- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167840020
感想・レビュー・書評
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「かわいそうだね」
終始イライラし過ぎて泣きそうになった。常にきれいにしていて、仕事もちゃんとしている女性よりもちょっとみすぼらしくて隙がある女性の方がモテるっていうのがリアルだなあと思った。
30代でこの別れ方はきついよ涙
こんな男に引っかかる主人公も主人公だよね
頑張ろ
最後の解説であった、登場人物の描写を心情ではなく、視覚的に捉えて比較しているところがすごくリアルでわかりやすいなと思った。
「亜美ちゃんは美人」
容姿端麗の子は常に羨望の目に晒されてるから、友達でも恋人でも自分に興味が無い人に惹かれるっていうのがすごく腑に落ちた。容姿に優れている人こそ自覚して目標を持たないと周りに流されちゃうのかな
このお話は主人公が幸せになってて良かった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「かわいそうだね?」は今まで読んだ中で1番好きな綿矢りさ作品だった。「こういう女いる、わかる」と思いながらずっと読んでいた。いい意味でアキエの腹立たしさを書くのが本当にうまい。アキエと樹里恵の二人の対比は「男ウケ」と「女ウケ」という語の対比でも置き換えられる気がする。女性が共感して好きになるのは樹里恵の方だけど、男の人が好きなのはアキエの方なんだよな、としみじみ思った。「かわいそうな存在になる」=庇護の対象になる=相手から見て自分を誰かに守られないと生きていけないような格下の存在に置くことだと思う。そうやって自らを格下のポジションに置くことを生存戦略として選べる人はか弱い存在なんかでなく強かな存在なんだとも思うし、案の定それが当たっていてやっぱりな〜と思ってしまった。
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2つ目の 亜美ちゃんは美人 が面白かったなぁ。
さかきちゃんや亜美ちゃん、出てくる人々は、いるいるこんな人な感じで、出てくるシーンも既視感があるんやけど、話の展開が思ってたのと違う。全く違うのではなく、なんとなく違うっていうのもにくい。
さかきちゃんのあみちゃんへの思いって書き方によってはえげつなくなりそうやけど、さかきちゃんのあかやさまに感情的にならないところと、亜美ちゃんの天才的に鈍い(いや、本当は鋭いのか!?)ところで、不思議とまろやかになり読んでる側も、ふむふむ、ほうほう、それでそれで、と嫌な感情なくページを進めていた。亜美ちゃんその後どうしてるかなー。 -
2本立ての内容の対比が意図的過ぎるが...面白い。
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久しぶりの綿矢さん。相変わらず文章が的確。赤線を引きまくりたい衝動に耐えながらの読書。
中編二本。
『かわいそうだね?』
樹里恵は幼い頃の震災の影響で地震がとても恐ろしい。だからいつでも、どんな状況でも地震が起きたら、のシュミレーションを繰り返す。繰り返すけれど、いつもそれは生き残りに失敗したところで終わっていた。頼れるはずの彼の姿はその想像の中で現れない。何故なら彼は恋人の樹里恵がいるのにもかかわらず元恋人のアキヨさんを一緒に住まわせている。アメリカから恋人の隆大について日本へやってきた彼女は、しかし日本で隆大は彼女をあっさりと捨てる。別れる。彼女のことを“恋人”と見れなくなったから。そして樹里恵と付き合っている今、彼女が一番大切だけれど、自分について国を出てしまったアキヨさんが職にあぶれアパートを追い出されたことに同情し、突き放せないという。隆大と別れたくなくて、一時の避難と考えて、樹里恵はそれをオーケーしたのだがアキヨさんはまったく出ていく気配が見えない。後輩に相談したらさっさと別れるべきと言われ、英語の教師陣には彼氏は正しいと返され、アキヨに同情したり嫉妬したり共感したり。そして隆大との旅行で目にしたものに樹里恵は覚悟を決める。
彼女からマシンガンのようにあふれるラアトの大阪弁がなんとも力強い。そして最後の一行に、綿谷さんの人生への愛情が滲んで見えた気がした。
『亜美ちゃんは美人』
特出して美しい姿をしている亜美ちゃんが大好きなのは、そんな彼女の隣だと劣化版の烙印を押されてしまうさかきちゃんだ。さかきちゃんは亜美ちゃんが嫌いだ。それでも学生時代は彼女がそばにいるおかげでカースト上位の位置だった。それでも募る嫉妬心で大学は別のところを受けるさかきちゃん。そんな彼女にサークルだけでも一緒にという亜美ちゃん。そして見事に大学での立ち位置を亜美ちゃんの“マネージャー”にされたさかきちゃんは、部員の少ない、全く有名ではい山岳部に入る。くっついてはいった亜美ちゃんはそこでもお姫様だったが、さかきちゃんはマネージャーではなかった。夏の合宿では恋人もでき、卒業後は仕事に恋にさかきちゃんは忙しく、亜美ちゃんに会うこともへっていく。そんなある日亜美ちゃんから恋人を紹介したいと連絡がある。亜美ちゃんは彼に出会ってはじめて人を好きになったといった。そんな彼氏は怪しい会社に勤め、見かけも不健康なラッパーのようで、そしていつも無意味に人を馬鹿にしていた。印象最悪のその彼と、亜美ちゃんは結婚するという。周りは大反対するが、さかきちゃんはそれができない。それは彼女に復讐できる機会だからだろうと言われたりもするが、さかきちゃんは考える。果たして、けしてうまくいかないのが目に見えているその結婚は不幸なのか。亜美ちゃんに復讐がしたいのか。それはこんな形の復讐なのか。そして亜美ちゃんの結婚式のスピーチに、その答えの一片が、もしくはすべてが言葉になって彼女へと伝えられる。
泣くかと思った。さかきちゃんも樹里恵も自分に似ている、なんて思わない。けれど、分かる。置かれた状況、求められる役割。それに疲弊する、傷付く、それを笑われ消耗する。そして彼女たちが結、結局、と手の中に残したものはあまりにあっさりと手の中から落としかねないものだった。それを、“危ない、危ない”と握りなおす。私にはそんなお話だった。