氷平線 (文春文庫)

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著者 : 桜木紫乃
  • 文藝春秋 (2012年4月10日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167836016

氷平線 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 桜木紫乃さんの初単行本である短編集。
    6つの短編全て舞台は北海道(主に釧路)で、一筋縄ではいかない男女の関係が描かれている。以前読んだ「誰もいない夜に咲く」とも通じる部分が多かった。
    前も思ったけれど風景の描写が素晴らしくて、それも北海道の雄大な景色とかではなく、寒々しい北国の港町だとか裏ぶれた田舎町の描写で、読みながら寂しいモノクロの町が目の前に浮かんでくるみたいだった。

    幸せ、とは呼べない男女であったり夫婦の関係。人は根本的には独りだからこそ、誰かと寄り添ったり縋ったりしたくなる。
    性描写もほぼ必ず出てくるけれど、そのシーンが何よりも一番寂しい。欲望というより、どうしようもなさを感じた。

    女性歯科医がだらだらと付き合い続けた院長との関係を精算して僻地の診療所で新しい生活を始める「水の棺」と、窮屈な田舎町を出て東京で出世したけれど地元で一度関係を持った売女のことを忘れられない男が主人公の表題作がとくに好きだった。両方寂しくて、寒々しくて。

    どこか鬱屈とした地方の町で生まれ育つと、そこから抜け出したい気持ちを多くの人が持つはずで、飛び出すのも留まるのも自由だからそこで道は分かれるけれど、外の世界に憧れながらも留まる理由を作ってそこに居続けるという矛盾した感情もあったりする。
    私自身地方の町で生まれ育ってるからすごく解る。外に出るか留まるかで、本当に大きな隔たりが生まれるから。
    そういう鬱屈としたものが全体に漂っている小説で、苦しいけれど共感出来た。

  • 北海道の凍てつく寒村を舞台とした、6編からなる短編集。

    作者の作品を漏れなく読もうと思い手に取ったのだが、デビュー作品集とは思えないほど、すでに独自のカラーが確立していて驚いた。
    逃げ場のないどんよりとした灰色の空と海を背景に、あきらめをまとった主人公たちが無表情に生きている。淡々と描かれる底なしの哀しさと、熱を帯びた生々しい息づかいとが交錯して、どの作品も人物像が立体的に浮かび上がる。見事だ。

  • 桜木紫乃さんのデビュー作である【雪虫】を含む第一作品集。
    【ホテルローヤル】で直木賞を受賞されるまで、桜木紫乃さんのことは全く知らなかった……
    この本が4冊目。
    男女のどうしよもなく切ない関係が胸に響く。
    桜木さんはインタビューで『知らない空は書けない』と言われているそう。
    その言葉が作品から伝わってくる。
    桜木さんの作品は舞台が北の大地だからなお読む人の胸に染みるのだと思う。
    他の作品も読んでみよう。

  • 霧繭が良い
    和裁で生計を立てる主人公の仕事の仕方が凛として、本人の意識しない美意識を、感じさせる。
    表題作の水平線は、悲しい。傷ついた母親は、気がつかずに息子の恋人を傷つけて、絶望させてしまっていた。どちらも主人公を守ろうとしていたのに。

  • モノトーンなのに鮮やか。冷たいけれど生々しい。確かにそうだ。どの作品にも絶えず薄暗い雪雲がかかっている印象があるが、時折きりりとした原色が現れる。北国の透明な冷たさと、そこに生きる人々の体温を同時に感じさせる。ある種の諦念を持った芯の強い女性像と、流氷の上を歩くシーンが印象的。表題作『氷平線』と、新人賞受賞作の『雪虫』が特によかった。

  • 霧繭と氷平線が好き。
    冬の常に薄曇りの道東の風景が蘇ってくるよう。
    桜木作品は、その湿っぽさが癖になる感じだ。

  • 短編集、やっぱり好きだな。すぐにぐっと物語に入り込め、瞬時にその世界観を味わうことができるから。そして桜木さんの物語は本当に迷いがない。いつだって登場人部と私が対面できる贅沢な場面を作り上げてくれる。北海道は寂れた街や村。そこで藻掻いて生きる人間たち。当人は努力していても状況環境が許してくれない。いつの間にか足を引っ張られズボズボと地獄へ落とされてしまう。その地獄から這い上がれるかどうかはやっぱ当人次第となる。桜木さんの描く人物、弱さもあるが気骨もある。最終的に幸せになってくれれば、と応援したくなる。

  • 6つの短編集。どの話も厳しい冬、短い夏、貧しい土地、人のしがらみが混ざった桜木ワールド全開。

    雪虫:札幌で失敗して十勝に帰った達郎の元にやってきたフィリピン人。
    霧繭:和裁師の真紀。武器は針一本。
    夏の稜線:東京から嫁いできた京子。出航時刻午前5時のフェリーを目指し、娘の真由と家を出る。
    海に帰る:独立した理容師の寺町。夜の仕事上がりにふらりとやってくる絹子。
    水の棺:あさひ町の診療所に転勤した歯科医師の良子。前勤め先の西出院長が脳卒中で倒れる。
    氷平線:東大を卒業し岩見沢税務署長として北海道に戻ってきた誠一郎。実家の近くに住んでいた友江を連れ出そうとするが、実家が火事にあう。

  • 北海道在住でオール讀物新人賞、直木賞などなど受賞されていますね。
    この本は短編集です。
    とりあえずオール讀物をとったという「雪虫」という短い作品を読んでみました。
    まず、思うのは圧倒的なリアリティですね。実際リアルなのかどうかはわからないけど、読んでる側としては、ああ、実際この話のモデルは実在していてるだろうし、似たような話はそこかしこかにあるのだろうと。
    酪農家の家に生まれた男がひと旗あげようとバブル景気に乗って不動産業で独立するんですね。ところがバブル崩壊のあおりを受け、わずか1年で負債を抱え倒産。死ぬしかないと思っていたが、自分が過去に見捨てたはずの親に助けてもらい生きていく事にする。しかしただ生きている、というだけの生活。男は隣に住む人妻と関係を持ち続ける。その女、四季子と男は高校時代から24の歳まで付き合っていたあいだがら。しかし四季子は家の事情により、男より先に実家に戻り婿をとり子を産み家を継いでいた。四季子はもらい子であり育ててもらった恩もあり育ての親の意向には従順だった。男はそんな四季子と故郷に戻った後、再び関係を持つ。その事は口には出さないものの集落の中では公然の事だった。男の父親は病気をした事もあり、男に早く嫁を見つけ孫を産ませたいと願う。そして怪しげな男を家に連れ込み封筒に入れた大金を渡す。その男は東南アジアの国から嫁を連れてくる斡旋業を営む男だったというわけで。母親はその計画に反対する。しかし、もう何もかもどうでもいいと思っていた男はそな話を承諾する。そして外国からまだ子供のような女が嫁としてやってくる・・・・という話です。
    うーーん、狭い地域の濃いー、人間関係が見事に描かれてますねー、ちなみにラストはほんのりとした希望が降ってくるような感じで読後感は悪くないですよ、そしてこういう小説って読み出すとついつい読んじゃうんですよねー。
    2017/02/05 15:54

  • 「水の柩」と「水平線」が特に印象的だった。
    歯医者の良子先生もトタン小屋に住む友江さんも
    曇り空のような人生かもしれないが
    強く清々しい生き方だった。
    読んでる私にはちょっと重かったかも。
    道東の描写が美しかった。
    ホテルローヤルも面白かったので
    今後の桜木紫乃さんの作品が楽しみです。
    2017年6月16日読了

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氷平線 (文春文庫)の作品紹介

真っ白に海が凍るオホーツク沿岸の町で、静かに再会した男と女の凄烈な愛を描いた表題作、酪農の地を継ぐ者たちの悲しみと希望を牧草匂う交歓の裏に映し出した、オール讀物新人賞受賞作「雪虫」ほか、珠玉の全六編を収録。北の大地に生きる人々の哀歓を圧倒的な迫力で描き出した、著者渾身のデビュー作品集。

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