悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)

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制作 : ピエール・ルメートル  橘 明美 
  • 文藝春秋 (2015年10月9日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167904807

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)の感想・レビュー・書評

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  • おそらく本作を読んだ人の90%は、『その女アレックス』でピエール・ルメートルを知り、そちらを先に読んでから本作に手を出したはず。本作はカミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズの1作目、『その女~』が2作目であるにもかかわらず、日本での刊行年がそもそも入れ替わっているのですから。そんなわけで、ネタバレしてもネタバレにはならないはず。

    会った相手がどこを見ていいか困るほどの小男、身長145cmの警部カミーユ。けれども美しいイレーヌと運命の出会いがあり、結婚。イレーヌは妊娠中で、夫婦は新しい命の誕生を心待ちにしている。そんな折り起こった猟奇殺人事件。しかも過去の未解決事件のうちのいくつかが、同じ犯人によるものだと判明する。キレもののカミーユは、新聞広告を通じて犯人を挑発、犯人もそれに応えるのだが……。

    犯人の手口は一貫性がないように思われていましたが、実は名作ミステリーに出てくる殺人の手法を事細かに再現したもの。ジェイムズ・エルロイの『ブラック・ダリア』、ブレット・イーストン・ エリスの『アメリカン・サイコ』など、取り上げられるミステリーに心が躍ります。とても面白い。

    しかし、この絶望的なオチ。『その女アレックス』を読んだ人が知っているように、イレーヌは母子もろとも被害者となります。凄絶なラストシーンに、カミーユが駆けつけてイレーヌもお腹の子どもも助かったという展開を望むのは普通すぎるのでしょうか。普通すぎてもいいからそうあってほしかった。

    期せずして日本での刊行年が前後した本作と『その女~』ですが、個人的にはそれでよかったのかもしれないと思えます。絶望のどん底に突き落とされたカミーユが、次作の『その女~』で復活することがわかっているからこのオチにも耐えられる。カミーユとイレーヌのなれそめも本作で知ることができ、これでもう一度『その女~』を読んだら、そこここで泣いてしまうかもしれません。

  • これは凄い作品だ。2作目の『その女アレックス』も凄かったが、『悲しみ~』は警察小説と言うよりは、本気ミステリである。しかもエンタメ要素ぶち込んだ系ミステリではなく、マジかよ…と言うミステリ。警察小説の様相の振りしたミステリである。凄いわー。チーム男子好きな人は読んでくれ、読めば解る。ヴェルーヴェン班の面々のやり取りがあうんの「チームワーク」で、滾るんだよ…資産家の息子で生活一切に困ってないのに刑事やってるハンサムで金持ちなルイが、真摯に警察の仕事してて博識で、あくまでも班員の一人、として描かれてるのがいい。
    ネタバレになるので書けないが、どこからが「小説」でどこからが「本編」なのか、今一度読み直してみないといけない。
    『その女アレックス』先に読んじゃったが、ヴェルーヴェン班もの第一弾のこのタイトルが深い悲劇に満ちているのは解っているのだが、読み進むのが止まらない。『ブラックダリア』『ロセアンナ』読んだ事ある人は絶対ハマる(ネタバレになるのでこれ以上言えない)。

  • 虚構と現実がうまく混ざりあっている技巧的な作品だ。前半はやや退屈だが二部以降で怒濤の展開となり面白かった。
    ただ技巧的過ぎるからだろうか、少々ご都合主義的なところが散見される気がする。上手いだけに盛り上げるためだけに用意されたようなタイミングのよさや詩的な表現、神秘的な情景がやはりこれはフィクションなのだと思い知らされる。スピード感が高まるのと同時にどこか冷めていく終盤。☆4はそれ故か。人間描写が薄いのもそれを後押ししているか。これがこの物語の「作者」の限界かもしれない。最後は「作品」に寄りすぎた感が否めない。

  • ヴェルーヴェン警部のデビュー作
    「その女アレックス」で、名前だけ出てきた、亡くなった警部の奥さんの事がわかる。
    最初の作品で奥さん惨殺されるというのは、かなり衝撃的です・・・主人公に厳しい(>_<)
    このときは、4人チームだったんですね・・・・
    マレヴィル・・・・・
    世に出ている小説の中の殺人を再現するという狂気。
    それは、自己顕示欲によるもの。
    実は、途中で、「犯人こいつやろ?」となんとなく予測がついたワケなんですが、ただ、まさか、そういう展開でくるか!?と。いや、もう、ホント、やられました。
    奥さんが、殺害されることは、「アレックス」を先に読んでいたために、分かっていたので、せつない気持ちで読み進めていったのですが、発見時、簡潔に描写されているだけというのが、逆にかなりインパクトを与えられました(>_<)
    最後の〆がアレで、ヴェルーヴェン警部にとって救いがないのではないかと思ってしまいますが、続篇を読めば、救いがあったのは分かります。ので、まぁ、許す。
    ルイ、アルマン、ル・グエン、カミーユを頼んだ!

    マレヴィル・・・・・・どうなった?
    *後日追記*
    その女アレックスを読み直してみたら、ちゃんと書いてあった(>_<)

  • あの『その女アレックス』の第1作。やはり、『その女アレックス』があまりに評判だったので、こちらの存在を知らずに、アレックスを先に読んでしまった。アレックスは第2作であり、その後に『傷だらけのカミーユ』と続きます。

    さて、本書ですが、カミーユ警部の元に1つの事件が。それは若い女2人が残忍極まるやり方で殺されていた。調べていくうちに、過去にも似たような事件があり、全てが小説に使われた犯行と類似していた。

    相変わらずの残忍性とグロい描写は冴えています。それにしても読後感は悪い。物語は面白く、どんどん先へ先へと読者を誘ってくれますが、それにしても救いが無さすぎます。
    でも、『傷だらけのカミーユ』は読まなきゃなぁ。その前に『その女アレックス』も読んでおくかf^_^;それがこの作者の魅力かも知れませんね。

  • 他の方々が書かれているように、「その女アレックス」を読む前に、こちらの本を読まれる事をお勧めする。ただし、心臓が強い方!
    順番逆で読んだ私は、最悪の結果を知っていたので「来るぞ来るぞ」と身構えながらこの本を読んだが、それでも十分に衝撃だった…、もし、知らずに読んだら、その救いのなさに打ちのめされたかもしれない。プロットに既視感があったが、気にならなかった。
    特に前半の事件はあまりにもおぞましくて震えがきた。何とか最後まで読めたのは…ルイが素敵だったから(?)このシリーズもう1冊あるけど…ちょっと休んでからにしよう(汗)

  • 先に訳出されていた『その女アレックス』を読んでおり、イレーヌがどうなるかということを知っていたので、作家の描写力は気になったものの刊行されても読む気にはなりにくいよなぁと思っていましたが、つい気になって図書室から借りてきました。詳細を覚えていたわけではないけど読み出して主人公のカミーユの人物像にこんな風だったか?と違和感。それでもぐいぐい読ませる筆致でその違和感は気にならなくなったのですが終盤になって、そうだったのか!っと驚愕。やられました。二重三重に驚かされてあっという間に読了。読後感はけしてスッキリとはいかないものの、カミーユと同僚たちの人物像の描写が素晴らしくて読み応えがしっかりあって、満足。でも一歩引いて作品世界を見てみると、犯人の動機はよくわからず、そこはもやもや感が残りました。

  • 「その女アレックス」で賞を総なめにして注目を集めた作家。
    カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ、こちらが1作目になります。

    のっけから怖い事件が起こり、筆力で圧倒する勢い。
    よくある?連続殺人物、というには仕掛けも大胆なので、油断できません。

    捜査陣は個性的で、高名な画家を母に持つ超小柄な警部。
    巨漢の上司。
    富豪の出で何を思ったか警官になったハンサムな部下。
    対照的にしみったれた部下、など‥
    さすがフランスという、しゃれのめした雰囲気が漂います。

    外見にコンプレックスを抱き、ほとんど女性には相手にされないできた警部補が運命の女性に出会う。
    このくだりは、ほほえましく、感動的。
    それだけに‥とんでもない展開が衝撃なんですが。

    新聞記者や犯罪小説の専門家、古書店主なども登場して薀蓄をかたむけ、ミステリマニアの心をそそる部分も。
    しかし‥
    ★五つはちょっとつけられない読後感。
    一般の人向けには★三つ。
    ミステリを大量に読む人なら、はずせませんけどね(笑)

  • 「その女、アレックス」を先に読んだ後の読了。面白かったけど、グロテスク。。とはいえ、ベースのストーリーや優秀な警官が追い詰めていく姿がとても骨太に描かれていて、ページを繰る手がなかなか止まらない。
    さわやかな読後とはとても言えない結末ではあるものの、それでも、氏の別作品を手に取りたいと思う魅力がある。

  •  何とあの大逆転作家にしてフレンチ・ミステリの新星、ルメートルの本作はデビュー作にして、カミーユ・ヴェルーヴェンの初登場作である。ヴェルーヴェンは、『その女アレックス』に登場して、おそらく記憶に留められたであろうキャラクターである。何と身長が145㎝しかないという身体的特徴が際立っていながら、非常にやり手の殺人課警部である。

     四作目に当たる『その女アレックス』に続いて、二作目の『死のドレスを花婿に』が文庫邦訳(単行本では既に邦訳済み)され、立て続けに本書と、ミステリーではないが『天国でまた会おう』が昨2015年に邦訳されている。注目度抜群の作家が日本への進撃を開始したと言っていい。

     それにしてもこれまでの二作で、あまりの逆転劇ぶりに驚き呆れた読者も、まさかデビュー作でしかも邦訳第三弾で、同レベルで超のつく逆転劇をやってくれることはないだろう、そんな姿勢で臨んだ本書だが、二度あることは三度ある、この作家はやはり凄かった。いつも読者としては手玉に取られる感を否めないのだが、まさに本書の読者は、作家のもはやあやつり人形と化すだろう、としか言いようがない。

     映画『シックス・センス』などで行われる衝撃のラストに出くわした観客は、もう一度最初からこの映画を観たくなる。ぼくの場合、その仕掛けを解説してくれるメイキング映像までたっぷりと見て、その仕掛けの深さ、凝りように、呆れ返り、匙を投げたものだった。それと同様の驚きが、本書にもしっかりとたっぷりと仕掛けられているのだ。

     仕掛けを警戒しながら読み進んでいるのに。あらゆる想定をしつつ読み進んできたのに。それでも騙される、これはもう快感としか言いようがないのである。やはりページを戻して、どこがどうだったのか確認したくなる。何が真で、何が虚なのか、見極めにくいところをチェックにかかる。

     イリュージョンのような大仕掛け小説。ヴェルーヴェン警部とその部下たちの個性にユーモラスに笑わせられながら、彼らに残虐な挑戦を仕掛ける犯人の素顔に迫る緊迫感。小説家を名乗るシリアル・キラーの断章が挿入されつつ、物語はジェットコースターのように大瀑布のような逆転の断面に滑り込んでゆく。やはり、これぞ快感、としか言いようがないのだ。

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悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)の作品紹介

『その女アレックス』の刑事たちのデビュー作連続殺人の捜査に駆り出されたヴェルーヴェン警部。事件は異様な見立て殺人だと判明する…掟破りの大逆転が待つ鬼才のデビュー作。

悲しみのイレーヌ (文春文庫 ル 6-3)のKindle版

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