風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

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著者 : 森絵都
  • 文藝春秋 (2009年4月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167741037

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風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • 2006年直木賞受賞作の短編集。
    森絵都さんの小説を読むのは「つきのふね」以来で、それは確か括りとしては児童文学だったから、一般文芸の作品を読むのは初めて。

    第一印象、あらゆる意味において、巧いと思った。
    読ませる文章力もだし、それぞれの短編のオチもだし、そもそも収録されている六編の印象が違うから、同じ作者が書いているように思えなかった。
    表題作と「器を探して」「鐘の音」辺りは“お仕事小説”的な側面もあって、とくに国連の職員が主人公の表題作と、仏像修復師について描かれている「鐘の音」は、自分が普段触れることがない世界を垣間見ることができて興味深かった。

    難民を救出する活動をしているアメリカ人の夫を持つ女性が主人公である表題作を読んで、今の世界の状況と照らし合わせて色々と考えてしまった。
    風に舞いあがるビニールシートのように、はたはたと揺らめきすぐにでも飛んで行ってしまいそうな命たちの重さ。取り憑かれたように立ち向かった夫と、保身を考えてしまい立ち向かえなかった妻とのすれ違い。そしてその後。
    実際、他人の命を救うために我が身を投げ出すことが出来る人間はこの世にいるのだろうけど、果たして自分は、と考えるととても気が遠くなった。そういう思いは一体どこから生まれてくるのだろう、って。

    各物語の主人公はみなそれぞれ自己というものを強く持っていて、周りと調和するためにひた隠しにしようとしたりその逆に人とぶつかったりしながら、自分の生き方というものを探っているように見えた。
    一本取られた!という思いですかっと読み終えられる物語ばかりで気持ちよかった。

  • 短い物語の中に、きちんと凝縮された人それぞれの考えや生き方がスパイスのように散りばめられていて、面白い作品でした。
    忘れかけていたこと、忘れようと思っていたこと。
    登場人物それぞれがとっても物語の中で生きていた作品だと思いました。
    これから生きていく中、自分自身どのように成長し変わることができるのだろうか?
    そう思える短編集でした。

  • 先日読んだ著者の塾の話が面白かったので、 もう一冊読んでみました。
    直木賞受賞作品です。

    長編が面白かったのに本作品は短編集だったので、どうかなあ?と少々不安でしたが、予想以上にとても面白かったです!
    短編も長編も両方ぴったりの分量で描けるのってすごいと思う。
    深く掘り下げられにくく、あっさり終わってしまう短編は好みではないのだけど、本作は短編なのに読み応え十分。感動しました。

    例えば表題作のビニールシートは、難民の、どこかに飛んで行ってしまう命を表しています。
    愛し合って結婚しながら、難民のためにすべてを捧げる夫と、夫を理解しようとすることに疲れてしまった妻の物語。
    ラストシーンで彼の価値観が彼女の価値観にかわる瞬間がとてもいいです。涙が溢れました。。

    他にもボランティアで犬の保護をする主婦、大学で学ぶフリーターの男性の話など、扱うテーマは多岐にわたりますが、それぞれについてよく調べてあることにも驚きます。
    それだけでなく、例えば仏像修復師の話「鐘の音」なんて、鬼気迫る心理描写に圧倒されました。すごいよ。
    とにかく、人生に向き合い、信念を持って生きている人を描くところは各短編に共通していて、さわやかな気持ちで前向きになれる読後感でした。

  • それぞれに頑とした大切なものがあって、そのために懸命に生きる様子に勇気をもらえる
    不器用でも、大切にしたいものをしっかり持っていれば真っ直ぐに生きていけるのかも

  • 自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。
    一見、ちょっとかわった人たちの生き様が描かれているのだけれど、どの登場人物にも「羨ましい」という感情が芽生えた。どの人も、「自分が最も大切にするもの」がわかっているからだ。
    私は今、「あなたの人生でいちばん大切なものは何か」と問われても、答えられない。答えられない自分が嫌で、もどかしい。私も「大切なもの」を見つけたい、と思った。

    森さんの著書は「カラフル」しか読んだことがなかったけど、他の作品ももっと読みたい!

  • 大切なもの。

    大切なもの。

    考えてみると、たくさん浮かぶ。

    命、健康、家族、親友、恋人、友人、お金・・・

    誰もがみんな、大事なものを抱きしめてる。

    そして、その大切なものに気づく過程も、それに向き合う姿勢もみんな違う。

    そんな当たり前のことに、心の芯から気づかせてくれる小説。

    自分のすべてをかけて大切にしたいと思えるほど大切なものがあるという事実、
    そして何かを犠牲にしてでもそれを大事にしていこうとするまっすぐな姿勢は、
    とても魅力的だと思う。

    自分の大切に想ったものを貫けるひとは、かっこいい。

    ここに出てくるのは、不器用で、一生懸命で、でもそんなかっこよさを持っているひとたち。



    私もそう在りたいよ。

    大切なものを、まっすぐ大切にできる自分でいたい。


    そう思うと、身近な人を大切にしようと思う。

    もっともっと、大事にしたい。



    「風に舞いあがるビニールシートがあとを絶たないんだ」

    「僕はいろんな国の難民キャンプで、ビニールシートみたいに軽々と吹きとばされていくものたちを見てきたんだ。人の命も、尊厳も、ささやかな幸福も、ビニールシートみたいに簡単に舞いあがり、もみくしゃになってとばされていくところを、さ」

    「仮に飛ばされたって日本にいるかぎり、君は必ず安全などこかに着地できるよ。どんな風も君の命までは奪わない。家を焼かれて帰る場所を失うことも、目の前で家族を殺されることもない。好きなものを腹いっぱい食べて、暖かいベッドで眠ることができる。それを、フィールドでは幸せと呼ぶんだ」

  • 【風にまいあがるビニールシート】は2006年第135回直木賞を受賞しています。
    6話からなる短編集。
    年齢も職業も生き方も違う主人公たち。
    ただひとつ共通していることは大切な何かのために精一杯生きようとすること。

  • なんだかびっくりした。
    最初は読みやすいな~と思いながら、気軽に読んでいた。
    でも、『守護神』あたりからぐっと引き込まれ始めて、そこからの4話は読み応えを感じながらも一気に読んでいた。

    森さんって、すごいんだな。と思った。
    確かに、素敵な話でぜひおすすめしたい、とかじゃないけれど、いい。
    たしか『カラフル』『アーモンド入りチョコレートのワルツ(?)』っていう本も森さんだったような気がするんだけど、これがいいと思う。

    『鐘の音』は仏師の話で、その雰囲気が夏目漱石の夢十夜の中の第六話?(不確かw)に似てるかんじがしたし、ミステリーっぽくて最後にはそうきたか~^-^!ってなった。

    6話とも内容はばらばらだけれど、どれもなんだか好きになる。
    癖があるけどみんな自分なりの芯がある登場人物たちだから、小気味よい。
    どれも、結構内容が専門的で、しっかり調査された上で書いてあるんだなぁと思う。
    だから、ストーリーだけじゃなく、色んな職業の事情についてもこんなかんじなのかな、と思いながら読める。

    特に『ジェネレーションX』と『風に舞いあがるビニールシート』の終わり方がすごく好き。自分にとって大切なものに気付く、前を向いた瞬間っていうかんじで。


    ふとしたときに、人との交わりのなかで気付ける、自分にとっての真理を
    大事にしたいものです

  • 自分の価値観を曲げずに生きるのは、容易いことじゃない。
    その価値観が、世に言う‘常識’とずれていたら尚更だ。
    それでも、誰かとぶつかっても上手くいかなくても格好悪くても、自分の大切なものを守ってひたむきに生きる人たちの物語は、勇気をくれた。
    自分は、自分だけは、とことん自分を応援しよう。その生き方に、信念に、太鼓判を押そう。

    6つある短編の中でも、特に「ジェネレーションX」が好き。泣き笑いしてしまうくらい、好きだ。

  • 大切なもの。をテーマにした短編集。各々が大切なものを持っていて異なっていて、でも共通してるのは夢中になれるってこと。それって素敵なことだと思えた。自分の夢、理想、他人の夢、世界、目標… 大きさもまちまちで、どれが偉いとか劣ってるとかではなく大切なものを大事にする生き方っていいなって感じた。大切なものが異なるように同じ人間っていなくて、それは決して悪いことじゃない。全く異なる人物の、それぞれの大切なものの話。

  • 短編集なのでサクサク読めます。

    この中では「風に舞い上がるビニールシート」が一番印象に残る。
    すっごい心臓がギューってなってせつない。
    人を愛するって素敵なことだけどせつなくてわからないこともわかってないこともたくさんあって…

    「鐘の音」も個人的には一生忘れられない話。
    これを読んだ後に行った京都旅行、行きの新幹線で偶然みつけた興福寺の国宝特別公開でこれに出てくる「不空羂索観音菩薩座像」を生で拝むことができちゃったの♪

    狙って読んだわけでも、国宝公開を狙って行ったわけでもなく、本当にぜんぶが偶然だったから、なんだか出会いのタイミングに感動してしまったのです。

  • 直木賞受賞作ということで、手に取りました。

    短篇六つから構成されていて、それぞれ主人公や内容はばらばらでしたが、共通のテーマみたいなものはあったと思います。
    それは、「自分にとって一番大事なものはなにか」ということ。

    特にそれが感じられたのは、「犬の散歩」と「ジェネレーションX」でした。
    自分の価値観や大事にしたいものがあるってのは素敵だと思います。
    それがたとえ、他人に理解されないものだとしてもね。

    でもそれだけに、登場人物に同調できるかどうかの差が激しかった。
    とりわけ「器を探して」の主人公には理解を示せなかった。
    あんな女の人、大嫌いだなあ。
    ラストに関しては、仕事のために自分を犠牲にするにしたって、程度ってものがあると思う。
    自分のプライドを捨てられるのは素直に凄いが、傍からみたらドン引き。
    結局自分で何かがしたいんじゃなくて振り回されてるだけじゃないかと感じた。
    オチとしてもはっきりしないうえに後味が悪くて気に食わなかった。

    表題作である「風に舞い上がるビニールシート」は文句なく良かった。
    やっぱ結婚って難しいよな、と。
    まったく違った環境で育ったふたりがわかりあうというのは、並大抵のことではない。
    そのうえ、赴任が多い職場だと尚更心の距離も遠のく。
    主人公達も勢いに任せず、もうちょっと話し合いをしたらよかったのにな。
    でも夫婦ではなくても、互いに情があるって関係は素敵ですね。

    総評としては、ガツンとやられるような作品はなかったかも。
    どれも個人的趣味の世界を生きている主人公の話で、読者の立ち入る隙があまりないと感じました。
    でも、似たような境遇の人は共感できるのかもしれないな。

  • 爽やかな気持ちになれるのを読みたい、と言ったら先輩が奨めてくれた作品

    短編6作品どれを読んでもテンポが良く
    読み終わった時に
    「良かったな〜」「頑張って!」「そうだったのか」など
    色々な意味で微笑んでいました

  • 幼い頃、将来は自分の好きなことを仕事にし、好きな人を結婚することが当たり前だと思っていた。
    子供の頃のように無心で「好きなこと」に邁進できたら幸せだと思う。

    けれど大人になるにつれ、色々なしがらみに捉われ、「好きなこと」だけ選んで生きられるほど人生はたやすくないということに気づく。
    人生は選択の連続で、その都度自分の心へ真摯に問いかけ続けても、果たしてそれが本当に幸せな生き方なのか自信が持てないことの方が多い。
    その連続性は死ぬまでずっと続くのではないか、どんなに一生懸命生きたところで、問いかけの連続で擦り減った自分しか最終的に残らないのではないか、とふと絶望感に襲われることがある。

    しかしこの本を読んで、自分の直観で「これだ」と思ったことを無視して人は生きることは出来ないのではないかと考えた。
    何故なら、この短編集のどの主人公たちも、理屈や世間一般の常識を超えて、本能的に自分で選んだ道を歩み出してからの方が人生が輝き出しているからだ。

  • これはねーよ、って思う要素が10%くらいあるが、そんな些細なことは関係ないくらい面白い

    鬱々とした部分もあるがアクセント。

    内容は、解説の通りだと思いました

  • 以前この小説にUNHCRではたらく女性の話が載ってるよ~と聞いてたので読みました。


    全編おすすめ。
    作者の森絵都さんは多分かなりおたく気質な人だと思う。

    仏像の修復師の話が好き。

  • 森絵都さんは児童書の作家さんのイメージが強かったのですが、この作品はそのイメージを覆す題材でかかれています。
    短編集なのでそれぞれ味わいがあっていいのですが、本の表題となった作品は「幸せとは?」「大事なものとは?」などなど考えさせられ、一番心に残りました。

  • 理解されないこだわり、夢中になるもの、ゆずれないものを持っている人の話。狂気的に見えてしまうかもしれないけど、持っていない人にとっては持っている人がうらやましくもあって。

    世間の悲惨さに自ら関係することを選んだり。
    何もかも投げ出すバカさ加減をもって生きていくこと。

    突然現れる心に刺さるワードたち。

    直木賞受賞作という理由で、本屋で手に取ったけど、出会いに感謝。

  • とても面白かった。
    すべての物語が大切なもののために。余韻がとても心地よく短編集ながら何度も読み返しながら読み終えました。
    人物描写がとてもよく、何処に落ち着くのかよくわからずに読み進めていくうちに、見事に期待を裏切るところに終着してほんとに読後感がよい物語でしたね。
    守護神と風に舞い上がるビニールシートが特に好きでしたね。

  • 短編集でありながら、すべてテイストの違う物語が納められていて様々な人生模様についてインスパイアされる。予定調和的かと思えば最後はちょっと裏切られ、登場人物たちは人生に没頭するものを見つけてさぞやハッピーかと思えばそうでもない。まさしく現実世界の機微を忠実に物語としてアレンジしていくとこうなるのだろう。

    信念を貫くことは気持ちよく、人間として尊いことだろう。でもそれに伴って犠牲にしていく人やコトが増えていけば、その信念が揺らぐことだってある。この短編の主人公たちもそんな等身大の人間であり、揺らいだ時にどんな状況でどのような判断をしたのか、読み手にとっても思い当たるような日常的なトーンでまとめられている。

    後から振り返るとターニングポイントだったと思えることでも、その当時では平凡な一日にしか映らない。その逆も然りで、結局のところ他人想いでエゴイスティックで、思慮深くて奔放な相矛盾する性格を抱える人間がバランスを取って毎日を生きているということなのだろう。

  • うん。まぁまぁ面白い。

  • iPad miniを手に入れたのでぼちぼち再開。PCはもはやHDDしか使い途がない、、、

    さて本作。表題作が一番好きなわけだが決して万人が納得する物語じゃない。(そういうやつだとむしろ「ジェネレーションX」をお勧め。)
    以前ハッピーエンドを望むようになったと書いた記憶があるけど、全てがそうかと言うと決してそんなことはなく。
    むしろ予定調和のハッピーエンドや舞台装置としての鬱エンドを好まなくなったという方が適切かも知れない。着地の仕方が納得できるかどうかに拘るようになったのかも。

    だから表題作で自分が一番響いたのは記者の最後の一言だった。「美談にはしません。ただ、一縷の希望はもたせたいと思います」

    ま、これ自体が泣かせに来てるだろ!と言われればそれまでなんだけど。
    悲劇の中に救いを、幸せの中に影を。一意的な解釈に対してのエクスキューズを自分は欲しているんだと思う。
    だってせめて物語くらい、想像できた方が楽しいじゃない。

    表題作以外も総じてクオリティ高く、お勧めです。

  • 6つの短編集。
    どれも雰囲気が違っていて、同じ人が書いたの?って思えるほど。

    どれも印象に残ったけど、特に「鐘の音」と当タイトルが心に残った。

    大切なものは人それぞれ。

    懸命に生きる人の姿。

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風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)の作品紹介

才能豊かなパティシエの気まぐれに奔走させられたり、犬のボランティアのために水商売のバイトをしたり、難民を保護し支援する国連機関で夫婦の愛のあり方に苦しんだり…。自分だけの価値観を守り、お金よりも大切な何かのために懸命に生きる人々を描いた6編。あたたかくて力強い、第135回直木賞受賞作。

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)はこんな本です

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