タペストリーホワイト (文春文庫 お 39-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167715021

感想・レビュー・書評

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  • 大崎さんの作品は優しさや透明感が特徴かと思います。ただこの作品は私にはピンとこなかった。

    憧れの聡明な姉の影響に引きずられすぎて真の自由や解放が自分にとってどういうことか納得するまでに遠回りをしてしまった。
    こんな辛い経験をする必要があったのかと思ってしまいました。

    学生運動の時代の空気感が分からないので理解するのが難しいのです。学生運動、ましてや内ゲバに一体どれほどの意味があったのか、もし意味と価値のある行動であったのならば今も継続していてもおかしくないのになぜ打ち上げ花火のように消えていったのか。

    そのようなことに振り回された主人公が気の毒にしか見えないのです。

  • 学生運動の名残に翻弄される女の子の話。

    こういう時代だったのかなと言ってしまえばそれまでだけど
    そんな時代だからこその思いがあったのだろうか。
    結局は未知の世界なんだけど。

    Will you love me tomorrow?
    に 心が締めつけられる。

  • 知己の二人を内ゲバ出なくした高島洋子。私が読んだ始めての大崎善生フィクション小説。札幌での幸せな時期も時の経過と共に、形を変えずにはいられなかった。東京という理不尽な秩序が支配する土地で姉と恋人を無くした洋子。時代の空気に飲まれながら懸命に生きる彼女の生の記録。

  • 本当の優しさを手に入れるために苦悩は続いた・・・
    時代に流されず、優しさのために怯えながらも、強さを勝ち取った・・・
    読後、何ともいえぬ爽快感とやるせなさが同居した思いになりました。

  • 押さえきれない彼らの力。
    それは果たして正しい方向に放たれたのでしょうか?

    若さゆえ・・・とそんなコトバで片付けられない青春小説。
    でも確かに彼らはそこで生きていた。

  • 闘争の時代は知らないけど、いろいろと考えさせられる。

  • 再読。学生運動の残滓が断末魔をあげていた1970年代後半。姉と恋人を、内ゲバの果ての誤爆で、頭蓋骨をくだかれ殺されてしまった主人公陽子。高校でも大学でも、前の世代が、自由、解放、革命をうたって暴れまわったあとの、荒廃した光景、息苦しさを感じ。姉の事件の痕跡を求め、もがき、同志を得て、失い、そこから立ち上がり、回復し、仕事を持ち、家庭を持ち、ある時知らされた姉が愛した人のその後と、その死と。全編をつらぬくキャロル・キングの唄には魅了され、アルバム「Tapestry」聴き込んだ遠い記憶。タペストリー、つづれ織り、誰かの人生の縦糸と誰かの人生の横糸が絡み合い。姉のしてきたことも言葉も考えも、薄れていくにしろ、自分に、娘に、どこかに、痕跡を残しているのであり、決して無駄ではなく、ひとつひとつ積み重なっていき、というのを描きたかったのかな、と思った。

  • 信念を持つことは大事だけど、注意すべきは便乗してくるお祭り連中。
    学生運動おそろしや!
    直喩がちょいちょいすてきでした。

    「ベルマークを集めるように幸せな恋を」

  • 学生運動真っ盛りの世代よりほんの少し後に生まれ、その残骸に人生を翻弄される女性の物語。
    途中までの悲惨な様子から、いったいどのように落とすのか想像できなかったのですが、予想外の穏やかな結末で安心しました。
    大崎氏の作品としては熱帯魚のシリーズの方が好きかな。

  • このときのことを書けるのがあの世代の特権で、それを読めるのがわたしたちの特権。
    女性、川、ドメスティック、しあわせな結末。今まで他に読んだ作品とは違う大崎さん。洋子はひとつの型だ。

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著者プロフィール

1957年、札幌市生まれ。大学卒業後、日本将棋連盟に入り、「将棋世界」編集長などを務める。2000年、『聖の青春』で新潮学芸賞、翌年、『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞を受賞。さらには、初めての小説作品となる『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞。

「2019年 『いつかの夏 名古屋闇サイト殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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