かわいそうだね? (文春文庫)

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著者 : 綿矢りさ
  • 文藝春秋 (2013年12月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167840020

かわいそうだね? (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • いやぁ~面白かった!
    今年初めての小説で
    ひさびさに一気読みしたなぁ~(笑)

    変幻自在の表現力で
    キャラクターに命を吹き込む綿矢マジックは健在!

    奇妙な三角関係に揺れる1人の女性の苦悩を
    (妄想と言ってもいいのかな)
    ここまで面白く、最後まで読ませる技量はさすがという他ないですね(笑)
    (隠れた邦画の傑作「さんかく」のブラックさを楽しめた人なら、必ずハマります笑)


    女性に質問します。
    もし、あなたの彼氏が
    元カノが家がなく困っているので
    その元カノを仕事が決まるまで
    自分の家に住まわすと言ったら
    どうしますか?


    ゴキブリが出ても地震が起こっても、
    悲鳴をあげてはいけない
    「シッカリ者」という役割を宛てられた主人公の女性、樹理恵(じゅりえ)は、
    アメリカ帰りで「ヒーロー肌」の彼氏、隆大(りゅうだい)の不可解な行動に仕事も手につかなくなり、
    次第に心惑わされていきます。

    樹理恵の恋敵で、隆大の家に居候するアキヨという元カノの
    だらしなくて頼りなさげなのに
    ズブとさ満開な(笑)KYキャラがまた、

    読む者をイラっとさせると同時に
    どこか不気味で不安感を煽ってくれる強烈なモンスターぷり。


    そして「もし大地震に巻き込まれたら…」に始まり、
    「北欧風のお洒落なカフェで
    もしパフェのカロリーをアルバイトのウェイターに尋ねたなら…」
    など、主人公・樹理恵の
    妄想特急が暴走するシーンの痛々しさと可笑しさよ(笑)

    自分も含めて普段から妄想家の人たちならニンマリしつつも
    自分の姿をダブらせてドキッとしちゃうことでしょう(笑)


    自分の正義を貫くため
    彼女に無理難題を言う意味不明な男と

    男と別れたくないがために
    心を殺し、なんとかプライドを保とうとする女。

    憐れで愚かしいそんな二人の攻防は
    男の思考VS女の思考と見ることもできて、
    男女どちらが読んでも
    興味深いんじゃないかな。


    それにしても
    決して口には出さず樹理恵の脳内でだけ繰り広げられる
    心の声の切実さと、
    的を得た言葉のその切れ味の鋭さには
    ホント脱帽です(笑)

    時に笑い、時に震撼し、
    思いっきり共感してしまったし(汗)(°∇°;)
    (特に携帯メールを盗み見るシーンのリアルさと
    痛快無比な怒涛のラストバトルと
    後半、樹理恵が放つ含蓄深い名言の数々は特筆すべき点!)


    かわいそうは危険な言葉です。
    かわいそうから出た行動は
    人を貶め、優越感や自己満足しか生まない。

    明日は我が身!
    誰の中にも樹理恵や隆大やアキヨ的なモノは
    存在するのかもなぁ~(汗)(・・;)



    女の子同士の友情の「真理」を
    モテない女の子側の目線で鋭く描いた
    同時収録の『亜美ちゃんは美人』も文句ナシに面白かった!
    (それにしても今作の綿谷さんの言葉って
    、どれも確信に満ちていて名言に溢れてるし、大いに共感してしまったなぁ)

  • 綿矢りさは「蹴りたい背中」くらいしか読んでいないのだけれど、読むたびに思うのは、とにかく「上手い」なあ、ということ。若いのに勢いで書かずに、きちんと緻密に計算されていて、なおかつキャラクター作りも上手いので自然に感情移入できるし、かつ、並ではない感受性に「はっ」とさせられる。一見いまどきの平易な言葉で書かれているし、若い女性の恋愛を扱っているから軽いエンタメ作品として読んでしまうことも可能だけれど、けしてそれだけで読み捨てられない、なんというか「文学的」だなあと感心してしまう。高橋源一郎や島田雅彦あたりのオジサン作家が絶賛するのもわかる気がします。

    まあ薀蓄はさておいて、表題作も同時収録の「亜美ちゃんは美人」もとても面白く読めました。表題作のほうは、主人公がお人よし過ぎて「騙されてるよ!」とアドバイスしてあげたくなる親近感もあるし、ゆえにラストの関西弁での大爆発が痛快。個人的に、私も仕事のときは標準語でも、本気で怒ると関西弁、それも普通の同年代の女性が話す標準的な京都弁ではなく、どこのチンピラ!?とびっくりするような汚い言葉がぽんぽん出てくるので、ものすごく共感できました。

    「亜美ちゃん~」のほうは美人の友人をもった平凡な女の子の苦労話かと思いきや、思いがけない着地点にたどりついて意外性もありつつ、女子なら誰しも共感できる「美人の友人と比べられたコンプレックスあるある」も実に上手く表現されてます。美人の亜美ちゃんにアプローチするでもなく「研究」している小池くんのキャラも素晴らしかった。

  • こんな粒のぴちぴちした、魅力的な文章を読めて至福。作家ではないけれど、嫉妬しそうになるくらい。

    かわいそうだね?も面白かったけれど、私には亜美ちゃんは美人が圧倒的に楽しかった。多読乱読だけれど、美人の孤独、美人の恋愛のこんな特徴を書いたものは読んだことがなかったな。なんとも納得。

  • 表題作の「かわいそうだね?」と「亜美ちゃんは美人」の2本収録。
    個人的には後者のほうが印象に残ったというか、女性作家だから描けた世界観だ、と感じた。

    表題作は、主人公・樹理恵の恋人・隆大が、求職中の元恋人・アキヨをアパートに居候させると言い出すところから始まる。
    樹理恵は仕方なくそれを受け入れたものの、隆大を信じたい気持ちと疑ってしまう気持ちの狭間で揺れ動く。
    樹理恵はごく普通の感覚を持っている、ときっと大抵の女性が感じるはず。彼氏が元カノと同居なんで有り得ないし、本当にやましいことがないとしても疑ってしまうのは当然のこと。
    実際、隆大はボランティア精神溢れるただのお人好しなのだろうけど、あなどれないのは元カノのアキヨで、「本当に何もないですよ」と樹理恵に対しても友好的な態度を取りつつ、裏で何をしでかすか分からないタイプの怖い女。
    「でも男はこういう女に騙されちゃうんだよねぇ、ほんと不思議」と、女性たちの間でしばしば話題に上るような。弱々しく見えて、ちょっとだらしない、そういう女のアキヨ。
    女性からすると、しっかり者で常識的な樹理恵のほうがよほど素敵に見えるけれど、男の視点というのはよく分からない。(男の人の好みも人それぞれとは思うけど)

    もうこれは、「かわいそうだね」と言うしかない。そうしか生きられない女に対して。
    それは樹理恵からアキヨへ、もそうだけど、その逆も然りなのかも。みんな自分の生き方が正しいと思っているから。

    「亜美ちゃんは美人」は、幼いころからちやほやされ続けて生きてきた亜美ちゃんの親友・サカキちゃん視点の物語。
    サカキちゃんもそこそこ綺麗なほうなのに、いつも隣に亜美ちゃんがいることでそれがかすんでしまい、いつも亜美ちゃんの引き立て役になってしまう。
    天然美人の亜美ちゃんはそのことでサカキちゃんが傷ついていることに気付かず、彼女らを観察していたとある登場人物だけが2人の複雑な関係性に気付く。

    ちやほやされ続けた美人と、引き立て役を引き受け続けてきたそこそこの美人。
    最後に幸せになるのはどちらなのか、そして彼女らにとっての幸せとは一体どういうものなのか。
    「美人は自然と愛されてしまうから、自分から愛することに飢えている」という、思わず納得してしまう、綿矢りさの観察眼があっぱれだった。

  • 女の面倒なところ、汚いところを抉るプロだと勝手に思っている綿矢りさの、個人的に一番好きな作品。
    読んでいてイライラするのは、きっと私にも思い当たる節があるからだ。イライラするのに読むのはやめられない。我慢して読んでいると最後は爽快。

  • 「かわいそうだね?」 「亜美ちゃんは美人」
    どちらも新しい感覚でおもしろかった。
    軽い感じで、テンポよく読めるけれど、女子の内面をうまく鋭く観察していると思った。
    十人十色の人生だけど、女同士の苦悩の日々はこれからも続くのです。

  • どちらの話も好き。
    アキヨさんみたいに甘えることもできない、亜美ちゃんみたいに可愛くもない私は、じゅりえ、さかきちゃん、どちらの主人公の気持ちも痛いくらいにわかる。

    こうやって“一般的な”女の子はこの登場人物に惹かれていくんじゃないかと思います。

    個人的には二話目の小林くんのキャラクターと発言が秀逸で、引用もしてしまいました。

  • 読み終わってため息が出るような作品でした。表現の豊かさはもちろんですが、観察眼の鋭さというか、(特に女性なら)あるあると共感してしまう部分が多いのではないでしょうか。

    “困ってるアキヨを許すことが出来ない自分が許せない”
    “(自分のことを好きだと言ってくれる)彼氏を信じられない自分が許せない”
    あぁ、何かこういう自己嫌悪の状況って恋愛まっただ中の10代20代に多い気がします。これが30代40代になるにつれて段々と達観した気持ちになって行くんでしょうけど、若いうちは気になって仕方がない。主人公・樹理恵が置かれている状況はこの最たる例で、たぶん10人いたら8、9人の人たちは許せないんではないかと思います。

    その葛藤の具合がまた面白い。ある時は映画【火垂るの墓】の登場人物に自分を置き換えてみたり、ある時は英会話学校に行って先生たちに相談することで外国の文化と自分を納得させてみたり。でもね、結局は本人とぶつかることでしか本質的な問題は解決しないんですよ。大体ね。それが決裂するようであれば、その人とは縁がないのであって、早く次の人を見つけた方がいい。って、すごく説教クサい感想に鳴ってますけど、僕まだ独身です。

    最後の3人の大円団は喜劇的で、読んでいて思わず笑ってしまいました。本音を語るときは、自分の言葉で(関西弁)でというのが面白いですよね。カタルシス。

    同時収録の「亜美ちゃんは美人」もあるあるネタで面白かったです。学生時代はあんなに可愛かった/格好良かった人ががなんでこの人と…って状況は結構あるんですけど、その内面が少し分かった気がしました。でも、自分が主人公なら全力で結婚阻止しますけど。

  • 才能に圧巻。一言で言ってしまえば三角関係の話なんだけど、徐々に変化してゆく主人公の心理、ラストの展開は本当に面白い。
    かわいそう、という言葉への価値観の変化や火垂るの光のエピソード等、もう作品にすこーんっとマッチしていて、非常に文学的。

  • 「かわいそうだね?」と「亜美ちゃんは美人」の2作品。
    レビューが書きづらい、のはなんでだろう。
    とても面白くて、一気に読めた、くらいしか言えなくて

    でもね、でもね、結構これ、
    どっちも深いよ。
    ホントに。と自分の語彙力のなさな情けない。
    しかし、どっちもダメダメな男が登場。

    「かわいそうだね?」の
    主人公のラストの関西弁のまくし立てが最高。
    もう、めっちゃ腹立つからキレたってん!!で感じで面白い。
    使ったことなくてもDNAにインプットされてる感じもよくわかる。
    ちょっと吉本新喜劇のやすえ姉さんみたいだった。
    最後に煙草嫌いの彼の部屋で元カノの煙草を勝手に吸うところが面白かった。

    そして、亜美ちゃん。美人でお金持ちのお家でずーっとモテモテだったのに
    彼女が選んだ男はクズ。
    ちゃんと残念な感じになっていくのかなぁ。
    主人公にはどんなになっても
    亜美ちゃんを見つめて続けてほしい。
    「嫌い」が根拠であっても。

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かわいそうだね? (文春文庫)の作品紹介

同情は美しい? それとも卑しい?私の彼は元彼女と同棲中……話題を呼んだ表題作と、女子同士の複雑な友情を描く「亜美ちゃんは美人」を収録。大江健三郎賞受賞作。

かわいそうだね? (文春文庫)のKindle版

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