あめふらし (文春文庫 な 44-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167753719

感想・レビュー・書評

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  • 著者の「よろづ春夏冬中」『雨師』の市村兄弟、橘河が作品の中心として登場する。
    「よろず〜」を読んだ時には、こんな作品につながっているとは思わず、「あめふらし」では不思議な世界がさらに広がり、幽玄な雰囲気を楽しめた。
    ウヅマキ商會という不思議ななんでも屋を舞台に一癖も二癖もある社長の橘河・部下の仲村に翻弄される市村。
    物語は不可思議で、彼岸と此岸とその狭間を、行きつ戻りつするような感覚を覚える。
    鮮明な映像を見ているつもりが、いつのまにか8ミリビデオの映像に変わっていて、不鮮明で不確かな世界になっており、足元をすくわれる。
    読者はその都度、トラブルに巻き込まれる市村の困惑を疑似体験する。
    この不思議な世界観は著者の醍醐味だなぁと感じさせられる作品。
    各章において、どことなく湿度を感じる話で、「あめふらし」という表題は納得。

  • 不思議で妖しい、ほんのり切ない和風幻想譚。
    登場人物がほぼ同じ短編から成り立っていて、単に起こる出来事を淡々と描いていくだけかと思えば、終わりの方になってそうだったのか、と絡まった毛糸がほどけるようにつながりが分かり、静かな興奮を覚えた。
    とはいえ時間軸もあやふやで、まるで時空の渦の中に放り込まれて左右が分からないような状態。もう一度読みたい。
    大好きな一冊。

  • 長野作品の中で最も好きな一冊。
    妖しさが怪しさを呼ぶとでもいえばよいのか…。
    日常から一枚隔てた幻想を描く、いわゆるロウ・ファンタジーとしては非常に読み応えあり。

    自分にとっては珍しく手放しで「イイ」と思える1冊だった。

  • 始まりは奇妙な男から始まる。登場人物は、橘河、仲村、さゆり、橘河の嫁や鳩彦。主人公は市村だった。文春文庫とあって文章は読みやすいうえに文学的で、機械的な描写だけではなくイロを持たせるのがとても素敵だった。同性愛表現もあることで有名な長野まゆみさんだが、『あめふらし』は隠語や遠まわしな表現、それから直接的ではない言い回しをしているから、村上春樹の「ノルウェイの森」のような衝撃はなかったものの、まるで浮世絵や花魁の華やかな世界のようにあでやかだった。幻想的で妖怪をベースにしていることからエンターテインメントとして十分と私としては楽しめたし、何よりわかりやすい文章と穏やかな語り口でとても穏やかに読むことができた。

  • 不思議な世界。でも雰囲気が素敵で最後まで読めちゃう。お盆時期にぴったり?かも。

  • タマシイは、拠を求める。
    ああ、また傘を忘れてしまった。

  • 梨木香歩が好きな人にはいいかも!千野帽子の解説もいい。奇妙で冷たくて湿っている。わけのわからなさとホラーとエロが同居。ストーリーよりも世界を感じたい。

著者プロフィール

長野まゆみ(ながの・まゆみ)東京都生まれ。一九八八年「少年アリス」で第25回文藝賞を受賞しデビュー。二〇一五年『冥途あり』で第四三回泉鏡花文学賞、第六八回野間文芸賞を受賞。『野ばら』『天体議会』『新世界』『テレヴィジョン・シティ』『超少年』『野川』『デカルコマニア』『チマチマ記』『45°ここだけの話』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『銀河の通信所』『カムパネルラ版 銀河鉄道の夜』「左近の桜」シリーズなど著書多数。


「2022年 『ゴッホの犬と耳とひまわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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