平日 (文春文庫)

  • 127人登録
  • 3.35評価
    • (2)
    • (9)
    • (8)
    • (3)
    • (1)
  • 10レビュー
著者 : 石田千
  • 文藝春秋 (2012年3月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167801793

平日 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 今も昔も関西暮らしだが、東京へ何年か赴任したことがあった。帰任することが決まり最後の休みにどこへ行こうかと思って、上野動物園へ繰り出してみた。人気者のパンダはその時はおらず、冬だったこともあってか全体的に静かに感じた。

    石田千さんの「平日」は上野から始まる。そこにはどんな上野が書かれているだろうと思ったが、まるで知らない姿がそこに表れる。でも、きっとこういう風景があったはずだと思ってしまう。こういうものを書かれる方だと知らなかったので、かなり驚いた。

    アルバムを見ているような本である。一つ一つ石田さんの体の中に入ったものが変換工程を加えられて出ていく。工程、と言ったけれど本当に次々と出てくるのである。これが驚くところ。中には動物や他の人の視点を借りることもあるのだけれど、やはり石田さんの五感が感じられる。語彙というか、言葉のいろいろな運用の仕方を知っている、という感じもある。

    会社人間になってしまうと、平日の街の昼の雰囲気に触れることが少ない。でも確かに平日は違った顔をしているはず。タイトルを「平日」ってしただけで目の付けどころのよさを感じる。

    円山町の一編は村上龍さんの『トパーズ』なんかと合わせて読んでみたいなあと思う。
    石田さんの本はたくさん出ているようでこれから楽しみだ。

  • 平日の東京をぶらりと連れられ歩いているような、ゆるやかな雰囲気。
    エッセイと言うよりは短編集。
    写真はクラフト・エヴィング商會さんとよくお仕事をされている、坂本真典さんでした。
    見たことがあるわけではないのに、何処か懐かしいような街並み。

  • 都内の10の街を舞台に綴られた物語と、はとバスの小さな都内旅のレポートが収録されています。

    最初は、単なる散策記録かと思いましたが、3編目の「早稲田」で、いきなり語り手が猫になり(しかも古本屋の奥さんという設定)ああ、一人称の物語なのだと気づきます。

    それにしても、古本屋の妻である猫、時々人間になって、たい焼きをかじり、雀に端を投げてやったりしており、なんて羨ましい!
    (これから、何になりたいか聞かれたら、この短編の猫になりたいと答えよう)

    たぶん、ご本人が街を歩いて感じたことや、考えた内容や、見た風景も混じっているとは思いますが、幻想的な部分も多く、「それぞれ違う主人公がいる」と考えた方が面白く読めるな、と思いました。

    早稲田(古書店とその界隈)と十条(商店街)と平和島(ボートレース)の話が特に気に入り、平和島には行ったことがないので、一度は行って、ボートレース(ギャンブル)もやってみたくなりました。
    石田さんの描く街は、現実より三割り増しぐらいで魅力的に感じられるので、行ってみると「あれ?」となるかも知れませんが。

    普段と変わらない日々、日常の中にも、気づくことはいっぱいあるなあ、ちょっとしたきっかけから想像力を飛翔させることができるんだなあ、とあらためて感じました。
    そこまでは多くの人ができるでしょうが、著者はその切り取り方、展開の仕方が独特で、ぶつ切れ気味の文章とマッチしていて魅力です。

    また、観光バスに乗った話は、クリスマスイブに一人で参加しているという設定で、一度真似してみたくなりました。(でも、一人は淋しいな、女同士がいいなあ)
    冬ということもあるのでしょうが、やたらとトイレに行っているのと、皆が集合時間より早くバスに戻っているというのが可笑しかった。

  • 2014/04/14

  • 言葉の選び方が独特で、ゆっくりかみしめて読むのに相応しい文庫。
    「むかいのワシミミズクのメスは、仲代達矢にそっくりだった。」

  • 読みはじめてすぐに、盲点をつかれたな、とひきこまれました。なじみのない街の平日の顔だなんて。

    上野、大手町、早稲田、羽田、吉祥寺、泉岳寺、十条、平和島、円山町、柴又。そして都内のバス観光。
    名を知っていても、歩いた実感のない都内の地名が並びます。
    平和島は競艇場のあるところ、円山町は元花街でいまはラブホテル街。

    どこにでもある言葉を並べた描写でも、伝わってくる情景は未体験ゾーンです。

    なつかしい花のうしろの日がげは、田舎のにおいがする。[円山町]

    窓際の席で、金銀ひし形をもくもくと片づけながら、くもった町を見おろす。
    だれのつむじも、ちいさすぎて見えない。 [新宿]

    ちいさな光景が思わぬ視点からすくいとられた描写に、何度もドキリとさせられました。


    こんな一文がありました。

    「けっきょくひとは、見たいものしか見えない。」

    石田千の見たいものから目が離せません。

  • エッセイと見せかけて、小説。
    小説と見せかけて、韻文。
    本当と嘘と虚像と現実が混ざり溶け込む優しい東京の一日。

  • 2012 5/27

  • 本屋さんの文庫新刊のコーナーで、平積みされたシンプルな表紙に目を惹かれ、裏表紙にある短い紹介文のみをみて購入。

    著者の男女も分からないままに読みはじめました。
    読みはじめても、銭湯に入る件までは判断がつかなかったりしました。
    そんなことは気にならぬほどに、少し意地悪で、独特な綺麗な文章に引き込まれました。

  • 情景描写の繊細さは一貫している。
    ひらがなとカタカナと漢字のバランスが良好。
    古本屋の主人の妻だと思っている看板猫がたまに人間になる話が良かった。
    やはり、このひとは随筆で輝くなあ。

全10件中 1 - 10件を表示

石田千の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
石田 千
有効な右矢印 無効な右矢印

平日 (文春文庫)はこんな本です

平日 (文春文庫)の作品紹介

月曜日。駅前広場にソースの香りが、吹きだまる。木曜日。踏切のまえで待つ男に追いつき、女がならぶ。水曜日。御殿山に日はかたむく。金曜日。通勤電車は、スカートの女が多いことになっている。「平日」の東京が見せる豊かな表情を活写。ときに妖しく、ときに切なく、ときに奇妙なユーモアに満ちた珠玉の文章群。

平日 (文春文庫)の単行本

ツイートする