古事記講義 (文春文庫 み 32-3)

著者 :
  • 文藝春秋
3.17
  • (2)
  • (5)
  • (21)
  • (0)
  • (2)
本棚登録 : 120
感想 : 13
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167725037

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 古老の「語り」という形式で『古事記』の現代語訳をおこなった著者が、四回にわたって『古事記』について解説した講義をまとめた本です。

    著者はすでに『古事記』の入門書として『古事記を読みなおす』(ちくま新書)を刊行しており、そこでは「記紀神話」を一つの完結した神話体系とみなす解釈を批判し、『古事記』のなかにポリフォニックな「語り」を聞き取ろうとする試みがなされていました。本書でも、『古事記』は正統な歴史書である『日本書紀』を編纂する試行錯誤の過程で誕生した者であり、主流からはずれてしまった歴史書のひとつだという主張がなされており、前著を踏襲する内容となっていますが、ヤマトタケルを中心とする英雄叙事詩の解釈や、出雲神話にかんする議論などに立ち入って説明がなされています。

    とくに英雄叙事詩についての考察では、石母田正や西郷道綱による解釈が、日本史上の一時代に比定されていたことで批判を招きやがて議論が終息を迎えてしまったことに触れたうえで、『古事記』における英雄叙事詩的な内容をあくまで物語としてとらえる著者自身の立場が提出され、その物語的な構造と意味を解き明かそうとしています。

  •  『口語訳 古事記』(文春文庫)の著者による解説書。『古事記』が多様な世界観を包括しているのに対して、『日本書紀』は当時の権力者側(律令国家)の視点で書かれた歴史本という記述が印象的であった。また『古事記』が歴史的に見てマイナーな書物であり、本居宣長が注目しなければ、多くの現代人に読まれることはなかったことを今回読んで知った。そのほかにも興味深い解説がなされているが、いずれにせよ、『古事記』の重層的な構造がなされていることが理解できるだろう。

  • ふむ

  • 古事記を、いくつかの伝承のうちのひとつとしてとらえ、王権の外側にいた語り手を包含しているという立場にたち、古代の表現や背景について考えてみようという意欲的な講義集。

  • 久しぶりの古事記関連書籍。三浦しをんさんの父である著者の文体はとても読みやすく、まさに目の前で講義を受けている感じ。古代文学、伝承文学の研究者の目を通した見解は面白い。古事記には、日本書紀にはない文学性があるのは周知のとおりだが、天武天皇が編纂を命じたとする序文は確かに疑問であり、著者の推論は大いに頷ける。口語訳古事記は他の著者の作品を読んでしまったが、本著者の作品を購入すれば良かったと後悔。

  • 『何故「高志」のヤマタノヲロチと記述したのか』
    『ヤマトタケルがイズモノタケルを「だまし討ちした」という表記が古事記に残っているのは何故か』

    という点が興味深かったかな。

  • 『古事記講義』
    三浦佑之

     帯びには「シリーズ累計30万部のベストセラー」とある。シリーズとは『口語訳 古事記』である。語り部を通して『古事記』を口語訳、いや現代訳と言ってもよい新しい形で描いている。
     この本は『口語訳 古事記』と岩波文庫の『古事記』を底本として書かれているので是非持っておいて損がない書物なので傍らに置いて読みたい一冊。

     本体の語り部は、昔話の語り手がそうであるように、筋や内容を還ることはありませんが、語るたびに細部の表現はことなります。その場の雰囲気に合わせて自在に言葉をあやつることができなければ語り部とは言えないのです。(p13)

    ★これが口伝の特徴であり、文字との決定的な差である。それを『口語訳 古事記』は効果的に使っている。また本書の前提でもある。

     そのとき、なぜ自分たちはここに生きているのか、この世界はどのような場所か、人はなぜ生まれたのか、なぜ死んでゆくのかと問いたくなります。いつの時代も同じですが、人はそうした不安を納得し受け入れるために、生きる根拠が必要なのです。そして、それを保証するのが神話です。(p26)

    ★神話は数多にある。そのどれもが不安に起因した、起源探しということだろうか。
     

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    文庫&新書百冊(佐藤優選)171
    文学の力・物語の力

  • (チラ見!/文庫)

  • 素人がただ読むだけでは今ひとつ解せない古事記について、その楽しみ方を教えてくれる感じの本。割とセクシー&バイオレンスな古事記だが、あんな描かれ方をする意味が少しわかったような気になれる。

全13件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

千葉大学名誉教授。1946 年、三重県生まれ。『古事記』を中心に古代文学・伝承文学に新たな読解の可能性をさぐり続けている。共立女子短期大学・千葉大学・立正大学等の教員を歴任し、2017年3月定年退職。著書に『浦島太郎の文学史』『神話と歴史叙述』『口語訳古事記』(第1回角川財団学芸賞受賞)『古事記を読みなおす』(第1回古代歴史文化みやざき賞受賞)『古代研究』『風土記の世界』『コジオタ(古事記学者)ノート』など多数。研究を兼ねた趣味は祭祀見学や遺跡めぐり。当社より『NHK「100分de名著」ブックス 古事記』を2014年8月に刊行。

「2022年 『こころをよむ 『古事記』神話から読む古代人の心』 で使われていた紹介文から引用しています。」

三浦佑之の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
フランツ・カフカ
遠藤 周作
三島由紀夫
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×