- Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167902186
感想・レビュー・書評
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胃がんにより余命わずかと知った榊信一は、残りの人生を自身の殺人衝動に正直に生きることを決意し女性たちを絞殺していく。
その事件の捜査を担当することになる蒼井だが、彼も胃がんの再発が発見され、余命わずかの二人が事件を通して交差する。
単に連続殺人を捜査するというだけの話ではなく、余命わずかの中、娘と息子を持つ蒼井はどう生きるか、殺人を犯しながらも自分を大切に思ってくれる女性のいる榊はどう生きるか、
というそれぞれの生き方と選択という点に迫ってる点が単なるサスペンス小説とこの小説が違っている点だと思います。
自分自身はまだ親も元気で死に対する実感はなかなかわかないのですが、この小説に出てくる蒼井親子の話は読んでいて非常に切なくなりました。
個人的な読みどころは蒼井と榊の最後の対決の場面でしょうか。余命わずかなため罰を恐れず罪の意識を見せない榊を蒼井はどう罰するのか。
薬丸さんは現代の社会における犯罪の罪と罰というものを真摯に描き切っている作家さんだと思います。今回の作品も描きたかったのは、死を間近にした人の生き方だけでなく、
罰を恐れない者を罰することはできるのか、という問いだったと個人的には思うのです。
最後の二人の対話の場面の蒼井の言葉、榊の叫びはこれまでの話の流れからするととても自然というか、そうすることでしか罰は与えられないよな、と納得のいくものだったのですが、
それだけにその場面のページ数が少なかったのがちょっと物足りなく思いました。
ただサスペンスとしてはオーソドックスな話でも、こうして「罪と罰」という薬丸さんが他の作品でも問い続けているテーマをしっかりと結び付けられていて、
薬丸ファンである自分としては「やっぱり薬丸さんの作品なんだな」と感銘を受けました。
これからも薬丸さんが問い続けるテーマを読者である自分自身も一緒に考えていけたらな、と改めて思いました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
余命わずかと知って己の欲望を解放した者と、
己の使命と向き合う事で恐怖と戦う者
ふたりの運命が交錯し、最後を迎えるとき
どちらがどれだけしあわせだったのか?
どちらの勝利といえるのか?
死を迎えるラストは最初から見えているのに
最後までふたりの生き様を知らずにいられなくなってあっとゆうまに一気読みだ。
山口澄乃のやりきれない最後も衝撃だった。
病魔に蝕まれて苦しみながらも欲望に抗えない
犯人と、犯人逮捕に突き動かされる刑事の執念。
色んな角度から楽しめる人間のミステリー作品。
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分厚い上に、行がページのギチギチに詰められているという、重厚長大な作品だった。内容もさることながら、読書という行為そのものが好きな人間としては、これを一冊にまとめてくれた編集者さんにも感謝したい。
組織捜査に馴染まないローンウルフ系刑事の蒼井が、進行性の胃癌に犯されながらも、連続女性殺害事件の被疑者を追う。だが実は、その被疑者も同じ病魔に襲われていた。死が迫るからこそ、抑えきれない殺人衝動を解放した被疑者と、死を恐れるがために、死ぬまでに逮捕する使命を燃やす刑事。最後には、死そのものが怖いわけではなく、愛した人や場所を含む「自分の人生という鏡」を見せられることが怖いのだと気づく。愛するものがあるからこそ、怖い。だからこそ蒼井は最後に、被疑者の愛した人の最後の言葉を伝えるーー。
ただのミステリーじゃなく、人生の哲学が込められた内容だった!
ナイス、重厚長大。 -
残された命について、いろんな意味で考えさせられました。
面白かったです!一気読みでした✨ -
余命わずかな殺人犯と刑事
二人が同じようなタイミングで余命宣告とは・・・
物語は読みごたえがありました
犯人視点や刑事視点で展開されそれぞれの思いなども
知ることができより物語に入っていけた感じです
末期胃がんはしんどそうですね -
読み易いし、最後までページをめくる手が止まらなかった。
主人公2人は、最後に死が訪れる設定で話が進む。死がわかった時の2人の行動を考える…死ぬとわかった時の2人の思考は、人によって思う所は違うのだろうなー。
殺人鬼は欲望によって人を巻き込んで行くのは許す余地はない。それを追う刑事は正義を掲げて家族を犠牲にしてく…そして2人ともかけがえの無いものに気付いたき、死が目の前に迫ったときに差が出始めてくる。真っ直ぐに真摯に生きていけば報われる時があると信じたい。中々面白い本でした。 -
犯行シーンは読むのをやめようかと思ってしまったけど、それにも慣れて一気読み。
犯人や刑事の目線で書かれていてテンポがいい。
結局は蒼井さんの刑事の勘が当たったことになり、ほんとはそんな糸口では頼りない。
でもそれを差し引いても十分におもしろく、目が離せない。
矢部くんの成長した姿をまた見たい。 -
サスペンスが好きというのもあり凄く面白かったと思う。
あまり小説を読んだことがないのですが、人生でこんなにも早く読み切った本は初めてです。
頭の中で、まるで映画を見てるように画が浮かんできて、読んでるのか見てるのかわからなくなるぐらい今作にどっぷり浸かってしまった。
"そこに着いたらまっさきにおまえを捜しにいくよ"
こんな53歳になれるように、これからの21年頑張るかな!