それってどうなの主義 (文春文庫 さ 36-8)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167773953

作品紹介・あらすじ

「それってどうなの主義」とは、なにか変だなあと思ったときに「それってどうなの」とつぶやいてみること。ただそれだけですが、とても大切なことです。日の丸、戦争、靖国から、皇室、教育、ファッション誌まで、オウム事件後10年のニッポンの右往左往ぶりを明快に解き明かし、違和感を突く痛快エッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • 「それってどうなの主義」とは、
    何か変だなあと思ったときに、
    とりあえず、「それってどうなの
    とつぶやいてみる。ただそれだけの主義。
    この「つぶやき」には、ささやかな効用がある。
    ①違和感の表明である
    ②頭を冷やす氷嚢
    ③暴走を止めるブレーキ
    ④引き返す勇気
    言われてみるとなるほどなと思う。

    斎藤美奈子は新聞のコラムでよく読む。
    ハズレ無しの面白さ。視点がいい。
    「男女対抗戦の謎」(P72)と
    「親戚感情と村八分」(P85)は
    我が意を得たり。
    「バーチャルな語尾」(P76)は
    かなり笑える。
    20年以上も前に書かれた文章。
    今だ世の中が変わっていないのに驚く。
    色んなことを気付かされる。

    「マイナーな趣味」(P127)も素晴らしい。
    マイノリティに対する視座がラディカルだ。
    池田清彦の文章を引用して
    「なぜ自分たち虫屋は差別されるのか」
    「なぜメディアは『マニア』を罪人呼ばわり
    するか」を考察している。
    「まずマニアは完全な少数者であって、
    多数派になることは決してないこと。
    一つはマニアを非難している限り、
    その非難が我身にふりかかってくる危険
    はないこと。
    一つはマニアの求める貴重な昆虫類は
    アニアが非常に少数者であるという
    理由により、資本主義には露ほどの打撃も
    ないこと」(池田清彦『昆虫のパンセ』)

    「地名のトリック」(P132)の
    「原子力関連施設だけは逆で、
    わざと狭い地域に限定されたマイナーな
    地名を名のりたがる」(P136)
    は目からウロコの指摘だった。

    「『あきらめ』や『ひねくれ』って、
    ダメの象徴だと思うでしょ。
    でも、ちがうのだ。すくすく育った
    杉の子より、いい仕事するのは
    少し屈折して、いじいじした人である。
    なぜって、ひねくれ者は必ずや周囲を
    よく観察しているから」(P362)※

  • 著者が独自の視点から、世のなかのさまざまな現象に鋭いツッコミを入れていく本です。

    「翔んでる男」と題されたエッセイでは、「子育てに積極的に参加しているオレ自慢」をする男たちを、キャリア・ウーマンのカウンター・パートとして読み解いています。女性の社会進出がようやくはじまったころ、男から見ればあたりまえの仕事の話題を自慢げに話す傾向があったのではないかといい、パーティでオムツの話をする男を軽く揶揄しています。

    あと、ここで例にとりあげられているホラー作家の鈴木光司に対する著者のまなざしが、それほど厳しくないことが、すこし意外に感じられました。

  • 時間があれば

  • 嫌いではないが左市民臭がうざい。

  • 教育テレビ「このまちだいすき」を取り上げていたとは。懐かしい。

  • もう直接言ったらいい。

  • 第1次安部内閣の話だけど、安保改正で内閣退陣した祖父の汚名、恨みを晴らすことがこの人の最大の目的というショッキングな文章、2014年7月の安部総理の発言等を見てると、非常に的を得ていると納得。

  • 相変わらずのひねくれエッセイ。書評ではないので★4

  • 著者がここ十年ほどのあいだに新聞や雑誌に書いたエッセイをまとめたもの。
    君が代問題、皇室報道、学校教育、ジェンダー関連など主に時事ネタについて「それってどうなの」と疑問を呈している。
    一つ一つが短めなのがちょっと物足りない気もするが、相変わらず舌鋒鋭く痛快なエッセイ。
    一般的には三多摩のはずれにあっても「東京支社」を名乗るのに原発関連施設だけはわざと狭い地域に限定されたマイナーな名前をつける「地名トリック」とか、二ヵ国合同で恋愛ドラマを制作する場合は「自国の男性×他国の女性」であるとか、なるほどと思ったことも多かった。

  • それってどうなの主義
    タイトルのせいなのか、いつもの切れ味が感じられない。ツッコミで終ってしまい、斬るまでいかない、とでもいう感じ。
    題材が少し政治よりだからなのか、私がシニカルになったからなのか、読みながらの拍手喝采が少なかった。
    思うに、世相に鋭くツッコムだけだとtwitterやblogで見慣れた風景で、斉藤美奈子らしさ(=別の読み方の発見)が楽しめないのだ。もちろん、ツッコミの鋭さは一級品だと思うが、ツッコミで笑いをとるという身振り自体に空振り感を持つ。

  • 池上彰のきっちり石原叩く解説も面白かったが、やはり本編の彼女の突っ込み具合が素敵。軽々といろんなものをなで切りにしていったり思い込みに気づかせてくれたりと素晴らしい。

  • ミナコ先生の過去の作品に、2010年のコメントが入った、なんともファンにはありがたい作品。昔のミナコ先生の考えと、振り返ってのコメントもいずれも秀逸!

    同じニュースや事象を目にして耳にしているはずなのに、なぜにこんなにも違うのか???
    ふふーんとスルーする凡人のあたしと、ききっと立ち止まって分析するミナコ先生。ニンゲンとしての格が違うのか、もっと違うのは頭脳だろうがとにかく目線があまりに違う。すばらしい!

    読んで時代を振り返ったり、自分の小ささを実感したり。
    ただ読むもよし、自己啓発するもよし。とにかく充実した一冊は、じっくり時間をかけて読むのが正解。おすすめです!

  • 1998〜2004年に書かれたエッセイ。
    2007年の単行本化、2010年の文庫化に伴っての追記もあります。
    リアルタイムで読んだ方が面白かっただろうなとは思うけれど、こういうこともあったなぁと振り返ったり、今にして思えばと考えるのも、また違った面白さかな。
    戦前戦中の「総戦力体制」と環境保護運動が「似ている」というのに目うろこ。

  •  斉藤美奈子という人がどんな仕事をしているかはしらないけれど、ワイドショーを洩れなくチェックしている。
    40過ぎの専業主婦みたいな習慣だけれど、メディアで飯を食っている人みたいだから、それこそが仕事なんだろう。
    なんとなく生きてる人ならなんとなく聞き流すような、でもちょっと意識してみると?と思えるようなそんなところに対して「それってどうなの?」と言ってみる。
    一見ワイドショー批判の通俗的コメントの用に見えるけれど、なぜか無茶苦茶に物知り。
    中身を一読してみると、確かにおっしゃるとおりにおかしいし、それってどうなのと思うけれど、別にそこまで目くじら立てなくてもとも思う。
     左向きの臭いがしたから、つい買ってしまったのだ。

  • ナンシーのように、スッキリハッキリ書いてくれる人が恋しくて、たまにこの人の本は手にとってしまいます。

  • 単行本を持ってるのに文庫も買うのはいつもどおり。だって、文庫にしかないコメントが追加されてるんだもん、お得だ。そして池上彰の解説もなかなかおもしろかった。さらに、お得感があり大満足。私の職場には「それってどうなの」と口に出す人が実在する。他の部署からふざけた依頼がきたときや、上司からとんまな指示があったとき、私がふて腐れながらも取り掛かろうとすると、その人が「それってどうなのよ?」と言ってくれる。心にひっかかりを感じているのが自分だけじゃなかったんだ、と思えてうれしいの。この本もおんなじ。

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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