天使はモップを持って (文春文庫 こ 34-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167716011

作品紹介・あらすじ

深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに8つの事件をひきおこす。社会人一年生の大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだが-「歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」という掃除の天才、そして、とても掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子・キリコが鋭い洞察力で真相をぴたりと当てる。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは今日ゴミを捨てましたか?何を捨てたかを覚えていますか?

    さて、簡単そうでとても難しい問題です。”今日”を”昨日”と変えたなら、果たしてスラスラと答えることができる人はいるのでしょうか?私たちが生きていく中では、日々夥しいゴミを出さざるを得ません。ゴミの回収日にパンパンに膨らんだゴミ袋を頑張って閉じて、と繰り返す朝を思い浮かべる方も多いでしょう。この国では、ポイ捨ても減り、外国に比べて街も随分綺麗だと思います。でも、それはそれぞれの人が街を綺麗にしようという思いの結果なのでしょうか?未だ人里離れた山奥に粗大ゴミを不法投棄する例は後を絶たないとも聞きます。結局、”誰かに見られている”、その目が怖いが故に街は一見綺麗に守られている、もしかするとそれが現実なのかもしれません。一方で人の目に見られないゴミには、ルールに反したものを詰め込まれる例も多いようです。『掃除をしていると、見たくないものまで見えてきてしまう』というその現実。『ゴミの中からも、その人のプライベートが透けて見える』という私たちが出したゴミ。それは、『まだ、ゴミになっていないものには気を払っても、ゴミ箱に捨ててしまえば、もうその先は消えてしまったも同然だと思っている人が多い』という現実の行き着く先にあるものです。『ゴミ箱の中身は、無防備にその人をさらけ出す』と、思わず自分の出したゴミを再確認したくなるその言葉。さらには『心がすさんでくると、部屋やトイレは汚れてくるし、汚し方から、その人の精神状態が透けて見えることもある』という言葉には、思わずごくりと唾を飲み込まれる方もいるかもしれません。

    この作品は、他人が出したゴミを整理し、オフィスを、トイレを日々綺麗にし続けるビルの清掃作業員が主人公となる物語。『掃除』をするその先に、人の色んな生き様が浮かび上がってくるのを見る物語です。

    『ぴっかぴかなのは、小学一年生だけではない。可愛らしさの点では劣るが、社会人一年生だって、それなりにぴっかぴかだ』と新卒入社し『社内のオペレータールーム』に配属されたのは主人公の梶本大介。『まあ、梶本くん、のんびりやりなさい』と言うのが口癖の宮下課長、『仕事もできるし、おまけに親切だ』という富永先輩、そして『いつも三人で行動している』という三人の女性で全てというその部署で『ぼくの社会人生活ははじま』りました。そんな大介は『入社してから半月ぐらいが経った頃』に『奇妙な女の子と出会』います。『ぼくはいつもより一時間早く、会社に出た』というある日、『ロビーの横を通り過ぎたときに、ぼくは強烈な違和感に襲われた』というその運命の出会い。『業務用掃除機の強いモーター音が』し、『真ん中の大きな柱の陰から、ワゴンのような巨大な掃除機が現れた』というその光景。『押しているのは掃除のおばちゃんだろう』と思った大介の目に『半端な若さではない。十七、十八歳くらいだろうか。赤茶色にブリーチをした髪を高い位置できゅっとポニーテールにし、耳には三つも四つもピアスをぶら下げている』という女の子の姿が映りました。『まじまじと見つめる』大介に『おじさん、なあに。なにか用?』と声をかける女の子。『いや、なんでもないです』と逃げるように離れた大介は、『彼女はどうやら社内の名物』で『「キリコ」という名前』、『夕方以降に現れ、朝までひとりでこのビルの清掃を全部やっている』ことを知りました。そんなある日のこと、『机を整理していて気がついた。今日の午後に届けるはずの書類ができていない』と慌てる大介。『昨日中にあげて、大ちゃんの机の上に置いた』と同僚の二宮に言われるも見つけられない大介。『誰もが自分の机や、他の場所を探しはじめた』という大騒ぎ。結局、富永先輩が夜の八時半までかかって仕上げてくれたその書類。そして誰もいなくなった部屋に『失礼します!』と元気のいい声がして、キリコが清掃に入ってきました。ふと気がつくと大介の真後ろに立っていたキリコ。『あの、なにか…』と訊くも『ううん、別に』と、掃除機をかけ始めたキリコ。『だが、事件は一度では終わらなかった』とそれから五日後『またぼくの机の上から、書類袋が消えた』という展開。『とりあえず、少しおちつこう』と部屋を出て非常階段に座り込む大介。そんなところへ『これ、おじさんの?』とキリコが現れました。『まさになくなった書類と、フロッピー』を目にし『どどどど、どこでこれを!』と興奮する大介。しかし返そうとしないキリコは『今、返してもいいけど、そうすると、また書類がなくなることになるよ。それって、もっと困るんじゃない』と言います。そして『ぼくの耳元に唇を寄せて、ごにょごにょ』とあることを囁くキリコ。そんなキリコの囁きに従って向かった先で書類紛失事件のまさかの真相が明らかになっていきます…という最初の短編〈オペレータールームの怪〉。大介とキリコという主人公の位置付けを物語の中で巧みに描きながら”書類連続紛失事件”を鮮やかに解決していく、とても上手く構成された好編でした。

    八つの短編それぞれで主人公の梶本大介とキリコが大活躍する様を描いていく連作短編の形式をとるこの作品。新入社員として入社したばかりの梶本大介視点で会社組織の中の様子が描かれていきます。そんな大介が勤める会社は『まあ、梶本くん、のんびりやりなさい』という宮下課長の口癖から感じられるように、どこか現代とは時間の流れが違うように感じる描写の数々。『袋に入っていたのは、まさになくなった書類と、フロッピー』、『セクハラも仕事の潤滑油くらいにしか考えていない』、そして『「今日の星占い」を書いた自作のペーパーを配ってくる』生命保険の営業のおばさん等々、えっ?何?という表現に溢れています。それもそのはず、この作品が刊行されたのは2002年と今から20年も前の時代のこと。オフィスの当たり前の日常を描いた作品だからこそ見えてくるその時代感は、なんとも異物感を感じざるを得ません。そのことを古臭いと指摘される方もいらっしゃるのもわかります。しかし、これは20年前のオフィスの様子を垣間見れる貴重な作品と思って読めば、そこには全く違う世界が見えてきます。古臭いと切り捨てるのではなく、近藤さんの代表作の一つとして、読み方を変えて楽しむ、そんな読書があってもいい、まずはそんな風に思いました。

    そして、そんな大介の会社の中に清掃作業員として登場するのがキリコこと、峰川桐子でした。このキリコの設定についても先程提示した考え方同様に、あくまで20年前の作品であることをわかった上で読まないとミスリードになりかねない表現が頻出します。『ビル掃除のおばちゃんと言うには若すぎる十代後半』、『白いかっぽう着など着た掃除のおばちゃんを想像してもらっては困る』といった表現で紹介されるキリコ。このあたりは『差別的表現と受け取られかねない表現が…』と作品冒頭に注意書きがあるこの作品の時代感を感じる部分、この20年、たった20年で世の中がいかに変化したかを感じる部分でもあります。しかし、時代が変わっても、どんなオフィスであっても清掃が入らないオフィスはありません。そして、勤めていらっしゃる会社によって、その清掃に携わられる人のイメージも変わると思います。掃除をする人を『おばちゃん』と一括りにするのが時代を感じる一方で、キリコの清掃の際のスタイルは、そんな時代感をも超越していきます。『トンボの羽根みたいに薄い素材のワンピースを着ている。短いスカートから形のいい膝小僧をのぞかせて、勢いよくモップを動かしている』、『栗色のベロアのカットソーは胸元が大きく開いていて目のやり場に困る』、そして『きてれつなサンバイザーをかぶって、ショートパンツから長い脚を覗かせている。日焼けした肌と、くるくるとよく動く丸い目、ほうきとちりとりさえ持っていなかったら、ハワイやどこかのマリンリゾートが似合いそうな格好だ』といういでたちのキリコ。これが例え現代であってもあまりにかっ飛びすぎているキリコという強烈な存在。そんな清掃作業員のキリコは、一見軽いと感じるその印象からは別物の鋭い感覚を発揮して、数々のプチミステリーを解決していきます。

    そんな主人公である大介とキリコが直面していく事件は見かけのどこか軽い雰囲気から一変して非常にディープで重いものです。”セクハラ”、”不倫”、”マルチ商法”、”摂食障害”、”夫の母親の介護”など重厚とも言える問題が短編ごとに主人公たちの前に『事件は次の日に起こった』と、唐突に巻き起こっていきます。そして、それを鮮やかに解決していく探偵のようなキリコと、時に助手のように、時にただの立会人のように登場する大介という役割を演じながら物語は進んでいきます。取り上げられる内容が如何に重くとも、大介とキリコの軽い設定もあって極めてライトにテンポ良く進んでいくその物語は、読後感もサッパリ、アッサリ、そしてスッキリといった印象で、気軽に手に取るにはもってこいというそんな作品でもあります。この辺りは、同じくプチミステリーとも言える近藤さんの「タルト・タタンの夢」と同じような印象だと思いました。

    ビルの清掃作業員を主人公にするという、他に例を見ないこの作品。その理由を『ビル清掃の仕事をしていたことがある。小説家になったはいいけど、まだそれだけでは生活できなかった時期のことだ』と語る近藤史恵さん。まさに実体験を元に書かれたこの作品にはそんな『清掃』という普段あまり光の当たらない仕事に光が当たります。そしてその仕事の何たるかを童話を題材にこんな風に例える記述が登場しました。『掃除ばかりやらされていたシンデレラは、王子様のお眼鏡にかない、お城で着飾って暮らすことになった』という誰でも知っているシンデレラの物語。そんな物語に『けれども、シンデレラがやっていた仕事が泡のように消滅したわけではない』と指摘する近藤さん。『シンデレラがいなくても、日々を暮らせば家は汚れる。シンデレラの住むお城だってそうだ。お伽噺は、都合の悪いところはすべて見ない振りをしている』とまさかのシンデレラの物語に切り込むこの一文。シンデレラの物語はもちろん知っていますが、シンデレラの後任としてその仕事を引き継いだ人が確かにいるはず、というその指摘。普段私たちは華やかな舞台ばかり見て、その舞台を作り上げる仕事に目が行くことはありません。しかし、そんな裏で支えている無数の人たちの存在があってこそ、その舞台はいつまでも美しく輝き続けることができます。しかし、そんな仕事も、人によってその輝きは変わってきます。『キリコがいなくなって、会社は灰色になった』とキリコが仕事を休み出して、他の清掃員に交代したことで、如何にキリコが心を込めて隅々まで清掃を行っていたかがわかります。それを描いた〈ロッカールームのひよこ〉という短編では、いなくなって初めて気づくキリコという存在の大切さに気づいていく面々の姿が描かれていきます。これはもうなんでもそうでしょう。仕事というものは、どんな仕事であっても、人が全てです。どんな仕事であっても、最後は人という部分がそう簡単に変わることはありません。こな短編で、それまでに見えていたキリコの印象が大きく変わるのを感じるとともに、キリコのファンになっていく自分を感じました。

    『でもね、掃除をやっていれば見えるものもあるのよ。だれも掃除をしている人なんて存在しないと思っているからね』と語るキリコが、そんな仕事の中にヒントを見つけて数々のミステリーを解決していくこの作品。それは、『掃除の天才で、キリコちゃんが歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない』と、常に真摯な姿勢で心を込めて掃除に向き合っていくキリコだからこそ、そこにヒントを見つけることができるのだと思いました。

    気軽に、サッパリとした読後感が楽しめるこの作品。続編も引き続き読んでいきたい、そう感じた作品でした。

    • しずくさん
      近藤さんのレビューなので思いきり読み始めましたが、あまりに面白そうなので途中でぐっと堪えて止めました。読んだ後で、あらためて読ませて貰います...
      近藤さんのレビューなので思いきり読み始めましたが、あまりに面白そうなので途中でぐっと堪えて止めました。読んだ後で、あらためて読ませて貰いますね!
      2021/05/30
    • さてさてさん
      しずくさん、コメントありがとうございます。
      少し時代は感じますが、過去のオフィスの風景を振り返ることのできる機会と捉えると、とても面白い作品...
      しずくさん、コメントありがとうございます。
      少し時代は感じますが、過去のオフィスの風景を振り返ることのできる機会と捉えると、とても面白い作品だと思います。続編もあるようですし、サクッと読めて楽しい作品でした。
      2021/05/30
  • オフィスビルの清掃を、たった1人で完璧にこなす
    キリコが、オフィス内で起こるちょっとした事件を解決する日常ミステリー。

    短編で読みやすく、ガッツリ読書は疲れる時におすすめです♪さらっと空いた時間にどうぞ(^ー^)

  • 後先になってしまったが、シリーズ第一弾
    キリコちゃんと大介くんの馴れ初めやどうしてキリコちゃんが清掃人をしているのかも分かった

    映画『バグダッド・カフェ』
    砂漠の中のガソリンスタンド兼ドライブインみたいなカフェ
    お掃除の大好きなおばさんが来たことで、荒んだ感じだったお店が少しずつ変わり始める
    ハッピーであったかい感じに・・・

    汚いカフェ中をおばさんがモップを持ってピカピカに磨き上げていく様子にキリコちゃんは魅了されてしまったというのだ

    ニューヨークの地下鉄構内、落書きだらけでいろんな事件も多発していた何、根気よく落書きを消していったことで事件や非行が激減したと聞いたことがある

    掃除には、人間の心を整え行動を立て直す力があるのかもしれない
    確かにこのシリーズを読んで、キリコちゃんが掃除には似つかわしくないファッションをしていたとしても、明るく楽しげにくるくるてきぱきと働き、オフィスやトイレを磨き上げている姿を見て、心底清々しく気持ちよくなった

    キリコちゃんの本当の気持ちを理解し、応援する大介くんも一見頼りなげだが、なかなか頼もしかった

  • 近藤史恵さんも大好きな作家のひとり。
    サクリファイスのような作品ももちろん好きだけれど、ライトミステリーは大好き!

    「キリコ」は清掃を仕事にしている今どきの女の子。
    その姿からは彼女の仕事は想像できないけれど…
    キリコが清掃しているビルに勤める新入社員の大介。
    二人が解決していく社内ミステリー。
    ミステリーを解決しつつ二人の距離は縮まっていくのだが。
    CLEAN8「史上最悪のヒーロー」ではキリコは姿を消し、大介は結婚していた。
    えっ!大介、どうなってんのよ~!!と、突っ込みつつ寂しい気持ちで読み進めたら…
    そうだったねの…

    近藤さんによると、この本のタイトル「天使」とはキリコのことではなく、「掃除をしよう」という気持ちのことなんだって。
    この本の読んだら、私にも天使が降りてきた~(笑)

  • 以前、図書館にこのシリーズの3冊目しかなく、それを先に借りて読んだが、今回1・2冊目もあったのでまとめて借りてきた。3冊目ではもう結婚していたキリコ。あーそういう事か!と納得。。。
    このシリーズは最近ドラマになっていたが、短いお話に分かれており、ちょっとした事件が起こり、それを頭の回転の早い子がさりげなく解決するという展開はドラマに相応しい内容に思う。

    人の内面は意外と周囲に表れる。例えば、いくら見かけを綺麗にしていても、カバンの中を整理できなかったり、財布がレシートでパンパン!なんて子は、やはりがさつだなと思ってしまう。ゴミをゴミ箱に捨てれない、公共の場所を綺麗に使えないなんてもってのほか。内面を磨くためにも、掃除や整理整頓って大事だなと改めて感じた。

  • あることについて、私はまだとても傷ついているのだと気が付いた。
    だから、『シンデレラ』のキリコの気持ちが同じようにわかる。

    『彼女は傷ついたのだ。自分の仕事を貶められたことに。
    自分が毎日一生懸命やっていたことを、ひどいことばで貶められたことに』
    『どうして、女の子も男と同じように、考えて、頑張って生きているということに気づかない男がいるんだろう』
    泣いた。

  • 女性の多い職場で可愛がられる?いじられる?草食男子な新入社員。
    強気でマイペースな掃除の女の子とは、正反対で良いコンビなのかも。

    それぞれ短編になっていて、スポットがあたる人物もいたりして、わかりやすいかと思いきやミスリードされていて。
    軽く読めるけど読み応えもありました。

    掃除の人って、その建物で働く人からすると、いてもいないような存在なのかな。
    いなくなって初めて気付くような。
    綺麗なオフィスであることの有り難さ、当たり前に思ってはだめですね。
    公共の施設でもそうですけど、誰かが掃除してくれてるから綺麗なんだってこと、忘れてはいけない。
    掃除の仕事に熱意や誇りを持ってる彼女は、モップを持つ姿もきっと輝いている。
    仕事に対する姿勢とか思いとか、とても素敵だなと思いました。

    ラストの短編は、しっかりトリックにひっかかって驚かされました。
    ま、終わりよければ全てよしです。

  • キリコはオフィス清掃人のギャル(死語)。
    会社勤めだと彼女の服装は突飛な感じがするけど、彼女の仕事ぶりと観察力はピカイチで、オフィス内で起こる事件に彼女の推理が光る。
    起こる事件はビターなものが多いけど、キリコのテンションが明るいからか、悲壮感を感じずに読める。

    まぁ正直にいうと、著者のオフィス勤めのイメージがなんか古いなと思ったり。でもこれが一昔前は普通だったんだろうなぁ。(初版2003年だし)
    今でもかわいい女子に不倫を持ちかけたり、上にへつらい、下に八つ当たりする人はいるけどね、、、。

    掃除の人の仕事って確かにピンキリで、申し訳程度に掃除機かけて行く人と、椅子を引いてかけてくれる人がいる!
    ゴミで人格までわかるのか。気を付けてたつもりだけど、変なものとか、メモとかもそのまま捨てないように今度から気を付けよう。

  • 「清掃人探偵キリコ」シリーズの第1作。清掃業の仕事の経験の有る作者の短編推理小説集。社会人一年生の梶本大介は新人研修の後、オペレータールームに配属された。その大介の勤務するビルに奇妙な女の子が現れるようになった。ビル全体の全部屋の掃除を1人で請け負う清掃業者とは思えないような派手な格好をした赤茶色の髪をした10代後半の少女、嶺川桐子ことキリコ。気さくな性格で、社員たちと仲良くなったキリコが、オペレータールームの怪・ビルで発生する事件の真相・謎を鋭い洞察力でぴたりと当てる。
    大介の作成した書類の紛失事件を、きっかけに掃除用具置き場の片隅に自室を作り暮らしているキリコと知り合い、以後何かと気にかけるようになるが、勤め先が同じでも勤務する時間帯のすれ違う二人が、協力し助け合う微笑ましい関係が、書き下ろしの最終章、『史上最悪のヒーロー』で、驚くべき展開になる。
    大介目線で語られる日常ミステリー読みやすく面白い。刑事の絡む殺人事件も有るが、主力は人間関係の解き明かし。探偵役キリコ自身は謎のままなのがシリーズ化をみこしてのミステリーなのか?シリーズの先を読むのが楽しみ。

    • HNGSKさん
      わあ、面白そう。ぜひとも読んでみたいです。
      わあ、面白そう。ぜひとも読んでみたいです。
      2013/06/06
    • kazuさん
      ayakoo80000さん、コメントありがとうございます。
      シリーズを追って読んでます。面白いですよ。
      読書メーター「KAZU」のバックア...
      ayakoo80000さん、コメントありがとうございます。
      シリーズを追って読んでます。面白いですよ。
      読書メーター「KAZU」のバックアップの使い方をしているので、ここのフォローしている・されている等の、使い方がわかっていませんσ(^_^;)
      2013/06/07
  • 筆者自身が経験したことがあるという、ビル清掃の描写は詳細。
    ぴかぴかに磨きあげられていく清々しさと、喜び。
    キリコの、掃除を愛する気持ちが素敵だし、魅力的。
    このまま同じビルでばかり事件が起きるのは、ちょっと不自然なので、続編はどうしているのか、気になるところ。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-95bb.html

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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