- Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167801083
作品紹介・あらすじ
巨頭の少年フクスケは15歳にして生家を追われ、未知の大都会東京へと旅立つ。そこで出会った男のいざこざに巻き込まれ、伝染病が蔓延する中、死体の供養をしながら混乱と衰退と過剰が支配する日常を過ごしていた。そして、25歳になったフクスケは『劇団大人サイズ』を結成する…。文学史上、類を見ない冒険奇譚が今始まる。
感想・レビュー・書評
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松尾スズキが作家であり、小説を出していることをこの作品で知った。松尾スズキといえば、劇団を主宰していて、脚本家でもあり、雑誌などに面白いコラムなどを書いているライターでもある、ちょっと変わったおじさん、だった。重要なのは「ちょっと変わった」ところであり、そういう人が書いた小説とはどういった物語になるのか――というのが、この小説を読み始めた最大の動機である。
タイトルに「宗教」とあるのが、すでにただならない雰囲気をまとっている。宗教はいつだって不穏である。怪しさやうしろめたさがみじんもない宗教など、現代小説においてはモチーフにもなるまい。つまり、一風変わった男が、不穏な宗教を取り上げて書いた小説が、正当な純文学たるはずがない、との前提で読み始めたわけだ。
予想通りだった。まともな登場人物は、一人も存在しない。現実世界においても、まともな人間(と自分で思っている人は多いが)など稀有だが、この物語では見事に登場しない。そこで起きる出来事もスプラッターなことばかりだ。展開はジェットコースターのごとく疾走感があり、矢継ぎ早にスプラッターなことが起こる。
作者はしばしばそうしたスプラッタ―な場面を「描写不能」といって、多くの擬音語などでの描写をするのだが、「描写不能」と言っておきながら読み手には場面が映像として立ち昇ってくる。かつ、その映像はことごとくグロい。
これほどに事前の予想通りの物語だったことに、一番驚いた。松尾スズキ、恐るべし! 血やら体液やら「変な汁」やらがのべつ幕なしに流れ、絶えずエログロをまとって物語が進行するので、そうした話が極端に苦手な向きには推奨できない。だが、ここが松尾スズキの小説家としての文才ゆえなのか、そこにひそやかに人間愛が含まれている気がするのだ。
小説に入る前の長い前説的物語も読みどころだ。あたかもそれが落語の枕のようで、その疾走感を保持したまま、唐突に本編が始まる。どこを読んでも、もれなくグロい面白さがある。作者自身パロディ要素を意識して書いているのだろうが、その試みは概ね成功している。
ときに「わたしは一体何の物語を読まされているのだろう」と思いながら読んでいることはあったけれども、そんな細かいことは気にせずに読んでしまえ、とばかりに疾走感あふれる物語のリズムに乗せられて、一気に上巻を読了してしまった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
もうね、勢いでよまなきゃ!みたいな(笑)なんも考えずによみました。言葉の暴風雨、展開の竜巻、発想の宇宙みたいな(笑)
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2014.11.26読了。
今年36冊目。 -
頭から爪先まで松尾スズキ。
なんで演劇をやるような気が狂ってて主体性の数値が極振りされてるようなクソ男って、次々と女とねんごろになるんだろう。 -
☆☆☆☆
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買ったのは2010年12月だからもう2年になる。上巻は、フクスケとミツコが大人サイズを立ち上げてバツイチと出会うまで。舞台のような展開の早さ。
以上。前書き終了。約束どおり・・・のくだりは良かったなあ。 -
大人計画の劇をより事細かに、舞台では到底表現しきれない部分までをも書いたらこうなった、という感じ。
小説だと肉眼や映像で観るものよりも、いくらでも表現できちゃうから、エグさが半端ない。
スピード感があるからあっさり読めるけど、読んでるときの気持ちは絶対的に「あっさり」してない。
しかし、やっぱり全体から醸し出す「松尾スズキオーラ」が小説に憎めなさを足している。 -
面白い。
小説に入る前に松尾氏の解説みたいなのが入る。
これが長い。実に長い。
そこらの短編小説より長い。
しかしそれもまた面白い。
巨大な頭を持ったフクスケ少年のお話なのだが
中学生という設定からかけはなれたバイオレンスさと
スピード感を持って
物語は混沌しながらも進んでいく。
笑ってられない大惨事だけどどうしても笑ってしまうのは
松尾氏特有のコミカルさにあるのだと思う。
出てくる人みんなどこかちょっとおもしろい。悲劇の中にいても。
喜劇だ、これは。 -
好き嫌いは分かれそうな、半自伝パロディのような一作。どぎつい。嫌いではないけど、もう一回言うけどどぎつい。
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前書きの疾走感が最高でした。鳥肌です。あ、本文も面白かったです…!