キネマの神様 (文春文庫)

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著者 : 原田マハ
  • 文藝春秋 (2011年5月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801335

キネマの神様 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「この映画を観て、涙を流さない奴は人間じゃないワよ! 血の通っていないケダモノか何かだワ!」

    たまたまつけていたテレビで、映画評論家のおすぎが言っていた。

    「何ぃ、こちとら映画はおろかドラマでも本でも涙ぁ流したことなんかねえんだ! おうおう、その喧嘩買ってやろうじゃねえか」

    当時高校生だった僕は、取り立てておすぎに関心があった訳でもないのに、なぜか過剰に反応し挑戦状を叩き付けられたような思いで映画館に足を運んだ。
    まだミニシアターという言葉も耳に新しかった頃、地元に新しくできた小さな映画館で、あか抜けたお姉さん方に囲まれながらちょっと背伸びをして観た映画。

    『ニュー・シネマ・パラダイス』

    心に沁みるいい映画だと思った。
    でも「涙を流さない奴は人間じゃないワよ!」ってのは言い過ぎだな。
    そうしたらラストのあの試写室のシーンである。
    美人のお姉さん方が出払った後、僕が顔を伏せたまま最後に席を立ったのは言うまでもない。
    そして、おすぎはおすぎではなく「おすぎさん」になった。
    あの映画を、公開当時にスクリーンで観ることができたのは本当に幸せだ。
    『キネマの神様』は絶対にいる。

    原田マハ『キネマの神様』(いや、「原田マハさん」だな。)

    なんて映画愛に満ちた小説なんだ。
    「キネマの神様」におけるバトルはもちろん、歩がチラシの裏に書いた文章、父のノート、ちょっとした会話、新村のアニメ観にいたるまで、すべてが立派な映画論、レビューになっている。
    登場する映画、ほんのちょっとだけ引用される映画でさえ全部観たくなる(ホラー苦手だけどやっぱり『サスペリア』も観なきゃ)。
    いろんな人が語っている体になっているが、当然、原田マハさんが一人で書いている。一つの映画を裏と表、多角的に語れるって凄いな。

    そしてテアトル銀幕のテラシンよ!
    『ニュー・シネマ・パラダイス』と『ライフ・イズ・ビューティフル』の二本立てなんて、どんだけ俺から水分しぼり取る気だよ!

    映画も小説もハッピーエンドがいいな。
    紆余曲折があってもすべてがうまくいかなくとも、一筋の光でもいいから最後は明るい涙を流したい。
    野暮を承知で映画化するなら、大滝秀治さんで観てみたかった。共演は尾野真千子で。
    そして特別出演にクリント・イーストウッド。

    未読の方がいらっしゃっても筋は語りませんよ。
    このレビューは予告編だと思って、
    『キネマの神様』本編を、乞うご期待。

  • 映画への熱き思い、
    ただ好きだという気持ちを
    これほどまでに真っ直ぐに言葉にできる原田マハさんが羨ましい(>_<)

    読み終えた後に感じる
    本当にいい映画に出会えた時の
    高揚感と興奮と充足感、
    そして誰かに話たい気持ち。


    自分も映画が好きで
    高校時代は授業サボって
    映画館で3本立てを観て
    クラブまでの空き時間をつぶすのが
    日課になってました(笑)(^_^;)


    目指すは
    本作の名画座「テアトル銀幕」と同じように、
    薄汚れた路地裏に
    ひっそりと佇んでるような
    昭和の香りが
    プンプンする映画館。


    今ではほとんどなくなった
    手書き看板の味のある絵。

    あの輝くスクリーン。

    ポップコーンのバターの香り。

    映画が始まる前の
    『ビィー』という
    ブザーの音♪

    映写機から出る光の反射ぐあい。


    見るものすべてが新鮮で
    背伸びしたい年頃の少年にとっては、
    「今から俺は
    あの甘い闇の中で映画を観るんだ!!」
    っていう、
    ドキドキ感こそが

    大人の世界を垣間見せてくれる
    未知への扉であり、
    もうたまらない魅力だったのです(^_^)


    映画ファンなら
    ヨダレたらたらな小説だけど、
    なんと言っても
    ゴウちゃんのキャラがいいのです(笑)

    ギャンブルにうつつを抜かし
    心臓を患い借金まみれになっても
    娘に千円借りて
    映画館で映画を観ようとする(笑)
    まるで少年トトのような
    どうしようもない歩の父ゴウちゃん。


    ゴウちゃんと
    謎のローズ・バッドとの
    映画で繋がれた絆には
    ホンマ泣かされたし、

    ゴウちゃんが書いた
    「フィールド・オブ・ドリームス」のレビューの素晴らしさよ。


    自分自身亡き父とのキャッチボールが
    鮮やかに浮かんできたし、
    文体こそ人なりを
    コレ以上に体現したレビューがあっただろうか。


    レビューとは
    誰かに伝えたくてムズムズする思いを
    文章から感じられなければ嘘だ。

    文章が上手い下手なんか関係ない。

    好きが詰まった文章、思い入れたっぷりのレビューに
    自分は惹かれるのです。


    自分も批評ではなく、映画や文学への
    「好きな思い」を
    ゴウちゃんのように
    ただ伝えていきたい。


    しかしマハさんってばスゴいなぁ〜

    映画と文学、
    二つの神様の存在を感じずにはいられない小説って
    なかなかないですよね(笑)

  • 映画への愛で結びついた人々の、敗者復活戦。
    だんだん盛り上がる感動作です。

    う~ん、まいった。
    こういう映画を取り上げるとは。「ニューシネマパラダイス」に「ライフ・イズ・ビューティフル」「フィールド・オブ・ドリームス」!って、‥ ほかにも‥
    途中で2回休みましたよ。
    こんな書き方されちゃあ、たまったもんじゃないもの‥泣きすぎちゃう。

    円山歩は、入院した父の代理でマンションの管理人室を預かっている。
    父が日誌に、映画評をたくさん書いているのを見つけた。
    歩は休暇を取ったと感謝されているが、じつは会社を辞めたところ。
    大手の再開発企業(デベロッパー)に勤めていた歩はキャリアウーマンで自慢の娘だったのが。
    初の女性課長として都市型シネコンの仕事に邁進したのが嫉妬されたのか?あらぬ噂を立てられ、孤立してしまったのだ‥
    父の郷直(さとなお)はギャンブルと映画に金をつぎ込んで借金まみれ、母はその尻拭いをする人生だった。

    依存症の家族の会に出席した歩と母は、父の借金を肩代わりするのをやめることにした。
    父が通っていた名画座「テアトル銀幕」のオーナー、テラシンこと寺林は、常連の父がすっかり元気をなくしていると心配する。
    ほかの生きがいを見つけるために、歩は父に映画のブログを始めたらどうだと勧めた。

    父の投稿で、思いがけなく歩は、映画雑誌の老舗「映友」で仕事をすることになる。
    かって欧米から映画を輸入し始めた時代の先端にいた親子の会社だったが、今はここも斜陽になっている。
    「ゴウ」のハンドルネームで書く歩の父の映画評も思わぬ評判を呼び、英訳したものに反応があった。
    「RoseBud」(薔薇のつぼみ)というハンドル名の‥
    日米の~おそらく高齢の男二人の映画好きによる丁々発止のやり取りに、注目が集まる。
    名画座の存続危機に、ゴウは応援を求めます。日本には名画座というものがあると。新しいものではなく館主のセレクトで選んだ大好きなおすすめの映画をかけるのだと。それがつぶれかけている‥
    呼びかけに対して、ローズバッドは?

    家で見られる時代になっても、映画館の大画面で見る臨場感、心躍るひとときは特別なもの。
    映画のように展開する~愛あふれる物語。
    リアルだけど夢があります!

  • フォローさせていただいている方のレビューがよくて「読みたいなぁ」と購入したものの、「積ん読」状態になっていて、深夜1時過ぎにふと読み始めたら止まらなくなり、気が付くと3時半で空はしらじらとしていました。
    和光ウラの名画座。そう、私もそこでこのKeyになる映画を観ました。最後に高名な映画監督になったトトが泣きながらフィルムを観るのと一緒に、私も泣きながらその映画を観ました。
    そんな私の琴線をくすぐってくれる読みどころ満載の「オトナのお伽話」です。
    数々の映画に対するゴシック文字で書かれた映画評はどれもいいですし、ピックアップされている映画もどれも触れたことのある映画で親近感抜群。でも、何よりも父ゴウちゃんとローズバッドのやりとりに夢がある。
    ネットという「魔法」のおかげで、映画への愛を語り合う国境を越えた高齢男子(←これって日本語として変ですね)の友情、すごいです。
    何かに熱くなれるってやっぱり男子の特権なのかも…と錯覚せずにいられないくらいです。
    あ~、私もまたこの映画が観たくなりました。
    ちなみに小さな2本立て名画座としては「目黒シネマ」がオススメです。

  • ここ数年映画館に行ったこともなく、紙に書かれた文字をひたすら追っている身にとっても、この作品を読むと、映画の魅力が迫ってくる。
    映画を愛する人々の思いが詰まっており、映画ファンなら、作中に出てくる映画の題名を見つけるだけで、もう満足の境地ではないか。
    それにしても、原田マハのフィールドワークのひろさには、感心してしまう。「楽園のカンヴァス」等で、美術関係の知識の深さに、驚いたばかりなのに、映画にも並々ならぬ造詣を持っている。
    今後どういった分野を、作品に見せてくれるか、楽しみである。

  • これよかったよ、ではなく、なにも聞かずに見て!読んで!と人に勧めまくりたい作品は映画にも小説にもあります。この小説は両方。この小説を読んで!出てくる映画を見て!のダブル推し。自分なんかが感想を言葉にするのもおこがましい。でも語らずにいられないという…。
    この小説がフィクションであるのがとても残念です。ゴウちゃんのブログ「キネマの神様」を読みたい。そこに集まる人と映画の話をしたい。そのブログに関わっている人は、好きな仕事のプロであってほしい。かといって超人ではなく、生活を営んでいる人間であってほしい。 玄人受けする映画雑誌を読んでみたい。ブログで取り上げる作品が素敵な名画座で見られたらいい。ついでに新作が見られるシネコンが近くにあったりするといい。なにより、ゴウちゃんとローズバットの応酬をすべて読みたい。どこかに「この作品は実話に基づいた…」と言及されていないか探してしまいました。
    小説中に出てくる映画のセレクト、これがもう。 小説の世界に入っていって参加したくなるタイトルばかりです。映画をあまり見ない人でも知ってるようなものから、名画の呼び声高いもの、そこまでヒットした様子はないけどファンが多いものまで幅広い。そしてこれは個人的かつ希望的観測なんですが、小説のなかに色々な映画のエッセンスが登場しているように思いました。歩がチラシ裏に書いた文章、書き出しをゴウちゃんの感想文と同じにしてるのは「小説家を見つけたら」でショーン・コネリーが教えてた文章の書き方と同じだな、とか。作品全体の、物事を都合よくしてしまう魔法のような展開は「ライフ・イズ・ビューティフル」でロベルト・ベニーニが見せてくれたのと一緒だとか。
    「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストシーンでは、アルフレードの計らいに感動する一方、アルフレードの不在と映画が終わってしまうことが悲しくなって泣きました。この小説も、ハッピーエンドなんだけど彼がいないこととと小説を読み終わってしまうのが悲しかった。そして現実に戻ってきたときに思ったことも同じでした。魔法の世界を見せてくれてありがとう。

  • 人の温かさに溢れた本だった。
    家族と改めて向き合ったり、ありがたみを噛みしめるきっかけになったし、親の背中の表情の描き方に泣かされた。
    何より驚愕したのは、当たり前だけど、ゴウちゃんとローズバット、それぞれのレビューをマハさんが一人で書いていること…本当にすごい方だ…
    そして、片桐はいりさんの解説がとても良かった!
    はいりさんの本も気になったなぁ。
    恥ずかしながら、この本に出てくる映画で見たことない作品がいくつもあったので、まずはそれを見て、またこの本に戻ってこようと思います。
    電車の中で涙をこらえるのが大変だったけど、すごく温かい気持ちにさせてくれました。
    そして、就職してから疎遠になってしまっているけれど、映画館で映画を観るという醍醐味を存分に味わせてくれました。誰が、映画をDVDで観る前提で作るだろうか。って本当にその通りだと思いたいし、そうやって色んな映画を、映画館という空間で観ることを大切にしていきたい。

  • トルコ往復の飛行機内で読了。
    ブクログ評価が高かったので気になっていたが、納得。

    好きな映画を見て、自分の感想や想いを綴って、それが大きな広がりとなって、友人を得て、世界にも影響を与える。
    皆がそんなことを望んでブクログに書いている訳ではないけど、それでも同じ感想を綴る身としては、心躍る展開にページが進んでしまう。

    ただただ純粋に心温まる、大人の絵本の様な雰囲気だった。
    映画にしろ、本にしろ、特別な強い愛情というのは心に響くものだなと思う。

    言葉や文章を魅力的に表現できる人には、やっぱり憧れる。
    上手じゃなくても、ストレートに人の気持ちに入り込める、そんな文章をいつか書けるようになりたい。

  • マハさん初読みで、はじめはラノベっぽい感じかなと思っていた。
    歩が映友社に就職したあたりから、意外な展開の連続で話に引き込まれる。

    キネマの神様の思し召しにより必然に出会ったゴウとローズ・バッド。
    HPでの文通のような書き込みのやりとりで、
    議論を闘わせながらも友情が育まれる様子が微笑ましく
    暖かい気持ちになる。

    ラストではゴウの隣に、少年のような表情で食い入る様にスクリーンを見つめるローズ・バッド、
    そしてこの名画のクライマックスシーンが胸に去来し、思いがけず涙が....。

    愛する人と同じ空間で好きな映画を見て感動を共有する、
    そんな普通の幸せに改めて気付かされた。
    読書好きとして、映画ファンとして最高に楽しめる作品だった。

  • 映画を観るって素敵なことだ・・・、と改めて感じさせてくれた【キネマの神様】

    原田マハさん、今度は映画の世界にいざなってくれました。

    「あなたの人生最高の映画は何ですか?」
    そう尋ねられたらどう答えますか?

    【キネマの神様】を読んで、私の答えは変わりました!
    それは・・・

    この本を既に読まれた方の中にも、答えが変わった方がいらっしゃるのでは・・・?
    ふとそんなふうに思ってしまいました。

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39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。"映画の神様"が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。

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