ひとりでは生きられないのも芸のうち (文春文庫)

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著者 : 内田樹
  • 文藝春秋 (2011年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801151

ひとりでは生きられないのも芸のうち (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 一人で何でも出来る「自立」がよしとされている昨今の風潮に疑問を呈し、逆に「あなたなしじゃ生きていけない」と思える人が何人もいて「共生」出来る人間のほうが自立できていると言えるし生存戦略的にも有利なのではないかということを中心とし、発刊当時話題になった「不二家事件」やレヴィナスの教えを切り口に若い人の労働や非婚・少子化について書かれた本。

    特に「不二家化する日本」、「個食の幸せ」には大きくうなずいた。

    解説にもあったけれど、内田樹が単に書物からの知識や学究だけで記したらここまでわかりやすく実用的な本にはならなかったと思う。家族という修羅場を通してしかわからないことが多い。

  • これはかなりいいです。

    言葉がスゥーっと心になじんでいくような 気持ちの良い言葉たち。

    今まで疑問に思っていたことが「こういうことだったのか」と、答えを出せた一冊。

    再読します.*

  • いままで、積んどいたのが、とても惜しまれる。
    「我が意を得たり。」と感じ入ることしばしば。
    大ヒットです。
    30代以上の大人に、ちゃんと読んでほしいと
    思える本です。
    再読は、必至です。

  • ブログで出ている記事を編纂した本。

    ブログも読んでいるし、最近まとめて図書館で借りてきたので
    著者の繰り返し述べている思想には馴染んできたつもり。

    でも、「愛神愛隣」を読んで、感じ入ってしまった。
    久々に「来た」かんじ。

    「私たちはどうしてそのような要素が自分の中にあるのか、
     その来歴も知れず、統御もできない人格要素を抱え込んでいる。
     それは私たちの肉や骨に喰い込んでいる。
     それを削り取ることはできない。なんとか折り合ってゆくしかない。」

    いちからじゅうまで、その通りだと思った。

  • 非婚・少子化時、働くということ、メディアの語り口、グローバル化時代のひずみなどについて、「スーパー唯我独尊人間(解説より)」の内田先生がわかりやすく解説している。

    特に印象に残った言葉。
    ・国公立の学校の授業料を(小学校から大学まで)無料にすること。これこそ、実は少子化を一気に改善する秘策のようの私には思われる(p40)
    ・あなたが生きる上でもっともたいせつなのは「隣人があなたに向ける笑顔」なのである(p216)
    ・すべての人がそれぞれの現場で、ちょっとずつオーバーアチーブする。それによって、社会システム全体の質が少しだけ向上して、僕たちは生活の全局面でそのささやかな成果を享受することができる(p284)

    社会の様々な現象をこれだけ分かりやすく、ズバリ解説されると、“自分で思索することを怠ってしまうかもしれない”という変な懸念をもった読後感。

  •  非婚・少子化の時代をどう生きるか、「働く」とはどういうことか、メディアリテラシーとは、ロハスとは…などなど、著者の人気ブログのコンピレーション本。

     のっけから「お買い上げくださってありがとうございます。」というまえがきを読んで笑ってしまいました。そして、「社会は大人の5人に1人がまっとうだったら、あとは子どもでも何とかやっていける、だから若者よ、できれば5人に1人くらいはまっとうな大人になってくれよ」的なメッセージにも、こりゃなんだと。
     …ということで、思わずふふっと笑う記述も多々あるのですが、いやいや笑ってる場合じゃないでしょと考え込む場面も多々あり、難解で勉強不足を痛感する箇所もあれば、そうそう私の感じた違和感はそれだったんだ!って溜飲が下がる部分もあり、この本に限ってはこれこれこんな本なのよとは、うまくまとめられません。

  • 人間の社会の成り立ちに立ち戻って考えると共同体は相互補助で成り立っている。先に「与える」ことでパスが回り出す。「Pay forward」の精神。ちょっと前までは当たり前だった「お互い様」の思想がやはり重要なものだったと思う。どの宗教も昔から言い続けているのは、しかし人間はそこから離れる誘惑に抗えないのもまた事実である。映画などで「親に反抗して出ていった若者が様々な経験を通して結びつきの大切さを知り、和解する」というパターンが王道なのもそのせいだろう。人間はたいして進歩してないのかもしれない。

  • I can’t live without you のyouを増やす。一人で全部できることが「自立」しているとは限らない―私は一人暮らしで自立できていると感じる経験も大事だと思ったけど、でも、自立と孤立は違うんだよなと思った。もう少し、他人に対してオープンマインドを持てるようになりたい。

  • ひとりでは生きられないのも芸のうち
    内田樹23冊目

    「世の中が全部『自分みたいな人』ばかりになった時でも愉快に生きていけるような生き方をする」という言葉に集約されているが、まさしく、現在の資本主義的マインドが浸透した社会ではなかなか実践されていない。資本主義では、情報の非対称性によってお金を儲ける仕組みが起動しているため、やはり自分一人が情報を含めあらゆることを独占したほうが効果的である。ひとりで生きていけるという豊かな時代の発想が、現在の日本の病理の根底にあるが、そもそも歴史をさかのぼればこのような状況は極めて限定的な状況であり、元来人は一人では生きられないものなのである。

    ・労働について考えるとき、どうしたら能力や成果に応じた俸給を与えられるかではなくて、どうしたら個人はその能力の限界を越えられるようになるかを考えるべきである。そもそも、労働はオーバーアチーブである。均質な労働のセクショナリズムを浸透させ、フェアな給与を与えようと仕組みを作っても、働く人は、与えられたセクションでしか働かなくなる。バレーボールにおいても、誰かのミスを誰かが修正する、修正の連鎖が勝利をもたらす。もちろん、分業という観点からポジションは存在するが、誰かがミスったからと言って、自分のポジションの仕事に固執し、これはあいつのミスだからと言ってボールを追わなかったり、瞬時に手を抜く人間はコートに不必要とされ、除外されるのがオチである。おそらく、人間の能力の限界は、誰かのミスのしりぬぐいをしている瞬間に、飛躍的に向上するのではないかと思う。これは曲がりなりにもバレーボールを10年間やった経験的実感である。
    ・労働とはほんらい贈与であり、既にうけとった贈与に対する反対給付の債務履行なのである。労働の意味は、「私たちの労働成果を享受している他者が存在する」という事実からしか引き出すことが出来ない。
    ・働く意義は、働いたときにしかわからないし、能力や適性は仕事の前にあるモノではなく後に発見されるものである。
    ・無規範状態を生き延びるための暫定的な規範を持っているかどうかが私たちの成熟の規範であった。時代の分かれ目や、価値観を異にする複数の世界のインターフェイスでふるまうためには自在の視点の転換が出来る事や、矛盾を矛盾ののみこめるトリックスターの知が必要である。

    本書で一番面白かったのは共同体の作法という章である。
    ・酒杯というものは、卓上に置いたままだと不安定に見えるので、つい手に取りたくなるような形をしている。杯を受けたものは、床に置くことなく、隣人に譲り渡すことが、食器の形態そのものから要請されている。宴会でも、未だに自分のグラスに自分で酒を注ぐことがタブーとされるのは、「自分の欲するものは他人に贈与することでしか手に入らない」という人類学的真理を物語っている。
    ・牛を殺して食べる事に関する禁忌は世界に多く存在する。牛を殺す映像を見ることから生じるいたたまれない感覚というものは、この問題に対しては触れない方が良いというシグナルを送っている。「羊たちの沈黙」に登場するハンニバルレクター博士は、人間を殺して食うことによって動物を殺して食う人間の罪を贖っているともとらえられる。そして、今のところ世界で最も牛を殺しているアメリカ人が、多くの「罪深い人」を探し出して殺すことに熱心である
    ・個体の持つ原子のランダムウォークする割合は、個体が大きくなるにつれて低下するという量子力学(?)の見地から書かれた、武道と複合的身体の話も面白かった。

    ・死者のメッセージ
    私たちは常に「私の欲望」を「死者からのメッセージ」として受け取る。自分自身の貧しい限界を超えるような仕方で「自分の欲望」を触発するために「他者からのメッセージ」として受け取られねばならず、「死者のメッセージ」は書き換え不可能であるゆえに、「他者からのメッセージ」の中で最も遂行性の高いメッセージとして受け取られる。
    ・正しい葬儀
    正しいもの儀式とは、「死者があたかも存在しているかのように生者がふるまう」ことで達成できる。死者に対して、生者が「あなたといつでもコミュニケーションを取れるし、今後もとり続けられる」と誓約することで、死者は成仏する。
    コミュニケーションとは「あなたの声がよく聞き取れない」と告げ合う者たちの間でのみ成立する。「だから、もっとあなたの話が聞きたい」という懇請によってコミュニケーションは前に進む。逆説的ではあるが、コミュニケーションは「それが成立していない」ということによって生成し、「成立した」と宣言することで消滅する。
    だから、正しい喪の儀式とは、「あなたがここにいる」と宣言することによって「死者をここではないどこか」へ送り出すのである。
    ・あなたがいなければ生きていけない
    人間は、誰かの「あなたなしでは生きていけない」人になることによって、存在の根拠づけをしている。そして、人はまた、「自分の欲するものは、誰かに贈与することでしか受け取ることが出来ない」為に、相互に「あなたなしでは生きていけない」というメッセージを交換し、互いの存在証明をしている。「その人がいなくては生きていけない」人の数の多さこそが、その人の成熟の指標なのである。自分一人で生きていけると考え、他者からなんの贈与も交換も受けない人間は、実のところ、誰からも必要とされていない。

    この話を聞いてワンピースのルフィを思い浮かべた。仲間に対して「俺はお前がいなければ海賊王になれねえ」と叫ぶことのできるルフィはまさしく、実は、最も成熟した人間なのである。

  • おっしゃる通りでございます。与えずして得るもの無し。

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