空白の叫び 下 (文春文庫 ぬ 1-6)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 107
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  • Amazon.co.jp ・本 (455ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167682064

作品紹介・あらすじ

社会復帰後も失意の中にいた久藤は、友人水嶋の提案で、銀行強盗を計画し、神原と葛城にも協力を依頼する。三人は、神原の提案で少年院時代の知り合いである米山と黒沢にも協力を依頼する。三人の迷える魂の彷徨の果てにあるものとは?ミステリーで社会に一石を投じる著者の真骨頂と言える金字塔的傑作。

感想・レビュー・書評

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  • かなり前に読んで内容を忘れていたので再読。
    重い。重いなー。
    でも3人の少年の心の闇が同時進行で書かれていて、すごく引き込まれた。
    少年院のあたりは読んでいて辛くなるような描写も多かった。
    爽やかな終わり方をすることはないと思っていたけれど、予想通りじめっとした読後感。

  • 三人の少年がそれぞれに殺人を犯し
    その後どう生きていくか
    罪を犯すまで、少年院、卒院後、と三部に分かれて書かれている。
    まず、殺人に至るまでの理由や感情が
    とてもリアル。私は少年では無いので
    少年の感じかたは分からないのだけれど
    相手を「憎らしい!」と思える。
    とくに葛城君の相手には。

    少年院の段は、これでは更正は出来ないだろうな、と。本当にこんな感じなんだろうか?
    今は違うのかな?違うといいけど、という感じ。

    卒院後の三人の出会いはやはり悪い方に。
    貫井さんだからそうですよね

    ただ出生の偶然や久藤に対する嫌がらせを
    手伝う人物、その理由とか
    ちょっと無理を感じてしまい
    それらが無い方が卒院後の葛藤などを
    リアルに読めたかな?と。

  • むぅ...重い(- -;
    会社の行き帰りや昼休みに「気楽に読む」には、
    テーマも事件も描写も全てが重すぎる(- -;

    中巻までに丁寧に描かれた少年院帰りの三人の少年。
    様々な偶然が重なって、娑婆で再び集結する。
    いや、「集結」と言うほどの強い結びつきでもないか。
    とある一つの目的に向かってチームを組む。

    他の少年院仲間も巻き込みつつ、目的は達成。
    が、小説としてはその「目的」がテーマな訳ではなく、
    「その後」の人間模様も丁寧に描かれていく。
    それがまた容赦なく「救いの無い」展開で(^ ^;

    少年達を結びつける「設定」が覆されたり、
    事件の後のさらなる事件が呼び寄せられたり...
    むき出しの悪意を向けてくる相手と対峙し、
    しかもその悪意の根本が実はずれていたり...と、
    作者は「これでもか」と人の世の不運な巡り合わせを
    畳みかけてくる(^ ^;

    因果応報。
    それがこの小説の根底に流れる大きなテーマか。
    しかもその因果は、世代を超えて報いてくる。

    運がいいとか悪いとか、
    そういうことって確かにあるのだなぁ...(- -;

  • 3.0

  • 少年院を出た後の3人の生活と世間の厳しさが描かれた下巻。

    恐ろしいと思うのは3人が3人とも、自分の犯した罪について反省の念を持っていないこと。
    殺人は罪であることは分かっているけれど自分の犯したそれは、正当であったとすら考えていそうな部分に
    人間の恐ろしさを垣間見たような気持ちになりました。

    読後感が良い意味で、非常に悪い。
    自分の中にも瘴気があるような気分になります。

    贖罪とは。
    更正とは。
    非常に重く、難しいテーマです。

    それにしても・・・
    ストーリーが妙に謎解き風になっていたけれどそれは個人的に要らなかったと思います。
    テーマが変わってしまった?と残念に感じるほど。
    “慟哭”でもそうでしたが、どこかしら肩透かしをくらったような気分になるのは自分と貫井氏の相性の悪さなのでしょうか。

  • 少年院を出てから、誰かの手によってまた運命が動き出す。

    殺人を犯したら、やはり普通には生きていけない。

    そんな状況にならないよう、大人達はしっかり子供を見守らないといけない。

  • 生まれも育ちも全く異なる3人の少年が、それぞれの事情から突発的発作的に殺人を犯してしまいます。
    少年院で出会った3人は、卒院後に再び巡り会い、やはりそれぞれの事情から、共に手を組んである計画を実行に移すことになります。

    まず、上巻はまるまる全編にわたって、3人それぞれの視点で3人が殺人を犯すまでの経緯と心情が、丹念に丹念に描かれます。そのせいか、うち2人については、その凶行に「同情」や「共感」すら覚えるほどでした。
    実際の犯罪では、犯人の心理がここまで詳らかにされることはないですしね。
    同情も共感も湧かなかった1人については、その被害者となった女性の視点で語られるパートが出てくるのですが、むしろその女性の心の動きと考え方、そこから生まれる彼女の言動に衝撃を持つと同時にとても興味をそそられました(すでに本作を読まれた方にとって、この言い方は冷酷で不謹慎と思われそうです)。結果的にその言動こそが、彼女の命が奪われる原因となってしまうのですが。

    中巻の前半では、3人の少年院での生活が描かれます。この様子がどれほどリアルなものなのか僕には判断がつきませんが、もしこれがリアルだとすると「更生」なんて望むべくもない絵空事やなと思えました。それほど理不尽で心が荒む環境でした。

    中巻の後半から下巻にかけて、卒院後の生活、そしてある計画を実行する3人の様子が描かれます。
    ここでは、先に同情も共感もできないと述べた1人の少年に対しての様々な「嫌がらせ(という言葉では生ぬるいくらいの中傷)」と、それにより、更生して真っ当な生活を送ろうとする本人の意思意欲にかかわらず、それを断念せざるを得ない姿が印象的で胸が痛みました。ここで、初めて彼に同情と共感を覚えました。
    片や、ここまで最も共感できていた別の少年の言動の大きな変化に、吐き気を催すほどの嫌悪感と憤りを感じました。
    全て読み終えてみて、それ以上の嫌悪感と憤りを感じたのは、先にも言及した女性被害者の父親と、少年院のある教官でした。
    むかし、阿部寛さん主演で「最後の弁護人」ってドラマがあったんですけど、その最終回での主人公の姿がふと浮かび、それと対比するとあまりにも無様だなと思いました。

    とりとめのないレビューですが、とにかく読んでいる間中、目まぐるしく感情(特に憤りと怒りかなぁ)が揺さぶられました。
    安易に「面白い」とは口に出せない、とてつもないものを突きつけられた気がしています。

  • 昔読んだ本

  • 2014/1/31銀行襲撃シーンなど緊迫感あり。★4

  • 2年ぐらい前に読んだのですが…
    久藤はブサイクという設定だったと記憶していますが、最終的に脳内では結構な男前に仕上がってしまった(笑)
    ラストには思わず涙してしまった。
    下巻はなかなかにファンタジーでしたが、それぞれの関係性が丁寧で面白かったです。

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著者プロフィール

1968年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。93年、第4回鮎川哲也賞の最終候補となった『慟哭』でデビュー。2010年『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞受賞、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞受賞。「症候群」シリーズ、『プリズム』『愚行録』『微笑む人』『宿命と真実の炎』『罪と祈り』『悪の芽』『邯鄲の島遥かなり(上)(中)(下)』『紙の梟 ハーシュソサエティ』『追憶のかけら 現代語版』など多数の著書がある。

「2022年 『罪と祈り』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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