- Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167809027
作品紹介・あらすじ
隣接する老人ホーム「ひまわり苑」と「ひまわり幼稚園」は、理事長の思いつきで、相互交流を開始する。当初は困惑するものの、しだいに打ち解けてゆく園児と老人たちだが、この交流が苑と園の運営を巡り、思わぬ騒動を引き起こす。老人たちと園児らの不思議な絆、そして騒動の顛末を描いた感動と爆笑の長編小説。
感想・レビュー・書評
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2020年7月30日読了。
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有料老人ホーム『ひまわり苑』と『ひまわり幼稚園』は同じ理事長が経営する隣り合う施設。
ある日突然、その2つの施設の境界であったコンクリート塀が取り払われ、お互いに行き来自由な状態に。
『お年寄りに明るさと活力を、子どもたちにいたわりの心と人生の知恵を。』
という謳い文句で打ち出された『園・苑一体化施策』だが、その実情は県議会議員も務めている理事長の次期選挙に向けての人気取りでしかなかった。
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経営側の勝手な思いつきによって、現場で働く職員達は様々な変更に頭を悩ませる事に。
そして、一番迷惑を被ったのは『ひまわり苑』の入所者の老人達と『ひまわり幼稚園』の園児達だ。
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年の差70以上の老人達と園児達。
老人から見た幼児は猿の群れ、はたまた宇宙人以上の不可解な生き物。
園児から見た老人は、自分たちの何十倍も生きているゾンビや妖怪のような恐ろしい存在。
そんな両者がいきなり仲良く分かり合えるはずもなく、お互いにどのように接して良いのか分からずギクシャクとした状態が続いていた。
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そんな中、園庭で遊んでいた園児の晴也達のボールがひまわり苑の花壇の中へ転がっていってしまう。
入所者の誠次がその花壇で育てていた植物の芽がボールに潰されてしまった。
怒った誠次は晴也を叱ると同時に、植物が生き物であること、命の尊さというものを教えるために、亡き妻が好きだったひまわりの種を一緒に植える事を提案する。
その一件から、お互いに不器用ながら交流を深め、徐々に打ち解けていく老人たちと園児たち。
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しかし、ある事をきっかけに思いもよらない騒動が巻き起こる…。
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長く、陰鬱な梅雨の時期を夏らしく爽やかな本で乗り切ろうと選んだ一冊。
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老人たちと園児たちの掛け合いは、コミカルでユーモラスでとても笑える。
初めは『子供なんて嫌いだ』、『ジジババ達は怖い』と互いに敬遠していた両者が次第に打ち解けていく様子は読んでいてほのぼのとさせてくれる。
誠次が晴也の事を、本当の孫でもないのにとても心配し、あの子を怒らせたり悲しませたりしている者がいたら許せないと思う所や、
怖くてまともに話をすることも出来なかった晴也が、誠次に肩車をされて蝉を取って笑っている所などは胸が熱くなった。
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ただ老人たちと園児たちの触れ合いストーリーだけではなく、
亡き妻、亡き父への想い・死生観・家族愛・介護施設のあり方・自分の想いを我慢する事なく、権力に立ち向かえというメッセージ等とてもテーマも多く深い作品だった。
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3万本のひまわりは、さぞかし雄大であるだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まるで「森友学園」のような舞台で繰り広げられる“老人と子供のポルカ”。子供の描き方の巧さはさすがで、年の差70歳以上、世代間ギャップの大き過ぎる交流が笑える。戦争を知らない子供が爺さんになり、今度は学生運動の語り部となる…ことには時代の流れを感じた。
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「ひまわり幼稚園」と隣接する老人ホームの「ひまわり苑」。
園児たちから見る老人の描写がそこまで?と思ってしまうのだけど…
老人にとっての幼稚園児ってそんなふうに感じるものなのか…
「幼稚園児 VS ホーム入居者」か?と思いつつ読み進めると、この対決を一緒に育てたひまわりの花が溶かしてくれ、「ホーム入居者+幼稚園児 VS 経営者」となるのだが。
ここまで来るのがものすごく長く感じて…
後半になってようやく面白い!とスピードアップ。
ラストはちょっと良かった。 -
元気なジジババ小説好きな私としてはとても楽しめました。序盤がちょっと長く感じたけど、後半は、さすがの荻原浩といった感じ。色々書いてるけど、こういうドタバタっぽいのがうまいよねぇ。
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ユーモアのオブラートに包まれた、ちょっと切ない、でも心の暖かくなる物語。
やっぱりこういうお話は荻原さんの真骨頂ですね。 -
荻原 浩
(2012/7/10) (文春文庫)
我が家の近くに「ひまわり保育園」があります。同じ敷地に高齢者マンション。誕生会とか合同でやるそうです。
ほのぼのしますが実際はどうなのでしょうか?
この本、そういう意味でもすっごく面白かったです
年配者も幼児も みんな人間
どろどろいらいら でも一所懸命生きてるんですね
タイトルとおり ひまわりが印象的でした
≪ おひさまに わらってむかう ひまわりと ≫ -
隣り合う老人ホーム「ひまわり苑」の4名のはみ出し老人と「ひまわり幼稚園」の4名のはみ出し園児の交流が騒動を引き起こす。
自分がままならない老人と何をやろうとしても”大人”に「ダメ」といわれてしまう幼稚園児の対比があたたかい目で描かれている。
そしてその現場に13年ぶりに訪れるメンバは、そこに3万本のひまわりを植える。13年前を思い出してもらうために。 -
学生運動とか、よく分からんしなぁ・・・。でもまぁ、園児と老人の両方の感性とか、和歌子のおっぱいがにじむところ(母性)とか、よく研究してるなぁと思うし、園児がひゃあひゃあ騒ぐとか、この擬音表現は荻原さんならではと、いつもながら感心する。
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隣合わせの幼稚園と老人ホーム。ちょっとグレた園児と老人の起こす事件と、そこに至るまでの延々と続く序章のような日常が描かれる。全ては最後の数ページの為なんだろうな。文中のある人物のセリフ。
「安全な場所で他人を笑うな」その通りだな。