昭和天皇伝 (文春文庫)

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著者 : 伊藤之雄
  • 文藝春秋 (2014年3月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (589ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167900649

昭和天皇伝 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 25歳で即位し、日本史上最長の在位期間にして、史上、最も困難な時代を生きた。ボクは支那事変から太平洋戦争に至る昭和天皇陛下の戦争責任を否定しない立場なので、本書は若干甘い歴史観で昭和天皇を捉えているような気がする。それでも、陛下がおかれた激動の時代への同情を禁じえない。大正デモクラシーの影響を受けた十代から太平洋戦争終結にいたるまでの明仁殿下のナイーブさには心を撃たれる。

  • 歴代天皇の中でも最長在位、最高齢を誇る昭和天皇。物心ついた
    頃から私にとっては「優しそうなおじいちゃま」だった昭和天皇
    なのだが、崩御後に出版された様々な昭和天皇関連書籍を読む
    うちに「この人を知らなければ自分が生まれ、育った時代を
    理解することが出来ないのではないか」と思った。

    多くの関連書籍があり、そのうちのいくつかは読んでいるのだ
    が、宮内庁が編纂した『昭和天皇実録』が今月から一般刊行
    されるのを前に「おさらい」として本書を読んだ。

    本書は可もなく不可もなく…というところだろうか。公開されて
    いる資料、既刊の出版物等、多くの資料を読み込んで書かれている
    ので巻末の参考文献を見ると既に読んでいるものも少なくなかった。

    ただ、89年の生涯を追うには少々駆け足だったかなと感じる。
    読みようによっては既刊刊行物からの切り張りと取れないこと
    もない。

    大正天皇の崩御により若くして即位した昭和天皇が多くの迷い
    や悩みを抱えながらもイギリス流の立憲君主であろうと務めた
    姿は、やはり持って生まれた生真面目さの所以なのだろう。

    その生真面目さは2.26事件の際には激情となって発露された
    のではないか。一部の青年将校たちの暴走により重臣たちが
    襲われた事件に対しての怒りの激しさは、当の青年将校たち
    も考えてもみなかったことだろう。

    崩御の約5か月前の8月15日。既に病の為に皇太子であった
    今上天皇が名代として公務を務めていた。だが、この日だけ
    は静養先の那須御用邸からヘリで東京に戻り、式典会場に
    臨席された昭和天皇の姿に先の大戦で犠牲になった人々へ
    の祈りへの執念を見た記憶が残っている。

    何で読んだか忘れたのだが、内容だけは覚えている昭和天皇の
    エピソードがある。病の床に就いた昭和天皇が見舞いに訪れた
    香淳皇后の手を握り「良宮(ながみや。香淳皇后のお名前は
    良子と書いて「ながこ」様)、元気でね」と語りかけという。

    周囲が決めたご結婚だったが、晩年まで仲の良いご夫妻だった
    という。早い時期から高齢者特有の症状を呈していらした香淳
    皇后を残して行くご心配もあったのだろうなと思う。

    どこに軸足を置いて描くかでまるっきり人物像が異なる昭和
    天皇。本書はなるべく俯瞰して描こうとしているようだが、
    注釈を読んでいるとどうもアメリカ寄りの視点のような気が
    してならない。

  • 2016/03/26ブックオフ購入

  • 国家の象徴に生まれるとか想像できますか?昭和天皇の生涯を綿密にまとめた一冊。同時に昭和の戦争の時代を総覧できる。


     象徴。シンボル。前に司馬遼太郎の本でシンボルの語源はギリシア語の「割符」から来ているとあった。象徴とは半分なのである。とあるものの本質の一般共通項という半分だけを表すものがシンボルなのである。
     天皇は日本の象徴。日本人の精神性の一般共通項が天皇にはあるってことかな。
     日本国民にはこれほどの奥ゆかしさはまだあるのだろうか。

  • 膨大な犠牲者を出した泥沼の戦争・・・
    そして焼け野原からの復興と繁栄・・・
    日本の歴史上、昭和の激動っぷりはハンパない・・・
    ハンパない激動期の日本を現人神として、そして象徴天皇として歩まれた昭和天皇・・・
    その昭和天皇の伝記、評伝・・・

    昭和天皇には歴代「最高の天皇」という評価がある一方で、戦争責任を逃れた「率直ならざる人物」であるという評価もある・・・
    いったい、どうなの?
    2001年にピューリッツァー賞を受賞したハーバード・ビックスら昭和天皇を批判する側の意見としては・・・
    天皇は戦前において立憲君主じゃなくて、絶大な政治権力を持った君主として戦争責任があったのに、側近と共謀してそれを隠した「率直ならざる人物」だ、と論じる・・・
    政治関与ができて影響を及ぼせたなら、戦争を防げなかったことに対して、あるいは早く戦争を終結させず犠牲を増加させたことについて、責任がある、というもの・・・
    ふむ・・・
    確かに・・・
    そういえば・・・
    明治憲法で天皇は神聖にして侵すべからず、というのがありましたね・・・
    そうそう、現人神でしょ?
    みんな天皇の言うこと思うことには従ったんだよね?
    っつーことは何だって好き勝手にできたわけだよね?
    そうだとしたら、確かに責任あったよね?
    と、思っちゃうところだけど・・・
    明治以降の天皇制について詳しい著者によるこの本を読むと・・・
    実はそんなことはなかったということが分かる・・・

    戦前において、現人神と、神聖にして侵すべからずと、されていた昭和天皇・・・
    絶大な政治権力を持ち、何の制約もなく自由に様々な意思決定や行動ができた・・・
    わけではない!
    さっきの神聖にして侵すべからずにしたって、これは天皇が法律上や政治上の責任を問われないというものであって、自由に何でもできますよ、ってものではない・・・
    明治天皇以来の日本なりの立憲君主制がしっかり昭和天皇に受け継がれていた・・・
    明治憲法で・・・
    天皇は帝国議会の協賛によって立法を行う・・・
    すべての法律は帝国議会の協賛を経なくてはならない・・・
    毎年の予算は帝国議会の協賛を経ることが必要・・・
    帝国議会は毎年召集する等、議会が天皇の行為を制約したし、同じように国務大臣も天皇の行為を制約していた・・・
    司法に関しても、恣意的に介入する余地はほとんどなかったそう・・・
    その上、というか特に天皇の意思決定に制約をかけたのが軍部大臣現役武官制だったみたい・・・
    何故かと言うと・・・
    天皇は首相や閣僚を辞任させることができる・・・
    けど、その後任を埋めることができる保証がなかったので、最重要の陸海軍大臣の後任者が得られないと内閣が成立したり、存続できない・・・
    結果、軍関係閣僚を罷免した天皇の政治責任が言外に問われることになり、たちまち窮地に陥ってしまう・・・
    昭和天皇には秩父宮や高松宮といった弟もいたし、他の皇族もいた・・・
    昭和天皇の権威が失墜し、この天皇は(軍部や右翼など)自分たちにとって不都合である、ということになれば、廃位して都合のイイ他の皇族を天皇に、という恐れがあった・・・
    天皇にとって不満な政策であっても、その政策をOKしないために内閣が倒れる恐れがある場合、事実上拒否できなくなってしまう・・・
    これですね・・・
    これが天皇へ大幅な制約をかけた・・・
    これが英米との戦争を何としても避けたかった昭和天皇を非常に苦しめ悩ませたことがわかる・・・
    『天皇が人脈形成に失敗して各集団(主に軍部や右翼)からの信頼が弱い場合、天皇の政治権力は限定的となる。それに加え天皇の意向と同様の考えを持って国家をリードする有力政治家もいないと、天皇は、倒閣や明治憲法運用上の慣行を破ることを恐れるあまり、意に反した事態の展開を事実上傍観うすることにもなる。』
    若くして即位した昭和天皇は、張作霖爆殺事件の処理や、ロンドン海軍軍縮条約問題、満州事変での朝鮮軍の独断越境への対応を誤り、軍部への威信を確立することができなかった・・・
    元老も(高齢の西園寺公望を残して)いなくなり、宮中側近として頼れたのは経験値が不足気味の牧野伸顕や木戸幸一くらい・・・
    結果、満州事変から太平洋戦争開戦まで意に反していながら軍部の強硬姿勢を止められず、ズルズルと行ってしまった・・・
    こういう背景があったことを批判派は語っていない、というか見逃している・・・
    ボクもこういう事情があったとは、そんなに知らなかったです・・・
    今回この本で学べました・・・
    著者も言っておりますけど・・・
    『歴史の中で生きる人々は、その時代その時代の課題を抱えている。現代に生きる私たちが歴史から学ぶことができるとすれば、過去の人々がその時代の課題とどのように取り組んできたのかということを、その時代の制約に配慮しながら考えることを通してである。』
    この観点がホントに大事ですね・・・

    昭和天皇の生涯について・・・
    なぜ日本が無謀な戦争に突入していったのか・・・
    昭和天皇は望んでいなかったと言われていたのに何故その流れを止められなかったのか・・・
    非常に面白かったし、ボクには新鮮でした・・・
    参考文献も豊富で、ちゃんと結構な一次資料に寄っているようなので信頼性が高いかなぁと思うし・・・
    これはオススメ・・・

  • *この文章は、歴史上の人物としての昭和天皇を描いた作品の感想文のため、敬語を使用していません。

    60年以上という、歴代最長の期間に渡り在位した、昭和天皇。
    自分自身は、昭和天皇の晩年、一般参賀等のTV報道での姿を目にしたという経験しかないのですが、じっと前を見据えた立ち姿に、他の人物にはない、強い意志のようなものを感じた記憶があります。
    これまで、戦争との関連を含め、天皇というある種「近寄り難い」存在について、本を読んだり語ったりすることにためらいを感じていました。
    しかし、自分が暮らしている日本という国を理解するには、天皇の存在ということについてある程度、知っておかないといけないと考え、関連する本を読むことにしました。
    この本は2011年に出版された一冊。
    出版当時、複数の昭和天皇関連本が同時期に発表されて、話題になっていたという記憶があります。
    約3年を経て文庫版が出版されたので、読んでみることにしました。
    昭和天皇の誕生から亡くなるまでを、伝記形式で時系列にそって記述しています。
    第一部は誕生から天皇に即位するまで、第二部は立憲君主として日本を統治していた期間、そして第三部は戦後の象徴天皇としての期間という形に、大きく三部に分けられています。
    著者はまず第一部で、立憲君主として国民から大きな期待を受けていた天皇の姿を描いています。その中でどのような教育を受けて成長していったのか、そして本書のキーワードの一つである「生真面目な性格」に関するエピソードも記述されています。
    第二部では、国民の期待を受けて即位した「やる気に満ちた」天皇が、日本を統治していく中で挫折を経験しダメージを受け、その状態で戦争という大きな波にどのように対峙したのかが描かれています。
    第三部は日本という国をどのように変えていくべきなのか、その中で自分はどのような役割を担うべきなのかを考え、日本という国に向き合う姿が描かれています。
    恥ずかしながら、本書を読んで始めて、立憲君主としての天皇が(形式的な存在ではなく)日本の政治に大きな影響力を持っていたということを知りました。
    そして、好奇心旺盛な天皇が、報告された情報を咀嚼し、大所高所に立って、日本という国を導いていたのだなあと理解しました。
    そのような見識、判断力があったからこそ、戦後も長らく、政治家たちは天皇に報告を行い、時には助言を受けていたのですね。
    明治憲法の中での立憲君主という位置づけと、新憲法の中での象徴天皇という位置づけの両方を経験したという意味では、歴代の天皇の中でも稀有な存在だったのではないかと、本書を読んで感じました。
    著者の主観によって、取り上げる題材に強弱はつけられているとは思いますが、一人の人物としての昭和天皇を知りたいという自分には、とてもフィットする一冊でした。
    昭和天皇に関しては数多くの著作が出版されているようなので、他の著作も読んで、理解を深めていきたいと思います。

  • 【苦難の時代を歩んだ昭和天皇の実像を描く】日本の命運を若くして背負わざるをえなかった君主は、いかに歩んだか。昭和天皇の苦悩と試行錯誤、そして円熟の日々。決定版的伝記。

  • 近代史の勉強も兼ねて読み始めたが、遅々として進まずにいる間に「昭和天皇実録」完成のニュースが出て焦った。
    本書では特に新しい史料が紹介されているわけではなく、昭和天皇を戦争責任の有無やその周辺の諸問題に的を絞らず、生涯をくまなく辿ることに重きを置いている。後から実録が出たからと言ってまさかどんでん返しされることもないとは思うが、気になるところである。
    皇室にまつわる事件で知らなかったものもあったので、その辺りは大変興味深かった。

  • 福田和也版の其れと異なり、歴史学視点で書かれた本書。若くして即位した天皇を蔑ろにする軍部。とりわけ天皇の名の下に戦争を遂行しながら、天皇の意図を軽視する陸軍。
    そうした艱難辛苦の中で円熟し、戦後を含め政治的に大きな影響を持ち続けた姿は、我々の知る最晩年のイメージと一致しない。しかし戦後様々な制約の中でのアウトプットを想い起こすに、腹落ちする事が多く、此処での記述はかなり事実に近いのではなかろうか。

  • 昭和天皇を身近に感じることが出来た。昭和天皇の周囲にあまりに人がいなかったことが、悲劇を生んだような気がする。

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