田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)

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著者 : 宮下奈都
  • 文藝春秋 (2013年6月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167838584

田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 男の子の子供二人、イケメンの旦那の4人家族である程度うらやましがられるような都内の住宅街に暮らしていた主人公。ある日夫がうつ病で会社にはもういけないと言い出し、会社を辞めて一家四人で夫の郷里に引っ越すことになる。
    俗にイメージするイナカよりは栄えている、今の言葉で言えばファスト風土化した何の特色もない地方都市なんだろう。
    ほんの少しなまってて、海とか山とか畑が広がってはいない、本当に普通の地方都市。
    ちょっと人よりキレイであることだけが取り柄の主人公と優秀な長男、成長が遅れてるのか3年生になってもろくな挨拶もできない変わり者の二男と夫との普通の生活が描かれている。

    主人公の葛藤が痛いほどわかります。
    「私」の濃度がどんどん薄くなっていく。年代ごとにぶつっと区切られた章立てだから成り行きの自然さは味わえなかったんだけど、きっと特筆すべきエピソードなんてないうちに「私」というのは薄まっていくものなのだろう。
    それがとても「楽」で「誕生日が楽しみ」というぐらい年齢に感謝するまでの10年。
    三人称で書かれているにも関わらずものすごく一人称的な見え方でしか描かない書き方は遠すぎたり近すぎたりして「私」からうまく見えない部分をうまく補強してくれたように思う。

    自然に私が薄くなる、という過程は露悪的に言えば知らないうちに白髪が増えてるみたいなもんなんだろうなー。

  • 学生時代はクラスの中でも美貌で注目され、恋も思うままにできた梨々子。
    結婚し、二人の子供が生まれるが、子育ては期待通りにはいかない。
    その上、かつては輝いて見えた夫、達郎は、鬱病に罹り、東京の暮らしから「脱落」する。

    夫とは心が通じていないことにもがき、自分が「誰でもない者」だと突きつけられるつらさが、丁寧に描かれ、読んでいるこちらまで息詰まるようだった。
    「ダロウェイ夫人」を引用しながら、主婦の飢餓感を描いた「巡り合う時間たち」のように。

    その梨々子が、少しずつ変わっていく。
    「自分は一人である」こと、「自分が誰でもない」ことを受け入れるようになっていくのだ。
    それは、本当の意味で大人になったということだと、私は思った。

    梨々子の二十代終わりから三十代終わりまでが描かれる。
    地味な作品とも言えるけれど、実はかなり骨太な成長小説なのではないか、と思っている。

  • 表紙の絵の先入観で、タイトルをよく読んでおらず、"モデル妻"の話かと思って読み始めたらモデルは妻ではなく夫だった…。
    どんなところでも大切な人さえいればいい。
    場所じゃない、人なんだと感じた作品。

  • 解説が辻村深月さんというその一点で手に取った本。
    普段解説読まないのに。
    略して「イナツマ」。
    7年前に解説で「10年後の自分を想像できない」と書いた辻村深月さんは今、どのような思いを胸に生きているのだろうか。
    ーーー
    東京から夫の故郷に移り住むことになった梨々子。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、恋に胸を騒がせ、変わってゆく子供たちの成長に驚きーー三十歳から四十歳、「何者でもない」等身大の女性の十年間を二年刻みの定点観測のように丁寧に描き出す。じんわりと胸にしみてゆく、いとおしい「普通の私」の物語。解説・辻村深月

  • 10年って長いようで短い。逆に、あっという間のような気がするけど、実はいろいろあって、みんな少しずつ進んでる。

  • なんとなく、心のどこかが震えている。
    ぞくりとした。

  • ずいぶん回り道をしてしまった。滑って転んで道を踏み外した。回り道の一歩一歩が私の人生だと思う。出た結論は「手ぶら」

  • 主人公の梨々子は、東京八王子育ちのそこそろきれいで自分に自信がある人。
    かっこよくて仕事もエースと言われるようなオットと結婚し、子供二人に恵まれたところから、夫が鬱で夫の田舎に帰るところからストーリーは始まる。
    2年刻みで綴られる梨々子の日記には、生活、口調、考え方の変化が丁寧に描かれている。

    梨々子の子供っぽさ、自己顕示欲に読んでいてイライラすることもあるが、知らない土地で、誰にも気軽に頼れない正解のない子育てをする大変さを考えると、同情してしまう。

    最後は、梨々子の内面の変化を見ることができてよかった。

  • 一瞬、官能小説かと思ってしまいそうなタイトルですが、宮下奈都ですからちがいます(笑)。彼女が書く主人公はたいていが女性、学生とかOLとか。そして彼女の作品を読むといつもふんわりと幸せな気持ちになります。読後感の非常にいい作家さん。

    今回の主人公は学生でもOLでもない、専業主婦・梨々子。昔から、学校一の美人ではないけれど、クラスで1番か2番。いつもにっこり穏やかであることを心がけ(計算し)、好かれる存在であると自負していた梨々子は、会社の役員にも気に入られます。その役員が梨々子に会わせようと連れてきたのは、海外営業部のホープ・達郎。一目惚れした梨々子は、あまりその気のなさそうな達郎に猛烈にアタック、落として結婚。潤と歩人という可愛い息子ふたりにも恵まれる。ところが達郎が鬱病に。会社を辞めた彼は、実家のある田舎に引っ越したいと言う。呆然としつつも達郎について行くしかなく、東京から田舎へと移る、その年が0(ゼロ)年。それから2年ごとに10年目まで、梨々子の目線で語られます。

    一目惚れしたころとは変わり果て、15kgは太ったであろう夫なのに、田舎の紳士服店のチラシのモデルを頼まれたと嬉しそう。周囲からさんざんモデルみたいと言われてきた梨々子にはそんな話は来ず。悶々とする0年は、何をするのも馬鹿馬鹿しい。そんなそぶりは少しも見せずに微笑む梨々子ですが、隣りの住人には見透かされていたりもします。「自分が主役でありつづけたい人」だと。子育てに悩み、不倫に走りかけ、自治会の役員になり、最後には一人前の田舎の主婦になる梨々子。方言を見事に話せるようになった梨々子に、0年の彼女とはまったくちがう印象を受けます。これもやっぱり読後感のいい1冊。

  • 図書館で。
    この作者さんの本を読むのがこの本が最初だったらほかの作品を読もうとは思わなかっただろうなぁ…。出会い方って大事だな。

    ものすごい自己顕示欲が強いというか見栄っ張りなヒロインがグダグダと私悪くないし、私頑張ってるしと主張しているようなお話で疲れました。なんていうのか主婦の妄想小説みたいというか。特にアサヒ君の件あたりはもう、都合の良い妄想としか思えない。
    鬱とは言え家事にも育児にも非協力的でしかも独りよがりに物事を決断しちゃうなんてひどい旦那だと思うけど…この本の語り部は奥さんだけだもんなぁ。旦那側から見たらまるで違う話になるのかもしれないな、なんてぼんやり思いました。

    独身の自分には結婚して夫婦になって子供まで居るのにこの二人はここまで分かり合えないのか、それでも繋がっていたいのか、という驚きのような感想を持ちます。もちろん子供もいるし簡単に別れてしまえとかそういうことを言っているわけではなくなんでもっと腹を割って話し合わないんだろうと不思議に思うのです。夫婦なのに。
    話し合っても分かり合えないと思ってるのであればもう仕方ないのでしょうが…。孤独だ、一人だというのはわかるしある程度その通りだと思うけれども、だからこそ人間は言葉を使って思いを伝え合うんじゃないのかなぁ。
    しかも家族で夫婦なんだし。いや、世の夫婦なんてみんなそうだよ、分かり合ってないよと言われればまあそれまでなんでしょうが。でも分かり合いたくて、誰よりもつながりを持ちたくて結婚したのではないのか?そのあたりよくワカランというか。(そんなロマンチストな事言ってるから独身なんだって話もあるかもしれませんが)
    というわけであまり心に響かなかったです。

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田舎の紳士服店のモデルの妻 (文春文庫)の作品紹介

ゆるやかに変わってゆく。私も家族も。田舎行きに戸惑い、夫とすれ違い、子育てに迷い、恋に胸を騒がせる。じんわりと胸にしみてゆく、愛おしい「普通の私」の物語。

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