プラナリア (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167708016

感想・レビュー・書評

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  • 性格がこじれた人や、無職を漂ってる人や子育てに迷ってる人、浮気性の人が出てくる。どこにでもいる人たちだ、しょうもない人たちだと呆れもするが、人間ってそんな思いになるときがあるんだと、自分の考えてることが全てじゃないんだと思い知らされる。山本文緒さんは人の心情の深奥をさらりと書いてくるのだ。そこが醍醐味で魅力だ。
    個人的には、「あいあるあした」が好きだ。マジオ、すみ江をはじめとした「異常な奴ら」の軽妙なやり取りが面白い。娘とのくだりはじーんときてしまう。
    特別なことは起きないし、どちらかというとしようもないことばかりのしようもない人たちだから、同じ自分を見つけて共感できた。心からの感動もあった。

  • 好きな小説です。
    この本を読んだとき、私が中学生でいろいろ悩み病んでた頃だったからこそ響いたのかな。
    私はまだ人生経験が少ないし、「無職」というキーワードは縁のないものですが、虚しい感じというか、何というのか、心が空っぽになってしまう気持ちにはすごく共感しました。

    プラナリアを含めたこの主人公のほとんどは「ゴール」というものを見つけずに終わります。見つけられそう、、、というところでズドーンと落ちて終わります。それでいて余韻が居心地の悪くないものっていうのが山本さんの凄さなんでしょうねぇ。まさにプラナリア、そのものだったなぁと。

    山本さんがお亡くなりになって改めて思い直しました。心からご冥福をお祈りします。



  • 直木賞受賞作品
    短編5作
    1~4で女性が主人公
    5で男性が主人公だがあの女性がもしかして主人公?
    いずれの作品もいろんな人生を楽しめました

  • 著者山本文緒さんが亡くなって、初めて知った本でした。短編集です。寂しさや、ねじくれた愛情を表現しているお話から構成されていて、自分以外の人間の感情を読み解くのが苦手な私が今読めて良かったなぁ思いました。図書館で予約待ちで借りました。

  • いろいろなことを受け入れていくには時間がかかっる

    その時間も人それぞれでどんなことになっても受け入れられない人もいるし、受け入れるために最大限の努力をする人もいるし…

    プラナリアになりたい主人公は周りが受け入れてくれているなかで自分だけが受け入れられない自分を持て余している

    周囲の支えを自分の力にできる人でありたいなと思った

  • ずっと読みたかった1冊。短編なので気軽に読めるが、きっと何度か読み返せば良さを理解出来ると期待して。


    説明
    受賞歴
    第124回(平成12年度下半期) 直木賞受賞

    内容紹介
    乳がんの手術以来、何もかも面倒くさい25歳の春香。出口を求めてさまよう「無職」の女たちを描いた直木賞受賞作、待望の文庫化

    内容(「BOOK」データベースより)
    どうして私はこんなにひねくれているんだろう―。乳がんの手術以来、何もかも面倒くさく「社会復帰」に興味が持てない25歳の春香。恋人の神経を逆撫でし、親に八つ当たりをし、バイトを無断欠勤する自分に疲れ果てるが、出口は見えない。現代の“無職”をめぐる心模様を描いて共感を呼んだベストセラー短編集。直木賞受賞作品。

  • 1年半ぶりに再読。性別、年齢、属性等すべて異なる「働かない」人々の短編。こうありたいと、こうである自分との大きな差。不本意でも受け入れて人は生きるしかない。でも諦めた道は本当に自分が望んでいることだったのか。過去と現在、理想と現実のアンビバレントな葛藤を行きつ戻りつする心の機微、そして底に横たわる抗えない孤独感。山本作品はやっぱりいい。深夜のパート、早朝のお弁当、実母と舅双方の介護、儘ならない大学生と高校生の息子娘。そして鈍感な夫。尽くすほどに寂しさが募る女性の『どこかではないここ』が印象的。

  • いつかの
    自分の感情が
    作中そこらに溢れてて
    それも人だと
    寄り添ってくれる

  • 山本文緒さんの作品は大好きなのでこれもすぐ読み終えた。ちなみに恋愛中毒と自転しながら公転するが個人的ベスト。

    プラナリアはファーストプライオリティをもっと膨らませた感じ?なんというか地続きな日常の一部を描写していて、一番綺麗で幸せな時を過ぎた女性のいまがリアルに描かれている。

    まだ自分が読むには早過ぎたのかそこまで感情移入はできなかったのが残念。

  • この雰囲気が好き。なんて言ったらいいか分かんないけど、「あっさりしてるけど好き」みたいな男女関係を書くのが山本文緒さんは本当に上手い。

    p52
    少しくらい違和感があってもこの人はいい人で、私の憧れの人であることは変わらない。まったく違和感を感じない他人などこの世に存在するわけがないのだからと、私は一人になった夜道を歩きながら自分に言い聞かせた。

    p74
    私は勝ちたかった。ただやみくもに勝ちたかったでもそれは何にだっただろう。負けず嫌いだったかつての私は、今は疲れて眠っているだけなのか、それとも最初から無理をしていただけで、この怠情な自分が本来の自分なのか、それすらも考えるのが面倒だった。

    p95
    一本目を一気飲みしてしまうと、二本目を開けて続けてロをつけた。私はみぞれをしゃくしゃくスプーンでつつきながら、こいつアルコール依存気味なのかなと思った。

    p153
    「少しドライブしようよ」こちらを見ずに浜崎は言う。展開があまりにも思った通りなので、私は恐いと思うのと同時に落胆もしていた。くだらない。この男は出来の悪いドラマの見すぎなのだ。

    p187
    「損の種をまいているのは、往々にして自分なんじゃないかな」

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著者プロフィール

1987年に『プレミアム・プールの日々』で少女小説家としてデビュー。1992年「パイナップルの彼方」を皮切りに一般の小説へと方向性をシフト。1999年『恋愛中毒』で第20回吉川英治文学新人賞受賞。2001年『プラナリア』で第24回直木賞を受賞。

「2023年 『私たちの金曜日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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