黒い悪魔 (文春文庫)

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著者 : 佐藤賢一
  • 文藝春秋 (2010年8月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (553ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167773892

黒い悪魔 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • さすがの佐藤賢一、と唸るばかりだ。
    筆運びの卓抜さときたら、まったく尋常じゃない。
    いきなりの「三銃士」のオマージュにニヤリとさせられ、そこから先はトマ・アレクサンドル・デュマの豪放かつ数奇な運命に、読んでいるこちらも呑み込まれていくかのよう。
    常人離れした肉体の強靭さに恵まれながらも、その精神面はともすれば虚弱とも表現することができ、いかにもといった人間臭さを感じさせる主人公の描写が巧みだ。
    そしてあくまでも実在の人物をモデルにしているという節制が作用しているのか、人種差別に象徴される普遍的かつ文学的な課題を作中に盛り込んではいるものの、ゆき過ぎず抑えられているバランス加減も絶妙である。
    読者に思索を促すことはするけれども、その本分はエンターテインメント面にあると言わんばかりに。

    作品のタイプはまったく異なれど、皆川博子氏が書くクロニクルに通じる魅力がある。

  • 「三銃士」を書いたデュマの父親の話。

    そもそも三銃士も読んでないし、作家の本の中でおもしろそうだなと全く知識もなく読んだけど、1人の激情家の話として楽しめた。

  • 他に比べて元気さというか、はちゃめちゃさというかが少ない気が。あと、いかにも、な、男のヒトが喜びそうな表現とかも。
    デュマを描くにあたって、文豪の父から始めるところがいい。その英雄ぶりが文豪の冒険小説の登場人物を彷彿とさせる。内面が完璧な英雄でないところも読ませる。
    とはいえ、血湧き肉踊る、あの怒濤のような勢いがない・・・。ちと、残念。

  • アレクサンドル・デュマの父の話。

    この物語で良くも悪くも家族、とくに息子にとっては父の(娘にとっては母の)影響は計り知れないとわかる。
    そして、過去の境遇なども、その後の人生に大きく影響を与える。
    その影響からくる決断は、その人の人生にとってもちろん過大な影響を与える。
    小さな決断、大きな決断。
    そんな当たり前といっては当たり前のことがよくわかる。

    この物語の主人公は、カリブで生まれた黒人と白人の混血であり、また時代が時代であるから、相当に複雑な境遇であったゆえに、彼の思考は常に川に浮かぶ小船のごとくユラユラしていて、まさに波乱万丈を呼び寄せる。

    傲慢で傍若無人かと思えば、非常に繊細で、クヨクヨしたり、面倒くさい男なのですが、彼の奥様がそうであったように、魅力的である面も少なくなくダメだな~と思いつつ、ついつい応援して読み終えてしまった。
    近くにいたら、彼の副官のごとく胃が痛くなる思いをすることになるだろうけど。
    アンシャンレジームやナポレオンが活躍した時代に彼がいたことを知れてよかったです。


    発売当時に新聞の書評で見て暖めていたシリーズ。ようやく読みました。
    現在Eテレ「100分で名著」でも取り上げられ
    3月からは宝塚で「モンテクリスト伯」が上演されるし、良いタイミングといえばそうかも?

  • 時代背景はフランス革命からナポレオンが台頭する頃あたり、植民地のコーヒー農園で働く黒人奴隷が「黒い悪魔」と恐れられる将軍にまでのし上がる、立身出世の痛快劇です。
    主人公は、『三銃士』や『モンテクリスト伯』で知られる文豪デュマの父親です。
    黒人奴隷出身ゆえの劣等感からか「共和制」に理想を求め、強靭な肉体と美貌を武器に動乱期のフランスを駆け抜けていきます。
    デュマ家三部作の第一部で、『褐色の文豪』『象牙色の賢者』へと続いていきます。
    http://ameblo.jp/happybookreviews/entry-11258989854.html

  • デュマ将軍がナポレオンに認められた時、不覚にも涙出た。

  • アレクサンドル・デュマで、『厳窟王』や『椿姫』を連想しながら読み始めたら、お父さんの方のデュマでした。3代続けて同じ名前で(初代はトマ=アレクサンドル・デュマ)、2代目(大デュマ)が『厳窟王』『三銃士』、3代目(小デュマ)が『椿姫』を書いた人なんだそうです。
    『黒い悪魔』は3部作の初巻で、現在のハイチで黒人奴隷として過ごし、青年期にフランスに渡って軍人となり、フランス革命やナポレオン戦争を経験した初代の物語です。奴隷に戻りたくない、自由でありたいという強い思いを生涯持ち続けた美丈夫のお話をかなりわくわくしながら読んだので、この後、大デュマ、小デュマとストーリーがつながっていくのだと思うと楽しみです。(ちなみに2巻目は『褐色の文豪』、3巻目は『象牙色の賢者』というタイトル)

  • 「三銃士」「モンテ・クリスト伯」で知られる文豪デュマの父トマ・アレクサンドル・デュマを主人公にした小説です。
    時代はフランス革命の前後。貴族と奴隷とのあいだに生まれたトマが並外れた肉体を武器にのし上がっていくさまが描かれています。が、ただのサクセス・ストーリーではありません。
    それどころか人が隠し持っている複雑で嫌らしい内面を、執拗に露にする心理描写にうんざりさせられるかもしれません。
    それでも最後には、彼はただひたすら愚直だっただけなのかも…と思えるのですが。
    それともうひとつ、この時代がかった文体は慣れるまで読みづらいかもしれません。

  • 子供のころ三銃士やモンテクリスト伯が大好きでした。大人になって、何かの展覧会で作者大デュマが黒人の血をひいていたことに初めて気付き、黒い悪魔と呼ばれた将軍だったその父親にも興味をひかれていました。なので、この本の表紙とあらすじをみて即決で購入。

    が、、、意外と読むのに時間がかかってしまいました。
    背景に、アンシャンレジームの最後の時期からナポレオン台頭まで、フランス革命が一続きに描かれているのはとても興味深く、特に前半は調子よく読めました。かなり想像で補っていると思われる、デュマ祖父とロベスピエール、デュマ祖父とナポレオン(とジョゼフィーヌ)の関係も、よく考えたなーと思います。思いますが、、、うーん、個人的に、直情径行で考えるよりまず行動、っていうパターンのヒーローにあまり魅力を感じないからか、途中なんかすごくだれました。「王妃の離婚」なんかはとても面白かったのでちょっと残念。
    あと、細かいことですが、美丈夫と書きつつやたらと目がぎょろぎょろしているような描写が、故バーニー・マックみたいなコミカルな感じを想像させて、なんだか想像に困りました。

  • また手袋が破れた。赤い豆を塊にして強く握り、そのまま思い切り手元に引くと、丈夫なズックの生地が、ざっくりと裂けたのだ。

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