キネマの神様 (文春文庫)

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著者 : 原田マハ
  • 文藝春秋 (2011年5月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801335

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キネマの神様 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

  • 「この映画を観て、涙を流さない奴は人間じゃないワよ! 血の通っていないケダモノか何かだワ!」

    たまたまつけていたテレビで、映画評論家のおすぎが言っていた。

    「何ぃ、こちとら映画はおろかドラマでも本でも涙ぁ流したことなんかねえんだ! おうおう、その喧嘩買ってやろうじゃねえか」

    当時高校生だった僕は、取り立てておすぎに関心があった訳でもないのに、なぜか過剰に反応し挑戦状を叩き付けられたような思いで映画館に足を運んだ。
    まだミニシアターという言葉も耳に新しかった頃、地元に新しくできた小さな映画館で、あか抜けたお姉さん方に囲まれながらちょっと背伸びをして観た映画。

    『ニュー・シネマ・パラダイス』

    心に沁みるいい映画だと思った。
    でも「涙を流さない奴は人間じゃないワよ!」ってのは言い過ぎだな。
    そうしたらラストのあの試写室のシーンである。
    美人のお姉さん方が出払った後、僕が顔を伏せたまま最後に席を立ったのは言うまでもない。
    そして、おすぎはおすぎではなく「おすぎさん」になった。
    あの映画を、公開当時にスクリーンで観ることができたのは本当に幸せだ。
    『キネマの神様』は絶対にいる。

    原田マハ『キネマの神様』(いや、「原田マハさん」だな。)

    なんて映画愛に満ちた小説なんだ。
    「キネマの神様」におけるバトルはもちろん、歩がチラシの裏に書いた文章、父のノート、ちょっとした会話、新村のアニメ観にいたるまで、すべてが立派な映画論、レビューになっている。
    登場する映画、ほんのちょっとだけ引用される映画でさえ全部観たくなる(ホラー苦手だけどやっぱり『サスペリア』も観なきゃ)。
    いろんな人が語っている体になっているが、当然、原田マハさんが一人で書いている。一つの映画を裏と表、多角的に語れるって凄いな。

    そしてテアトル銀幕のテラシンよ!
    『ニュー・シネマ・パラダイス』と『ライフ・イズ・ビューティフル』の二本立てなんて、どんだけ俺から水分しぼり取る気だよ!

    映画も小説もハッピーエンドがいいな。
    紆余曲折があってもすべてがうまくいかなくとも、一筋の光でもいいから最後は明るい涙を流したい。
    野暮を承知で映画化するなら、大滝秀治さんで観てみたかった。共演は尾野真千子で。
    そして特別出演にクリント・イーストウッド。

    未読の方がいらっしゃっても筋は語りませんよ。
    このレビューは予告編だと思って、
    『キネマの神様』本編を、乞うご期待。

  • 映画への熱き思い、
    ただ好きだという気持ちを
    これほどまでに真っ直ぐに言葉にできる原田マハさんが羨ましい(>_<)

    読み終えた後に感じる
    本当にいい映画に出会えた時の
    高揚感と興奮と充足感、
    そして誰かに話たい気持ち。


    自分も映画が好きで
    高校時代は授業サボって
    映画館で3本立てを観て
    クラブまでの空き時間をつぶすのが
    日課になってました(笑)(^_^;)


    目指すは
    本作の名画座「テアトル銀幕」と同じように、
    薄汚れた路地裏に
    ひっそりと佇んでるような
    昭和の香りが
    プンプンする映画館。


    今ではほとんどなくなった
    手書き看板の味のある絵。

    あの輝くスクリーン。

    ポップコーンのバターの香り。

    映画が始まる前の
    『ビィー』という
    ブザーの音♪

    映写機から出る光の反射ぐあい。


    見るものすべてが新鮮で
    背伸びしたい年頃の少年にとっては、
    「今から俺は
    あの甘い闇の中で映画を観るんだ!!」
    っていう、
    ドキドキ感こそが

    大人の世界を垣間見せてくれる
    未知への扉であり、
    もうたまらない魅力だったのです(^_^)


    映画ファンなら
    ヨダレたらたらな小説だけど、
    なんと言っても
    ゴウちゃんのキャラがいいのです(笑)

    ギャンブルにうつつを抜かし
    心臓を患い借金まみれになっても
    娘に千円借りて
    映画館で映画を観ようとする(笑)
    まるで少年トトのような
    どうしようもない歩の父ゴウちゃん。


    ゴウちゃんと
    謎のローズ・バッドとの
    映画で繋がれた絆には
    ホンマ泣かされたし、

    ゴウちゃんが書いた
    「フィールド・オブ・ドリームス」のレビューの素晴らしさよ。


    自分自身亡き父とのキャッチボールが
    鮮やかに浮かんできたし、
    文体こそ人なりを
    コレ以上に体現したレビューがあっただろうか。


    レビューとは
    誰かに伝えたくてムズムズする思いを
    文章から感じられなければ嘘だ。

    文章が上手い下手なんか関係ない。

    好きが詰まった文章、思い入れたっぷりのレビューに
    自分は惹かれるのです。


    自分も批評ではなく、映画や文学への
    「好きな思い」を
    ゴウちゃんのように
    ただ伝えていきたい。


    しかしマハさんってばスゴいなぁ〜

    映画と文学、
    二つの神様の存在を感じずにはいられない小説って
    なかなかないですよね(笑)

  • 映画への愛で結びついた人々の、敗者復活戦。
    だんだん盛り上がる感動作です。

    う~ん、まいった。
    こういう映画を取り上げるとは。「ニューシネマパラダイス」に「ライフ・イズ・ビューティフル」「フィールド・オブ・ドリームス」!って、‥ ほかにも‥
    途中で2回休みましたよ。
    こんな書き方されちゃあ、たまったもんじゃないもの‥泣きすぎちゃう。

    円山歩は、入院した父の代理でマンションの管理人室を預かっている。
    父が日誌に、映画評をたくさん書いているのを見つけた。
    歩は休暇を取ったと感謝されているが、じつは会社を辞めたところ。
    大手の再開発企業(デベロッパー)に勤めていた歩はキャリアウーマンで自慢の娘だったのが。
    初の女性課長として都市型シネコンの仕事に邁進したのが嫉妬されたのか?あらぬ噂を立てられ、孤立してしまったのだ‥
    父の郷直(さとなお)はギャンブルと映画に金をつぎ込んで借金まみれ、母はその尻拭いをする人生だった。

    依存症の家族の会に出席した歩と母は、父の借金を肩代わりするのをやめることにした。
    父が通っていた名画座「テアトル銀幕」のオーナー、テラシンこと寺林は、常連の父がすっかり元気をなくしていると心配する。
    ほかの生きがいを見つけるために、歩は父に映画のブログを始めたらどうだと勧めた。

    父の投稿で、思いがけなく歩は、映画雑誌の老舗「映友」で仕事をすることになる。
    かって欧米から映画を輸入し始めた時代の先端にいた親子の会社だったが、今はここも斜陽になっている。
    「ゴウ」のハンドルネームで書く歩の父の映画評も思わぬ評判を呼び、英訳したものに反応があった。
    「RoseBud」(薔薇のつぼみ)というハンドル名の‥
    日米の~おそらく高齢の男二人の映画好きによる丁々発止のやり取りに、注目が集まる。
    名画座の存続危機に、ゴウは応援を求めます。日本には名画座というものがあると。新しいものではなく館主のセレクトで選んだ大好きなおすすめの映画をかけるのだと。それがつぶれかけている‥
    呼びかけに対して、ローズバッドは?

    家で見られる時代になっても、映画館の大画面で見る臨場感、心躍るひとときは特別なもの。
    映画のように展開する~愛あふれる物語。
    リアルだけど夢があります!

  • フォローさせていただいている方のレビューがよくて「読みたいなぁ」と購入したものの、「積ん読」状態になっていて、深夜1時過ぎにふと読み始めたら止まらなくなり、気が付くと3時半で空はしらじらとしていました。
    和光ウラの名画座。そう、私もそこでこのKeyになる映画を観ました。最後に高名な映画監督になったトトが泣きながらフィルムを観るのと一緒に、私も泣きながらその映画を観ました。
    そんな私の琴線をくすぐってくれる読みどころ満載の「オトナのお伽話」です。
    数々の映画に対するゴシック文字で書かれた映画評はどれもいいですし、ピックアップされている映画もどれも触れたことのある映画で親近感抜群。でも、何よりも父ゴウちゃんとローズバッドのやりとりに夢がある。
    ネットという「魔法」のおかげで、映画への愛を語り合う国境を越えた高齢男子(←これって日本語として変ですね)の友情、すごいです。
    何かに熱くなれるってやっぱり男子の特権なのかも…と錯覚せずにいられないくらいです。
    あ~、私もまたこの映画が観たくなりました。
    ちなみに小さな2本立て名画座としては「目黒シネマ」がオススメです。

  • ここ数年映画館に行ったこともなく、紙に書かれた文字をひたすら追っている身にとっても、この作品を読むと、映画の魅力が迫ってくる。
    映画を愛する人々の思いが詰まっており、映画ファンなら、作中に出てくる映画の題名を見つけるだけで、もう満足の境地ではないか。
    それにしても、原田マハのフィールドワークのひろさには、感心してしまう。「楽園のカンヴァス」等で、美術関係の知識の深さに、驚いたばかりなのに、映画にも並々ならぬ造詣を持っている。
    今後どういった分野を、作品に見せてくれるか、楽しみである。

  • これよかったよ、ではなく、なにも聞かずに見て!読んで!と人に勧めまくりたい作品は映画にも小説にもあります。この小説は両方。この小説を読んで!出てくる映画を見て!のダブル推し。自分なんかが感想を言葉にするのもおこがましい。でも語らずにいられないという…。
    この小説がフィクションであるのがとても残念です。ゴウちゃんのブログ「キネマの神様」を読みたい。そこに集まる人と映画の話をしたい。そのブログに関わっている人は、好きな仕事のプロであってほしい。かといって超人ではなく、生活を営んでいる人間であってほしい。 玄人受けする映画雑誌を読んでみたい。ブログで取り上げる作品が素敵な名画座で見られたらいい。ついでに新作が見られるシネコンが近くにあったりするといい。なにより、ゴウちゃんとローズバットの応酬をすべて読みたい。どこかに「この作品は実話に基づいた…」と言及されていないか探してしまいました。
    小説中に出てくる映画のセレクト、これがもう。 小説の世界に入っていって参加したくなるタイトルばかりです。映画をあまり見ない人でも知ってるようなものから、名画の呼び声高いもの、そこまでヒットした様子はないけどファンが多いものまで幅広い。そしてこれは個人的かつ希望的観測なんですが、小説のなかに色々な映画のエッセンスが登場しているように思いました。歩がチラシ裏に書いた文章、書き出しをゴウちゃんの感想文と同じにしてるのは「小説家を見つけたら」でショーン・コネリーが教えてた文章の書き方と同じだな、とか。作品全体の、物事を都合よくしてしまう魔法のような展開は「ライフ・イズ・ビューティフル」でロベルト・ベニーニが見せてくれたのと一緒だとか。
    「ニュー・シネマ・パラダイス」のラストシーンでは、アルフレードの計らいに感動する一方、アルフレードの不在と映画が終わってしまうことが悲しくなって泣きました。この小説も、ハッピーエンドなんだけど彼がいないこととと小説を読み終わってしまうのが悲しかった。そして現実に戻ってきたときに思ったことも同じでした。魔法の世界を見せてくれてありがとう。

  • 人の温かさに溢れた本だった。
    家族と改めて向き合ったり、ありがたみを噛みしめるきっかけになったし、親の背中の表情の描き方に泣かされた。
    何より驚愕したのは、当たり前だけど、ゴウちゃんとローズバット、それぞれのレビューをマハさんが一人で書いていること…本当にすごい方だ…
    そして、片桐はいりさんの解説がとても良かった!
    はいりさんの本も気になったなぁ。
    恥ずかしながら、この本に出てくる映画で見たことない作品がいくつもあったので、まずはそれを見て、またこの本に戻ってこようと思います。
    電車の中で涙をこらえるのが大変だったけど、すごく温かい気持ちにさせてくれました。
    そして、就職してから疎遠になってしまっているけれど、映画館で映画を観るという醍醐味を存分に味わせてくれました。誰が、映画をDVDで観る前提で作るだろうか。って本当にその通りだと思いたいし、そうやって色んな映画を、映画館という空間で観ることを大切にしていきたい。

  • トルコ往復の飛行機内で読了。
    ブクログ評価が高かったので気になっていたが、納得。

    好きな映画を見て、自分の感想や想いを綴って、それが大きな広がりとなって、友人を得て、世界にも影響を与える。
    皆がそんなことを望んでブクログに書いている訳ではないけど、それでも同じ感想を綴る身としては、心躍る展開にページが進んでしまう。

    ただただ純粋に心温まる、大人の絵本の様な雰囲気だった。
    映画にしろ、本にしろ、特別な強い愛情というのは心に響くものだなと思う。

    言葉や文章を魅力的に表現できる人には、やっぱり憧れる。
    上手じゃなくても、ストレートに人の気持ちに入り込める、そんな文章をいつか書けるようになりたい。

  • マハさん初読みで、はじめはラノベっぽい感じかなと思っていた。
    歩が映友社に就職したあたりから、意外な展開の連続で話に引き込まれる。

    キネマの神様の思し召しにより必然に出会ったゴウとローズ・バッド。
    HPでの文通のような書き込みのやりとりで、
    議論を闘わせながらも友情が育まれる様子が微笑ましく
    暖かい気持ちになる。

    ラストではゴウの隣に、少年のような表情で食い入る様にスクリーンを見つめるローズ・バッド、
    そしてこの名画のクライマックスシーンが胸に去来し、思いがけず涙が....。

    愛する人と同じ空間で好きな映画を見て感動を共有する、
    そんな普通の幸せに改めて気付かされた。
    読書好きとして、映画ファンとして最高に楽しめる作品だった。

  • 映画を観るって素敵なことだ・・・、と改めて感じさせてくれた【キネマの神様】

    原田マハさん、今度は映画の世界にいざなってくれました。

    「あなたの人生最高の映画は何ですか?」
    そう尋ねられたらどう答えますか?

    【キネマの神様】を読んで、私の答えは変わりました!
    それは・・・

    この本を既に読まれた方の中にも、答えが変わった方がいらっしゃるのでは・・・?
    ふとそんなふうに思ってしまいました。

  • 原田マハの作品には──。

    原田マハの作品には夢が潜んでる。
    人間や芸術に対する愛情が潜んでいる。

    「楽園のカンヴァス」しかり、「本日は、お日柄も良く」しかり、そしてこの「キネマの神様」またしかりだ。
    時系列的にはバラバラで、まだ彼女の全作品を読み通したわけではないけれど。
    「楽園のカンヴァス」では、画家やキュレーターという絵画に携わる人々。
    「本日は、お日柄も良く」では、言葉の重みを大切にするスピーチライター。
    この「キネマの神様」では、映画館や映画評論など映画に携わる人々。
    みんな自らの仕事に誇りと愛と夢を持っている。

    この作品も、随所から映画に携わる人々の映画への熱い情熱が書かれているから、思いが伝わってくるのだろう。
    ゴウもローズ・バッドも、山川歩もテラシンも。
    みんなみんな映画を心底愛しているのだ。
    だから”キネマの神様”は彼らに微笑みかける。
    けっして映画館が廃れることはないのだと。

    東京総合開発は実在の”森ビル”を、テアトル銀幕は”飯田橋ギンレイホール”を思い起こさせる。
    この本を読み終えたあと、名作と誉れ高いにもかかわらず、未だ観ていない『ニュー・シネマ・パラダイス』を観たくなった。

    と文庫になる前に書いたのだが、未だに「ニュー・シネマ・パラダイス」
    を見ていない。反省。

  • 読んでる最中、そして読み終わった後も凄く意識したのは 三浦しをんさんの『舟を編む』のイメージ。登場人物一人ひとりの人物像が丁寧にきちんと描かれていて、笑いあり涙あり、家族、そして同じものを愛し求め、志す仲間っていいなと素直に感動できる点で重なりました。
    しをんさんのは辞書作りを軸に、こちらはずばり映画です。

    「この世に映画がある限り、人々は映画館に出かけて行くだろう。家族と、友人と、恋人と。ひとり涙したい時はひとりぼっちで… 」
    映画愛に満ちたこのセンテンスに深く頷けました。日本のゴウちゃんとアメリカのローズバット、この二人の一つの映画作品を語り合う熱いバトルの一端と、次第にお互いの胸の内を明かし思い遣る親友へ、やがてローズバットの正体が明かされ・・・の展開が小刻みよく楽しめました。半世紀以上も映画をスクリーンで観てきた2人だからこそ、分かち合える境地、そして人生の年輪に刻まれてきたであろう数々の作品への敬意が感じられたのが良かったですし、それを若い人達が公開ブログとして技術面でサポートして広めていけたのが気持ち良かった。そう、、彼等だけではなく、幾つもの人間のドラマがこの本にはあって、それぞれの心境が率直に読み手に伝わってくるのも読後感が爽やかな気持ちで満たされた理由だと思いました。
    観た作品は勿論のこと、未鑑賞のものチエック入りました(笑)私も大好きな作品をこんな風に語ってもらえて嬉しかったです❀*

  • 今まで出会った本の中で一番だ。

    映画を愛する人たちの織り成すキセキの物語。

    原田マハさん、あなたは本当に魅力を伝えるのがお上手ですね。

    この本を読んで、ニューシネマパラダイスも観て、感動が倍増。

    何でもない日常が愛おしく思える、そんな人生を歩んでいきたい。

  • 乱読時代より1年半のブランクを経て、書店で見つけた一冊。
    原田マハさんのデビュー作「カフーを待ちわびて」を当時読み、そのシンプルで美しい文章と気持ちの良い読後感が、とても印象的でした。
    だから、この作家さんの作品をまた読みたいな・・と思っていました。
    映画も大好きなので、このタイトルとあらすじを読んで即決。
    期待を裏切らない素敵な作品でした。
    2時間ちょっとかけて、丁寧に丁寧に、笑ったり、泣いたり、ドキドキしながら一気に読みました。
    歩さんやゴウさんのように上手に感想は書けませんが・・・、ご家族の関係もとても素敵ですし、(現実、素敵な環境では決して無いと思いますがw)歩さんと新村さんの距離感もこの短い作品の中に上手に、さりげなく盛り込まれているし、ゴウさんとローズバッドの関係も最高にいい。
    そして一番すごいのは映画についての描写、作品についての描写だと思います。
    観た作品はとても懐かく思い出しながら、観たことのない作品も簡潔にわかりやすく、そして見てみたいと思わせるようなシンプルな言葉で書かれています。
    物語に登場するブログ、キネマの神様、全部読みたいです。
    個人的には「小説家を見つけたら」はお気に入りの作品なので、ゴウさんのコメントが聞きたいですね。
    そしてこの作品はゴウさんのお気に入りの一つで嬉しかったです。
    大人になってからは観ていないので、「ニュー・シネマ・パラダイス」もう一度、この作品を思い出しながら観たいですね。

  • 今年からレビューをちゃんと書こうと思った。
    だからここ数冊、読めばレビューを書いてきた。
    書き始めたら、自分でビックリした。
    辛口だ。褒めてない。なんか嫌なことしか書いてない。
    なんでだ?

    映画は何本見てきただろう?
    1500は観てると思う。2000はいってるだろうか?
    僕の父は家にいない人だった。
    日本中にキャバレーをチェーン展開をしていた
    昭和の遺物みたいな会社に勤めていた。
    ひどい父親だった。母子家庭と言っていい。
    借金は作る。愛人は作る。
    自由に生きた人だった。そもそも子育てに関心がなかった。
    たまに家にいても父は本ばかり読んでいた。

    自然と映画館に足が向いた。
    映画の中には全てがあった。
    夕食を囲む家族。子供のためにがむしゃらになる母親。
    野球場。キャッチボール。そして父親。

    父は5年前、癌で逝った。
    たいして話もせず逝ってしまった。
    父が本を愛したように、今や僕が本を愛している。
    そんな本を愛してるのに、
    僕はちゃんと(日の当たる部分)を見てきたのだろうか?

    荒川の土手沿いでキャッチボールがしたかった。
    でも今は、映画館でふたり並んで映画を観たい。
    珍しく2人で観に行った、あの映画を。

    そう『アンタッチャブル』を。音楽がいいんだよ。

  •  会社を退職したその日に、父(ゴウ)が入院することになってしまった歩(あゆみ)。ゴウの病状は大したことなかったものの、ギャンブル狂だった父の借金が発覚する。
     ギャンブルを止められたゴウは、新しくパソコンでDVDを見るように。そしてゴウが、歩の映画レビューを映画雑誌に投稿したことをきっかけに、歩は”映友”という雑誌の編集部にスカウトされる。

     映画とそして映画館に対する愛情にあふれた一冊です。冒頭の歩が映画を観終えるシーンがまずいい! エンドロールが終わり、ゆっくりとほのかに映画館に明かりが戻ってくる。非日常の空間から、日常の世界に帰ってくるその感覚は、まるで素晴らしい夢からさめ、ゆっくりと瞼をあけるかのような、そんな気持ちをまず思い起こさせます。

    「映友」は新たに映画ブログをスタートさせます。そこに歩の父親が文章を投稿するようになり、それが話題を呼びます。そして、そのレビューに対し、反論を加える謎のレビュアー・ローズバットが現れ……

     このレビュー合戦も面白いのですが、ゴウがこの謎のレビュアーに徐々に友情を感じるようになり、生きがいを見出していくさまも読んでいて爽やか。

     しかし、ゴウの友人で名画座の経営をしている寺林(通称・テラシン)、から近所に大型シネマもある複合施設ができるため、名画座を閉館することを聞かされます。それを知ったゴウは、ローズ・バットに相談を持ちかけるのですが……。

     この相談をもちかける文章も素晴らしい! 名画座や映画館への愛と感謝が詰められていて、名画座に行ったことのない自分にも、その魅力がひしひしと伝わってきます。

     この相談を通し、ますます関係を深めていく二人。しかし、終盤、ローズ・バットの書き込みが途絶えるようになり……

     終盤の流れは圧巻! 泣き所というトラップをいくつ用意するんだ原田さん、と思わずにはいられませんでした。外で読んでなくて良かった(苦笑)

     話の都合がよすぎる、というところはあるかもしれません。しかし、それが嫌味でもなければ、予定調和だとも思わせないのが、原田作品の凄いところで、愛されるところだと思います。

     作中で、ローズ・バットとゴウの映画観の違いをローズ・バット自身はこう指摘します。前者は映画のダークサイドを取り上げ、後者は逆にサニーサイドをすくい上げようとする、と。

     原田さんの小説も、ゴウの映画観と同じものを作品に反映させているような気がします。世界にはダークサイドがあることを認めつつも、それでもサニーサイドを全力で描き切る。だからこそ、原田さんの作品の、ある意味での都合の良さは、自然と受け入れられるのです。

     原田さんの小説の素晴らしさと、映画、そしえ映画館の素晴らしさを再認識した本でした。あと、この本を読み始める前に、映画館に映画を観に行っていたので、作中の映画観論にうんうん、とうなずきながら読めたのも良かったと思います。

     そして、読み終わった後は映画や映画館の魅力が再発見できること請け合いの小説です。映画好きの方も、そうでない方も、ぜひぜひ手にとってほしい一冊でした。

  • 原田マハ作品を読むのは「楽園のカンヴァス」に続き2作目。
    「楽園・・・」の時もそうだったが、読了後のなんとも言えない温かい余韻に今も浸っている。
    登場人物たちの映画への愛情は並大抵のものではない。きっとマハさんも映画が大好きなんだろうなぁ。
    作中で登場する数々の名画とそのシーン。。。私も映画は好きなので観たものばかり。うんうんと頷きながら読むことも何度か。「サスぺリア」には思わずニヤッとしてしまう(^_^;)
    そして古びた名画座、映画館。。。懐かしい記憶が甦る。
    学生の頃にはまだシネコンがなかったから、映画館にはよく足を運んだ。人気のある映画を観るときは次の上映が始まるまで映画館の扉の前で並んだりした(笑)
    映画が始まった時のワクワク感がたまらない。どんな世界へ連れて行ってくれるんだろう?主人公と一緒に自分も冒険している気分が味わえる。やっぱり映画っていいなぁ。DVDじゃなくて、やっぱり映画館で観るのが一番♪

    ・・・感想からは随分それてしまいましたが。。。
    ラスト30ページは涙腺崩壊(笑)
    ホントに温かく、ステキな作品でした!

  • 「楽園のカンヴァス」に続いて原田マハ氏2作目、美術ミステリの次はもう映画しかない!ってのは個人的選択だが間違いはなかった。そして原田マハという女性のの虜となった、恋といってもよい。あぁ~もう逢っていろんなお話をしてみたいと思う。


    「映画」が作品根本にある、著名なる映画評論家である故淀川長治氏もチラっとだけ登場するが、彼が晩年においてパトリス・ルコント監督の「髪結いの女房」を評した時の言葉が思い出された。~この歳になって会えたパトリス・ルコント、あぁこの奇跡に感謝~だいたいこのような意味であったが、これと同じ思いを「キネマの神様」と出会い抱いたのである。


    映画を背景にしているが、家族の話でもある。アラフォーの独身娘と80になるグウタラ親父、ギャンブルが好きで宵越しの銭は持たない、そして無類の映画好き、そのキャリア70年以上。仕事を失った娘、病に倒れた父、そして二人の間で右往左往する母。ひょんなことから斜陽の映画雑誌社で職を得た娘が、父を巻き込んで映画ブログを立ち上げ社を復活させていく。その一方女性編集長の家庭問題も明らかになる
    が、これもまた映画ブログ、それに関わる人達の力によって解決へと向かう。


    映画ブログ、主に「キネマの神様」への報告という体裁で語られるところが現代っぽくてよい。執筆はぐうたら親父でハンドルネームは「ゴウ」ここで語られる映画評が素晴らしいのだ!朴訥なる語りながらも本質を切り取ってみせる。それは基本映画愛に満ち溢れており、人間の正当性を評価している。しかしながら中盤になるとブログの海外版に、ゴウの恐るべき強敵が現れるのだ、ハンドルネーム「ローズバット」日本語なら「薔薇のつぼみ」映画通ならこの意味はおわかりだろう。彼はゴウの評論を真っ向から切って捨てる、表面からは読み取れない裏を、隠された真意を探り、人間の不当な面を晒すのだ。ブログ「キネマの神様」はゴウvsローズバットの評論バトルによって大いに盛り上がり、社は大きな利益を産むこととなる。


    後半においては父娘馴染みの名画座の衰退問題、ローズバットの真実などが明らかになっていくが、この頃になるともう涙で目が霞む、なんてことだろう、設定や物語の運び具合など、明らかに偶然とかやりすぎとか思うのだけど、思っても沁み込んできてしまう。タラ~と零れてしまうのだ、涙が…


    この歳でこの本に出合えた奇跡とは、そのまま自分と自分の父を物語の中に重ねることができたからなのだと思う、父と息子についての評論が作品中「フィールド・オブ・ドリームス」について語られる。ゴウの最初のブログであるが、ここであぁ…と思った。まだなんとか元気でいる父ともっと話しをしておかないと、と思った。


    総じて映画愛に溢れており、キャラもみな全て愛すべき造詣でまとめられている。読後感も素晴らしく映像化も容易くできると思われる、近年における邦画の名作になり得るポテンシャルを感じる。


    しかしながらこれは物語であり、その全て、映画にまつわる論評も全て、著者原田マハ氏の手によるものなのだ。読み終えてそれを思った時、無償に彼女のことを知りたくなった、盲愛といってよい。画像を見てみたら、歳の頃なりにスッキリし美人であった。

  • 四十前に無職になった娘とギャンブル依存症の父親を映画が救う話。

    ご都合主義万歳な展開だけど、最後は涙をこらえるのが大変です。
    というか、電車の中で涙出ました。

    「DVDで観ればいいや、と思われるような映画を作りたい映画人がいるものか。」
    というセリフが出てきたり、友人にも「映画は映画館で観る用に作られている」と聞いたこともあり、面白そうな映画は映画館へ行きますが、やはりDVDでいいや、と思ってしまうこともしばしば。
    リバイバルもいつ何がやっているのか分からなくて、1、2回しか行ったことがありません。

    もっと映画館に行きたいな、と思わされる本でした。
    嫌な人は出てこないし、がっかりな展開も無く、安心して読めます。
    面白かったです。

  • 映画が好きなので、映画を愛する人たちが奮闘する姿がとてもよかった。最近DVDが多くなっていたけれど、真っ暗な空間で、映画の世界だけに入り、仕事のことも、今日の夕食のことも、いやなできごとも忘れてたのしめるひと時を味わいたくなった。基本、映画も本も音楽も、素敵な非日常なので!!

    マハさんの作品は、いつも仕事ができる女性たちが魅力的に描かれている。仕事をやっていると、大なり小なりこんな展開があって、思わぬところで悩んだり、そこを突き抜けて得た充実感があったり。きっと誰もが共感できるところがあるのではないだろうか。

    明日も、がんばろう。

  • これぞ小説、これぞ物語。巻末の解説で片桐はいりさんが語っているように、小説を読む幸せは「正しい事実より、楽しい作り話」に出会う喜びなのです。サスペンスもいいけど、やさしくてあたたかい涙が滲むような世界に出会いたいのです。それを叶えてくれるのが小説です、大人のファンタジーです。
    「カフーをまちわびて」も奄美の小島のやさしくてツンとくる物語でよかったし「楽園のカンヴァス」もおもしろかったですが、これがいちばんいい。
    映画と映画を愛する人々、家族愛、友情、絆、再生の物語。そう言ってしまうと陳腐ですが、行間に愛とやさしさが詰まっています。
    名画を観た後はエンドロールが終り場内が明るくなっても余韻ですぐに席を立ちたくない気分になることがあるが、この作品の読了後も同じであった。
    今年の読み納めの一冊。いい本に出会えた。

  • シネコンでもDVDでもネット配信でもなく「映画館」に行きたくなる。
    共通項は映画好き。
    ただそれだけが海を越えた友情と奇跡を生む。

    映画に夢中だった頃
    お小遣いをやり繰りして隣町の名画座に足繁く通っていたことを思い出した。
    「風と共に去りぬ」も「ディア・ハンター」も
    私の中で名画№1である「カッコーの巣の上で」もスクリーンで観た。
    あの時の感動を思い出す。
    今は家にいながらしてDVDもレンタルできるしネット配信だってある。
    でも、やはり映画は映画館で楽しむものなのだとこの作品を読んでしみじみ感じた。

    お話としてはもうファンタジーにカテゴライズしたくなるご都合主義なんだけど
    ラストは涙ぐみながら読んだ。
    そして「ニュー・シネマ・パラダイス」をもう一度観たくなった。
    今度はDVDではなく映画館のスクリーンで。

  • 「ただ好き」を共有できる幸せ。
    「ただ好き」を追求し続ける魅力。
    それらがいっぱい詰まっていて、私の心にもいっぱい詰めてもらった。

    「ただ好き」、一番の強さだ。

  • 会社での人間関係に躓き会社を辞めてしまった歩の元に届いたニュースは、ギャンブルと映画が好きな父の入院と借金。父の留守中、父の映画ノートに歩が映画に関するエッセイもどきを挟んでおいたことがきっかけで、歩は映画出版社「映友」でライターの職を得て、さらには父の書く文章を映友社のブログに掲載することになる。

    好きな作家さんの作品の映画化は期待外れに終わることが多いけれど、好きな作家さんが映画について書いた作品は絶対に面白いはず!と思って読んだ。そしてその期待は裏切られなかった。

    全ての、とまでは言わないが、多くの映画好きにとって「ニュー・シネマ・パラダイス」はある種の原風景だと思う。あの映画を思い出すとき、誰もが、いかに自分が映画を愛しているかを改めて実感すると共に、今まで映画を愛し支えてくれた先人たちに感謝の意を覚える。
    この偉大な作品を、物語のきっかけにしている時点で、ニクい。

    そこから先は原田さんお得意のハートウォーミングなストーリーと並行して、「フィールド・オブ・ドリームス」「硫黄島からの手紙」といった数々の実際の映画作品を、ゴウちゃんこと歩の父による「感想文」と、ローズ・バッドという正体不明のコメンターによる「批評文」、両方の切り口から追体験できる。実際にはこれを一人二役で書いている原田さん、さすがだわ…。
    やっぱり映画レビューは、映画の文法や知識を総動員しつつ単なる評論には終わらずレビュアーの個人的思い入れなどが混ざっている文章を読むときが一番面白い。

    そんな素敵な作品を〆る映画は何だろう?と思っていたら…やっぱりその作品だったか!ローズ・バッドの手紙の或る一文が、その映画に対する映画ファンの想いを全て代弁している。あまりにも的確すぎて、その一文を引用するだけでネタバレになるから書けないくらいに(笑)。

    読み終わって、あー、やっぱり映画って良い!大好き!映画館行かなきゃ!!と思える素敵な小説。

  • 私は、映画にかかわるお仕事をしています。
    ですが、いまいち“映画愛”のようなものにかけています。
    本の方がずっと好き。
    そんな私の勉強用(?)にぴったりの小説を発見しました。

    原田マハさんの「キネマの神様」。

    40手前でシネコン開発の華やかな舞台から降りたキャリアウーマンの主人公。
    彼女にはギャンブル病に巣くわれた父と、彼を助け続ける気の毒な母がいる。
    父の病と新たな借金の発覚を機に、ギャンブル病から克服させようと発起する母と娘。
    父にはギャンブルから目を反らせさせることのできるもう一つの趣味があった。
    それが、映画。

    父の設定だけ読むと、どんな重々しい“家族の再生ドラマ”が描かれるのかと思いそうだけど、
    いたって前向き姿勢で明るいトーンのホームドラマです。
    そんな空気を作り上げているのが、このお父さん。

    良い意味でも悪い意味でも懲りない、
    好きなものに一直線の子供のような人です。
    そのせいで周りに厄介を降りかからせるだめ父(夫)。
    けれど、不思議と母も娘も彼のためにブツクサいいながらも動いてします。

    「映画館には神様がいる」と不思議な説得力のあるエピソードや
    映画に対する素朴で深すぎるほどの愛情に
    思わず観たくなってしまう作品が山のように出てくる。
    映画好きなら、もっと感じ入ることが多いのじゃないのかな?
    私はちょっと勿体無く思えてしまうほどでした。

    特にお父さんを好きになってしまったところは、
    作品の良いところ・明るいところを拾い上げる姿勢。
    映画好きゆえに通ぶって毒舌になるのではなく、
    いつまでも素直な気持ちで作品の魅力を賛美する。
    そういう混じりけのない気持ち、なかなか持てないです。
    本の感想をこういうふうに書いていると、
    数をこなせばこなすほど粗探しをしてしまう時があり
    そんな“どんより”をリセットさせてくれました。

    好きなものには正直に、難しくない言葉でいい。
    すばらしいものに出会えた感謝を伝えたい。
    そんな気持ちでこの本の感想にも向き合えました。

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キネマの神様 (文春文庫)の作品紹介

39歳独身の歩は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。"映画の神様"が壊れかけた家族を救う、奇跡の物語。

キネマの神様 (文春文庫)の単行本

キネマの神様 (文春文庫)のKindle版

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