太陽の坐る場所 (文春文庫 つ 18-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167817015

感想・レビュー・書評

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  • 私の本棚の著者登録者1位は辻村深月さんです。はやく全作品読んで、さらに再読したい作品がいくつもあるのに、現実は年に4〜5冊ペースですね(´._.`)時間が足りません。

    小さな世界で、もがく少年少女には誰もがフラッシュバックするものが大なり小なりあるのではないだろうか。

    宮下奈都さんのあとがきに、「辻村深月を読むのにいちばんいいのはいつなんだろう。」とある。私は今作を読んでも、鏡の孤城や凍りのくじらを読んでも、10代の時に出会いたかったと感じたが、宮下奈都さんは最後に、「答は、今、だ。辻村深月はいつも今読むのがいちばいい。ただし、覚悟を決めて。相当翻弄されるのは間違いないから。」と締めている。すごくしっくりきた。30代の私が今読んでも、しっかり辻村深月の文章に翻弄されている。改めて素敵な作家さんだなと思う。

    「自殺も、死者との邂逅も、ない。それでも胸をかき乱す物語が目の前に立ち現れてくる。覚えがありすぎて、目を伏せたくなるような思春期の少年少女たち。彼ら彼女らの言動がいちいち身につまされて、どんどん動悸が激しくなってくる。しかし、おや、と思う。あるはずの《覚え》が、ない。私自身の高校時代にこれほどドラマティックな出来事があったか。ない。覚えなんてない。ないのに、わかる。覚えがあったような錯覚に陥っている。(あとがきより)」

  • 「あの、自意識の針に肌を撫でられるような時期はとうに過ぎ去ったとばかり思っていた。」

    とりあえずの読んだ感想は、
    辻村さん、こんなに人間への解像度が高いと生きるの辛そうだな、でした笑

    刺さるセリフが多すぎて、読むたびいちいち立ち止まって考えなきゃだったから読むの時間かかった。

    しかも、辻村トリックも用意されてるので、2回読んでようやく物語の全体像が掴めた、、

    自分はちょうど、辻村さんがこの作品を書いた28なので、辻村さんが自分と同じ歳の時どんなことを考えていたのかを少し窺い知ることができたような気がする。

    読んでる間はひたすらしんどいけど、最後には救いがある。いつまでも終わらない自意識との戦いに、そっと助言をくれる本でした。

  • あの思春期の生きづらかった思いが
    未だ自分の心の奥底に
    根強くあることに気付かされる

  • 辻村深月だからと、何気なく手にした本。思った以上に闇が深く、語弊があるかもだけど、面白かった。
    高校卒業して10年後。結婚の有無や仕事で価値観大きく変わるよね。

    有名人になったキョウコを話題にしつつ、集まった同窓生が、それぞれ今の生活の後悔!?が綴られていく〜って話。で終わるのかと思いきや、まさかの響子。

    冴えない面食い紗江子の不倫話に気を取られ、島津いい奴だと思ってたらキモくなってきて、由希は極端で嘘つきだし、ってとこに今日子の名前が出てきてかなり混乱。
    ほんっと一筋縄ではいかないからすごい。

    それぞれが自分たちの物語がある。その通りで、心に静かに染みる。私くらいの歳になってくると、特に顕著。いやいや、まだ序の口なのかな。
    はたから見ると、思うところがあっても、本人は本人の価値観で、信じて生きてるんだなぁ。
    噂話は、よくないな。たまに会うのがいいってのは、激しく共感。そのたまにが、また人によって違うんだろうけど。今が充実してたり必死だったりすると、過去を懐かしむ時間は少ないのかも。

  • 今日子や清瀬のように時のしがらみに囚われない超然とした者、同窓会の主要メンバーのような高校時代の関係性で時が止まっている者、響子のように進みたいがそれを自分に許せない者。

    ほとんどの人が人に対して意地悪な視点をもち、その醜さを自覚している。
    みんな自分の位置を確かめたいのだ。
    多くの人にとっては高校までの人間関係というのは卒業時点で未来永劫、ほぼ固定化される、と僕は思っている。
    今日子や清瀬のようにそこから外れられる人は稀だろう。

    そこには憧れや尊敬といった美しい感情もあれど、妬み嫉み、といった感情ももちろん存在している。

    高校時代のヒエラルキーなんてものは意味を持たないことにも薄々気づくのがこの20代後半なのだろうか。

    そんなことを言葉として表現しながらも
    エンタメとして、小説としてここまで面白く読まされたことに憧れ、尊敬ももちろんあるが
    嫉妬がすごい。辻村さん強えわ。

    途中でこの後誰の話になんのかな、とか思って高間響子って見えた時、失敗したなあ、と思った

    僕は今年の同窓会を断った

  • やっぱりこの作品も最高でした!想像もしてなくて、分かった瞬間びっくりしました!もし、「途中まであるから、結末だけ書いてね」と言われても、私はこんな驚く結末は書けません。むしろ、結末も思いつかないかもしれません。こんなすごい話を書けるなんて、辻村さん天才!

  • どの辻村作品よりも人間が描かれている。とてつもない傑作。

    学校や職場、コミュニティ内のヒエラルキーに翻弄される人間たちの愚かさを描きつつも、最後にはとんでもない優しさで包め込んで大団円を迎える。

    人に後ろ指を指されようと、恥を晒して生きていけばいいじゃない、と背中を押してくれる作品。

  • 殺人も失踪も誘拐も立て篭もりも歌舞伎町封鎖事件も起こらない…でもこの濃密さで読む手止まらずあっという間の読了です。
    人の数だけドラマがある…辻村さんの人間らしい生々しい心の描写に時間を忘れました。登場人物一人一人に「お疲れ様でした」

  • いつも暗いどろどろの中に光があるような物語を書くなあ、と思う。
    見事に裏切られたのでまた読みたい!読んでよかった!

  • 響子と今日子の物語。
    実は映画の予告編を見て面白そうだから読んだので、わざとそう表現しているという部分はわかってしまったのだけれど、それでもとっても面白く読めました。あの頃何でもない教室の中で表面化せずにドロドロ渦巻いていたみんなの気持ちみたいなものを痛切に思い出した。女子校だったから女子の事しかわからないけれど、女子ってそういうとこあるよね、というのがつまった作品です。私は好きだな。

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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