あぽやん (文春文庫 し 45-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167795016

作品紹介・あらすじ

遠藤慶太は29歳。大航ツーリスト本社から成田空港所に「飛ばされて」きた。返り咲きを誓う遠藤だったが-パスポートの不所持、予約消滅といった旅客のトラブル解決に奮闘するうちに空港勤務のエキスパート「あぽやん」へと成長してゆく、個性豊かな同僚たちと仕事への情熱を爽やかに描いた空港物語。

感想・レビュー・書評

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  • この年末、会社の方針で多くの先輩同僚が会社を辞めることになり、そのせいで私も新しい仕事に変わった。
    年末の最終日、笑顔で去る人たちを送り出しながら、彼らと一緒に仕事をした日々と会社生活の残りの時間を思いとても複雑で泣きそうになった。
    一日の大半の時間を会社で過ごす中で、仕事とそれに対する向き合い方は、私にとっては人生を大きく規定しているとも言える。
    さてこの本、最近出た「2」が面白そうだったので、最初から読んでみようと思い、一緒に並んでいたこちらから買って帰る。
    ツーリスト会社に勤め空港で働く、通称“あぽやん”。会社の中では閑職のようで、若くしてそこに飛ばされてきたと自覚する遠藤クンが主人公。
    TVドラマになるみたいで帯に伊藤淳史が写っているけど、主人公の孤軍奮闘の空回りと暑苦しさは確かにピッタリという気がする。
    成田空港から飛び立つお客に絡ませて、色んなトラブルが起こり、それに対処して行く内に徐々に空港のエキスパートとしての心構えが出来ていく。
    ありきたりではあるけれど、“笑顔”とか“いってらっしゃいませ”という言葉の陰にある接客業に携わる人たちの心意気というものが垣間見える。
    彼らのようにその一言に自分の仕事に対する自負を込めてお客様に向き合いたい。住田所長のように、仕事と部下のために、大事なものを壊さずに持ち続けていたい。
    多くの人が去った中、もはや年嵩になる身を思い、新しい年を前に、新しい仕事に対し、今までやって来た仕事への自負も含めて、心を新たにする。

  • 私には全然なじみがない空港が舞台だけど、とても楽しく読めた。旅行会社の中でも日陰部署とされている空港に配属された主人公29歳、最初はふてくされていたのが、仕事をこなすにつれ責任と自覚が芽生えてくる様子が応援したくなるお話。いろんなお客さんがいて、スタッフも個性的、毎日が笑顔とトラブルに彩られた職場・・・でも、そこが特別に刺激的で作り話っぽいという印象はない。主人公も転んだり力みすぎたりへこんだりと、全体的に身近な感じ、等身大に思えるところが良かった。

  • あぽやんとは旅行代理店が空港に配置するお客様窓口にして空港エキスパートのことだそうだ。かってはあぽやんは空港業務の花形だったらしいが、いつしか旅行代理店の閑職となり、そこは左遷を意味する配置場所になってしまった。そこに若くして「飛ばされた」若者の職業成長物語。

    空港で発生するトラブルにこんなものがあるのかっていう驚きが中心で、そこにどのように対処していくか、それが人間模様なのか、少々不思議な感じがした。軽妙で、多少人間関係にひねりがあり、ふてくされた若者が成長していく姿は読んでいて気持ちがよい。すらすらと読める。シチュエーションも初めてのなので新鮮だ。

    しかし、物語としての奥行きのようなものはあまり感じない。へー、といっておしまいのような。まあ、たまには肩の力抜いて次々読みたいときもあるので、そんなときにはすらすら読めてよいかな。

  • 上司に反抗して左遷され、空港業務通称あぽやんになり、
    さらには恋人にマザコンと指摘されてわかれてしまう。

    そんなやる気のない主人公が、空港業務に目覚め、
    恋に仕事にと打ち込んでいく姿を描いている。

    同僚、先輩、部下、上司、関係会社の社員、様々な旅行客。
    とにかく登場人物たちは多彩で、色々な人たちとのやりとりが
    出てきます。

    なんだか一緒にあぽやんになったような気分になれる
    作品でした。

    でもこれってシリーズ化したら面白くはないのかもしれません。

  • 空港で働く旅行会社の社員のお仕事小説。APOとはairportを指し、あぽやんは空港で働く社員を指すそうで。旅行会社を通じて旅行することもあるが、こちらには分からないが、もしかしたら、時にはこんな風に一生懸命動いてくれているのかも、と思うと、旅行会社だけでなくて、空港で働く人たち全体への好感度が上がる。

  • 本書のタイトル、あぽやん。
    何のこっちゃ?と思って読み勧めると一章の中で説明があった。
    あぽとは空港のことだ。航空業界、旅行業界では、かつてテレックスを使っていた名残で、アルファベット三文字で事物を表すことが多い。旅客はPAX、航空券はTKT、ホテルはHTL、そして空港はAPO。それをそのままローマ字読みにしたアポは、普段の会話の中でもよく使われる業界用語だ。
    本書は、空港勤務のエキスパート「あぽやん」を目指す青年の物語である。

    いわゆる「お仕事」小説である。
    「お仕事」小説......心ならずも「その仕事」に就くことになった主人公が、様々なトラブルに立ち向かいながら、その仕事の面白さ・やりがいを見つけ、成長していく(たまに恋愛も絡む)ってのが、一つの王道パターンだけど、本書は、その王道パターンのど真ん中を描いてる。

    30歳目前の遠藤君、大手旅行会社で企画などの仕事をやっていたのに、空港勤務を命じられる。渋々、空港勤務に赴くわけだけど、そこでは個性的な先輩や気になる女性が...。トラブルもたびたび起こり...。これ、「お仕事」小説の典型例だな。

    空港という、ある種「非日常」の世界を描いてるとこが目新しい。空港での仕事って、なかなか想像しづらいけど、軽妙なタッチで分かりやすく書いてる。
    主人公の遠藤君、カッコイイと思ったな。不本意な空港勤務とはいえ、目の前の仕事に一生懸命、向き合ってる。ふて腐れたり、逃げたりしない姿勢は読んでいて好感だ。

    欲を言えば、もう少し空港の仕事を掘り下げて書いて欲しかった。スラスラ読める文章だし、読んでいて気持ち良いけど、後に残らないというか...。主人公の心情ももっと書き込んで良いと思うけどなぁ。好青年ってのは伝わってくるけど、仕事や恋に悩んでる心情が、チョット書き足りないような...。

    ☆3個

    背表紙~

    遠藤慶太は29歳。大航ツーリスト本社から成田空港所に「飛ばされて」きた。返り咲きを誓う遠藤だったが―パスポートの不所持、予約消滅といった旅客のトラブル解決に奮闘するうちに空港勤務のエキスパート「あぽやん」へと成長してゆく、個性豊かな同僚たちと仕事への情熱を爽やかに描いた空港物語。

    作者の新野 剛志、たしか「八月のマルクス」で江戸川乱歩章を受賞してるんだけど、こんな軽妙な小説も書くの!?って、ちょっと驚いたな。続編も出てるようなので読んでみたい。

  •  ドラマを見てから読んだので、語りの部分は全て伊藤淳史の声が浮かぶ。今泉と森尾も、ドラマのイメージどおり。特に今泉。
     理不尽な客の要求にも笑顔で応じ、組織を代表して自分のミスでないミスにも頭を下げ、次々に起こるトラブルに対処していく。日々の仕事の中での様々な出来事や人間模様を、軽快な語り口で描いていて、読みやすい。

  • 新野剛志による旅行会社の空港係員の活躍を描くシリーズ一作目。
    タイトルの「あぽやん」が一体何を意味するのか、それが気になって読み始める。しばらくは明かされないが、明かされてみるとなるほど、そういうことかと納得する。そのあぽやんたちが巻き込まれる騒動と、それによって成長していく主人公がストーリーの軸だ。
    空港係員といっても、本作の係員は航空会社の子会社の旅行会社で働く人たちなので、他の旅行会社では持っていない特権も持っている。また、旅行会社のカウンター業務についても解説され、普段何気なく対応してもらっている空港の人たちの仕事が垣間見れて面白い。
    ストーリーも空港ならではであるが、登場人物も癖のある人が多く、本当にこんな人ばっかりだったら大変なのでは?といらぬ心配もしてしまう。
    旅好き、飛行機好きの人には既知の物事もあるかもしれないが、空港がどんな風に動いているのか、その一部を知ることができて、また旅に行きたくなる。そんな作品だ。

  • 新しいジャンルで面白かった。

  • 空港での旅客のトラブル対応をする部署に異動になった遠藤。エキスパートのあぽやんを目指す!
    頼もしいけど個性的な仲間に囲まれながら、様々なトラブルに対応し、恋愛もする。
    楽しいお仕事小説。

    2015.7.12

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著者プロフィール

しんの・たけし。1965年東京都生まれ。立教大学社会学部卒業。旅行会社勤務を経て、99年『八月のマルクス』で第45回江戸川乱歩賞を受賞。直木賞候補となった『あぽやん』は、その続編『恋する空港 あぽやん2』とともに、テレビドラマ化され話題に。同シリーズは『あぽわずらい あぽやん3』で完結。著書は他に、『中野トリップスター』『カクメイ』など。

「2022年 『明日はきっと お仕事小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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