新装版 逆軍の旗 (文春文庫) (文春文庫 ふ 1-59)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (314ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167900328

作品紹介・あらすじ

坐して滅ぶか、あるいは叛くか――異色歴史小説集!戦国武将で一際異彩を放ち今なお謎に包まれた明智光秀を描く表題作他、郷里の歴史に材をとった「上意改まる」「幻にあらず」等四篇。

感想・レビュー・書評

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  • 明智光秀、亀山城を出て本能寺へ向かう。
    打倒信長の思いを固め軍を進める光秀の心の内はどのようなものであったのか。

    下剋上、裏切り、寝返りがキーワードのような戦国時代にあって、何故本能寺の変だけがこのように取り上げられることが多いのだろうかと不思議に思っています。
    光秀がその多くを謎に包まれた人物だからということなのでしょうか。
    光秀が信長を討ったのは天下人になるためではなく、大きく考えれば信長の世を終わらせて平和をもたらせたかったのではないか。ただそこに至るまでの心の内には信長の家臣としての将来に限界を見たり、秀吉と腕比べをしてみたいという武将としての誘惑があったりしたはずだ、というのが著者の考えでしょうか。

    戦国時代の状況はもちろん誰も見ていない。作家や研究者は資料から丹念に事実を拾い集め推測していく他はないものの、そこには彼らの思いが入らざるをえないでしょうから、たくさんの説や推測が出てきて面白い。
    先日は光秀と信長それぞれの子孫がテレビで話をしていました。けっして言い争いではなくそれぞれの事情を考慮しながらのほほえましい対談でした。
    諸説の中から自分の好みに合ったものを選んで味わうのも歴史の楽しみ方でしょうか。

  • 著者のあとがきによると、「あったことを書きたくなるという」「一種の生理的欲求のようなもので」書いた実在の事件・出来事と、郷里の歴史に材を借りた計4編の短編集。
    著者が興味を惹かれた明智光秀を、著者なりの解釈で描いた表題作の『逆軍の旗』。
    光秀が起こした本能寺の変を巡っては、その因について歴史家あるいは小説家で百家争鳴諸説紛々。
    著者は、光秀に天下取りの野心などなく、信長にただ狂気を見、恐怖を感じたゆえの行動だったとしている。
    『幻にあらず』は、遺作となった『漆の実のなる国』の原型ともいえる作品。
    他の著作にも言えるが、著者の作品は、時を経て再三再四読み返したくなる作品ばかりである。

  • 坐して滅ぶかあるいは叛くか-。戦国武将のなかでもひときわ異彩をはなつ明智光秀を描いた表題作のほか、郷里の歴史に材を借りた「上意改まる」など全4編を収録。

  •  藤沢周平「逆軍の旗」、2014.2発行。史実をもとにした4話が収録。危険で狂気な信長を襲殺した明智光秀を描いた「逆軍の旗」、戸沢藩の闇と悲恋を描いた「上意改まる」など。

  • ほとんど読んだ藤沢作品(自己評価)の中で、なぜか未読だった1冊。
    「逆軍の旗」は、本能寺の変を起こす直前直後の光秀の心理を周平さんらしく描いてる。「上意改まる」は、新庄・戸沢藩であった政争をサスペンス小説のように楽しめる。「二人の失踪人」は、南部藩の農家の息子による仇討を題材に当時の“事務手続き”を学べた。最後の「幻にあらず」は、周平さんの遺作となった『漆の実のみのる国』の17年前の作品で、上杉治憲(鷹山)と家老竹俣当綱の困窮する米沢藩を救う難しさを描いている。
    あとがきで「たまに本当にあったことを書きたくなる」という周平さん。いわゆる歴史小説でも、存分に藤沢ワールドを堪能できる作品だった。

  • 兎に角作者の筆力に圧倒される。 無駄なものが一切なく足りないものも無い。 読んでいて背筋が伸びるというか何かピーンと張りつめた緊張感がある。 内容はハッとするようなどんでん返しがある訳でもなくお決まりのハッピーエンドが訪れるわけでもなく、ただこの時代の厳しさや美しさを変な感情移入もせずに淡々と描いてる所がとても好み。 最も文章が綺麗で洗練されている思う作家。

  • 静謐と言う言葉が浮かぶ。
    藤沢ワールド 久々に味わいました。

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    「時は今あめが下しる五月哉」明智光秀はその日の直前こう発句した。坐して滅ぶかあるいは叛くか。天正十年六月一日、亀山城を出た光秀の軍列は本能寺へと向かう。戦国武将のなかでもひときわ異様な謎に包まれたこの人物を描いた表題作他、郷里の歴史に材を借りた「上意改まる」など3篇を収録。異色歴史小説集。

  • 極端ではあるけれど、昔は各人に、これ、と信じるものかあって暮らしていていいな、と思ってしまった

  • 2019.12.2(月)¥180(-20%)+税。
    2019.12.18(水)。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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