学校でできること 家庭でできること 本当の学力をつける本 (文春文庫 か 35-2)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167753702

作品紹介・あらすじ

塾もないやまあいの公立小学校の卒業生から、国立難関大学合格者が続出。その公立小学校には、「生活習慣の確立」「読み書き計算の徹底的な反復」を軸にしたユニークな実践が続いていました。本書は、その「陰山メソッド」を家庭でもできるようわかりやすく書き下ろした一冊です。巻末に、「家庭でできる教材一覧」を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 陰山英男さんが兵庫県山口小学校で担任を持っていた頃に実践されていた学力向上の取り組みや、2002年に始まった新学習指導要領(ゆとり教育化)への問題提起など。20年前の本。

    80年代、学校の一斉画一の指導で子どもたちの個性は奪われていると散々学校は批判された。
    その後、新学習指導要領では学校や教師の自由裁量が大きくなり、それまでのように指導要領で決められたことしかできないというのではなく、各教師、各学校によって指導にバラつきが出ることになる。そうなると批判の矛先が制度ではなくそれぞれの教師に向くことになるのではないか───
    最後の懸念点は陰山さんの未来予想だけど、これは現実のものとなり、公教育に任せておけないと考える親たちが低学年で塾に入れ中学受験の準備をする最近のムーブメントにもつながっている気がする。

    以下なるほどと思ったメモ。
    ・読み書き計算ができると集中力がつき子どもたちが落ち着く。
    ・社会の用語は(習っていないものでも)漢字で覚えること。そうすることでイメージと共に思い出すことが出来る。漢字の特徴を生かすため。
    ・低学力というのは、能力そのものより自分は出来ないんだという思い込みが原因になっている場合が多い。


    朝食にはパンより米を食べた方が良いとか、父親が進路の話をした方が良いとか、やや前時代的な記述もあるが、それ以外は今でも違和感はなく為になる内容だった。
    子供たちにより良い教育とは?と切磋琢磨した当時の若き教員の真剣な取り組みに胸が熱くなった。これも古き良き時代ならではの話なのかもしれないと思うと少し悲しい。

  • 20年近く前の内容のため、教育事情は今と異なる部分が大きいが、短時間で基礎学力を身に付けさせる方法や、その効用については参考になる部分が大きい。

  • ・読み書き計算を毎日繰り返すことで脳は大きな成長をとげる。「脳も、手足の筋肉もまったく同じ。毎日、ランニングをするのと同じように、計算問題を解き続けると、脳のいろいろな場所が鍛えられる。たくましい脳になると、脳をうまく使うことができて、いろいろな、もっと難しい問題を解くときも、上手にできるようになる。学習で、いなかの一本道を高速道路にするただ一つの方法はくりかえし勉強して、脳の細胞と細胞の間に何度も何度も情報を流すことなのです」by東北大学・川島隆太教授

    ・テレビを1日2時間以上見る子に高学力の子はいない、その理由は、学力をつける上でたいへん重要なしんぼう強さが育たないから。

    ・公文式の意味…百マス計算をみて、これは公文と同じではないですか?という質問をよく聞くが、私は「その通りです」と答える。そもそもこうした学校の盲点は、授業構成が理解に重点を置きすぎ、習熟のための時間を軽視してきたから。公文式を計算ばかりと批判する先生もある。しかし、週2回、それもそう長くもない時間指導しているだけにもかかわらず、それなりの効果があるというのは、学校のカリキュラムの盲点を衝いているから。塾のカリキュラムだからと頭から否定したりすることはできなくなる。しかも学校は朝から夕方まで、子どもを教育している。そもそも週に2回程度塾に通って、学校と同程度の学習をしていながら、はっきりとした成果が出てしまうなら、学校は何をやっているんだということになってくるのではないだろうか。

  • 2007/6/21

    陰山メソッド

    という言葉も生まれて時代の寵児と化しておられる,
    現在は立命館小学校の副校長の任にもつかれている陰山先生の本です
    小説でもないのに
    感動したわ.

    最近,学校教育関係の本が多いわけですが,
    安倍総理が教育関連法案を変えて,「愛国心」という言葉を入れるとか,議論になっている一方で

    現実問題,時間数が減って組み立てられないカリキュラムや,
    はき違えた個の尊重で硬直化した先生=子供=親関係などで現場は混沌となってるわけで.

    陰山メソッドは古くて新しい.というか,古いから新しい.
    コヴィーの7つの習慣でも思ったことだが,この辺の人間の成長に関わるまわりのことは
    真新しく無い事こそ
    ,本質かもしれない
    陰山メソッドは徹底して
    「読み書き計算」


    呼んでいて,小二の時,2年2組で,きょーちゃんという公文にいってた同級生と
    九九の百マス計算で,クラスの一位二位を競ってた,ある種の原風景を思い出しました.
    # のすたるじぃぃぃ~

    皮膚科に通院してたときに,半泣きになるまで母に九九いわされた事も思い出した.
    # のすたるじぃぃあぁぁ~

    まあ,現在,数理関係で身をたてている自分の原点かもしれませんね.


    総合教育だ,教育に於ける地域との繋がりだといっても,頭の中に組み込むべき計算なり言語なりというものは,それこそ機械的にあるわけで,

    そしてまたその習得は多少の個人差すらあれど,人間の脳が通常の可塑性を持つ限りとにかく運動学習と同じ,反復で何とかなる世界なのです.

    というわけで,「やりゃーできる.」
    そして,その「やりゃーできる.」が,勉強嫌いの子供にも第1段階の自己肯定感を与えることで
    学習の全てのプロセスが回り出す.
    音読による暗唱にしても,
    「はじめは意味がわからなくてもいいんです」
    と,おっしゃる.
    これは確かにそうだ!そして,目からウロコだ.
    実は,実に深い.
    意味や理屈が分からないことは情報が無いのではなく,
    記憶したものが無ければ逆に意味づけしたり理屈を考えたりする機会がうしなわれるわけで,
    意味が分からんことでも覚えさすことには一定のいみがある.
    それが後から,しがめば味がでること受合いの名文ならなおさら.
    「理由は後付け」
    という言葉は,逃げ口上の様に聞こえる言葉だが,人間の認識の問題としても意外と
    深い.


    小学校の分数の計算から帯分数,仮分数が消えてるとか・・・・.
    電卓使ってOKになったとか・・・・
    文科省は何をかんがえてらっしゃるのやら・・・・・.
    ・・・というか,その諮問委員的な学術関係者は何を考えているのやら・・・・.
    円周率ってもう3なんですよね.たしか.
    円周率は素数だ!
    # うああああああー


    ちなみに,百マス計算をするときにはタイムを計るのがポイントらしい.
    自分の経験を通してもそれは確かに実感される.


    最近,ラボの勉強会で発表をタイマー使って5分で区切っているんだが,
    なんか,そのほうが燃えるんだよね.
    自分を燃えさせるっつー,ポジティブな言い意味で,時間を計るというのは
    脳みその活性化込みで,良いのかもしれませんね.
    ストップウォッチ再評価.

  • ただひたすら計算させるだけの人かと思っていたけど違ってた。
    陰山先生、公立学校長時代の著書。
    新しい本よりこっちの方がいい。

  • 著者の教室での実践が,個人的には参考になりました。理論が多いが,理論が好きな人にはお勧めです。

  •  新学力観とか生きる力とか、はたまた学習指導要領における授業時間の削減とか、教育現場に押し寄せる改革の波には教員の九割がとまどっているというデータが日本教育社会学会で発表されたという(「朝日新聞」二〇〇二・九・二二)。総合学習(総合的な学習の時間)についても半分以上の教師に不信感があるようだ。
     その根幹にあるのはこんなことで子どもたちに学力は保障できるのかってことだよな。口先だけの観念的な学力をどうこう言ったって、子どもたちが生きていくのに必要な知識や能力が身についていなければそれは教師だけの授業改革ごっこに終わってしまうからだ。
     言うまでもなく、授業(改革)の目的は子どもたちにどれだけ学力をつけたかということで、その学力っていうのは何だろうか。私たちは学力保障という形で子どもたちに学力をつけてきたけれど、「同和」教育の中では解放の学力とか何とかわけのわからない抽象的な学力観を語り、基礎・基本だとか、新学力観とか、生きる力とかいう文部(科学)省のもっともらしい学力観も鵜呑みにして、お茶を濁してきたのではなかろうか。
     本書の著者は兵庫県朝来町立山口小学校という田舎の小さな小学校の教師だ。この田舎教師の実践がなんでわざわざ本になったりしているのか、というと彼が四年間教えた五〇人の卒業生のうち二割くらい(十人ばっかり)の子どもたちが難関大学に合格していたという自慢話によるのだ。実際、この数字は都市部の有力進学校の数字を凌ぐものかもしれない。学力が進学実績だけではかれるものではないと多くの偽善的な教師は言うかもしれない。しかし、この教師は小学校の教師であって、受験指導をしたわけじゃない。受験勉強をしたのは子どもたち自身であり、子どもたちに何らかの学ぶ力がついてたってことだと考えることもできる。
     で、その秘密を本書に求めてみるとそれは基礎学力だというのだ。さて、それじゃ基礎学力とはなんじゃい、ということになる。本書によれば「山口小学校の一〇年余にわたるプログラムの基本は『読み、書き、計算』という基礎学力を反復練習によって徹底させるということ」だったそうな。「なんだ、それだけかい!」とムッとくるかもしれないけれど、けっこう大切なことをこの陰山センセは言っている。基礎学力というのは後々自分で学ぶときのまさしくモトになる力だ。その意味ではきちんと読み書きができなければ何も学習できないし、理系ならばきちんと計算するという力がなければ前へは進めない。ただそれだけのことなのだけれど、それを愚かな高校教師のように詰め込んだって基礎学力にはならない。たとえば陰山センセは音読を薦める。音読といえば『声に出して読みたい日本語』(斎藤孝著)なんてのがベストセラーになってましたなあ。僕は買ってないけど…。とにかく体感的に言葉を学ぶ、これはだいじやね。
     そして基礎学力の上に総合的な学習をするのだという。その過程ではたとえば「歴史上の重要人物は漢字で覚える」ことを提唱している。その漢字を習ってないからといって一部を平仮名で教えるなんて総合的な学習の基礎にもとるってことだ。そういうと基礎学力とは何かが少しは想像つくのではないかと思う。
     学力論争はさかんだけれど、学力論に関しては良心的な人ほど観念的であったり、一方で受験偏重の注入的な指導がまかり通っていたり、楽しくない反復練習が押しつけられたりしているのが現状みたいだ。基礎学力とは何かの基本に立ち返って基礎学力について考えてみようや。


    ★★★★ 「百ます計算」にはじまり、具体的に基礎学力を与えていくノウハウが載せられているのでハウツーものとしても使える。この陰山センセ、今やあちこちで引っ張りだこらしいけど、学力保障の理論が枯渇してきたり、実績が上がっていないと思ったら読んで見るべし。ふと振り返るとわれわれ教師自身の中にもこの基礎学力が不足している人間がいるみたいだということに気がついてしまった。だって後から付け焼き刃の受験技術で間に合わせてきたお友だちが多いんだもの(苦笑)。

  • 文庫化されたということで、今さら読んだのですが、なかなか勉強になりました。
    ・100ます計算
    ・脳についての話
    ・文章題での単位つけ
    ・歴史の授業も音読から
    など。
    陰山さんの本、近いうちにさらにいくつか読んでみようと思います。

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著者プロフィール

陰山ラボ代表(教育クリエイター)、NPO法人日本教育再興連盟 代表理事。全国各地で学力向上アドバイザーを務めている。『学校を変える15分 常識を破れば子どもは伸びる』(中村堂)、『早ね早おき朝5分ドリル』シリーズ(Gakken)、『陰山英男の「集中力」講座』(ダイヤモンド社)、『徹底反復「百ます計算」』(小学館)など著書多数。

「2023年 『6年分の基礎が身につく 小学生教科書クイズ700』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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