あなたに、大切な香りの記憶はありますか? (文春文庫 編 20-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801564

作品紹介・あらすじ

「香り」の記憶は何かのはずみに想いだす、忘れがたいもの。人気作家8人(阿川佐和子、石田衣良、角田光代、熊谷達也、小池真理子、重松清、朱川湊人、高樹のぶ子)が「記憶の中の忘れがたい香り」をテーマに競作。あなたの中のかけがえのない記憶を呼び覚ます贅沢なアンソロジー。さあ、8つの扉のどこからでもお入り下さい。

感想・レビュー・書評

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  • 香りにまつわる短編集。心に引っかかる懐かしさ、これから味わうほろ苦さ、思い出したくないほどの苦しさ……香りは記憶に結びつくというけれど、歳を重ねたこれからは、香りを記憶するよりも思い出すことが増えるんだろうか。そんなことを考えながらも、すっと沁み入る作品でした。
    とくに「父とガムと彼女」「ロックとブルースに還る夜」がお気に入り。

  • ベテラン作家達のアンソロジー。
    「いちば童子」朱川湊人氏の描く昭和ノスタルジーがとても好きです。
    熊谷達也氏のカフェの話、角田光代氏の子供の頃に抱いた父への疑惑の話。
    香りと共に、フッと記憶が蘇ったり、過去の自分に戻ったり。年を重ねるほどに、そんな体験が多くなってきたような気がします。
    どの話も、どこか懐かしい感じがして、ほっこりしたり胸がザワザワしたり…八篇すべて面白かったです。

  • 夢の香り 石田衣良 ★
    父とガムと彼女 角田光代 ★★
    いちば童子 朱川湊人 ★★★★ 
    アンタさん 阿川佐和子 ★★
    ロックとブルースに還る夜 熊谷達也 ★★
    スワン・レイク 小池真理子 ★★★★
    コーヒーもう一杯 重松清 ★★★★
    何も起きなかった 高樹のぶ子 ★★★

  • 「記憶の中の忘れがたい香り」をテーマにしたアンソロジー。

    香りをきっかけに記憶が甦ってくることがあると思う。
    そんな「記憶」と「香り」にまつわる物語からは懐かしさが醸し出されており、自分の思い出も浮かび上がってくるようだった。

    その中でも特に好みだった小説の感想を、いくつか書き留めておこうと思う。

    父とガムと彼女/角田光代
    父親が亡くなり、通夜をしていた主人公は一人の女性・初子さんに再会する。
    小学生の頃、学校にお迎えに来てくれた初子さんと寄り道をしたこと、甘ったるいガムを噛みながら帰ったこと……。
    主人公の中で様々な記憶が甦ってくる。
    彼女と過ごした記憶は、主人公にとって「そこだけ手触りが違う」ようなものだった。
    記憶を一つずつ解いて、その触り心地を確かめていくような物語だった。
    ラストで主人公が見た光景とそれによって結びついた結論は、本当のことはどうか分からないが、腑に落ちたような感じがした。

    ロックとブルースに還る夜/熊谷達也
    出版社で編集の仕事をしている主人公は、担当作家との打ち合わせのため、三十年ぶりに仙台・国分町にやって来ていた。
    打ち合わせをした夜、主人公は予備校時代に通っていたロック喫茶を見つける。
    変わっていない店内と、少し老いたマスター。
    ロック喫茶独特の雰囲気と主人公の思い出が混ざり合って、まるでタイムスリップしたような心地になった。
    ラストシーンはまるで夢から覚めたような少し寂しい気持ちがあったが、「もしかして」と人の繋がりを予感させられる終わり方でとても良かった。

    スワン・レイク/小池真理子
    叔母のもとを訪ねた主人公は、十年ぶりにスワン・レイクへと向かった。
    そこは、たまたま見つけたビデオテープに録画されていた、夫との思い出の場所だった。
    雪が降りしきる寒い日、白鳥に会うためにたった一人で向かう主人公を見て、胸が締め付けられた。
    物語の中には「雪の香り」という表現が出てくる。
    私はこれまで「雪の香り」を感じ取ったことがあるだろうかと考え、その経験がないことに気付いた。
    素敵な表現だと思った。

    コーヒーもう一杯/重松清
    彼女と一緒に暮らしていた頃に買った、手回しのコーヒーミル。
    二人きりのアパートでミルで挽いたコーヒーを飲んだことを、主人公は語っていく。
    主人公にとってこれまでに何か経験や思い出があったわけではないのに、アパートの部屋で彼女と飲むコーヒーはむしょうに懐かしく感じていた。
    そんな彼に彼女が言った「コーヒーのことが、いま懐かしいわけじゃないの。これから懐かしくなるのよ。あなたはいま、未来の懐かしさを予感してるの。だから、なにも思いだせないのに懐かしいの」という言葉がとても好きだった。
    この感覚は、分かると思った。
    「ちょっと考えればわかること」も分からないほど、当時の彼は子どもだった。
    そんな少し苦い記憶を、コーヒーとともに大切に思い出すような物語だった。

  • 有楽町の無印で気になって買った。

    「スワン・レイク」と「コーヒーもう一杯」がお気に入り。
    香りに焦点を当てて編まれたアンソロジー。
    匂いフェチのわたしには印象に残るお話ばかりでした。

    とりあえずカルディでマンデリンを買ってみる。

  • 実力はぞろいでの、香りにまつわるアンソロジー。ぞっとするもの、ほっとするもの…これは面白かったです。

  • 『香り』がテーマのアンソロジー。
    コーヒー会社のウェブサイトで公開されていたものらしい。
    その手の作品集としては、なかなか良い方に入るのでは?
    内容がバラエティーに富んでいるのが良い。

    『夢の香り』石田衣良
    ★★★
    読みやすいけど、はじめからオチが見える。

    『父とガムと彼女』角田光代
    ★★★★
    やっぱり角田さんは何でもうまくこなす。
    ちょっと昔の映画を見てるようだった。

    『いちば童子』朱川湊人
    ★★★★
    恋愛じゃないのがいい

    『アンタさん』阿川佐和子
    ★★★★
    テンポ良く、面白い。やはり上手い。

    『ロックとブルースに還る夜』熊谷達也
    ★★★★
    初めて読む作家。
    なかなか良い感じだ。
    他の作品も読もうかな。

    『スワン・レイク』小池真理子
    ★★
    だから何?という感じ、スミマセン。
    もっと面白い作品を書く人なのに、香りもこじつけっぽい印象しかなかった。

    『コーヒーもう一杯』重松清
    ★★★★
    読んだことがあるかも…と思ったら「季節風 冬」という短編集に載っていました。
    甘酸っぱい青春。会話の一つ一つがいい。
    コーヒー会社のウェブサイトに、王道でコーヒーの香り

    『何も起きなかった』髙樹のぶ子
    ★★★★半
    ベテランの味。
    これはすごい往復書簡(メール)
    女同士の腹の探り合い、怖いなあ~

  • 図書館で予約して借り、読み終えました。
    においというものは不思議なものあり、思い出のものあり、
    恋に役立つものでもあり…。
    この本をネットで見て読んでみてよかったです。
    この世にはいい意味でのにおい、悪い意味でのにおいが
    あります。それがこの一冊でわかるような気がしました。
    特によかったのが石田衣良さん、熊谷達也さん、重松清さん、阿川佐和子さんです。
    この本を買おうかどうしようかはもう少し先になりますが…。

  • 「香り」が関係する8つの短編で構成。

    まず、企画本を続けて読んでいたことに驚いてしまった。
    物語の著者が全て違うのでそれぞれ新鮮味があるのですが読後感が不完全燃焼な感じになるので、個人的にはあまり好んでは読まない部類です。
    その企画本を続けて読んでいたということは、気になる著者、読んでみたい物語があったからだと思います。

    恋愛の香り、過去の香り、疑惑の香り、この企画本では「香り」がテーマ。
    全ての物語を読んだ後にタイトルの通り、自分にとって大切な香りを考えてみるとほっこりします。

  • においフェチなので、つい手に取ってしまった。香りの記憶はおもっている以上に、したたかだ。

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著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

阿川佐和子の作品

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