夏のくじら (文春文庫 お 58-1)

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  • 文藝春秋
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  • / ISBN・EAN: 9784167801373

感想・レビュー・書評

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  • 息子が小学生の頃、地元のよさこい祭りに参加して、汗だくになり真剣に踊っていた。そんな思い出からこの本を読み出した。熱気はたしかに伝わった!真夏の土佐の暑さも、踊り続ける渇きもみんな伝わった。
    良い小説だった。


  •  『〝クジラ〟強調月間始めました!』3

     第3回は、大崎梢さんの『夏のくじら』です。
     本書の「くじら」は、舞台の高知土佐湾が鯨の生息域で、捕鯨文化が栄えていたという事実そのまま。また、主人公が「鯨井町踊り子隊」チームに所属するという設定です。
     よさこい祭りの高揚感と関わる人たちの群像を綴った、まさに灼熱の夏物語です。
     物語の進行と同時に、よさこいの歴史、準備から本番までの説明が上手く取り込まれていて、勉強になりました。
     チーム表現がもたらす快感や魔力、よさこいに取り憑かれ、練習や本番が苦しくてもやる喜び、完全燃焼、躍動感あふれる描写から〝夏を刻む〟心意気が伝わってきます。
     よさこいの陰の努力に裏打ちされた華やかさに加えて、主人公の「憧れの女性を探す」別視点が、更に華を添えています。4年前にある女性と交わし果たされなかった約束が…。
     もう、青春ですねー。爽やかー。これは読んでのお楽しみ…。

  • 青空に舞う纏。 曲に合わせて振り鳴らされる鳴子。
    ぴったりと動きを揃え、最高の笑顔で舞う踊り子たち。
    年に一度のよさこい祭りに懸ける思いの熱いこと!

    有川浩さんの小説、『県庁おもてなし課』や『ゆず、香る』
    ドラマ『遅咲きのヒマワリ』などで、ここのところじわじわと高まっていた
    「高知に行きた~い♪」熱が、さらに急上昇してしまいました。

    東京近郊で育ったにもかかわらず、ひょんなことから中三の夏
    祖母や従兄弟の住む高知で、よさこい祭りのチームに参加することになった篤史。
    審査員から、素敵なパフォーマンスをした踊り子だけが貰えるメダルを
    祭りの最終日に交換しようと約束した女の子が、いつのまにか姿を消して。。。

    初恋の夏から4年。
    彼女にもう一度逢いたい一心で、関東からはるばる高知大を受験し
    晴れて大学生として高知に戻ってくるとは! 青春ですね♪

    彼女との再会を果たすため、しぶしぶ参加したはずのよさこいなのに
    チームの一員としてコンセプトの決定から衣裳や音楽選び、
    メンバー募集のためのHP作成、踊りの練習、地方車の飾りつけまで関わるうち
    どんどん燃え上がる、よさこいへの情熱。
    遠い昔、学園祭に向けて狭い教室にぎゅうぎゅう詰めになって
    模擬店や仮装行列の準備をしていた時のときめきが、懐かしく甦ったりして。

    最終日に向けてどんどん白熱していくよさこい祭りそのままに
    地道な準備作業に始まって、厳しい練習、汗と笑顔が飛び交う祭り本番へと
    一気に加速していく物語。
    祭りの喧噪も過去のわだかまりもすべて遠のいて
    切り取られたようなラストの一瞬、爽やかな風が心を吹き抜けます♪

  • 高知「よさこい祭り」をめぐって繰り広げられる青春小説。
    進学を機に高知にやって来た篤史が、従兄弟の多郎とチームスタッフをしながら自らも踊ることになる。

    こんなに自由度があって味わい深いお祭りだったとは、初めて知りました。
    友情、恋、それぞれが胸に抱くよさこいへの思いや情熱。淡い恋の行方も気になるけど、私としては本番のパフォーマンスやそこまでに至る過程の方が気になった。
    よさこいを踊っている場面では、その様子を頭に思い描いて気持ちが高揚した。

    祭りの熱気に当てられて心も身体も熱い“よさこい”の夏の物語。
    本書を読んだことで「よさこい祭り」を見る楽しみが増えました。
    やっぱり読書は世界を広げてくれますね♪

  • よさこいカメラマンとして前から読んでみたかった1冊。
    東海・北陸のよさこいしか見たことはありませんが、街ぐるみで開催されている高知のよさこい祭りを見に行きたくなりました。

    途中、チームのセンターである伝説の踊り手・カジさんが他のチームからも誘われ、指導などもしていたという場面。
    入賞を目指して自分のチームが必死に頑張っている中、他のチームに塩を送るような行動に主人公が怒る場面でしたが、僕の中では長年疑問に思っていたことが納得できたような気がしました。

    いろんなよさこい祭りに行っても各チームが仲が良いというのが前から疑問でした。一応は入賞や大賞を目指して各チームが競うのが目的なので。

    ただこの本によれば、よさこいは各チームの歌、振り付け、衣装などを同じ人が手掛ける例も多く、各チームがライバルというよりは兄弟や仲間という感覚が強いこともあるそう。
    さらに言うと「一緒に祭りを作り、盛り上げる」という意識が強いらしいのです。
    その一方で自分たちのチームの入賞を狙って切磋琢磨するということも忘れずにやっているそうです。
    ここによさこいまつりに行って感じる清々しさと熱さの根源があるのだなと納得できた気がしました。

    祭りを作り上げるものとして、いろんなチームが協力して盛り上げ高めあいながら、自分のチームのレベルを引き上げるため必死に努力する。ある意味、「競争」というものの本質を見た気がしました。

    この本は主人公の「初恋の人探し」という側面も持っているので、よさこいを知っている人はよさこいの背景も含めて楽しめ、初めての方も恋愛青春小説の側面からよさこいの世界に入りやすい1冊だと思います。
    よさこいカメラマンとしては、ぜひ多くの方に読んでいただきよさこいに触れてもらえると嬉しいですね。

  • 初恋の甘酸っぱい青春と、夢や絆の心熱くなる青春がよさこいの夏の中で描かれている。
    王道でやや恥ずかしい感じもあるけど、夏らしくて良かった。三雲さんと志織さんの恋が自分的にヒット。

  • ここしばらく、大崎梢氏の旧作を連続で読むことにした。

    いつもながらに…細やかな描きこみに心打たれた。人によれば、ひと夏の祭と淡い恋…の取り合わせをありきたりのテーマだと思うだろう。でも私は、大崎さんが描く限り、上っ面を舐めただけで終わる青春ドラマにはならないだろうと確信していて、まさに期待通りだった。

    登場するのは、それぞれの人生の輝きの中でそれぞれの思いを抱え、時に壊れそうになりながらも歩き続けるたくさんの主人公たち。互いが時に重なり、繋がり、反発しあい、強く結びつき、それぞれの夏を完結させてゆく。

    篤史もそのひとり。篤史にしかわからないこだわりと思いを胸に、因縁のよさこいに加わる。

    チームの絆は、互いを思いやり労わるだけでは生まれない。なぜなら、それぞれが目指すところは向きも高みも異なっているからだ。それはそれぞれの生きる道の違い。だから、ばらばらなメンバーを結びつけるものはそこにはない。ただ、チームの踊りが最高の瞬間を極めることを刹那の願いとして集う。ひとつのことに全員で打ち込み、成し遂げたという実感と揺るぎない自信、はじける笑顔と爆発する喜びをお互いに認め合った時、それこそが絆となる。

    絆は刹那。そのような強いものは、人の一生を貫き続けることはない。でも確かにそこにあった。みんなではじけた。輝いた。それこそがそれぞれの人生をやがて動かしていく力になる。

    賞を獲ったチームの後夜祭、それにそのあとのチーム解散が描かれていないところにこそ、綿密な取材を通じてきっと生まれたに違いない、作者のよさこいへの愛を感じた。描きたくなかったのだと、私は思う。

    強い力と清々しさに、私もひととき酔わせてもらった。

  • 青春、熱、夏が文章からしっかり伝わってきて、一気に読み進めたし、とても良い作品だった

  • 季節は夏にはまだ遠いけれど、夏をしっかり感じました。

    高知で行われているよさこい祭を舞台にした話。
    うわー生で見てみたいなぁ。
    お祭り女の私としては読んでいるだけで血が騒ぐような気がします。
    これは楽しくない筈がない!
    月島、いい男だなー。

    風邪をひいて体はグッタリしているのですが、気持ちは元気になりました。

  • 夏に読んだら、よさこい祭りの熱気がもっと伝わってきただろうなー。こんなにも大掛かりなものだと初めて知りました。でも思ったより話にハマれずに読了。題材はいいけど登場人物にあまり魅力を感じなかったのが原因。特に篤史にはほとんど共感できなかった(主人公なのに)。初恋の人を探すっていうのも、そんなに好きなように見えなくて「ふーん」としか思えなかったです。

  • 青春全開な本でした。「かも」を大事にせぇ。青春だからこそ実行できるのかもしれず、羨ましい限り。
    憧れの彼女の正体は少し分かりやすかったかもしれませんね。

  • お祭りに恋。いやぁ、青春ですな。熱気もあるし、言葉も跳ねる。これはいいお話ですね。

  • たった2日間、その2日間に自分たちの夏 すべてをかける

    よさこいについて予備知識なく読み始めたこともあって、文章だけでなく絵や映像で見たいと強く思った
    主人公がよさこいに本気になっていくにつれこちらも物語に入れ込んでいけるのが読んでいて心地良い

    たった一瞬のために力を尽くし、その一瞬を迎えたときに味わえる快感と感動と寂しさ、それを経験したことが誰しも一度はあると思う
    読書中、そんな自身の青春時代を何度も思い出せた

  • 青春小説の醍醐味といえば『ボーイ・ミーツ・ガール』は外せない。
    本書はそんな王道、といってもすでに四年前に出会った彼女との約束果たすために彼女を探すという物語。
    そこに夏のよさこい祭りが舞台装置として描かれる。

    よさこいにかける人々の想いや、そもそもこのお祭りは各チームすべて自分たちでプロデュースして自腹を切ってプログラムを制作し、祭りの運営側もすべて手弁当で踊り子たち各チームを支援するこのお祭りの情景がいきいきと描かれている。
    2年前から数ヶ月の間に何回か高知を訪ねて、高知の姫たちと語り飲んだ街の景色を思い出す。
    もう、前回訪ねてから早いモンで一年も経ってしまった。

    そもそも本書を知ったのは、ちょうど今年のよさこいの最中に高知の姫から紹介してもらったのがきっかけだった。
    前に住んでいた池袋でも毎年夏になるとよさこい祭りをやっていたが、それほど興味を引くモノでは無かったが、今年はfbを通じて流れてくる本場高知のよさこいの状況や本書を読んでみて、本場のよさこいの空気を自分も肌で感じたいと思わせる、暑い夏の日の二日間の物語であった。

  • 一度本場のよさこいが見たいと青春18キップで乗り込んだ。
    同じ阿呆なら踊らにゃそんそんを地で行く自分が、ただただ通り過ぎる隊列に手を叩いて歓声を上げた。

    行き当たりばったりなスケジュール、
    踊ってる最中に腕を掴んで無理矢理メダルを掛けたり、
    かと思ったら踊り子も手を振って列から抜けたり、
    最後尾からは団扇のサービス。
    賞がらみのソーラン系を踊ってばかりだった自分には驚く事ばかりで、
    でも純粋になんて楽しいんだろうと思った。
    これが祭だって。

    本当は夏の真っ盛り、ギラギラな酷暑のど真ん中で
    読みたかったけど、なんとか残暑には間に合ったかな。

    昼間の原色の鮮やかさ、
    夜の幻想的な艶やかな深み、
    抜群に派手で明るいのに、どこか哀しいんだよね、まさに。

    未来は、決まってないことの方が多いよ。
    南国高知には恋以外の花も咲くよ。

    次は何して踊ろうかな。

  • 私が高知で踊ったのは、もう5年も前になるのか。思い出せる部分と思い出せない部分と。いろいろ交錯した結果、もう一度踊りたい、と思いました。

  • 暑く、熱い。スロースタートから加速度的に高まる想いが、祭りの熱が、夏の暑さが最後まで登りつめる感じ。本屋ミステリーシリーズの長編では後半の駆け足が気になったけど、こういう熱さは魅力的。みんなで作り上げていく一体感もまた素敵。

  • よさこい祭りの雰囲気を感じられる
    物語だった。夏に読むべき1冊

  • 一夏の思い出で青春がつまった一冊だったので必ず夏に読んでもらいたい。大学進学で高知に来た主人公はよさこい祭りに参加することになる。実はある年上の女性を探していて、よさこいを通じて探し人を見つけることになるのだが…。唸るような暑さと人々の熱気、青年の揺れ動く心情など、輝きを放つ物語だった。

  • んー。
    みんなの知らないネタを紹介しなきゃいけないせいもあるとは思うけど(まぁ高知やよさこいは、ビジュアルで見てもらった方が早いよねー)、若干入り込みにくかったかなー。
    あと、この作者聞いたことある気がするー、と思ったら、プリティ~の人だった。
    主人公、あのときも、腐りかけから面白み発見パターンだったような?(笑)
    基本的にはこうちに縁もあるしよさこいも見たことあるし、あ高知だ!と思って楽しんだのではあるけど。よさこいの裏事情は全然知らなかったから興味深かったけども。
    総じてのストーリーはまぁ爽やかだったし、最後の最後は、探し人関係でちょっと一捻りあったりしておもしろかったけど。
    やや残念感もあった。

  • よさこい・鳴子に詳しくなれる一冊でした。
    読みながら、動画サイトで検索を繰り返しました。フレーズを使っていればいい、ということなので、聴き比べると全く違うものに感じます。だから観客は飽きがこないのかも。
    厳格なルールのもとではなく、大枠の中で楽しもう、という寛容さ。そのいい意味でのゆるさが魅力なんだろうなと思います。一度本場で体感したくなりました。

    篤史の初恋、幻のいずみさんの正体が気になって仕方ないのですが、その結末が…。うーん。言葉遊びというかなんというか…。その他の人たちの恋模様も、なんとなくとってつけた感があったのでそのあたりは消化不良。月島さんとか。
    ま、見つかったことはよかったし、これからがありそうな終わり方もよかったです。

    魅力的なのは、やっぱりカジくん。「梶」だと思ったら「華地」でした。名前まで華がある。
    クールに見えて情に厚い。踊ったらかっこいい。不遜。でも不器用。いいとこどりの素敵なキャラです。

  • 主人公の篤志は東京育ちだが、祖父母を頼って高知大学に入学。従兄弟の多郎に誘われて戸惑いながら鯨井商店会のよさこいスタッフとなる。そこで、四年前参加したよさこいチームで出会った忘れられない1人の女性を探すことになる。カリスマ的なダンサーやそれぞれの良さがや個性の光るメンバーと、ぶつかったり悩んだりしながら、でも時間は有限、本番まで目まぐるしく過ぎていく。
    よさこいを駆け抜ける夏の青春小説。読んでいて篤志の謎の憧れの女性を求める疾走感がきもちよかった!一気呵成で読んでしまった。爽やかで清々しい。あー…晩夏に読むんじゃなかった…夏が恋しくなってしまう。

  • 誰の中にもきっとあるあの頃の痛さや熱さをそっと受け止めてくれる小説

  • 2018年07月31日読了。

  • よさこい祭りが舞台の小説。
    はからずも7月末~8月頭のこの時期に読み(よさこい祭りは8月10・11日開催)、タイムリーでした。

  • 高知県よさこい祭りと少年の恋のお話。とてもよみやすかった。

  • 初読みの作家の方。高知県で夏に開催される「よさこい」祭りを題材にした小説。お祭りのイメージがつかみにくかったので動画サイトで「よさこい」を検索しながら作品を読んだ。そうすることによって高知の人達が「よさこい」にかける情熱というものが少しでもこの小説から読み取れるような気がした。住んでいる地域にも「祭り」はあるけれど、こんなに地域ぐるみで大規模なものはないので、うらやましいなと思う。ただ、終わり方があっけなかったのでもう少し物語の余韻があればなとも同時に思った。感想はこんなところです。

  • 高知のよさこい祭りの話!!
    爽やかで凄く良い.まぁ季節は真逆ですが笑
    あとがきにも書いてあったけど、これを読めば
    自分で踊った事が無い土佐人以上によさこいの現場に
    詳しくなれるって書いてあったけど、
    本当に詳しく書いてあるの。
    大崎梢さんの旦那様が高知の人らしくて
    主人公の篤史に感情移入するわ~
    祭り本番のシーンなんて映画みたいにテンポよく
    どんどんカッコよく踊っていく姿が目に浮かぶようだよ!
    この本は本当に良かった♪

  • 勢いのある青春小説。
    人間関係に悩んだりする主人公の成長も楽しめるけど、やはり祭りの描写が鮮やかで楽しそう。
    よさこい祭り、見てみたくなりました。

  • 大学を祖父母のいる高知に決めてやってきた主人公は、いとこから夏の一大イベントであるよさこいで新規チームのサポートメンバーとして加わってほしいと強く頼まれる。
    彼の脳裏には中学生の夏に出会った「ある女性」との印象的な別れがよみがえるのだった。

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著者プロフィール

大崎梢
東京都生まれ。書店勤務を経て、二〇〇六年『配達あかずきん』でデビュー。主な著書に『片耳うさぎ』『夏のくじら』『スノーフレーク』『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』『めぐりんと私。』『バスクル新宿』など。また編著書に『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』がある。

「2022年 『ここだけのお金の使いかた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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