幽霊人命救助隊 (文春文庫 た 65-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (605ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717261

作品紹介・あらすじ

浪人生の高岡裕一は、奇妙な断崖の上で3人の男女に出会った。老ヤクザ、気弱な中年男、アンニュイな若い女。そこへ神が現れ、天国行きの条件に、自殺志願者100人の命を救えと命令する。裕一たちは自殺した幽霊だったのだ。地上に戻った彼らが繰り広げる怒涛の救助作戦。傑作エンタテインメント、遂に文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 自殺した幽霊4人が、「自殺しようとする人を救って天国へ!」ってミッションを神様から依頼される!
    期間は、四十九日(笑)、人数は、100人(ここは、108人にして欲しかった!)
    最近、魂とかは、存在しないとかいう感じの本読んでたんで、神様とか天国とか出て来るとホッとする。ほんまにあるかは別にして。
    過重労働、リストラ、イジメ、借金、離婚etc…の色んな理由で自殺しようとする。それを救助隊4人が阻止!レスキュー隊のカッコして、メガホンで!笑
    おとぼけな部分はあるけど、テーマが自殺をメインにしてるだけあって、結構、真面目にとらえてる。
    こういう重いテーマは、少しくだけた感じのストーリーにする方が良いのかもしれん。真面目に生きてる人の方が苦しい世の中…なんだかなぁ〜…
    養老孟司さんの解説もなかなか。

    文中から、金融機関とか大企業さんへ
    「老人と子供を人質にとれば撃ち殺されるのに、日本経済を人質にとるのは許されるのか?」

  • 高野和明さんの小説は、『13階段』『ジェノサイド』と読んでいましたが、本書は知りませんでした。少し前に読んだ『10代のための読書地図』で紹介されていたので手にした次第です。「特別な才能はないけど」の章で紹介されていました。この章は、丸善御茶ノ水店の書店員である小沢史郎さんが記したものです。本書の紹介部分の一部を抜粋します。
    〜〜ここから〜〜
    そう、人生は一度負けたら終わりのトーナメントではなく、勝ったり負けたりを何度も繰り返すリーグ戦なのだ。<未来が定まっていない以上、すべての絶望は勘違いである>は、日本文学史に残る名言だと思う。
    〜〜ここまで〜〜
    この文章を読み、書店で本書を購入しました。小沢さんのおかげで本書に出会えたことに感謝申し上げます。と、ここで書いたところで、小沢さんには届かないでしょうが、本書に出会えてよかったとの思いは変わりません。
    テーマは自殺ですが、しっかりエンターテイメントとなっており、最後は涙腺が崩壊する作品です。また、日本の社会課題についても考えるきっかけも作ってくれたり、知識の幅を広げてくれるきっかけも作ってくれる作品です。
    テレビドラマ化しても、きっと面白い作品になりそうな気がしました。

  • ブックリストで紹介されてる方がいて、面白そうだと思って読んでみました!
    あの世とこの世の中間で、生きていた年代も享年も様々な4人が出会う。
    4人の共通点は、生前自ら命を絶ってしたまった魂だということ。
    現世で同じようにこの世を去ろうとする人を100人引き止めるミッションを神から受けるお話。

    テーマは重い。自殺、人生、人間関係、経済事情。
    でも、きっと重さをなるべく軽減しながら気軽に読めるように工夫された小説なんだろうなと思いました。
    主人公たちの掛け合いがコミカルで面白かったです。テーマはしっかり捉えているけど、説教くさくなくて読みやすかったのも良かった。
    人の数だけドラマがあるよね。

  • 天国へ行くために49日までに100人の自殺志願者を救えと神様に言われた4人の幽霊が奮闘する話。

    自殺志願者を救う過程でそれぞれの死にいたる話も明かされてきて泣いて笑った作品です。

  • 自殺をして、天国でも地獄でもない、その中間地点に降りたってしまった4人の男女。
    自殺をしようとする人100人救ったら、天国へいかせてもらえるということで、地上に降り立ち、救助活動を行う。

    設定は現実離れをしているけれど、多様な問題で苦しむ人々の現状をあぶり出し、そんな人々をどうしたら救えるのか一生懸命考えるという作者の真摯な気持ちが伝わってきました。

    うつ病は精神科に行けば治ると言い切っているのはちょっとありえないと思ったけれど、登場人物の1人、麻美のケースは特に興味深かったです。自分と生きにくさがとても似通っていたから。

    作者は、この麻美のケースにとても長いページを割いています。細かく追っている麻美の心情の一つ一つが、共通する自分の心に次々と突き刺さってきました。

    この麻美は、おそらく重度の愛着障害だと思う。


    (本文より)麻美の回答は二つに一つ。つき合うか、別れるかしかないのだ。

    ○麻美の彼の言葉
    こうなったら彼女のすべてを受け入れ、無償の愛を証明するしかない。
    親密さが増しそうになると、わざと嫌われるようなことを言って相手を遠ざける。それが彼女の対人関係の距離感なのか、それともこちらの
    愛情を試しているのかははっきりしなかった。

    ○それは善というものへの強烈な懐疑だった。普通に生活している人が、まぁお互い様と笑って見過ごす問題に、いちいちつっかかる。人と人との連帯も、一生懸命に働くことも、この世で美徳とされているものには醜い裏側があると感じている。しかもその核心は、彼女怒らせるのではない。疲れさせる。そしてこの世と積極的に関わることを諦めさせる。
    これではさぞかし行きづらいだろうと同情せざるを得なかった。他人はすべて、彼女を傷つける存在なのだ。世の中の矛盾とか、他人の心に潜む疑問とか、これだけ見抜いてしまっては大変だ。

    ○この人には自分が自分だと言う実感はないんです。生きているのは自分なのにそれが自分とは感じられない。だから仕事をやっていても充足感がないし、何をやっても楽しくない。

    ○不安になるのは周りのみんなが自分と同じ移ろいやすい心しか持っていないから。人々は皆、どこかで折り合いをつけて生きていくのに、麻美は妥協しない。自分の心も移ろうのに、移ろわぬ心の持ち主を探して他人を試し続ける。相手が際限のない試練に耐えかね、自分の元から去ってしまうまで。

    ○あなたは漠然と怯えているだけ。何もかもが曖昧のまま苦しんでいる。それを言葉にするのよ、ノートに書きつけてもいいわ。あなたがどんなことで苦しんでいるのか、言葉に置き換えるの。
    麻美本人は、無意識のうちに一連の行動とっている。彼女にしてみれば、それが習い性とも言うべき反射的な振る舞いなのだ。その一つ一つを本人が自覚すれば道は開けるかもしれない。

    ○他人が薄っぺらく見えてしまうのは、表か裏か、二つの面しか見ていないから。あなたには中間が見えていない。他人の中の悪い面を見たら、それが全てになってしまう。自分が傷つけられることを恐れて攻撃してしまう。でもね人間は白でも黒でもない、灰色の多面体なのよ。人間だけじゃない。すべての物事には中間があるの。不安定で嫌かもしれないけど見つめなさい。良い人でもあり悪い人でもあるあなたの友達を。優しくて意地悪な、あなた自身を。
    後は慣れるだけよ。中途半端な安心に、中途半端の善意に、中途半端な悪意に。人の社会とはそういうものよ。

    麻美がどうして自殺しようとしたのか、そして、それまでの一連の問題行動の奥にどんな心理が隠されているのか、とても興味深く読めました。

    全体的なお話は、あまり好きになれなかったけれど、この麻美の事例に出会うためにこの本を読んだのだなぁと思いました。

  • 突拍子もない話なのだが、とても温かみやユーモラスがあり面白い(*^▽^*)

    東大受験に失敗した高級官僚の息子裕一は、首吊り自殺をする。
    死後の世界で3人の人間と出会う。その3人は全て自殺でこの世を去っていた。
    そこへ突然神様が降りてきて、この4人に、期限内に100人の命を救うよう命じられらる。

    年齢も享年も人生観もバラバラな4人が、どうやったら自殺しようとしている人間を救えるのか?考え、協力しあい、次第にレスキュー術が向上していく。

    50人過ぎたあたりから、少々食傷ぎみになったりもしたが、最後はしっかり巻き返してきた。

    何となく想像はできたが、しっかりウルウルさせられた。

    なかなかの良書だと思う!
    面白かった!!(^-^)

  • 自殺でこの世を去った裕一、八木、市川、美晴は神様の命令で、7週間で100人の命を救うため、もう一度地上に舞い戻る。
    突拍子もない設定になかなか手が出なかったが、読んでみて、これまで読まなかったことを後悔した。
    コメディタッチの文章の中に、自殺志願者の悩みが事細かく描かれ、やはり生きることに意味を見いだせない私は、この小説にすごく励まされた。
    特にリストカットで、自分の体を痛める女性に、「同じ痛みなら、氷を握れ!」とアドバイスする件は、心に深く残った。
    そして、自殺されて、残された人々の痛み。
    とても丁寧に描かれている。
    人生に疲れて、どうしても自殺を考えてしまう人に読んでもらいたい一冊。
    タイトルだけでは、この本の良さが伝わらないのが、残念・・・

  • 自殺した償いに、100人の命を救うミッション。その過程で4人のそれぞれの事情が投影され、自身が救われていく。100人救ったあと、もっと救えると願い出た想いは聞き届けられなかった。
    うつ病の自殺企図が病院に行きさえすればゴール、というのは無理があるなあ。

  • 小説の枠を超えて、自殺、社会構造などの課題を丁寧に描いている。600頁ほどあるが、さ~っと読めるぐらい高野ワールドに引き込まれます。

  • 騙されたと思って読んでほしい。
    自殺をして死者になった若者が
    他の死者三人とチームを組み、
    現世で自殺志願者を救う任務を
    ステレオタイプの「神様っぽい神様」から与えられる話
    暗いテーマを、明るく語るのが良い。
    死者達がそれぞれの時代の死語を会話に混ぜてくるのもいい。
    あとは、物語の構成
    最後にぶつけられた課題は
    やはりそうくるよねって感じの展開だけど
    コウイウノ、オレ、大好物

    • ikezawaさん
      また本屋で取り上げられてて嬉しい
      また本屋で取り上げられてて嬉しい
      2018/08/25
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著者プロフィール

1964年生まれ。2001年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。著書に『幽霊人命救助隊』、『夢のカルテ』(阪上仁志との共著)など。2011年、『ジェノサイド』で第2回山田風太郎賞を受賞。自著のドラマ化『6時間後に君は死ぬ』では脚本・監督も務めた。

「2012年 『グレイヴディッガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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