ハリガネムシ (文春文庫 よ 25-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167679989

感想・レビュー・書評

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  • 「クチュクチュバーン」を先に読みたかったが、本屋にあったのは「ハリガネムシ」のほうだった。何の根拠もなく、「ハリガネムシ」もカフカっぽいSFなのかと勝手に誤解していたが、まったく予想外の展開。同じ主人公の並行宇宙的な「岬行」もまた、どう話の決着をつけるのか予測不可能な展開に緊張感を保ったまま、「ボラード病」と同様最後の最後の一行が心臓に悪い。クローネンバーグの「ヒストリー・オブ・バイオレンス」を思わせるラスト・ショットが映画のような印象を残す。なんというか、傍観者だったはずが、いつのまにか自分が半殺しの目にあっていたかのような幻惑感。ちょっとこわいw

  • 「ハリガネムシ」★★★
    「岬行」★★★

  • 凄まじいシンパシーを感じて、むしろ自分にびっくりした。

    暴力衝動の核を寄生虫と見做すのはわかりやすい。純文学のまっとうな手法だ。
    だが突き抜けているのは、自分の意志や理性を越えて制御できないものがあると見据える頭があること。
    さらにハリガネムシは宿主が死んでもにゅるっと生きている。ぞっとする。
    実際に暴力をするか否か、ではなく、眼の前にいるこの人間を切り刻んでみたいという衝動が、確かにある。

  • 2003年上半期芥川賞受賞作。表題のハリガネムシは、カマキリ等の体内に寄生する生物。この小説では「獅子身中の虫」といった意味合いだが、ハリガネムシの方が、より生々しくグロテスクなリアリティが感じられる。そして、それはこの小説世界のシンボルでもある。人間の、ことに弱者の立場にあって、本来は暴力からは縁遠いはずの主人公(高校の倫社の教師)に内在する暗い情動を執拗に暴き出していく。そして、同時に主人公の孤独はどこまでも深い。読後は実にやりきれない気分になる小説だ。もっとも、そこにこそこの作品の価値があるのだが。

  • 表題作『ハリガネムシ』は主人公の性癖が自分には合わなくて気分が悪かった。自分もSですが、ソフトSなんでドSっぽいのは引いてしまう。芥川賞受賞作なので読む人が読めば良い作品なんでしょうけど、自分的には『岬行』の方が好きでした。 両方の作品(特にハリガネムシ)を読んでると「忽ち」って表現が多かった気がする。

  • ホームに現れた、封筒持った母から逃げるように電車に乗る場面、掛かったラップの裏に水滴が付いてるヤキソバ、カンカンに入ったお金、それを盗っちゃう主人公、
    何かもう場面設定や小道具だけで唸ってしまうくらいだめな登場人物みてると、本当に腐る。
    上記の場面は表題作やなくて「岬行」ですが、町田康の「きれぎれ」とほぼ同時に読んだので、ヤキソバ食べる場面とか、印象がかなり被っちゃってます。だめなおっさんたち。
    表題作は芥川賞受賞作のようですが、わたしは「クチュクチュバーン」とか「バーストゾーン」のが好きです。

  • 私にはあまり合わない本でした
    人間の本性といいますか、誰にでも持っているどす黒い部分を表現している作品のような気がします。
    主人公が身近な教諭という設定だったことが、ちょっと…

  • 刺激的ではあるし、登場人物の感情とかわかるな〜という気持ちもあるのだが、いまいちリアルさに欠けてしまった。なんだろう?もっと酷い描写の小説を読んでもリアルなものはリアルな作品があるが、これはどこか造られた感じがしてしまうのは。。。

  • 耳の中に蚊が突っ込んできた。突然の狂ったような巨大な羽音に反射的に耳殻を叩き、ブルッと身震いすると全身に鳥肌が立った。

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著者プロフィール

1961年愛媛県生まれ、大阪府育ち。1997年、「国営巨大浴場の午後」で京都大学新聞社新人文学賞受賞。2001年、『クチュクチュバーン』で文學界新人賞受賞。2003年、『ハリガネムシ』で芥川賞受賞。2016年、『臣女』で島清恋愛文学賞受賞。 最新作に『出来事』(鳥影社)。

「2020年 『ひび割れた日常』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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