禁断の魔術 (文春文庫 ひ 13-12)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167903770

作品紹介・あらすじ

ガリレオ最新長編、文庫オリジナルで登場!姉を見殺しにされ天涯孤独となった青年。愛弟子の企てに気づいたとき、湯川がとった驚愕の行動とは。あの衝撃作が長編でよみがえる!

感想・レビュー・書評

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  • 科学の意味、何のための科学なのか、それを問われ、その答えは明確なものなのに、そうはならない。そのジレンマとたたかうしかないのだろうか。大切な人を思い浮かべ、その意味を考える。

  • ガリレオシリーズ長編。この文庫版は単行本の内容とは少し違うらしいのでご注意を。

    裏表紙のあらすじ紹介によると『シリーズ最高傑作!』とあるが、個人的にはそれはどうなのかなぁという感想。シリーズ全てを読んだわけではないので分からないが、ファンの方はどう思うだろう。

    冒頭は訳ありげな女性の死。その後、その女性の弟・小芝伸吾が高校時代、一時的に湯川に師事していたことが分かる。
    場面は変わってあるフリーライターが絞殺される事件の話。彼の出身地では『スーパー・テクノポリス計画』なる、科学技術研究所の集積地建設が進められている。
    だが自然破壊や放射線漏れなどの恐れから反対運動が起こっている。
    その『スーパー・テクノポリス計画』を推進しているのが大物代議士の大賀で、殺されたフリーライターは計画を頓挫させる目的で大賀のスキャンダルを探っていた。そして伸吾の姉もまた、大賀担当の新聞記者だった。

    物語は割とシンプル。
    伸吾は姉の復讐のため、大賀を狙っていると見える。そのための凶器がタイトルにある『禁断の魔術』ということだろう。
    度々実験シーンがあるが、科学については分からないのでへぇ~と恐れ入ることばかり。ただこの『魔術』にはデメリットも大いにあることが分かる。
    しかし湯川は何故か伸吾を庇う。彼はそんなことをする人間ではない、『装置』は武器ではないと繰り返す。一体何故そう言い切れるのか。

    一方でフリーライターの殺人や『スーパー・テクノポリス計画』が物語とどう関わっているのか、ということも気になりつつ読んでいた。
    ところが中盤から毛色が変わってくる。
    地方を食い物にする政治の暗部の話かと思っていたら、結局は人間同士の話だった。伸吾の姉も何だかなぁという感じ。伸吾が理解できないのだから第三者である読者はもっとだろう。

    湯川があれほど信じていた伸吾については結局はあれだったわけで、ただ終盤の山場での湯川の行動については理解出来た。一時的な弟子とは言え、湯川なりの責任の取り方だったということだろう。そこを警察に任せずに自分の体を張ってというところが湯川らしさだろうか。

    しかし結末としては釈然としない。
    これが現実ということかも知れないが、だからこそ小説という作り事ならではのオチがあっても良かったのではないかとも思ってしまう。
    特に大賀については。秘書が言うように『大勢の人間』を抱える一派のトップであるならば、そもそも軽率な行動をするべきではなかったのでは? そもそも論を言うなら、そういう軽率な行動に走るのを諌めるのこそ秘書の役割では? 人命を見捨てられない行為を諌めるのではなく。

  • 久しぶりのガリレオシリーズ。湯川先生の謎解きが面白いのだが、今作ではあまりそう言う面が出てこない。後輩の犯罪、それも自分も関与しているので、友人の草薙刑事に尋ねられても歯切れが悪い。庇うかのごとく。
    推理小説ではあるが、殺人の犯人は意外だったものの、最後の結末が人情物になってしまったように思う。主役が福山雅治のままで演じて見えるのも良し悪し。

  • 久しぶりのガリレオシリーズ!
    今回は愛弟子に対する湯川先生に胸を打たれた。

    「科学を制する者は世界を制す」
    理系に疎い私には、何て傲慢で恐ろしい台詞なんだろうと思ったが、読後はこのイメージが見事にひっくり返った。科学を愛する者でなくても、湯川先生が愛弟子の為に、この上なく深い慈しみの心で対峙する場面に思わず涙した。

    主人公の姉に対して大賀仁策のとった行動は確かに非道なものだったが、大賀自身の胸の内が描かれていたのは、東野さんの読み手に対する配慮もあってだろうと思う。姉自身も相当の覚悟で愛人になっていたのだと気付かされた。

    とはいえ、弟の気持ちは晴れやかに癒えることはないだろう。ただ彼の今後の彼の将来を考えると、湯川先生の存在が救いであることは間違いない。父の意思を継ぎ、才能を生かして自分の道を歩んで欲しいと思った。

    ラストで草薙との友情が少し気に掛かったが、『森伊蔵』から始まり『オーパス・ワン』で終わってホッとした笑
    流石の東野圭吾さんだ。全く抜かりがない。
    終始安定して心を預けて読書に浸ることが出来た。

    科学や物理の要素もさほど難しくなく、ガリレオシリーズの中でも特にお勧めしたい一冊。

  • ガリレオシリーズ。今まで映像化してんのは、全て観てる!多分(ーー;)
    活字は、今回はじめてやけど、やっぱ面白いわ。
    映像から入ったので、私の脳内では、湯川准教授=福山雅治になってしもてる(^^;
    自身が完全な文系なんで、完全理系な部分は、少し???な部分はあったけど、科学のええとこは、分かったつもり。
    その科学を復讐の道具にはできん!
    弟子の間違いを改めさせようと湯川准教授は動くが最後は…
    クライマックスは、ドキドキして良かったけど、私なら禁断の魔術にしてしまいそう。

  • 2022年9月17日にガリレオSPドラマとして放送された。

    高校の物理研究会に所属していた古芝伸吾は、帝都大に合格し、先輩にあたる湯川に挨拶に来た。意気揚々としていた伸吾だが、その夜、最愛の姉が死亡したことを知る。その後大学は中退し、町工場で働いていた。一方、フリーライターの長岡がある日殺されているのが発見される。彼は大物代議士である大賀仁策のスキャンダルを狙っており、その大賀の元担当記者が伸吾の姉であることが分かる。慎吾は事件後行方をくらましてしまい…

    今回テーマになるのはレールガンだ。これは、フレミングの左手の法則によって得られる力(ローレンツ力)を利用し物体を加速、発射する装置だ。新材料の開発などに用いられる技術だそうだが、残念ながら兵器にも利用されようとしている。

    「悲しみは大きな力に変えることができる。だから科学を発展させた最大の原動力は人の死、すなわち戦争ではなかったのか」
    「科学技術には常にそういう側面がある。良いことだけに使われるわけではない。要は扱う人間の心次第。邪悪な人間の手にかかれば禁断の魔術となる。科学者は常にそのことを忘れてはならない」
    という台詞があるが、このことを胸に刻んでいる科学者が増えれば戦争は減らせるのだろうか?

    自分が新入社員の頃、自分が何をしているか理解をしながら仕事をしろ、と散々言われてきたが、伸吾の父親のように後悔しないためにも心に刻んでおきたい言葉だ。

  • 育ての親だった姉が死亡。
    大学を中退して町工場で働く古芝信吾を中心とした物語。
    フリーライターの殺人事件。
    そこから見えた街や代議士を含む様々な因縁。
    そこに信吾との関係とは。
    追っていくことに明らかになる謎。伏線回収は見事。
    ただ、姉の目的は最後まで自分にはよく分からなかった。
    全体的にはこれでよかったかなという終わり方だと感じました。

  • ガリレオシリーズは人気だから敬遠していたが、読むとやっぱり面白い。
    科学がトリックになっているのは、さすが東野さん。

    ラストで踏みとどまれたのも良かった。
    湯川の説得は心に響く。

  • 常々、東野さんは100ページくらいがちょうど良いと言ってはいるが、これくらいのページ数だとさらにお話が広く深くなって、より良いと思いました。
    レールガンって、ちょっと前に防衛省が採用するとかしないとかってニュースになってた気がする。
    湯川先生が実在していたとすれば、何としても阻止するだろうな。それはそれで、面白いお話がひとつ書けそうだ(笑)。

  • 決してつまらない訳ではないのだけれど、、、

    ガリレオシリーズが、素晴らしすぎて、
    その中と比較すると少し下がるかなぁと。

    でもドラマは見ます!
    そしてその後また読んだら印象変わるかも!

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著者プロフィール

1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学電気工学科卒業後、生産技術エンジニアとして会社勤めの傍ら、ミステリーを執筆。1985年『放課後』(講談社文庫)で第31回江戸川乱歩賞を受賞、専業作家に。1999年『秘密』(文春文庫)で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者χの献身』(文春文庫)で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、2012年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(角川書店)で第7回中央公論文芸賞、2013年『夢幻花』(PHP研究所)で第26回柴田錬三郎賞、2014年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。

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