ハリガネムシ (文春文庫)

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著者 : 吉村萬壱
  • 文藝春秋 (2006年8月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679989

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ハリガネムシ (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • 2003年芥川賞受賞の表題作と、岬行の2篇。

    表題作「ハリガネムシ」は、小学校教諭の慎一が、風俗嬢のサチコと堕落していく物語。カマキリに寄生するハリガネムシを、人間の欲望や暴力性の暗喩として用い、欲望や暴力性に流されて社会から逸脱していく様を描いている。

    いくらきれいごとを言ったって、人間って、こんなものだよね。醜いよねと作者がサディステックに鏡を突きつけてきているような読後感。

    おっしゃるとおり、どんな人にも醜い面、嫌な面はあるし、どうしょうもなく醜い人間も沢山いますよねとしか言いようがない。

  • 痛い。とにかく痛い小説だ。それは、心の奥底ではこんなことがしたいと思っているよ、という吐露でもある。普通の人間として生きていくために、心にしまいこんだ欲望が誰にもあるはず。それを慎一は実行に移してみせる。堕ちていく自分を意識しながら、それを止められない。だから私はこの作品が好きなのだ。まさに、カタルシスのために存在している小説。
    一方、同時収録されている『岬行』は駄作である。なので、星5つは純粋に『ハリガネムシ』のみにつけた評価だ。まるでどこかの同人誌でも読んでいるような、素人くさい文章。退屈な作品だった。

  • 何だろうか。理解するにはあと10年くらいかかりそうだ。

  • 同僚に「くずしか出てこないですよ」と言われて借りた本。確かにびっくりするくらいダメな人達ばかりが出てくる。お金ないくせに無駄にすぐお金を使ったり、簡単に体を安売りしたり、人としてどうなの?本当にこんな人いるの?と思うけど、実際いるんだろうから怖い。一生関わりたくないし、働きたいと思った。
    そもそも、ハリガネムシの主人公の男は普通の高校教師だったはずなのに、風俗嬢との出会いからどんどん転落していって、どんどん凶暴になっていく。人間らしいといえばそうなのかもしれないけど、怖い。付き合う人って大事だなと思った。

  • 堕落した娼婦と高校教師とのモラルを逸した関係を描いた芥川賞作品は、読後に妙な心のざらつき感を残した。この男女はお互いを尊重し理解し人として成長して行くどころか寧ろ真逆で、慣れ合えば馴れ合う程、醜さや汚さを露呈する。潜在的に人間が持つ蠢く何かが出るのだ。タイトルの『ハリガネムシ』がそれを象徴している。因みにハリガネムシとはカマキリの体内に寄生する虫。登場キャラも気色の悪い奴らばかりで作品の世界観に非常にマッチした。残念なのは人が堕ちて行くならばもっと性や暴力等の衝動を分厚くして欲しかった。

  • 「ハリガネムシ」
    倫理というのはしょせん無力なもんである
    人々を倫理に従わせるのは、結局のところ暴力であり恐怖である
    高校で倫理を教える主人公のプライドには
    暴力の裏打ちがない
    無力なんだ
    しかしどんなモラリストだって
    理由さえあれば、自らに暴力を許しうるんだよね
    風俗で知り合ったタチの悪い、愚かな女とのつながりを捨てきれないのは
    つまり暴力をふるってもよい理由をそこに見出すからだろう
    青春の蹉跌と呼ぶにもはるかに及ばない
    しょうもない男の生きざまなんである

    「岬行」
    マッチョであるということと、暴力的であるということ
    混同されがちだが似て非なるその両者を
    通過儀礼的な体験の旅を経て、手にしたはいいものの
    心の自由もやはり失われてしまい
    それを取り戻すために、主人公はまたいつか
    ドロップアウトするのかもしれない

  • 芥川賞受賞のはりがねむしと、岬行の2作品。
    身のうちに潜む悪をカマキリに寄生するハリガネムシに例えた表題作。
    主人公の暴力性が解放されていく様がおぞましいけれど、これも人間かなとある意味納得。
    ノンストップで、息を詰めて読みきった感(息はしてたけど)がある。
    岬行はハリガネムシよりは楽しめた。

  • 「クチュクチュバーン」を先に読みたかったが、本屋にあったのは「ハリガネムシ」のほうだった。何の根拠もなく、「ハリガネムシ」もカフカっぽいSFなのかと勝手に誤解していたが、まったく予想外の展開。同じ主人公の並行宇宙的な「岬行」もまた、どう話の決着をつけるのか予測不可能な展開に緊張感を保ったまま、「ボラード病」と同様最後の最後の一行が心臓に悪い。クローネンバーグの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」を思わせるラスト・ショットが映画のような印象を残す。なんというか、傍観者だったはずが、いつのまにか自分が半殺しの目にあっていたかのような幻惑感。ちょっとこわいw

  • 「ハリガネムシ」★★★★

  • 凄まじいシンパシーを感じて、むしろ自分にびっくりした。

    暴力衝動の核を寄生虫と見做すのはわかりやすい。純文学のまっとうな手法だ。
    だが突き抜けているのは、自分の意志や理性を越えて制御できないものがあると見据える頭があること。
    さらにハリガネムシは宿主が死んでもにゅるっと生きている。ぞっとする。
    実際に暴力をするか否か、ではなく、眼の前にいるこの人間を切り刻んでみたいという衝動が、確かにある。

  • 2003年上半期芥川賞受賞作。表題のハリガネムシは、カマキリ等の体内に寄生する生物。この小説では「獅子身中の虫」といった意味合いだが、ハリガネムシの方が、より生々しくグロテスクなリアリティが感じられる。そして、それはこの小説世界のシンボルでもある。人間の、ことに弱者の立場にあって、本来は暴力からは縁遠いはずの主人公(高校の倫社の教師)に内在する暗い情動を執拗に暴き出していく。そして、同時に主人公の孤独はどこまでも深い。読後は実にやりきれない気分になる小説だ。もっとも、そこにこそこの作品の価値があるのだが。

  • 表題作『ハリガネムシ』は主人公の性癖が自分には合わなくて気分が悪かった。自分もSですが、ソフトSなんでドSっぽいのは引いてしまう。芥川賞受賞作なので読む人が読めば良い作品なんでしょうけど、自分的には『岬行』の方が好きでした。 両方の作品(特にハリガネムシ)を読んでると「忽ち」って表現が多かった気がする。

  • 「ハリガネムシ」
    これ単品だと☆3つかな。
    高校の教師である主人公が、風俗嬢に引きずられるように堕ちてゆき、自分の中にある残虐性に気づく、というようなお話。

    人間の肉体を切り刻みたい欲望を自らの内に飼っていた、と言うのでどんな展開になるかと思いましたが、例えば冒頭の、カマキリの頭を弾き飛ばしてしまうみたいな、そこまでの暴力性はないんですね。

    エログロ、痛い場面は充分にありますが、主人公が自らすすんで人を傷つけるほどの残虐性はなかったので、ちょっと拍子抜けでした。
    ハリガネムシはあくまでも寄生虫で、主人公本人のマトモさを凌駕することはできなかったということでしょうか。


    「岬行」
    こちらは☆1つ。
    風俗嬢に引きずられたとは言え自分の欲望に従って堕ちていった「ハリガネムシ」の主人公と違って、「岬行」の主人公はただ何となく流されてそこに行き着いた、といった感じですね。
    両親のような小市民でありたい。蹴る側と蹴られる側なら、蹴る側で居たい。という主張はよくわかりましたが、そこだけ。
    他は何が面白いのかよくわかりませんでした。

  • ホームに現れた、封筒持った母から逃げるように電車に乗る場面、掛かったラップの裏に水滴が付いてるヤキソバ、カンカンに入ったお金、それを盗っちゃう主人公、
    何かもう場面設定や小道具だけで唸ってしまうくらいだめな登場人物みてると、本当に腐る。
    上記の場面は表題作やなくて「岬行」ですが、町田康の「きれぎれ」とほぼ同時に読んだので、ヤキソバ食べる場面とか、印象がかなり被っちゃってます。だめなおっさんたち。
    表題作は芥川賞受賞作のようですが、わたしは「クチュクチュバーン」とか「バーストゾーン」のが好きです。

  • 私にはあまり合わない本でした
    人間の本性といいますか、誰にでも持っているどす黒い部分を表現している作品のような気がします。
    主人公が身近な教諭という設定だったことが、ちょっと…

  • 刺激的ではあるし、登場人物の感情とかわかるな〜という気持ちもあるのだが、いまいちリアルさに欠けてしまった。なんだろう?もっと酷い描写の小説を読んでもリアルなものはリアルな作品があるが、これはどこか造られた感じがしてしまうのは。。。

  • 耳の中に蚊が突っ込んできた。突然の狂ったような巨大な羽音に反射的に耳殻を叩き、ブルッと身震いすると全身に鳥肌が立った。

  • 芥川賞受賞作。臓物をぶちまけたような心の闇に対する描写。ある意味、現代的な作風。好きかな。ハッピーな気分にはなれないけど…。病んだ教師と風俗嬢のドロドロなドラマ?の中に人の汚さ強さ生命力を感じます。

  • クチュクチュバーンよりは面白いと思う。
    男教師とソープ嬢が出会って別れるまでの物語。

    もっと暴力三昧なのかと思ってたけどそれほどしつこい暴力表現は無かった。

  • 最初の方、読み易くって良かったのだけれど・・・。
    段々と気持ち悪くなってきて、やっぱり芥川賞って・・・て思った。

    作者が現役の教師っていうのが、ちょっと怖かった。

  • この本。。。きつかった!!
    こんな小説とは全く知らず読みました。。。
    こんなにもサディズム、マゾヒズムが交差して、複雑な人間関係、
    人間模様を描いた作品とはつゆしらず。。。。。
    しかし、読み始めてからは止まらなかった。
    この主人公はどうして教師という安定した生活にもかかわらず、
    堕落な道を選ぶのだろうか?理解出来なかったが、
    自分の本能に従った結果がそうなのか?
    読み進めていくうちに、目をそむけたくなるような酷い場面とか出てくる。
    それでもなお読んでしまう。これが文章がもつ力なのか。。。
    それとも自分の奥底にある分からない感情がそうさせてるのか。。
    酷い話、見たくない。でも見てしまう。最後はきっとハッピーエンドではない。
    それでも引き込まれてしまう本の力というものを感じる作品です。
    でもこれだけ引き込まれるのはやっぱりそれだけの何かがあるのでしょうか。。

    ホラー映画を見たような読後ですが、
    こういうのもたまに読んで、世の中、いや、小説の中にはこういうのもあるんだ。
    と、いうことを思い知らなければいけないのかもしれませんね。。
    しっかし。。。疲れた。。。。
    あ、作者の方には申し訳ないのですが、絶対お勧めはしません。。
    (す、すみません。。。)
    どんよりとすること間違いなしです。。。

  • 暗い。それもホラー的にではなく、人間の心理的な、暗い池の淵を覗き込んだ様な腹が冷えるような暗さで出来ている
    初めて読んだのは確か出版されてすぐ高校の時だったんですけど、1週間くらいなんとなく気分が重かったのを覚えています。
    さすが芥川賞、しかし私にはあまり合いませんでした・・・

  • 最近読み終わったけど内容を思い出せない…
    芥川賞だからなのか暗すぎ。

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ハリガネムシ (文春文庫)の作品紹介

サチコ、底辺を這いずる痩せた、小さな女。手首に無数のためらい傷を抱えて。その女を知って、高校教師の内のハリガネムシが動きだす。血を流し、堕ちた果てに…。身の内に潜む「悪」を描き切った驚愕・衝撃の芥川賞受賞作。人間存在の奥の奥を見据えて、おぞましくも深い感動を呼び起こす。単行本未収録「岬行」併録。

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