風に舞いあがるビニールシート (文春文庫 も 20-3)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167741037

感想・レビュー・書評

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  • 「犬の散歩」「ジェネレーションX」好きだなぁと思いながら気分転換のつもりで読んでいたら、最後の表題作が他と一線を画す圧倒的な重さだった。森絵都さんの児童文学のイメージも相まって「風に舞い上がるビニールシート」って、詩的な牧歌的な世界を想像していたけど全く違った。身を置く環境によって異なる世界の見え方、平和ボケの日本への違和感、二人の人生の折り合いをつけることの難しさ。久しぶりに小説読んで泣いた。

    引用「平和はかくも美しい。ボケでもなんでもすばらしい。どうかこの美しさが、すばらしさが永久に続きますように。」

    そうだなぁ。

    以前同僚に「日本で働くのって何が良いの?」って聞かれたときに「財布を落としても返ってくる治安の良さは世界一」しかぱっと出てこなくて頭を抱えたけど、平和なことはやっぱり美しいなぁ。

  • 生きるのが下手で、不器用ながらも必死で、もがき苦しみながら生きている人たちの物語。
    この物語の主人公たちは、自分であり、自分の周りにいる人たちだ。
    だからこそ、この物語たちに惹かれるのだろう。
    絶望ではなく、希望を見出すために必死に生きていこうと思える物語。

  • なんと浅はかな人生か。
    森絵都に初めて触れたのは中学、高校時代。森絵都は確かにその年代を向けて作品を生み出してたし、まさにどんぴしゃ。そのイメージに捉えられたまま、大人に(おじさん)森絵都作品って今更なぁって思ってた自分。損してたね。だいじょうぶ。今からでも取り戻せるよ。

    6作品とも趣向、漂う雰囲気が違って作者の奥深さに感服いたしました。あえて、全作品好きって中々ないけど信じられないぐらい全部本心から魅力的と言えるけど、あえて1作品選ぶんなら『ジェネレーションX』
    圧倒的にカジュアルな作品。でも、今の自分がどんぴしゃだからか1番共感できた。傍目からみたらバカバカしい、けどそういう若い日の瑞々しい、ちょっと恥ずかしい頃の気持ちってあっさり捨て切ることできないよね。と言うか、そういう気持ちを隅っこにでもいいから持ち続けていたい。ちょっと遅れたっていいじゃない、ビバ青春!

  • 人生において大切なものは人それぞれだということは、当たり前だけど忘れてはいけない。テイストの異なる6編を通して、各主人公の信念を持って生きる姿に勇気を貰えます。
    私は表題でもある風に舞い上がるビニールシートが一番好きです。ストーリーは勿論、難民たちの軽んじられた命やささやかな幸せが脅かされている様子を「風に舞いあがるビニールシート」と表現する、その表現力!素晴らしいです。

  • 現代人はお金にふりまわされているのかもしれないですね。
    お金では表せないもの、そんなものを改めて考えさせてくれます。

  • <大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語>それぞれの登場人物に共通点はあるものの、仏像修復や犬の保護活動、UNHCRの仕事など、お話の色がそれぞれに全く異なっているのが面白かった。「ジェネレーションX」は大人の青春の物語で最後には爽快感があって好き。表題作は主人公の里佳があまり好きになれなかったけど、結末の暖かさがすごく良かった。

  • 短編なのに、詰まってる情報が濃い…!!焼き物、犬の里親ボランティア、古典文学、仏像修復、国連難民高等弁務官事務所(←初耳)。情報を提供することを目的に書かれているんじゃないから、当然紙面に登場する情報の何十倍の知識を得てから書き始められてるんですよね…。それで短編…。
    大吟醸。

  • ひとつひとつの物語が濃くて、毎回読み上げるごとにあーってなった。最後の風に舞いあがるビニールシートはすごすぎつよすぎ

  • 短い物語の中に、きちんと凝縮された人それぞれの考えや生き方がスパイスのように散りばめられていて、面白い作品でした。
    忘れかけていたこと、忘れようと思っていたこと。
    登場人物それぞれがとっても物語の中で生きていた作品だと思いました。
    これから生きていく中、自分自身どのように成長し変わることができるのだろうか?
    そう思える短編集でした。

  • 6編からなる短編集で、前半の3編まで「普通だなぁ」(普通って何なんだろう?とも思いますが・・・)と思いながら読んでいて、ページをめくる手のスピードも上がらなかったけど、4編の『鐘の音』から何か感じるモノと、物語に入る自分が出て来て、スイッチが入ったかのように、その後の『ジェネレーションX』『風に舞い上がるビニールシート』を読み、結果凄く興味深くて、とても面白かった。
    『ジェネレーションX』では、表題の通り、主役の健一(40歳手前)が、取引先の若い20代の石津と一緒に、顧客の所へ向かう車の中で、私用の電話をしまくる石津にジェネレーションギャップを感じるのだけど、だんだん会話の内容に興味を持ちはじめ、残っていた若い自分のカケラが出てきたという話に、共感する自分が居て、とても爽やかな気分になりました。同時に、若い石津のように、青春を忘れない、1日ぐらい仕事や責任や何もかもを投げ出す日を持つ人間でいることも大事なんじゃないか?健一のようにそんな思いを忘れてしまっている人が多く、息苦しく感じる世の中で、そうそう大人にならなくてもいいのではないか?と私は思いました。
    解説も載せられていて、読んでみると、あまり面白いと思わなかった前半の3編も、「なるほど・・・」と思うことがあり、もう一度読んでみると、きっと面白いんじゃないかと思います。
    「大切なもの」は人それぞれで、それでいいんだと、この作品からおしえてもらったように思います。

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著者プロフィール

森 絵都(もり・えと):1968年生まれ。90年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞し、デビュー。95年『宇宙のみなしご』で野間児童文芸新人賞及び産経児童出版文化賞ニッポン放送賞、98年『つきのふね』で野間児童文芸賞、99年『カラフル』で産経児童出版文化賞、2003年『DIVE!!』で小学館児童出版文化賞、06年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞、17年『みかづき』で中央公論文芸賞等受賞。『この女』『クラスメイツ』『出会いなおし』『カザアナ』『あしたのことば』『生まれかわりのポオ』他著作多数。

「2023年 『できない相談』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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