ぬかるんでから (文春文庫 さ 45-1)

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  • / ISBN・EAN: 9784167739010

感想・レビュー・書評

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  • 【訃報】作家の佐藤哲也さん死去 62歳 妻の佐藤亜紀のSNSで報告 『妻の帝国』『シンドローム』など | まとめまとめ
    https://matomame.jp/user/yonepo665/d1c4b70a7279d57bacbc

    『ぬかるんでから』 佐藤哲也 (著) | 今月の課題図書2007年10月
    https://www.webdoku.jp/shinkan/0710/b_01.html

    文春文庫『ぬかるんでから』佐藤哲也 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS
    https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167739010

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    やぎはしさちこさんの本棚から

  • 大好きな作家、佐藤亜紀さんの旦那さん。
    今年の8月に亡くなられた。62歳。

    佐藤哲也さんを初めて読んで、
    佐藤亜紀さんの旦那さんだものなぁ、このくらいじゃないとやっぱり釣り合わないんだなぁと思った。
    天才ご夫婦。

    概念や観念をイメージとして表現した、内容の不思議なタイプのものを久しぶりに読んだ。感覚を具現化する文章版。

    全体的にアイロニカル。

    最初の4篇は同じジャンルというか繋がっているとも取れるつくりで、後半はそれぞれ異なる。

    1〜5が宗教的で、6〜13は子供が主人公だったり天井に張り付いてるカバや人より大きいキリギリスなど分かりやすく読みやすい作品。

    個人的には「巨人」が印象に残る。
    精神の部分が自分とあまりにも同じで、発狂した時の行動とか私がこれまでうまく言えなかったものがそこにあって、驚いた。

    解説は伊坂幸太郎さん。
    解説の中で美術評論家の坂崎乙郎氏の言葉を引用されていて、私もそう思うので書き留めておく。

    『絵描きも小説家もこういう現実の世界の外側に、あるいは彼岸に小さな宇宙を築くことのできる人たちであり、この小さな宇宙が、ある何人かの人間に感化をおよぼしていくことのできる、そういう才能が絵描き、あるいは小説家だと確信しています』(「絵とは何か」より)

  • 再読。ファンタジーのような、不条理文学のような世界観の短編集。オチのハッキリしない、人の見た夢の話を聞かされているような作品も多いので好き嫌いは分かれると思う。
    個人的には「ぬかるんでから」「春の訪れ」「とかげまいり」「やもりのかば」「夏の軍隊」が好み。

    「春を探しに行こう」という牧歌的な始まりから冒険、逃避行、果ては怪獣ものへと至ってまさかの爽やかなラストを迎える「春の訪れ」や、信仰が何よりも重視された世界で人々が自らの信仰を押し付け合い争う中、妻が巨大なとかげになり聖女となる「とかげまいり」等で描かれる光景はどこか古い神話のような美しさがある一方、「墓地中の道」や「祖父帰る」等過剰なまでに男性的な言動を見せる親族が出てくる作品はちょっと疲れる。

  • ぼちぼちですかね。
    伊坂さんのおすすめ?で読みましたが、
    なかなかリズムに乗れず読み終わりました。

  • ヌメヌメとじっとりと生温かい。そんな短編集。

    はっきりとした結末がなくて後味の悪いものばかり。辛くなって一気に読めなかった。

    伊坂幸太郎の解説にひとつづつ読むべきと書かれていたので納得。

  • 「ぬかるんでから」★★★★
    「春の訪れ」★★★
    「とかげまいり」★★★★
    「記念樹」★★★
    「無聊の猿」★★★
    「やもりのかば」★★★★
    「巨人」★★★
    「墓地中の道」★★★
    「きりぎりす」★★★
    「おしとんぼ」★★★★
    「祖父帰る」★★★★
    「つぼ」★★★
    「夏の軍隊」★★★

  • しょっぱなの表題作から、独特のワールド全開。しばらくは楽しく読み進めていたんだけど、濃厚すぎて、ちょっとずつ息切れし始めた感じ。で、先に巻末の解説by伊坂を読んでみたんだけど、そこで”少しずつ読み進めた方が”的なことが書かれていて納得。そこからは1話ずつ読み進めるようにして、概ね楽しむことが出来ました。

  • 荒唐無稽 夢日記のよう

  • 正直あまり面白くなかった。
    結局何が言いたいのかわからない。
    「お前がわからないだけだ」と言われればそれまでだが、読み進めるにつれて、どんどん煙に巻かれてる感じが強まった。「祖父帰る」とか、グロいって意味合いじゃなくて、きもちわるいし…
    また、語りべの男達が揃いも揃ってどこか気取っていて潔癖でなんか鼻についた…。
    よく出てくる「妻」にはまったく人間味がなくて、明らかに男性に比べて特殊性を与えられていて、幽霊とか魔女とかみたいだ、と思った。
    美しい言葉の選び方だなと思う箇所もあったけれど、くどい場所もあったし、読みづらかった。

  • なんですの?これ。チンプンカンプンと表裏一体の作風。同時に狂気とくだらなさを併せ持ち、異質な幻想世界へ誘う。SF、ファンタジー、ホラーと様々な要素が組み込まれた短編が13あるのだが、兎に角、話がブッ飛んでいる。シュールと一言で片付けるのもおこがましい。何でこうなるんだろう?何て考え始めたらこの作品はもう無理である。これは空気感で楽しむ本だ。まさにブルース・リーの"あの名言"の通り。解説の伊坂幸太郎氏がこの作品の一気読みは避けた方がいいと言うのも頷ける。個々が濃厚過ぎるから(笑)

  • 短篇集。個人的には後半の作品により迫力を感じた。前半を読んで「作為的すぎるかも」と感じた人も、ぜひ最後まで読み通してもらいたい作品集。 解説は伊坂幸太郎。曰く、佐藤哲也は「小説ならではの喜び」を感じさせるという。そう、確かに比喩としか感じられないものを現実なのだとして押し通す、ラテンアメリカ文学風の迫力が佐藤哲也にはある。 なお解説に「この短編集を一気に読み通すようなことはしないほうがいいかもしれない」と述べる。確かに濃密すぎるこの世界は、じっくりと、本気で味わうべきものであるようにも思う。

  • この本はちょっと怖くって、台風の日に読むには適しているんだと思う。僕はやもりのかばが好き。

  • 【本の内容】
    「これは奇跡に関する物語だ。」―洪水に苦しむ人々を救うため、愛する妻が“亡者”と交わした取引とは?

    鮮烈な余韻を残す表題作ほか、謎の圧死をとげた伯父の家での不思議な邂逅を描く「やもりのかば」、裏の空き地で少年が体験する不条理「夏の軍隊」など、美しく奇想天外な13の物語。

    [ 目次 ]


    [ POP ]
    「これは奇跡に関する物語だ」

    これは書き出しの一文ですが、非常にインパクトがありました。

    「奇跡」と言う言葉を真正面から書いてしまう潔さに驚きました。

    「奇跡」とはなんだ?と考えてしまいます。

    自然の法則を超えて起きる現象は、それを信じる人にとっては希望でもあります。

    表題作の「ぬかるんでから」では、主人公とその妻たちの住む土地一帯が突如ぬかるみに変わります。

    食物を作ることもできず、飲み水もない。

    飢えに苦しみ争いは絶えず、「持つもの」と「持たざるもの」は共存派と私有派にわかれます。

    そこへ、亡者が現れ望みをかなえてくれるという。

    「食べ物が欲しいのであれば、お前の美しい歯を」よこせと要求されれば与え、妻は人々に代わり取引を交わします。

    共存を支持した人々は、二人のやり取りを見守ります。

    「持たざるもの」たちの要求はエスカレートし、妻の美しい片目や指も亡者に献上される。

    ついに彼らは妻を踏み台に「持てるもの」へと立場を変え、旅立っていく。

    不条理の世界独特の徒労感がここにはあります。

    「奇跡」という言葉に含まれる明るい希望のようなものが、煮詰まって鈍く光っている。

    読んだあとに不意に襲ってくるじわじわとした恐怖と苦い後味にハマってしまいました。

    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 何かの比喩かなぁ?とか色々考えながら読んでたから疲れた。 表題作の『ぬかるんでから』はダークな童話みたいで好き。『夏の軍隊』は何と無く微笑ましくて好き。『やもりのかば』はオバQとかを想像した。 多くの作品の所々で『ごっつええ感じ』とか『VISUALBUM』のコントを思い出した。誰でも笑える方やなくて、キャシィ塚本みたいなイタイ方のコント。『巨人』『墓地中の道』は比較的ベタで、『祖父帰る』『おしとんぼ』はイタイ方のコント。  表紙が大友克洋で、解説が伊坂幸太郎。

  • ぬかるんでから / 初出 『日本SFの大逆襲!』 徳間書店 (1994.11)
    春の訪れ / 初出 S-Fマガジン 1996年9月号
    とかげまいり / 初出 小説すばる 1994年12月号
    記念樹 / 初出 小説すばる 1996年9月号
    無聊の猿 / 初出 小説すばる 1995年8月号
    やもりのかば / 初出 小説すばる 1994年8月号
    巨人 / 初出 小説すばる 1995年7月号
    墓地中の道 / 初出 小説すばる 1995年11月号
    きりぎりす / 初出 小説すばる 1995年2月号
    おしとんぼ / 初出 小説すばる 1994年7月号
    祖父帰る / 初出 小説すばる 1995年4月号
    つぼ / 初出 小説すばる 1995年12月号
    夏の軍隊 / 未発表
    解説 (伊坂幸太郎)

    『ぬかるんでから』 2001.5 文藝春秋刊 文庫化

    装画 大友克洋
    装丁 鶴丈二
    印刷 大日本印刷
    製本 加藤製本

  • ホラーというよりは幻想譚という感じの短編集。悪夢っぽいというか、夢一夜的な不条理さがあり。いちばん印象に残ったのはキリギリス。人間と同じ大きさで2本足で立ってチェーンソーで殺戮をするキリギリスって、怖すぎる…。あとヤモリとカバの混血とか、羽の生えた猿だとか、なんかそういう変な生き物のインパクトがやたらと残りました。

  • SFとして確実におもしろいと思った。佐藤氏になぜ今まで出会わなかったのか、と悔やまれる。短編集なのだが、一つ一つが珠玉の名作だ。ぬかるんでから――どろどろと。

  • SF無理でした。

    世にも奇妙な物語的な?

    なんつーか、こーなってしまうと何でもありな気がしてしまいます。

    亡者が出てきたり、巨大ムカデが出てきたり、鼻がちんこになったり、ちんこが取れたり、、、何やら唐突すぎて、もう受け止めきれません。

  • 巨大キリギリスの話と祖父が帰ってくる話が面白かった。表題作は期待はずれ。

  • 独特な世界観の物語ばかり13編。
    よくわからないけど、なんだか面白くて目が離せない。感じ。

    見たこともない、聞いたこともない
    想像すらできない光景がひろがってる。
    確かに奇想天外。
    めちゃくちゃシュール。


    佐藤哲也さんの「熱帯」は
    正直、訳がわからなさすぎて読了できなかったのですが
    これはすごく好き。

    使われている言葉が硬いというか、難しいというか…
    ショートショートといえど、サラサラ読めるような本ではないかな。

  • 正直内容はさっぱりわからないのだけど不思議な魅力があってとても面白い。この作家の方の頭の中はいったいどうなっているのやら、と。絶対に着地地点を予想できない楽しさったらない。

  • 洪水に苦しむ人々を救うために妻が亡者と交わす取引を描く表題作、どこかコーマック・マッカーシーを思わせるファンタジー?SF?ホラー?
    ジャンルを限定しない不思議な味わいの短編集。

  • ある街が泥に沈み、わたしと妻と僅かに逃げ延びた人々は飢えと渇きに数を減らしながら救助を待っていた。
    二十日目の朝、渇いた泥を破り現れた亡者は人々に林檎を与え、妻は代償に歯を差し出した。


    聖書のような表題作「ぬかるんでから」を始めとする13作の短編集。
    浦島太郎の物語から何を学び取れば良かったのだろう。
    この13作にもこれと同じ違和感を覚えるが、やはり同じように深く浸透していってしまう。

    道に描かれた子どもの落書きが何かも解からずに、いつのまにか風景として馴染んでいくように、奇妙で幻想的で残酷であるはずの出来事はどれも日常に溶け込んでいる。
    この世界では因果応報という概念が存在しない。
    安住の地へと運ぶ舟の代償に首を奪われる妻がいて、かばの下で潰されるのを待つ男がいて、父の遺品を燃やす男がいて、夏に出会った兵隊を埋められてしまう少年がいる。

    “世界は不可解で、危険に満ちている”

    生まれもって罪を抱える者はいないが、罪を抱えぬ者もまたいない。
    奇跡的なバランスで回り続ける世界の、奇跡的なバランスで書かれた現代版お伽噺。
    この世界にはヒーローもヒロインもいない。


    佐藤哲也 その他の著書

    ・イラハイ
    ・沢蟹まけると意志の力
    ・妻の帝国

    などなど。

  • 短編集・・というか、一編一編が短いですね。ショートショート集、といった感じでしょうか。
    そしてどれも幻想的な世界や異形の生物や不可思議な世界の連続です。

    「愛妻小説」ということで「妻」をテーマにして・・ということらしいですが、読んだ後でそれをきいて「そうだったのか・・そういえば・・」くらいにしか思いませんでした。それよりもその不思議な世界観の方にもっぱら目を奪われていたもので。。。

  • 独特の世界観が説明もなしにドコドコと語られていきます。
    全体的にシュール、かな…。
    おもしろかった話もあり、よくわからないうちに終わってしまった話もあり。
    不思議です。

  • スーパー意味不。

  • カ…カオス!!!ちょっとついていけない

  • 解説が井坂さんだったので購入しました(・・・不純?)
    全編通して、不思議な印象の話ばかりでした。
    私の読解力が足りないのでしょうか、意味の分らない話も多かったです。
    考えるな、感じるんだ!ってところなのでしょうか。

  • タイトルと表紙が気になって気になって買ってしまった。
    全編生真面目な文章ながら変、可笑しい。

  • いくつかの作品に立ち現れる「妻」。その符牒が「現実感」を付与するものの、それに付き従う「夫」が徹底的に隷属しているため、妻が超越的・宗教的(?)な権能を有している。そしてその超越性は、身体性を欠き人称のみが浮遊するシュールレアリスティックな世界像 (ジョルジョ・デ・キリコ的な?)を現出させる。乾いたユーモアもあり、また政治的でもある。もしかするとすごいかも。要再読。

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著者プロフィール

宮城教育大学教職教育総合学域発達教育部門 教授
主著『子ども観のグローバル・ヒストリー』(編著)原書房 2018年
  『子どもの心によりそう保育・教育課程論〔改訂版〕』(編者)福村出版 2018年
  『世界子ども学大事典』(共訳)原書房 2016年

「2021年 『「10の姿」をこえる保育実践のために』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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