エムズワース卿の受難録 (文春文庫 ウ 22-4)

  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (503ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167812072

作品紹介・あらすじ

綿菓子のようなスローな頭脳を持つエムズワース伯爵の目下の関心は、ブタの飼育と、カボチャの品評会に優勝すること。なのに居城ブランディングズは本日も大騒動。不肖の息子・超頑固な庭師・妹たちとその娘たち…。老いた卿には心の休まる暇がない!ユーモア小説の巨匠ウッドハウスの、キュートなご主人受難録。全短篇収録。

感想・レビュー・書評

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  • エムズワース卿の豚と花に対する愛と次男坊への途方に暮れ感にくすりとさせられる。
    古き良き時代を感じさせる良作。
    ゆるゆると読んで面白かった。

  • ウッドハウスといえば、「ジーヴス(国書刊行会版表記)」シリーズを一手に扱っている国書刊行会さんがぱっと頭に浮かぶのだけれど、私はカバーイラスト・扉絵といったブックデザインの可愛さで、文春文庫版を手元に置いている。これはその4巻め。第3巻『ドローンズ・クラブの英傑伝』を読んでから、少し時間が経ってしまったけれど、休日の読みものにぱらぱらと。

    ブランディングズ城に住まう、「綿菓子のような頭脳を持つ」第9代エムズワース伯爵と、その周りで起こるあれこれ。伯爵はいい人なんだけど、お城の作物や薔薇のできに心奪われ、厄介な問題にあたる能力があるとはいえない。でも、解決すべき問題はごんごん降りかかってくる。圧倒的なボケ役だけど、曲がりなりにも伯爵家の当主なもんだから、それなりに考えてもらわなければならない。そしてそのなりゆきに周りの親戚たちがブチ切れて総ツッコミ…というシステムが成立している物語だと思う。絶えず地雷を踏みに行くバカ旦那・バーティと天下無敵の執事どの・ジーヴズ(文春版表記)が織りなすボケ・ツッコミ騒動とはまた違ったノリ。

    バーティとジーヴズの間には、「あるじと使用人」という身分の差というものが一応にしても境界線になっているので、そのラインをギリギリ外さずに攻めていくジーヴズの手際が可笑しいんだけど、ブランディングズ城ものについては、基本的にエムズワース伯爵の親類と、その周りに集う人々のお話なので、身分の差によってどうこうというのがあまりないように思う。だから、余計に伯爵に対する周囲の当たりは激烈。激烈すぎてちょっとかわいそうに思うけれど、そこが綿菓子ブレインなのか、深刻なダメージを受けない(ように見える)。それが事態をソフトランディングさせたり、『ブランディングズ城を襲う無法の嵐』のように素っ頓狂な大騒動になったり…でも世はこともなし。

    個人的には、伯爵のボンクラ(でもいいヤツ)な次男・フレディがツボ。ロンドンでバカをやらかしては城に戻される放蕩生活を送っていた彼が、あるきっかけでアメリカに職を得、NYCのマディソン街でも有数の営業マンになってしまう。この、元祖『マッドメン』と化したフレディが、仕事で得た売りこみノウハウや自己啓発のメソッドを駆使して、親類縁者をおのれの顧客にせんと奮闘するところがことごとく「アメリカ式」らしく、無茶苦茶でただただ可笑しい。『フレディの航海日誌』は、友人のためにひと肌脱ごうとする彼の優しさと、剛腕ビジネスマンとしてのあざとさが絶妙にブレンドされつつ、ややこしい入れ替わり劇など盛りだくさんで、展開が結構読めなくて楽しめた。この舞台で人が死んだりすると、立派な密室ミステリが成立すると思う。このばかばかしくも緻密な鮮やかさは、『天翔けるフレッド叔父さん(ただしフレディとは別人)』でもフルパワーで発揮されていて、ただただおバカで見事だった。

    「ジーヴズ」シリーズよりも地の文の表現などは凝っていて、読んでいて優美さを感じるような気がするし、どっぷり英国紳士の父とアメリカナイズされた息子のギャップが見せる面白さが抜群だと思う。おまけ収録の『ブランディングズ城を求めて』という、英国ウッドハウス協会会長だった故マーフィー氏のエッセイも穏やかで知的な語り口が素敵。私はひょっとしたら、ジーヴズものよりもこちらのほうが好きかもしれないな。

  • エムズワース卿にはなぜこれほどまでに災難が降りかかるのか。いやこれらは災難だろうか。「人生における最大の関心は城の庭園」であるエムズワース卿の次男が問題と請求書ばかり発生させるのも、有能な庭師をクビにしたために南瓜がうまく育たなくなったのも、イベントでの演説という仕事の際に身なりをきちんとせず妹に怒られるのも、特に理不尽なできごととは思えず、ただの自業自得だと思う。では、なぜこの短編集がおもしろかったと、今思っているのだろうか。このエムズワース卿がもし、自分の親だったら、子だったら、うちの近くのおじさんだったら、我が町の領主だったら、きっと笑えないし、おもしろくないと思うのだと思う。おもしろくて良かった。フィクションでよかった。

  • 「伯爵とガールフレンド」が可愛かった。爺さんと女の子ってよくあるけど、ふわふわと頼りない爺さんとガラの悪い娘って意外な組み合わせ。育ちの悪さ丸出しなのに、心細くて伯爵の手を握るなんて、まだ可愛い。そんな女の子を守らなきゃってナイト精神発揮した伯爵、見直した。

  • 執事もいい味出してます

  •  作者は、「ジーヴスの事件簿」を書いたかただったのですね。
     ほんわかした伯爵がかわいかったです。

  • ジーヴズでもちらっと名前が出てきたエムズワース卿の短編集。
    未入手のドローンズクラブも出てくるんですよね…(探そう。
    こちらはこちらで、英国貴族の味わい深い田舎暮らしが味わえます。半分嘘です。
    P.G.ウッドハウス作品、もっと邦訳されてクダサーイ!
    ユーモア小説ってジャンルもいいなーと思うきっかけになりそう。

  • とぼけ具合と話の持って行き方はうまい

  • 復刊が続いているウッドハウス。ジーヴスシリーズと同じくらい、もしかしたらそれ以上?にファンになってしまいました。
    エムズワース卿は庭を愛し、花を愛し、自分の農地を愛する老紳士。綿菓子のような頭脳の持ち主と言われ、自分の興味のあることからなかなか思考を移すことができない人物です。平和のうちに過ごすにはよいのですが一度トラブルが起こるとてんやわんや。さらに被害を大きくしてしまう話の流れは他のシリーズにも共通してますが、おたおたするエムズワース卿の人柄が可愛くて可愛くて。トラブルの方から他所にいってくれるような状態です。ドローンズクラブの面々が事態を取り繕うために悪知恵を働かすのに比べて、つい話がそれて叱られてしまうエムズワース卿。いいなぁ、こういうキャラクター。

  • ほのぼのカントリー・ジェントルマンのお話。
    読んでるとほのぼのします。

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