。作品のイメージのままだ。思うのだけれど、あんな重いテーマの小説をいつも書いてて、普段もすごくまじめに物事に取り組んでて、自分自身要領オーバーにならないのかしら。あくまで私が感じたイメージに対しての思いだけれど。次はもっと身近な事を書いたエッセーを読んでみたい。

  • たまたま読んでいた本の中で女子高生コンクリート詰めの事件について繰り返し言及されているのを読み、いたたまれない気持ちになっていたところ、奇しくも関連事件がネット上で新たに持ち上がり、物議をかもしているという記事を目にした。ここ(mixi)でも取り上げられているようだ。
    この事件(もとの)が発覚した当時かなり話題となったことはなんとなく覚えているが、テレビを見る習慣がなかったこともあり詳細は知らなかった。
    なのに何故かここに来て立て続けにその事件について読むはめになり、そして、今更ながら心臓を卸し金で削られるような深いショックを受けている。

    ところで、テレビ嫌いの理由を時々聞かれるが、ひとつに、報道番組の総ワイドショー化にウンザリしてしまったことが挙げられる。
    音楽やナレーションでけれん味が増幅された猟奇殺人やスキャンダル。
    コメンテーターだか評論家だか肩書きのよくわからないゲストが「ほんとうに残酷な犯人で、同じ人間とは思えないですね。」などと、白痴かと思うようなコメントをすると 、皆が一斉に頷き、それを合図に場面が切り替わって、今度は終始笑顔の女の子が明日の天気予報を伝えたりする。
    そういうのを見るたびに、生きる気力が萎えるほど不快な気持ちになるので、テレビを見るのをやめた。

    けれど、この事件の前では私もそんな白痴的コメントしか浮かばない。
    少年犯罪史上最悪と言われているようだが、一人の人間に加えた罪の重さでいえば犯罪史上最悪といっていいくらいだと思う。
    なのに、そんな彼らに下された刑はたった10年前後。
    出所後、反省のそぶりも見せず別の拉致暴行事件を起こした者までいるのに、その2度目事件でさえたったの4年の刑だという。
    現行の少年法についてはすでに議論がされているとおり私自身も、まったくもって現実社会に即していないトンチンカンな法律だと思うけど、それ以上に、性犯罪に対して量刑が軽すぎることにも憤りを感じる。
    レイプはその人を殺したのと同じくらい、場合によってはそれ以上に罪深いことだと思うけれど、今回の件をはじめ、一般的にもほんの数年の刑であることが多く、場合によっては執行猶予だ。

    ただ…犯行に加担した少年たちの全員が全員、劣悪な家庭環境にあったこと等を考えると、不自由なく育てられた私などが断罪できる問題ではないのかな、とも思ったりしてしまう。
    その環境の救いの無さは、少年たちが少女を監禁/暴行し続けている間、彼らの家族や友人の多くはその事実を知っていたのに、誰一人彼女を助けようとしなかったという信じがたい事実からも推して知ることができる。
    (そういえば9年間少女を監禁した男の母親も、その事実を知りつつ何もしなかった。なぜ彼女らは同罪にならないのだろうか)

    ちなみに前述の本の中で、著者の一人である坂本龍一はずっと「自分が被害者の親なら相手が何歳でも絶対に殺す」と主張し続けていたのだが、天童荒太との対話やアフリカの旅を経て、最後の最後に「自分は本当はどうしたいのかいろいろ考えて、僕ももしかしたら殺さないかもしれないって今朝はじめて思えた…仕返しをしないという選択も、人間は考えることができると思った。自分のもっとも愛するものを殺されても、相手を殺さない。言葉で、それは"許す"ということだと言われたら、全然違うと言いたくなるけれど…最愛の人が殺された。仕返ししてやる -そうではない思考力が人間にはある」という結論にいたっている。

  • 実はずいぶん前に読んだ本・・・ 久々に読み直しました。 考えなきゃいかんことはたくさんある。 いやこの世の中、大事な事や物はついつい見落とされて、物事の本質が見えなくなっているのではないだろうか・・・ 面白い対談です。

  • 犯人。

  • 話したい・聴きたい・応えたい、お互いへの純粋な好奇心と尊敬に溢れる対話。天童氏の発言に感じられる信念の堅さと、影響されて自由に変化する坂本氏の思考の柔軟さ、ともに感動的。この本を読むことができてとてもうれしい。

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著者プロフィール

さかもと・りゅういち:1952年東京生まれ。3歳からピアノを、10歳から作曲を学ぶ。東京藝術大学大学院修士課程修了。78年にソロ・アルバム『千のナイフ』でデビュー。同年、細野晴臣、髙橋幸宏とともにYMOを結成し、シンセサイザーを駆使したポップ・ミュージックの世界を切り開いた。83年の散開後は、ソロ・ミュージシャンとして最新オリジナル・アルバムの『async』(2017)まで無数の作品を発表。自ら出演した大島渚監督の『戦場のメリークリスマス』(83)をはじめ、ベルトルッチ監督の『ラスト・エンペラー』(87)、『シェルタリング・スカイ』(90)、イニャリトゥ監督の『レヴェナント』(2015)など30本以上を手掛けた映画音楽は、アカデミー賞を受賞するなど高く評価されている。地球の環境と反核・平和活動にも深くコミットし、「more trees」や「Stop Rokkasyo」「No Nukes」などのプロジェクトを立ち上げた。「東北ユースオーケストラ」など音楽を通じた東北地方太平洋沖地震被災者支援活動もおこなっている。2006年に「音楽の共有地」を目指す音楽レーベル「commmons」を設立、08年にスコラ・シリーズをスタートさせている。2014年7月、中咽頭癌の罹患を発表したが翌年に復帰。以後は精力的な活動を続けた。2021年1月に直腸癌の罹患を発表し闘病中。自伝『音楽は自由にする』(新潮社、2009)など著書も多い。

「2021年 『vol.18 ピアノへの旅(コモンズ: スコラ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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