新装版 蚤と爆弾 (文春文庫) (文春文庫 よ 1-52)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903480

感想・レビュー・書評

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  • 731部隊の歴史的史実の小説でここ迄赤裸々に内容を知ってしまった事実が爆弾級でした。
    曾根二郎と言う天才細菌学者が作り出す戦争兵器…
    正義とは何か,各々にどう解釈する事が出来るか問われる1冊でした。

  • 生物兵器開発。
    寝る前に読む本ではないです。

    正義とは。

  • 太平洋戦争の際に日本軍部が取り組んでいた細菌兵器を開発していた「731部隊」に関する歴史小説。
    吉村昭の作風らしく、事実を淡々と伝えるアプローチで、却って迫ってくる恐怖を感じる。
    ナチスの残忍な行為もそうだが、人間が人間性を失っていく、これが「戦争」の狂気、そして愚かなところ。この部隊を率いる石井四郎は、自分の任務、科学の発展のため、という錦の御旗に疑いをもたない。

    今を生きる我々にとっては、このような悲劇を風化させない努力が必要なのだろう。

  • 戦時の衝撃な事実。旧日本軍が満州で行った戦慄すべき人体実験。日本人である限り眼を背けてはいけない歴史の事実が書かれている。知っておいてほしい事実の話。

  • 4.22/150
    内容(「BOOK」データベースより)
    『北満州、ハルピン南方のその秘密の建物の内部では、おびただしい鼠や蚤が飼育され、ペスト菌やチフス菌、コレラ菌といった強烈な伝染病の細菌が培養されていた。俘虜を使い、人体実験もなされた大戦末期―関東軍による細菌兵器開発の陰に匿された戦慄すべき事実と、その開発者の人間像を描く異色長篇小説。』

    冒頭
    『昭和十九年八月、北満州のハルピンは、まばゆい太陽の光のもとにあった。
    すでに太平洋上のサイパン島は失陥し、同島守備の日本軍将兵二万数千名の死体は、南国の陽光にさらされ白骨化のきざしをみせはじめていた。』


    『蚤と爆弾』
    著者:吉村 昭(よしむら あきら)
    出版社 ‏: ‎文藝春秋
    文庫 ‏: ‎248ページ


    メモ:
    『……戦場では、連日のように多くの俘虜たちが処刑されている。それらは銃殺され首をたたき落されて、土中に埋められてゆく。
    かれは、それらの死体を惜しいと思った。どうせ死んでゆくものなら、実験動物代りに使用して軍事医学の研究に役立てる方が軍にとって有益だと思った。(p38)』

    『(解説より)……曾根二郎という軍医は実在のある軍医をモデルにしていて、その人間像が適確に描かれていることだ。(p242)
    ……現実の史実では、この関東軍防疫給水部は、七三一部隊という隠語で呼ばれていたわけだが、曾根の哲学や心情はこれまで明らかになっている実在の軍医中将とまったく同じ内容である。小説という形をとっているにせよ、本書は実際には、ノンフィクションという意味あいが強い。(p244)』 解説:保坂正康

  • 2020.10.1(木)¥200(-20%)+税。
    2021.4.24(土)。

    重複購入

  • この本は、実際に戦争中に存在した関東軍防衛給水部(731部隊・石川部隊として有名)をモデルにした作品である。

    曽根二朗という非凡な医者が、中国で化学兵器を作成し人体実験する物語である。
    昨今では、あまり読まれない作品に入るやしれないが、ぜひ読んでほしい一冊である。

    世界では今も化学兵器の開発が行われ、オウム事件のような民間テロもいつおこるともしれない。曽根二朗とい医学研究者を通して、人のための科学を、人を殺めるための科学に援用していくさまを読んでほしい。

    蚤とは、細菌のカプセルである。それを爆弾に詰めてどうしたら人に感染させられるか、それを深淵に考える、その存在が怖い。

    コロナ禍。ウィルス・細菌の怖さは承知している。
    細菌(ウィルス)製造という決してやってはいけないことをした国がかつてあり、今もどこかにあるのかもしれない。

  • うーん、切ないなあ。
    主人公・関東軍防疫給水部(通称・満洲第731部隊、だ)部長、曽根二郎のモデルは石井四郎。森村誠一の「悪魔の餌食」のヒト。
    後はとにかく、不気味なくらいに固有名詞が出てこない。それでもって、なんだか戦時の特定の一事象性をまぬがれて、ヒトの根性の意地汚さみたいなものの普遍性が浮き彫りな感じになってるのが、妙に薄ら寒い。

  • さすが吉村氏。
    北満州、ハルピン南方のその秘密の建物の内部では、おびただしい鼠や蚤が飼育され、ペスト菌やチフス菌、コレラ菌といった強烈な伝染病の細菌が培養されていた。俘虜を使い、人体実験もなされた大戦末期―関東軍による細菌兵器開発の陰に匿された戦慄すべき事実と、その開発者の人間像を描く異色長篇小説。

  • これまで吉村昭の小説の中に731部隊に関するものがあることを知らずにいた。この小説が世に出たのは昭和45年頃で「細菌」というタイトルだった。
    私が読んだのは4版目で今年の4月に出されたものである。私が最初に731部隊を知ったのは、森村誠一の「悪魔の飽食」(昭和58年)からだったが、その14年前に出ていたことになる。まだ敗戦の記憶が浅い頃である。文中に出てくる個人名の登場人物が少ないことからも分かるが、当時、かなり際どい題材だったに違いない。あらためて、吉村昭の記録文学の凄みを感じる。

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著者プロフィール

一九二七(昭和二)年、東京・日暮里生まれ。学習院大学中退。五八年、短篇集『青い骨』を自費出版。六六年、『星への旅』で太宰治賞を受賞、本格的な作家活動に入る。七三年『戦艦武蔵』『関東大震災』で菊池寛賞、七九年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、八四年『破獄』で読売文学賞を受賞。二〇〇六(平成一八)年没。そのほかの作品に『高熱隧道』『桜田門外ノ変』『黒船』『私の文学漂流』などがある。

「2021年 『花火 吉村昭後期短篇集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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