- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167814021
作品紹介・あらすじ
「この方は生前、誰を愛し、誰に愛されたでしょうか?どんなことで感謝されたことがあったでしょうか?」。静人の問いかけは彼を巡る人々を変えていく。家族との確執、死別の葛藤、自らを縛りつける"亡霊"との対決、思いがけぬ愛。そして死の枕辺で、新たな命が…。静かな感動が心に満ちるラスト。
感想・レビュー・書評
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悼む人と呼ばれるようになった青年の、死者への悼みの旅は、共感する部分もありました。
今、高村光太郎の「智恵子抄」を少しずつ読んでいるのだけれど、誰に愛され、誰を愛し、誰に感謝されたかを、記憶に残すということを悼むとするならば、高村の詩や裸像は、妻を愛した記憶の蓄積で、悼むそのものと思う。
“悼む人”は、彼に関わった記者の男性に変化をもたらせていく。彼の書く記事は、事件の当事者達の生い立ちや心情に寄り添うようになるが、オヤジ狩りにあって失明する。それでも、信奉していく。彼の旅を追い続けた女性は、過去の結婚と夫殺害の愛の矛盾に折り合いをつけて、悼む人と何故か結ばれる。そして、悼みの旅の邪魔になるから別れる。母親は娘の出産を待って亡くなり、息子の悼む人に会えない。登場人物達との関係性がうまく収まらず。本人さえも、この自分の行為の意味をつかめて無いのかなあ。
それぞれ、死を迎えてしまった人の周囲の人が、祈り、弔い、そして悼み、記憶に残して欲しいということでしょうか。 -
上巻は、私にはなんだか重くて暗くて…下巻はみんなそれぞれに重いものを背負ってることには変わらないのだけれど、希望を見出せる感じで楽しくよめた。
とうとう最後まで静人という人がよく分からなかった。重松清さんの書評に、そういう読者もいるでしょう。とあったので私だけではなかったかな?と少し安心した。
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全くうまく感想を書けないが、良かった。。。
下巻の途中から目が離せなくなり、1日で一気読みしてしまいました。
何とも温かく、幸せな気分でじわっと涙で読み終わりました。
いい本の映画は見ると失敗するんだけど、映画も見に行きたくなってしまった。
はぁ、良かった。
このカタルシスを言葉にするのは難しい。。。 -
一度目挫折してからの再読は一気読み。
とても綺麗な文章で胸に響く。
たくさん涙を流したことで心が綺麗になったような気がした。
命には限りがあり、生まれれば死ぬのが人生。
ただ、人の記憶から忘れられることが本当の死だと言う。
人は忘れる生き物である故に悼みは尊い。
死ぬ為に生きるだなんて矛盾だらけで皮肉のようで、どのように生きたか、生きるか、死生観は究極の教養とはよく言ったものだ。
歳をとることに抗いたくなるけれど、歳をとって解ることが増えてくる。感じられるようになってくる。
精一杯生きよう。 -
不慮の死を遂げた人々への「悼み」の旅を続ける静人。
静人の心の裏を読もうとするジャーナリスト蒔野、静人を見守り共に旅する倖世、末期癌で余命僅かな静人の母、巡子。
それぞれの視点で静人を見守り、悼みとは何かを突き詰めていく。
全体を通してどの視点から見ても、心がとにかく苦しかった。
一つ一つの死を見つめる物語の一方で、現実世界では、コロナ禍で押し潰されそうな日常に加え、ウクライナに侵攻するロシアのニュースが連日報道されている。
人間の命の重さが軽んじられている状況もある中、それぞれが誰を愛し、愛され、どんなことに感謝されて生きていたか…
暗い情勢も重なって、本当にしんどい読書体験だったが、物語後半は静人の人間らしさも描かれ、ラストは心に染みた。 -
記録用
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死(自殺)と生き抜く力
末期の癌の母が思う息子の帰宅、娘の出産、更に編集者の出会いなど、最後の最後に意識の中で出会うことの喜びは最高の人生だったと、思いたい。「死に悼む」と「愛と生きる」が生死の人間が思う極まりではないかと感動した作品だった。 -
2022年5月2日読了。
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全国各地で不慮の死を遂げた人々を訪ね歩く男、『坂築静人』
新聞や雑誌、ラジオ等で得た情報を頼りに、事故・自殺・他殺など分け隔てなく死者の元へ赴き、『悼み』を続ける。
『悼み』とは、死者を弔い冥福を祈るものではない。
ただ、亡くなった人を他の人とは代えられない唯一の存在として心の中で覚えておく事。
その為に、静人は亡くなった人について毎回決まった質問を尋ねる。
『誰に愛されていたか。誰を愛していたか。どんなことをして、人に感謝された事があったか』
その3つの事実を基に、故人の事を掛け替えのない命であったと心の中に刻み続ける。
時に怪しい宗教や、心に病を抱えた人間と間違えられ、偽善者と罵られながらも『悼み』を続ける静人は、いつしかネット上で『悼む人』と呼ばれるようになっていた。
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とある事から静人の行動を知る事になった雑誌記者・『蒔野抗太郎』
末期ガンに侵され余命幾許も無いながらも、息子の事を想う静人の母・『坂築巡子』
夫殺しの罪で服役し、出所したが亡き夫の亡霊に取り憑かれ苦悩を抱えていた折、静人と出会い旅に同行する事になった女・『奈義倖世』
この3人の視点から描かれる坂築静人という人物。
一体、彼は何の目的で『悼み』を行う旅を続けているのか。
静人の行動によって、周りの人々はどのような事を考え、どう変化していくのだろうか。
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初読み作家、天童荒太氏による作品。
重いテーマの作品が多いイメージだが、やはり重めの作品だった。
見ず知らずの亡くなった人の場所を訪れ、その人についての詳細を聞いて回り、忘れないように心に留める。
そんな人物が本当に存在したならば、確かに不審がられるだろう。
その『悼み』と呼ばれる行為に一体どんな意味があるのか、なぜ行うのか。
主人公である坂築静人本人ですらはっきりとその理由は分からない。
なんだか釈然としないながらも読み終わってから想った事。
日々人々が亡くなっていく中で、関わりの深い家族や知人達の心の中には残り続けていく死であっても、大概の人達には時間と共に風化し徐々に忘れ去られていく。
一つの尊い命の灯火が消えた事で、その人が存在した事すらも忘れ去られていってしまう事はとても寂しい事だとは思う。
だが、全ての死を忘れずに覚え続けるなど到底無理な話だろうと自分はすぐに思ってしまうが、作中ではそれが無謀な事と承知の上で直向きに死者を悼み続ける静人の行動によって心を動かされた人達のコミュニティの輪は広がっていく。
今この時代、この状況下でTVをつければコロナウイルスによる死者数、ロシアのウクライナ侵攻による死亡者数、知床観光船の杜撰な運行管理によって起きた事故の死亡者と行方不明者、山梨県での女児失踪事件等…悲しく悲惨なニュースが蔓延している。
こんな時に『悼む人』のような存在が本当にあったのならば、少しは救われる人達もいるのかもしれない。
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長々と書いたが、集中した読書時間を確保できず上下巻読むのに一月を費やしてしまった。
その為、しっかりと物語に没入する事が出来ず残念。
まとまってなくて、レビューできない
まとまってなくて、レビューできない