女子学生、渡辺京二に会いに行く (文春文庫 わ 19-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167902605

作品紹介・あらすじ

『逝きし世の面影』の著者が贈る、目からウロコの人生指南!子育ての不安から、やりがいのある仕事と自己実現まで――若い世代の不安に向き合い、近代に固有の呪縛を解く、画期的一冊!

感想・レビュー・書評

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  • 佐伯啓思さんの本「死と生」で紹介されていた三砂ちづるさんの本「死にゆく人のかたわらで」からこの本につながったのですが、
    内容
    はじめに 三砂ちづる
    1.子育てが負担なわたしたち
    2.学校なんてたいしたところじゃない
    3.はみだしものでかまわない
    4.故郷がどこかわからない
    5.親殺しと居場所さがし
    6.やりがいのある仕事につきたい
    7.自分の言葉で話すために――三人の卒業生
    無名に埋没せよ――渡辺京二
    です。
    三砂ゼミ生が卒論に選んだテーマについて、渡辺京二が好きにしゃべる、そして本人の返答、意見、三砂さんのコメント・・・
    とにかくぶっつけ本番で、渡辺さんのフランクなしゃべりが面白い、そして最後の「無名に埋没せよ」も思いつくままに語る。
    私の場合、同調する部分があったし、ユーモアあふれるしゃべりに思わず、吹き出してしまった(笑)。
    「三つ子の魂百まで」残り少ない人生、この感じで私もずっと過ごしていきたいものである(笑)。

  • 「逝きし世の面影」をゼミで読んだ学生たちが熊本を訪問。ゼミ生の発表に対する渡辺氏のコメント集が本になっている。「故郷がどこかわからない」との学生の発表に対して、渡辺氏の「逝き・・・」を書いた意図の説明、「日本人の意識で書いたのではないのよ。あの頃やってきた外国人になって、日本を見たのよ。面白いなぁ、日本の国は。」が興味深い。常に日本を外から見るということは大切だと思う。またフランス語でドイツ人の悪口をいう言葉が発達している!紹介は愉しい。その両国が今は親密なのだから。「学校なんてたいしたところじゃない」の学生はフーコーの「学校教育は権力への服従」との視点への学生の戸惑い、「やりがいのある仕事」の学生は純粋な学生が悩みをぶつけているが、渡辺氏の応答は洒脱な雰囲気での会話。大学教育としてのこのような対話はユニークで意義深い。

  • 私は女学生ではなく中年のおっさんだけど、かなりの共感を持って読み進めた。半ばは女学生に、半ばは渡辺先生に。
    学生たちが津田塾の、しかも三砂ちづるゼミの学生ということで、相当に「意識高い成分」が濃いとは思われる。彼女たちのもつ生きづらさの正体を、歴史家が穏やかに諭すようにときほぐしていく。
    渡辺京二は「何々すべきだ」なんて話し方はしない。「何々しとったらええんですよ」という。
    渡辺によれば、学生たちの生きづらさの根っこにあるのは、人間は自由で自立していて夢をもって生きるべき、というドグマ(本人はそんな言い方はしていなくて、評者である私の要約)。趣旨は『逝きし世の面影』にも色濃く出ていたと思うが、庶民は「分をわきまえ」ぼちぼち生きとったらええんです、「ふつう」のレベルを上げすぎているから下げなさい、という。
    学生たちは理想が実現されていない現実社会を「異常事態」ととらえていて、それは、自己実現という面でも、社会正義という面でも強い思いなんだということが伺える。渡辺翁はそれに対して異常ではない、正常でもないが通常だ、という。
    ふむ。沁みるお言葉。

    それから、表立って話されてはいないけれど、読んでいて興味深かったのは渡辺の歴史観。歴史には「編纂」という言葉に出てくるように「編む」というクリエイティブな工程があって、そこには個人も参加できるんだよ、といっている。公定の歴史の他に、あなたの歴史を編みなさい、と。とても感動した。

    ちなみに、言葉遣いはかなり違うけれど、読みながら頭の片隅から離れなかったのはお笑い芸人の言葉でした。

    アメトーーク!! 腹立つ芸人で小籔が語る「夢は叶わない」が正論すぎて話題 - NAVER まとめ
    http://matome.naver.jp/m/odai/2139558078819992401

  • http://naokis.doorblog.jp/archives/social_issues_young_women_encounter.html【書評】『女子学生、渡辺京二に会いに行く』〜子育ては負担なのか?

    <目次>
    文庫版まえがき 渡辺京二
    はじめに 三砂ちづる
    1 子育てが負担なわたしたち
    2 学校なんてたいしたところじゃない
    3 はみだしものでかまわない
    4 故郷がどこかわからない
    5 親殺しと居場所さがし
    6 やりがいのある仕事につきたい
    7 自分の言葉で話すために − 三人の卒業生
    無名に埋没せよ 渡辺京二
    おわりに 渡辺京二
    文庫版あとがき 三砂ちづる

    <論文タイトル>
    1 子育てが負担なわたしたち
    子育ては福祉の対象か?−公的りょいきにとりのこされる子どもたち 須藤茉衣子

    2 学校なんてたいしたところじゃない
    学校は権力装置か − フーコーから考える学校教育の可能性 大石茜

    3 はじだしものでかまわない
    「発達障害」という名前をつける − その理解と責任について 小野寺みずほ

    4 故郷がどこかわからない
    帰国子女の“喪失”と“豊穣” − 一三人の海外在住体験から学ぶ 大木ゆりあ

    5 親殺しと居場所さがし
    「国際協力」へ向かうきっかけとは − 関係者のライフヒストリーからの考察 山際恵

    6 やりがいのある仕事につきたい
    社会福祉、看護系の領域の特殊性と矛盾 − やりがいはある、でも離職する 余合真知

    7 自分の言葉で話すために − 三人の卒業生
    結は現代にも存在できる? 砂原翠
    痩せているほうがいい 守谷めぐみ
    当事者性ということ 松崎良美


    2016.05.23 川原さんから三砂ちづるさんの本を薦められる。
    2016.05.29 借りる
    2016.07.03 読了

  • 「逝きし世の面影」の渡辺京二氏、今を生きる女性の一人として、共感、納得、新しい視点をたくさんくれた一冊。彼の思想やポリシーにもっと興味が湧いた。

  • 津田塾大学の三砂ちづるが主催する「多文化・国際協力コース国際ウェルネスユニット」のゼミ生たちの問いかけに、日本思想史に関する多くの著作のある渡辺京二が答えるという本です。

    三砂のゼミ生たちが押し着せのテーマではなく、自分と世界との接点となるようなテーマに取り組んでいることが印象的でした。そうした彼女たちの姿勢が、大文字の「思想」ではなく、日本人の生活の陰影をたどることでその中に息づいている細やかな「思想」を追求した渡辺の学問的態度と響き合うところがあったのではないかという気がします。

  • 文壇高円寺、つながりで、手にとる。目にとまったところを。/他人とのつきあいなんて考えてもきりがない。人間はまわりから嫌われてもいい。自分はこういう人間ということで、いやならつきあってもらわなくてけっこう、でもつきあってくれる人とは誠心誠意つきあう。それでいいんです/自分の一生のなかで、あそこに遊びにいったら、誰かと会えるんじゃないか、そう思える場所があるということ自体すばらしいんです/お互い自分が育ってきた、所属したものに対する愛着というのがあれば、どうしても異なるものに違和感も生まれてくる。それがあることを承知しながら、それを超えた普遍的なものを求めていかなくちゃいけない。普遍的なものばっかりだというのは嘘なんです。/自分を確立しないと人のためにできないということはないのよ。自分自身がだめでも人のためにしてあげなさい。それが一番いいんです。/善も悪の世界も共に超えて包摂できる、包みこんでいけるものは宗教だけだと思うんです。親鸞さんだけだと思うんです。/人間という生き物は、光から影まで、要するに闇まで、振幅が大きいわけで、その全振幅というのを全面的に肯定しながら、それぞれの居場所をきちんと作ってやるということがやっぱり大事だと思うんですね。/人間とは、社会から必要とされ、役立つとか、そのために生きてるのではない。せっかく生んでもらった自分のこの生命というものを、生き延びさせていくということが、それ自体で、価値があること。/自分とは違う他人がいて、そのつきあいの中の楽しさもあった。それだけで十分。それが基本だということです。無名に埋没せよ、ということです。

  • 期待して読んでみたけど、意外と深いなぁと思う部分は少なかった。いや、自分の興味のある部分が意外と少なかったと言ったほうが正確。けっこうページ数はあるので、途中からはだらだらと読んでしまった。

  • 2015/7/29

  • 大人になったら何かすごいこととか、社会のためになることをしないといけないと思い込んでいたし、学校でもそう言われてきたが、この本を読んで普通に人生を自分のために楽しめばいい、ということを知った。当たり前のことだけど、現代社会で忘れられがちなことに改めて気づく一冊だった。大学生になる前に読めてよかった。

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著者プロフィール

1930年、京都市生まれ。
日本近代史家。2022年12月25日逝去。
主な著書『北一輝』(毎日出版文化賞、朝日新聞社)、『評伝宮崎滔天』(書肆心水)、『神風連とその時代』『なぜいま人類史か』『日本近世の起源』(以上、洋泉社)、『逝きし世の面影』(和辻哲郎文化賞、平凡社)、『新編・荒野に立つ虹』『近代をどう超えるか』『もうひとつのこの世―石牟礼道子の宇宙』『預言の哀しみ―石牟礼道子の宇宙Ⅱ』『死民と日常―私の水俣病闘争』『万象の訪れ―わが思索』『幻のえにし―渡辺京二発言集』『肩書のない人生―渡辺京二発言集2』『〈新装版〉黒船前夜―ロシア・アイヌ・日本の三国志』(大佛次郎賞) 『渡辺京二×武田修志・博幸往復書簡集1998~2022』(以上、弦書房)、『維新の夢』『民衆という幻像』(以上、ちくま学芸文庫)、『細部にやどる夢―私と西洋文学』(石風社)、『幻影の明治―名もなき人びとの肖像』(平凡社)、『バテレンの世紀』(読売文学賞、新潮社)、『原発とジャングル』(晶文社)、『夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺』上・下(亜紀書房)など。

「2024年 『小さきものの近代 〔第2巻〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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