- Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167725037
感想・レビュー・書評
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古老の「語り」という形式で『古事記』の現代語訳をおこなった著者が、四回にわたって『古事記』について解説した講義をまとめた本です。
著者はすでに『古事記』の入門書として『古事記を読みなおす』(ちくま新書)を刊行しており、そこでは「記紀神話」を一つの完結した神話体系とみなす解釈を批判し、『古事記』のなかにポリフォニックな「語り」を聞き取ろうとする試みがなされていました。本書でも、『古事記』は正統な歴史書である『日本書紀』を編纂する試行錯誤の過程で誕生した者であり、主流からはずれてしまった歴史書のひとつだという主張がなされており、前著を踏襲する内容となっていますが、ヤマトタケルを中心とする英雄叙事詩の解釈や、出雲神話にかんする議論などに立ち入って説明がなされています。
とくに英雄叙事詩についての考察では、石母田正や西郷道綱による解釈が、日本史上の一時代に比定されていたことで批判を招きやがて議論が終息を迎えてしまったことに触れたうえで、『古事記』における英雄叙事詩的な内容をあくまで物語としてとらえる著者自身の立場が提出され、その物語的な構造と意味を解き明かそうとしています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『口語訳 古事記』(文春文庫)の著者による解説書。『古事記』が多様な世界観を包括しているのに対して、『日本書紀』は当時の権力者側(律令国家)の視点で書かれた歴史本という記述が印象的であった。また『古事記』が歴史的に見てマイナーな書物であり、本居宣長が注目しなければ、多くの現代人に読まれることはなかったことを今回読んで知った。そのほかにも興味深い解説がなされているが、いずれにせよ、『古事記』の重層的な構造がなされていることが理解できるだろう。
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古事記を、いくつかの伝承のうちのひとつとしてとらえ、王権の外側にいた語り手を包含しているという立場にたち、古代の表現や背景について考えてみようという意欲的な講義集。
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久しぶりの古事記関連書籍。三浦しをんさんの父である著者の文体はとても読みやすく、まさに目の前で講義を受けている感じ。古代文学、伝承文学の研究者の目を通した見解は面白い。古事記には、日本書紀にはない文学性があるのは周知のとおりだが、天武天皇が編纂を命じたとする序文は確かに疑問であり、著者の推論は大いに頷ける。口語訳古事記は他の著者の作品を読んでしまったが、本著者の作品を購入すれば良かったと後悔。
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『何故「高志」のヤマタノヲロチと記述したのか』
『ヤマトタケルがイズモノタケルを「だまし討ちした」という表記が古事記に残っているのは何故か』
という点が興味深かったかな。 -
『ぼくらの頭脳の鍛え方』
文庫&新書百冊(佐藤優選)171
文学の力・物語の力 -
(チラ見!/文庫)
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素人がただ読むだけでは今ひとつ解せない古事記について、その楽しみ方を教えてくれる感じの本。割とセクシー&バイオレンスな古事記だが、あんな描かれ方をする意味が少しわかったような気になれる。