風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

  • 6055人登録
  • 3.72評価
    • (488)
    • (841)
    • (760)
    • (135)
    • (27)
  • 744レビュー
著者 : 森絵都
  • 文藝春秋 (2009年4月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167741037

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 2006年直木賞受賞作の短編集。
    森絵都さんの小説を読むのは「つきのふね」以来で、それは確か括りとしては児童文学だったから、一般文芸の作品を読むのは初めて。

    第一印象、あらゆる意味において、巧いと思った。
    読ませる文章力もだし、それぞれの短編のオチもだし、そもそも収録されている六編の印象が違うから、同じ作者が書いているように思えなかった。
    表題作と「器を探して」「鐘の音」辺りは“お仕事小説”的な側面もあって、とくに国連の職員が主人公の表題作と、仏像修復師について描かれている「鐘の音」は、自分が普段触れることがない世界を垣間見ることができて興味深かった。

    難民を救出する活動をしているアメリカ人の夫を持つ女性が主人公である表題作を読んで、今の世界の状況と照らし合わせて色々と考えてしまった。
    風に舞いあがるビニールシートのように、はたはたと揺らめきすぐにでも飛んで行ってしまいそうな命たちの重さ。取り憑かれたように立ち向かった夫と、保身を考えてしまい立ち向かえなかった妻とのすれ違い。そしてその後。
    実際、他人の命を救うために我が身を投げ出すことが出来る人間はこの世にいるのだろうけど、果たして自分は、と考えるととても気が遠くなった。そういう思いは一体どこから生まれてくるのだろう、って。

    各物語の主人公はみなそれぞれ自己というものを強く持っていて、周りと調和するためにひた隠しにしようとしたりその逆に人とぶつかったりしながら、自分の生き方というものを探っているように見えた。
    一本取られた!という思いですかっと読み終えられる物語ばかりで気持ちよかった。

  • 短い物語の中に、きちんと凝縮された人それぞれの考えや生き方がスパイスのように散りばめられていて、面白い作品でした。
    忘れかけていたこと、忘れようと思っていたこと。
    登場人物それぞれがとっても物語の中で生きていた作品だと思いました。
    これから生きていく中、自分自身どのように成長し変わることができるのだろうか?
    そう思える短編集でした。

  • 限りなく4評価に近い3評価にしました。
    文章は上手い、やはり特に会話文章は素晴らしいです。が、多分個人的にあまり好きでないのです、ストーリーや主題表現が。「器を探して」や「犬の散歩」、「風に舞い上がるビニールシート」のように期待のもてるストーリーテリングなのに最後が全く物足りない感じを受けます。かと思えば途中で読むの止めようかと思うような「守護神」や「鐘の音」は最後にハッとして読んでよかったなあと思わせるし。「ジェネレーションX」はしみじみとしていいなあと思うし。う~ん、自分の中でも評価が難しいです。
    「みかづき」でも思いましたが、脚本が著者のベスト表現だと感じます。

  • 先日読んだ著者の塾の話が面白かったので、 もう一冊読んでみました。
    直木賞受賞作品です。

    長編が面白かったのに本作品は短編集だったので、どうかなあ?と少々不安でしたが、予想以上にとても面白かったです!
    短編も長編も両方ぴったりの分量で描けるのってすごいと思う。
    深く掘り下げられにくく、あっさり終わってしまう短編は好みではないのだけど、本作は短編なのに読み応え十分。感動しました。

    例えば表題作のビニールシートは、難民の、どこかに飛んで行ってしまう命を表しています。
    愛し合って結婚しながら、難民のためにすべてを捧げる夫と、夫を理解しようとすることに疲れてしまった妻の物語。
    ラストシーンで彼の価値観が彼女の価値観にかわる瞬間がとてもいいです。涙が溢れました。。

    他にもボランティアで犬の保護をする主婦、大学で学ぶフリーターの男性の話など、扱うテーマは多岐にわたりますが、それぞれについてよく調べてあることにも驚きます。
    それだけでなく、例えば仏像修復師の話「鐘の音」なんて、鬼気迫る心理描写に圧倒されました。すごいよ。
    とにかく、人生に向き合い、信念を持って生きている人を描くところは各短編に共通していて、さわやかな気持ちで前向きになれる読後感でした。

  • それぞれに頑とした大切なものがあって、そのために懸命に生きる様子に勇気をもらえる
    不器用でも、大切にしたいものをしっかり持っていれば真っ直ぐに生きていけるのかも

  • 自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。
    一見、ちょっとかわった人たちの生き様が描かれているのだけれど、どの登場人物にも「羨ましい」という感情が芽生えた。どの人も、「自分が最も大切にするもの」がわかっているからだ。
    私は今、「あなたの人生でいちばん大切なものは何か」と問われても、答えられない。答えられない自分が嫌で、もどかしい。私も「大切なもの」を見つけたい、と思った。

    森さんの著書は「カラフル」しか読んだことがなかったけど、他の作品ももっと読みたい!

  • 大切なもの。

    大切なもの。

    考えてみると、たくさん浮かぶ。

    命、健康、家族、親友、恋人、友人、お金・・・

    誰もがみんな、大事なものを抱きしめてる。

    そして、その大切なものに気づく過程も、それに向き合う姿勢もみんな違う。

    そんな当たり前のことに、心の芯から気づかせてくれる小説。

    自分のすべてをかけて大切にしたいと思えるほど大切なものがあるという事実、
    そして何かを犠牲にしてでもそれを大事にしていこうとするまっすぐな姿勢は、
    とても魅力的だと思う。

    自分の大切に想ったものを貫けるひとは、かっこいい。

    ここに出てくるのは、不器用で、一生懸命で、でもそんなかっこよさを持っているひとたち。



    私もそう在りたいよ。

    大切なものを、まっすぐ大切にできる自分でいたい。


    そう思うと、身近な人を大切にしようと思う。

    もっともっと、大事にしたい。



    「風に舞いあがるビニールシートがあとを絶たないんだ」

    「僕はいろんな国の難民キャンプで、ビニールシートみたいに軽々と吹きとばされていくものたちを見てきたんだ。人の命も、尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単に舞いあがり、もみくしゃになってとばされていくところを、さ」

    「仮に飛ばされたって日本にいるかぎり、君は必ず安全などこかに着地できるよ。どんな風も君の命までは奪わない。家を焼かれて帰る場所を失うことも、目の前で家族を殺されることもない。好きなものを腹いっぱい食べて、暖かいベッドで眠ることができる。それを、フィールドでは幸せと呼ぶんだ」

  • 【風にまいあがるビニールシート】は2006年第135回直木賞を受賞しています。
    6話からなる短編集。
    年齢も職業も生き方も違う主人公たち。
    ただひとつ共通していることは大切な何かのために精一杯生きようとすること。

  • なんだかびっくりした。
    最初は読みやすいな~と思いながら、気軽に読んでいた。
    でも、『守護神』あたりからぐっと引き込まれ始めて、そこからの4話は読み応えを感じながらも一気に読んでいた。

    森さんって、すごいんだな。と思った。
    確かに、素敵な話でぜひおすすめしたい、とかじゃないけれど、いい。
    たしか『カラフル』『アーモンド入りチョコレートのワルツ(?)』っていう本も森さんだったような気がするんだけど、これがいいと思う。

    『鐘の音』は仏師の話で、その雰囲気が夏目漱石の夢十夜の中の第六話?(不確かw)に似てるかんじがしたし、ミステリーっぽくて最後にはそうきたか~^-^!ってなった。

    6話とも内容はばらばらだけれど、どれもなんだか好きになる。
    癖があるけどみんな自分なりの芯がある登場人物たちだから、小気味よい。
    どれも、結構内容が専門的で、しっかり調査された上で書いてあるんだなぁと思う。
    だから、ストーリーだけじゃなく、色んな職業の事情についてもこんなかんじなのかな、と思いながら読める。

    特に『ジェネレーションX』と『風に舞いあがるビニールシート』の終わり方がすごく好き。自分にとって大切なものに気付く、前を向いた瞬間っていうかんじで。


    ふとしたときに、人との交わりのなかで気付ける、自分にとっての真理を
    大事にしたいものです

  • 自分の価値観を曲げずに生きるのは、容易いことじゃない。
    その価値観が、世に言う‘常識’とずれていたら尚更だ。
    それでも、誰かとぶつかっても上手くいかなくても格好悪くても、自分の大切なものを守ってひたむきに生きる人たちの物語は、勇気をくれた。
    自分は、自分だけは、とことん自分を応援しよう。その生き方に、信念に、太鼓判を押そう。

    6つある短編の中でも、特に「ジェネレーションX」が好き。泣き笑いしてしまうくらい、好きだ。

全744件中 1 - 10件を表示

森絵都の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
宮部 みゆき
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)の作品紹介

才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)はこんな本です

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)の単行本

ツイートする