モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる お母さんの「敏感期」 (文春文庫 さ 46-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167717452

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  • モンテッソーリ教育の第一人者の書
    内容が本質的で、環境に関わらず母親である人は、一度目を通す価値のある本だと思った。

    子どものイヤイヤ期には、夢中になれるような体験を多くさせてあげることを心がけ

    前半は脳科学的な観点での教育方法で、理論だってはいるが、脳科学はあくまでも時代で主張が変わることもきちんと書かれているのでバランスがよい本だと思った。
    脳科学の説の一部を曲がった形で利用する英才教育もあるので注意。


    以下備忘録

    真理をたどる道筋
    ハッとする、ひらめくといったような感性が感じたことをめぐって、「知性」が働き始める

    宇宙の中の進展はすべて左巻きに進行する

    <脳の発達>
    脳のもっとも下位にある1延髄からはじまり、2脳橋⇒3中脳⇒4皮質へと進む。

    <体の発達>
    第一段階 手足を動かすが移動できない
         移動しない運動期
    第二段階 決まった方法で上で手足を動かす腹ばい期
    第三段階 四つんばいの時期
    第四段階 歩行時期

    <各脳の部位によってできるもの>
    延髄が発達:胴体、腕、足を動かす能力をつかさどってる
       なので最初は移動なき運動
    脳橋が発達:床に腹部をおしつけて体を移動させるような能力をつかさどる。
    中脳が発達:四つんばいに必要な重力に逆らって床からはなして手やひざで支えるのに必要
    皮質:様々な人間の能力をつかさどる部分で歩行

    <脳と体の関係まとめ>
    上記の時期は次の段階に不可欠なものであるきちんと計画された秩序あるもの。

    新しい段階へと順調に入っていけるかどうかは、その前の段階をうまく終了してきたかに全面的にかかっていおり、脳の発達が密接にかかっている。

    おけいこごとも脳の発達と順位関係なく勝手におしつければ意味のない結果におわる

    脳細胞はニューロンとグリア細胞がある。
    三歳までにニューロンは外界からの刺激に応じて次々をシナプスをつくる。臨界期は三才と言われている。
    一方でシナプスは余分にあったものを必要な分に刈込よく使う回線が太くなるため、余計な刺激を与えすぎることはかえって脳の発達に悪い結果をもたらすという説もある。
    いろんな説が時代とともに変化していくので、短絡的に乳児教育にあてはめることはよくない

    シナプス形成は
    自然に起こるものと、生涯を通じて複雑な環境にふれることに関連して生じるものと区別しなければならない。
    自然発生型:体験予期型可塑性
    複雑な環境との接触:体験依存型可塑性
    があり、乳児期は予期型が多く、特定の期間に適切な体験をするとたやすく学習できる。

    まずは子供を観察し、自然のプログラムに沿ってその時期の、生命の課題に子どもが向き合うのを手伝う方法を探さなければならない。

    生物学者土ド・フリース1948~は、全ての生物は幼少期い自分の将来に必要な事の為に、ある事への感受性が非常に敏感になりそれを環境の中にみつけだし、強烈にかかわっていく特別の短い時期がある。その事を獲得するとその感受性は鈍感になり、また
    次のものへ感受性が高まる
    という。

    もちろん人間にも内面から押し上げてくるその特別な強い感受性やエネルギーを燃え上がらせ強烈に関わり始める。そのチカラを教育に利用することを始めたのがモンテソーリ。

    音楽の敏感期は3歳から7歳

    大人にはなんでもないようなことにこだわったり執着するので分からず屋にみえる
    子どもにとっては内面から押し上げられてくる生命力に導かれてその時期にこそしなければならない
    自然の宿題をしているので譲れない。


    秩序感の敏感期 2,3歳がピーク、6歳できえる
    順番、場所、所有物、習慣に非常にこだわる
    ⇒様々な事柄の中にひそむ関係を気づかせる最初のステップ。
    秩序感をコンパスに世界の中で混沌に溺れずに生きていける
    秩序が崩れることは大人でいう家の地盤に相当する事。
    幼児は乱雑の中で生活しえないのです。

    感覚の敏感期
    五感の器官を完成させ、持っている機能を洗練する。
    一生に一回きりの感覚をすばらしく洗練していく時期

    触角の敏感期にいる子ども
    ツルツル、スベスベ、ザラザラ、つめたい、あったかい、フワフワなど肌触りを楽しむ

    運動の敏感期
    一生に一回だけ人間が全力をだし着ることをけっしておしまない珍しい時、この時期を過ぎると人間は常に力を倹約する方に働き、なるべくラクしたいと願い動かないで済むような工夫をこらす時期にはいる。

    運動の種類
    1大きな動き
    2バランスとり
    3手腕を使う
    4指先を使う

    からだを100%使って精一杯の努力を惜しまないのは一生に一度この時期だけ、全力投球した経験は小学生以後何事にも力をだしきることができる。出し切らなかった人は小学生になってから粘り強さにかける。

    体のぜんぶを使いこなして大きな動きをし、とことん挑戦したり、のりこえたりする経験をさせましょう。

    知性のエネルギー
    知性の働きは「区別する事」
    知性の性質は自発性

    この宇宙におけるすべての動物には調和があり、法則に従って動きながらしかえあっている。
    人間は知性の法則に従って動く

    動き方を知ることは知性をつかって学ぶこと

    幼児期に学ぶ力を身に着けさせたいのであれば、どう動けばいいのかを自分で学びとりたい運動の敏感期に自分で学べるような機会を提供する事

    自分の動きを完成させたい敏感期なので、より完全により美しくという望みの力を活かすことが最大限学びとる力を真に育てることになる。


    子どもができるようになる教え方
    モンテソーリでは【提示】という
    1 対象をひとつだけとりだす
    2 動作を分析し、順序たてる
    3 むずかしいところをはっきりさせる
    4 動作を見せる間は言葉は使わない
    5 正確に実行し、精密な所にこころをこめる
      子供は行為を完成する条件として
      子供のこころを強くひきつける
    6 教えながら教える
      子供が委縮するため間違いをていせいしながらおしえてはいけない
    ⁷ 自分からする自由をあたえる
      自分がして見せたことを子どもがすぐはしなくても
     子どもの自由にさせる、自由にじぶんで考えて実行したとき、初めてその行為は自分のものとなる

    自律と自立
    モンテッソーリをひとことで言えば自律と自立をそだてる教育 命令やはげましで育つのではなく心身の必要が満たされたときに内面から現れてくるもの

    じりつがあらわれるためには「知性」が正しく方向づけられることが必要

    知性の働き方

  • モンテッソーリ本の新刊をいくつかパラパラと読んできたけどこの本が一番モンテッソーリ教育の魅力と理念が伝わってきて、実際の事例を読むたびに胸が熱くなった。何度でも読み返したい

  • 私の子育てのバイブルです。子育ての概念が変わります。

  • 2018年1月読了。
    (142ページ)「モンテッソーリ教育は、ひとことでいうなら「自律と自立を育てる教育」だといえます。「自律」も「自立」も、命令や励ましで育つのではなく、心身の必要が満たされたときに、内面からあらわれてくるものなので、モンテッソーリは、まず心身の必要性や必然性をよく観察し、それを満たす方法を生みだしました。」
    現役のお父さん、お母さんは日々子どもの成長と格闘されていることと思いますが、こういう人間観に立って子どもと接したいと思います。

  • とてもおもしろかった。

  • 参考になる

  • 小さい子を育てる人は読んだ方がいい!意味不明な子供の行動の意味や接し方のコツが分かり、子供に対してイライラではなく暖かい目で見れるようになる。

    モンテッソーリが医学や精神医学を学んだ人で、著者の相良敦子さんも教育学博士なので、子育てについて精神論ではなく論理的に書かれていて、説得力がある。

    ・幼児期の子供には、特別に敏感な感受性を発揮する一生に一回の「敏感期」がある。その時期の自分を創っていく行動が、大人には理解できない奇妙な行動に見える。
    「秩序感」の敏感期:いつも同じ順番や場所に拘る
    「運動」の敏感期:色んな動き方を身につけようとする。線の上を歩いたり、重いものを持ったり。

    ・子供が敏感期にいる時、親もわが子の教育についての敏感期にいる。

    ・子供ができるようになる教え方(提示):一度に教えるのは一動作。何ができないのかを見極め、ゆっくり、話さずに見せる。訂正ではなく教える。教えた後に子供がいつやるかは子供に任せる。

    ・子供はなんでも自分でしたい。生涯の親の役目は子供の「自立」「自律」を助けること。
    自立:自分に自信を持ち、周囲と安定した関係が築け、自分で決めたり選んだり責任を取ることができる力
    自律:自分の頭で考え、自分の体を使い、自分のやりたいことを自分で追求したり展開できる力

    ・ブルームというアメリカの教育学者が芸術・運動・自然科学の3領域で世界トップクラスの人たちが幼少期にどんな教育を受けたかを調査したところ、共通して4、5歳頃から家庭の雑用や責任を担わされていた。その人たちはベストを尽くす、やりきるなど家庭の中で繰り返し言われ、実行していたことを、自分の専門領域に役立て、訓練に耐えた結果、トップレベルになった。

  • 2回目読了。
    1度目は、子どもが0歳の時に読み、現在3歳。

    定期的に読み返す必要がありそう。

    集中して何かをやり遂げる力をつけるために、子どもが興味を示している時期を見逃さず見守ることが必要。
    やりたい気持ちを尊重する。

    子どもには成長過程に何かしらの敏感期があり、その時期を親が見逃さずに待ってあげること。そしてその力を伸ばすためのお手伝いをさせてあげることが重要。

    子どもを変えるのではなく、親が意識を変える必要があるということを示している本。

  • 何度も読み返したい一冊。モンテッソーリの根本的な考え方を知ることで、子どもを見る目が変わりました。
    自立とは、どんな場所でも自分で自分を幸せにできる力を身につけることだと思います。
    お金やモノは消えてなくなりますが、身につけた能力や知識、自信は一生ものの財産になるので、何よりも大切にしたいところです。
    子どもの気持ちがわからなくなったり育児に迷った時に道標となるような考え方を教えてくれています。

  • ・新しい段階へと順調に入っていけるかどうかは、その前の段階をうまく終了してきたかどうかに、全面的にかかっている
    ・「心が見えるような顔」「生き生きした顔」「自信に満ちた顔」……子どもを見ていて、それが見えるか見えないかが、よいお母さん・よい保育者になるかならないかの分かれ目です。
    ・幸せそうな子どもの顔が見える(その瞬間に気づく)大人であることがもっとも大事です。
    ・小さいときにもっとも大切なのは、「日常生活のことをひとりですること」
    ・子どもが集中するということ=教育の課題を完全に解決する鍵
    ・子どもが「喜びにあふれて」精神的にも能力的にも成長をとげる
    ・幼児期は、自然が「喜んで」学べるような力を与えてくれているのですから、その自然のたまものを利用すべき
    ・三歳から七歳ぐらいの間は、聴覚の敏感期。微妙な音の差異にも気がつくという一生に一回だけの時期
    ・子どもの不機嫌な反応は、敏感期にある子どもが何かに強い興味や関心をいだいたにもかかわらず、大人の鈍感さによってその興味が断ち切られたときにあらわれる
    ・全力投球して夢中にやり抜いたあとは、人間いくつになっても素直になり寛大になる
    ・母親もまた「敏感期」にあり、この時に尽くすべき努力がある
    ・人生の大切な時期にいる子どもたちを見、その成長・変化に立ち合える権利が与えられた喜び
    ・活動が自発的に展開するときには、その原動力に「知性」の働きがある
    ・「子どもがひとりでするのを手伝う」ために大人が工夫し努力することが必要
    ・「折る切る貼る縫う」を幼稚園上がる前に徹底的に教える
    ・モンテ教育大5原則
    ①大人と子どもは違う
    例:大人の目的は結果、子どもは過程
    ②子供の動きをよく見よう
    ・何に困っているか、助けを求めるタイミング
    ③子供は見ている(親のこと、他の子供)
    ④一つのことをゆっくり伝える
    ⑤熟成
    ・家庭のいろいろな雑用や責任を小さいときから分担させたということです。四、五歳ごろから、日常生活において子どもに適切に責任をもたせて自律的に行動できるように何度もくり返して強調した

著者プロフィール

相良敦子(さがら あつこ)
1959年生まれ。脚本家・作家。
学習院大学文学部史学科卒業。
制作現場を経て、NHKの脚本懸賞入賞を機にデビュー。
以後、テレビドラマを中心に、ラジオ、映画、舞台、小説、絵本と、幅広いジャンルで執筆している。
主なテレビドラマに、連続テレビ小説「ウェルかめ」、「バッテリー」、「七子と七生」、「昨日の敵は今日の友」、「シングルマザーズ」、「サイレント・プア」(以上NHK)など多数。

「2022年 『感動する、を考える』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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