夕暮れをすぎて (文春文庫 キ 2-34)

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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167705787

感想・レビュー・書評

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  • 著者初読み。
    短編と中編が収録されている。
    ジンジャーブレッドガールというサイコホラー系の話が1番面白かった。読むにあたり、サスペンスとミステリーの違いについて、ミステリーは犯人が誰か、なぜそんなことをしたかということに重点を置き、サスペンスは犯人がどのように相手を追い詰めていくか、もしくは主人公がどのように犯人に追い詰められていくかという「様」を描くものだとどこかで読んだことが、はっきりわかる作品だった。そういう意味では普段ミステリーばっかり読んでいる自分にとって初サスペンス小説となった。

  • 4本がホラー系、3本がサイコ系の短編(〜中編)集。作品ごとに翻訳者も異なり、その雰囲気の違いも味わえる。

    ウィラ
     遅延した列車を待つ中、駅舎から一人荒野にさまよい出た婚約者ウィルを捜しに出たディヴィッド。そこで彼はある事実に気がつく。

    ジンジャーブレッド・ガール
     突然の病気で子供を亡くしたエミリーは、常軌を逸したジョギングにはまり夫との関係も怪しくなる。間を置くために父親の別荘に出かけた彼女は、一軒の別荘で一台の車を見る。

    ハーヴィーの夢
     ジャネットとは長年連れ添うハーヴィーから悪夢を見た話を聞く。最初はあまり気にとめなかったジャネットだが、やがて夢の現実に気がつく。

    パーキングエリア
     ハードボイルド作家のジョン・ダイクストラは、尿意に耐えかねてパーキングエリアに車を寄せる。トイレに向かった彼だったがそこで男性の怒号を効く。DVだと察した彼は、自分の小説の主人公のようにはいかないと逡巡する。

    エアロバイク
     医師にダイエットを勧められたリチャードは、自宅アパートの地下にエアロバイクを持ち込む。最初は嫌々こいでいた彼だが、壁に景色を描くことによってエアロバイクにのめり込むようになる。健康になるにつれ、絵の世界と現実が交差するようになる。

    彼らが残したもの
     損害査定人だった私の元に、ある日からいろいろなものが現れるようになる。やがて、ゴミ捨て場に捨てても自宅に帰るとすでにうちの中に戻っているそれらの品々から、声が聞こえるようになる。

    卒業の午後
     高校を卒業した日、ジャニスはボーイフレンドのバディの屋敷で卒業パーティをしていた。将来を夢見る彼女はその庭からニューヨークを眺めていた。

  • スティーヴン・キングは「悪夢のような話」が本当にうまい。
    日常生活に、カチッと悪夢スイッチが入る瞬間。
    あるいは、気づいたら悪夢に浸食されていることに気づく瞬間。
    現実(リアル)の生活や登場人物自身のリアリティがあってこそ生きる、その怖さ。
    でも、ただ怖いだけじゃないところがこの人の小説の面白さです。

    列車の脱線事故で田舍の駅に取り残された乗客たち。デイヴィットは婚約者のウィラを探しに町へ向かう――「ウィラ」

    子どもを亡くしたエミリーはランニングに没頭するようになる。夫と離れて訪れたオフシーズンのリゾート地でも走り続ける。そこでふと目撃したのは――「ジンジャーブレッド・ガール」

    老年にさしかかった夫婦。ある朝ジャネットは夫の口から昨夜見た夢の話を聞かされる――「ハーヴィーの夢」

    小説家であり英語の講師をしているダイクストラは、ある晩トイレに行こうと立ち寄ったパーキングエリアで切迫した事態に遭遇する――「パーキングエリア」

    肥満気味の商業イラストレーター、シフキッツは、医者からの忠告を受け、エアロバイクでの運動を始めた。ダイエットは順調に進んだのだが――「エアロバイク」

    NYのアパートメントで暮らすスコットの家に、見覚えのある物たちが突如出現する――「彼らが残したもの」

    NY近郊のハイスクールを卒業した日、ジャニスはボーイフレンドのバディの家にいた。そこで目にしたものは――「卒業の午後」

    中編短編織り交ぜての7編。9.11の同時多発テロにまつわる話も。
    キングの巧さといろいろな怖さ、面白さが楽しめるので、長編に手が出ないでいる人におすすめかもしれない。
    個人的には、「ジンジャーブレッド・ガール」の怖さと面白さが、群を抜くと思うのです。これぞキング!だと。

  • スティーブン・キングの久々の短編集。それぞれ、いい。キングらしい短編が続く。「ジンジャーブレッド・ガール」は、まさに王道。そして、この本に納められている全ての短編の中で、「彼らが残したもの」が何よりも、印象深く、よかった。本当に、久々に本読んで泣くかと思った。解説によると、大きな短編集の前半部分がこの本とのことなので、後半部分も楽しみ。

  • 外国人作家の書く短編は意味が良く分からんものが多いな。さすがのキングもご多分にはモレず(訳者の問題である点もなきにしもあらずだけども)。
    よって、ほぼ文字を追いかけるに終わった印象。
    「ジンジャーブレッド・ガール」の逃避行劇はマズマズ。

  •  キングの短編集「Just After Sunset」を2分冊にしたものの前半。相変わらず冗舌な序文によれば一時短編が書けなくなったとあるが、とうてい信じがたい。「ジンジャーブレッド・ガール」はローズ・マダーを思わせるストーリーで、より切れ味の鋭い中編に仕上がっているし、「彼らが残したもの」のやるせなさは911を直接経験していない異国人にもストンと伝わってくる。他もそれぞれにうまい。単一の翻訳ではなく5人の名だたる訳者による競訳となっている。いずれもうまい。

  • スティーヴン・キングは、映画では観てるけど、よく考えたら小説を読んだことがないなと思って読んでみた。

  •  短中編が収められた本書は、面白い作品と難解な作品の起伏が大きすぎる。途中で断念した難解な作品もある。巻末の2作がそうだ。巻頭に置いたら売れないよね。
     忘れた頃にキングの文章を味わってみたくなるときがある。今度そうなったときに再挑戦してみよう。

     ○ウィラ 旅の途中、駅からいなくなった婚約者。こんな経験あったなあと思っていたら・・そうだった。キングはホラー作家だったんだね 鳥肌が立った。
     ○ジンジャーブレッド・ガール 殺人鬼に捕らえられ、脱出が成功するまでの描写が長過ぎてウンザリ。途中で飛ばし読みした。
     ○ハーヴィーの夢 難しい。泉のように湧き出るどうでもいい脱線の中から話の筋を見つけ出さなければならない。辛抱強く読み通した。結局、オチは何だったのか?
     ○パーキングエリア この短編によく出てくる脱線が的を得て退屈させない。人物造形に優れているというやつか。最後まで読んだら、なあんだというオチなのだが面白かった。
     ○エアロバイク 最も難しい。健康診断に端を発した健康器具乗り。登場人物が絵の中の架空の人物。幻想なのか現実なのか。映画化したものを見たら面白いだろう。
     ○彼らが残したもの 話の本題からやたら脳内脱線する。書き直ししたら、本題は同じでも異なる脱線を読ませられそうだ。新人の応募作なら途中で次の応募作にスキップされるだろう。途中で読むのを中断。
     ○卒業の午後 これも途中でウンザリして読むのを止めた。読者を引き込むどころか、序盤から脈略なき脳内脱線についていけない。

  • やっぱ、面白いなぁ。

  • 2009年9月刊。原題『Just After Sunset』2008年作品の2分冊の1冊め。2冊めは、2010年1月刊の「夜がはじまるとき」。2003年〜2007年に発表された7篇の短編を収録。いずれも、雰囲気重視のちょっとしたアイデアのお話で、長編とは違い、印象が薄いです。それでも読み終えた後、幾つかのインパクトのあるシーンが、頭の中で、よみがえりました。キングだなぁー。もう一冊も読もう。

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著者プロフィール

1947年メイン州生まれ。高校教師、ボイラーマンといった仕事のかたわら、執筆を続ける。74年に「キャリー」でデビューし、好評を博した。その後、『呪われた町』『デッド・ゾーン』など、次々とベストセラーを叩き出し、「モダン・ホラーの帝王」と呼ばれる。代表作に『シャイニング』『IT』『グリーン・マイル』など。「ダーク・タワー」シリーズは、これまでのキング作品の登場人物が縦断して出てきたりと、著者の集大成といえる大作である。全米図書賞特別功労賞、O・ヘンリ賞、世界幻想文学大賞、ブラム・ストーカー賞など受賞多数。

「2017年 『ダークタワー VII 暗黒の塔 下 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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