かわいそうだね? (文春文庫 わ 17-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167840020

感想・レビュー・書評

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  • 「かわいそうだね」
    終始イライラし過ぎて泣きそうになった。常にきれいにしていて、仕事もちゃんとしている女性よりもちょっとみすぼらしくて隙がある女性の方がモテるっていうのがリアルだなあと思った。
    30代でこの別れ方はきついよ涙
    こんな男に引っかかる主人公も主人公だよね
    頑張ろ
    最後の解説であった、登場人物の描写を心情ではなく、視覚的に捉えて比較しているところがすごくリアルでわかりやすいなと思った。

    「亜美ちゃんは美人」
    容姿端麗の子は常に羨望の目に晒されてるから、友達でも恋人でも自分に興味が無い人に惹かれるっていうのがすごく腑に落ちた。容姿に優れている人こそ自覚して目標を持たないと周りに流されちゃうのかな
    このお話は主人公が幸せになってて良かった。

  • 自分の恋人と元彼女の関係に気を揉む毎日を送っている、樹理恵目線の『かわいそうだね?』と、美人の亜美ちゃんを友達に持つ、さかきちゃん目線の『亜美ちゃんは美人』の、二編からなる物語。

    この表題作の『かわいそうだね?』は一言で言うと「三角関係」なお話なのですが、読んでみて思ったことは、女って、どうやっても二種類のタイプに分かれるんだよなー。ってこと。

    いわゆる『僕が守ってあげなきゃ生きていけない君』って思わせるタイプの女と、『僕がいなくても君一人で生きていけるよね』って思われるタイプの女の二種類に。

    でもね。

    『僕が守ってあげなきゃ生きていけない君』っていうのうは、基本どの男からもそう思われてるわけで、『僕』が守ってあげなくったって、別の『僕』が守ってくれるので、結構のらりくらりと逞しく生きていけるんですよね。

    方や『僕がいなくても君一人で生きていけるよね』って思われてしまう女の人は、基本どの男からもそう思われてるわけで、『僕』がいなくなっちゃうと、ほんとに一人になっちゃうんだよー。って、かなり恋愛問題に切実だったりするのに、その辺のアホウな男たちって、結局『僕が守ってあげなきゃ〜』的な女の見た目のか弱さにだまされちゃうんだよなー。

    で、この物語でいうと、前者が元彼女のアキエで、後者が主人公の樹里恵。

    明日さえ見えない生活をしながら、のらりくらりと人に寄りかかって生きているアキエより、私は自分の足で立ってしっかり前を向こうとしている樹里恵のほうが好き。断然好き。

    でも、だからって決して本当に強いわけじゃなくて、強くなきゃいけないって、自分自身を奮い立たせてるような女の子の方が、実はすごく健気なんだよなー。うんうん。なんてことを思いながら読みました。

    『亜美ちゃんは美人』もとてもよかったです。

    だけど、いつの時代も女同士の人間関係って複雑なんだなー。って思いました。

  • かわいそうだね?
    最後の爽快感がよかった。主人公が好きで元カノは嫌い。彼氏もはっきりさえやって感じ。大体の女性がそうじゃないかと思う。大阪出身なこともあり関西弁ってやっぱキッツイけどスッキリするなぁと思った。

    亜美ちゃんは美人
    個人的にはこっちの方が好み。自分を好きじゃない子を好きになるところとか、さかきちゃんがなんだかんだ言いつつずっと亜美ちゃんと関係が続いてる(苦手だと思いつつ拒否しない)ところとか、さかきちゃんの下の名前が蘭ちゃんなのにそれを全然呼ばれてないところとか、リアルで少しエグくて良い。

  • 正規の彼女である樹理恵と、元カノでかわいそうなアキヨ、ふたりから隆大に届いてるメッセージがとても対照的かつ印象に残ります。そしてなによりも、それを受け取ってやり取りする隆大という男の気持ち悪さが際立ちます。

    ふたりのメッセージをみて、当事者でもないのに「いい加減にしろこいつ。」と怒り、憐れみ、呆れました。
    最後に樹理恵が自分を解放して一気に物語が収束していくのが痛快です。そして、最後の呟き。誰もが自分を納得させるために一度は使ったことのある言葉で締めくくられています。
    でも決して後ろ向きに聞こえない感じがよかったです。


  • 表題作「かわいそうだね?」に関して「スカッとした」というレビューを幾つも読んだが、しかしそうか?と思う。だってあの終わり方は、アキヨの思う壺じゃないか。アキヨはきっと、隆大と2人きりになるや否や、言うだろう。「樹里恵ちゃん、どうしちゃったんだろう……きっと私が悪いんだね、りゅーちんに甘えてばっかりで。やっぱり私、出て行ったほうがいいのかな?」。そしてもちろん、ヒーロー・隆大は苦渋の表情で言うのだ。「いや、アキヨは悪くない。俺が悪いんだ」。あー胸糞悪い。一生やってろ。

    とはいえ、アキヨが勝ったというわけでもないのだろう。アキヨは明日の暮らしを心配しないで済む幸せを甘受しながら隆大に愛されない痛みを抱え、樹里恵は隆大を手放す結果になるも、アキヨを見下しつつ「かわいそう」という言葉で自分の心を偽ってきた苦しみから解放された。両者痛み分けといったところが何故か清々しささえ感じさせる。やっぱり私も「スカッとした」のかな?

    割を食ったのはヒーローを気取っていた隆大ひとりなのだが、まあこれはざまあみろ、といったところで。

    もう一編の「亜美ちゃんは美人」は、これまたドロドロした女同士の妬み嫉みの話と思わせて、心のどこかにある青春の残滓が疼くような切ない話。一筋縄ではいかない女の友情が、眩しくも愛おしかった。小池くんの人物像が秀逸。

  • 『蹴りたい背中』ぶりの綿谷りさである。
    テーマは三角関係や美人な親友への劣等感という日常的に起こりうる身近なものだが、人物・心情描写が秀逸。

    アイロニーとユーモアを織り交ぜながら核心を突く表現に著者の力量を如何なく感じるし、重苦しくない空気感で紡がれる言葉のセンスの良さ。

    「かわいそうだね?」は、積もり積もった鬱憤と自己抑制からの解放されるラストシーンが読み応え抜群。相手の全てを愛する覚悟があるということは、自分を曝け出してそれでも愛してくれることを期待してもいいんじゃないかなって思わせてくれる。

    「亜実ちゃんは美人」は、世間話でたまに話題に上がる不釣り合いなカップルに関する金言が得られました。なんで容姿端麗でみんなから愛されているのに悩むことなんてあるのか、自分を褒め称えてくれる存在ではなく冷淡な相手に心奪われるのかといった点が、見事に推察されています。それでも、主人公2人の関係が最後は心からの友情に帰結しているように見受けられる。そこに一縷の救いがあるように感じる。

    センセーショナルなデビューから確実にキャリアを積み重ねていて実力は折り紙つきと。今まで疎遠だったのが悔やまれるほどの作品でした。

    蛇足ではあるが、最近だと同じような注目のされ方として宇佐見りんがいるが、こちらは内省的な心情の吐露が前面に表出していて重厚な趣がある。対して綿谷りさは外的な描写で人物像を表現することに秀でている。読むときの精神状態にもよるけど結局どちらも好き。

  • 「かわいそうだね?」は今まで読んだ中で1番好きな綿矢りさ作品だった。「こういう女いる、わかる」と思いながらずっと読んでいた。いい意味でアキエの腹立たしさを書くのが本当にうまい。アキエと樹里恵の二人の対比は「男ウケ」と「女ウケ」という語の対比でも置き換えられる気がする。女性が共感して好きになるのは樹里恵の方だけど、男の人が好きなのはアキエの方なんだよな、としみじみ思った。「かわいそうな存在になる」=庇護の対象になる=相手から見て自分を誰かに守られないと生きていけないような格下の存在に置くことだと思う。そうやって自らを格下のポジションに置くことを生存戦略として選べる人はか弱い存在なんかでなく強かな存在なんだとも思うし、案の定それが当たっていてやっぱりな〜と思ってしまった。

  • 2つ目の 亜美ちゃんは美人 が面白かったなぁ。
    さかきちゃんや亜美ちゃん、出てくる人々は、いるいるこんな人な感じで、出てくるシーンも既視感があるんやけど、話の展開が思ってたのと違う。全く違うのではなく、なんとなく違うっていうのもにくい。

    さかきちゃんのあみちゃんへの思いって書き方によってはえげつなくなりそうやけど、さかきちゃんのあかやさまに感情的にならないところと、亜美ちゃんの天才的に鈍い(いや、本当は鋭いのか!?)ところで、不思議とまろやかになり読んでる側も、ふむふむ、ほうほう、それでそれで、と嫌な感情なくページを進めていた。亜美ちゃんその後どうしてるかなー。

  • 2本立ての内容の対比が意図的過ぎるが...面白い。

  • 久しぶりの綿矢さん。相変わらず文章が的確。赤線を引きまくりたい衝動に耐えながらの読書。
    中編二本。

    『かわいそうだね?』
    樹里恵は幼い頃の震災の影響で地震がとても恐ろしい。だからいつでも、どんな状況でも地震が起きたら、のシュミレーションを繰り返す。繰り返すけれど、いつもそれは生き残りに失敗したところで終わっていた。頼れるはずの彼の姿はその想像の中で現れない。何故なら彼は恋人の樹里恵がいるのにもかかわらず元恋人のアキヨさんを一緒に住まわせている。アメリカから恋人の隆大について日本へやってきた彼女は、しかし日本で隆大は彼女をあっさりと捨てる。別れる。彼女のことを“恋人”と見れなくなったから。そして樹里恵と付き合っている今、彼女が一番大切だけれど、自分について国を出てしまったアキヨさんが職にあぶれアパートを追い出されたことに同情し、突き放せないという。隆大と別れたくなくて、一時の避難と考えて、樹里恵はそれをオーケーしたのだがアキヨさんはまったく出ていく気配が見えない。後輩に相談したらさっさと別れるべきと言われ、英語の教師陣には彼氏は正しいと返され、アキヨに同情したり嫉妬したり共感したり。そして隆大との旅行で目にしたものに樹里恵は覚悟を決める。
    彼女からマシンガンのようにあふれるラアトの大阪弁がなんとも力強い。そして最後の一行に、綿谷さんの人生への愛情が滲んで見えた気がした。
    『亜美ちゃんは美人』
    特出して美しい姿をしている亜美ちゃんが大好きなのは、そんな彼女の隣だと劣化版の烙印を押されてしまうさかきちゃんだ。さかきちゃんは亜美ちゃんが嫌いだ。それでも学生時代は彼女がそばにいるおかげでカースト上位の位置だった。それでも募る嫉妬心で大学は別のところを受けるさかきちゃん。そんな彼女にサークルだけでも一緒にという亜美ちゃん。そして見事に大学での立ち位置を亜美ちゃんの“マネージャー”にされたさかきちゃんは、部員の少ない、全く有名ではい山岳部に入る。くっついてはいった亜美ちゃんはそこでもお姫様だったが、さかきちゃんはマネージャーではなかった。夏の合宿では恋人もでき、卒業後は仕事に恋にさかきちゃんは忙しく、亜美ちゃんに会うこともへっていく。そんなある日亜美ちゃんから恋人を紹介したいと連絡がある。亜美ちゃんは彼に出会ってはじめて人を好きになったといった。そんな彼氏は怪しい会社に勤め、見かけも不健康なラッパーのようで、そしていつも無意味に人を馬鹿にしていた。印象最悪のその彼と、亜美ちゃんは結婚するという。周りは大反対するが、さかきちゃんはそれができない。それは彼女に復讐できる機会だからだろうと言われたりもするが、さかきちゃんは考える。果たして、けしてうまくいかないのが目に見えているその結婚は不幸なのか。亜美ちゃんに復讐がしたいのか。それはこんな形の復讐なのか。そして亜美ちゃんの結婚式のスピーチに、その答えの一片が、もしくはすべてが言葉になって彼女へと伝えられる。

    泣くかと思った。さかきちゃんも樹里恵も自分に似ている、なんて思わない。けれど、分かる。置かれた状況、求められる役割。それに疲弊する、傷付く、それを笑われ消耗する。そして彼女たちが結、結局、と手の中に残したものはあまりにあっさりと手の中から落としかねないものだった。それを、“危ない、危ない”と握りなおす。私にはそんなお話だった。

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著者プロフィール

小説家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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