色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 (文春文庫 む 5-13)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167905033

作品紹介・あらすじ

多崎つくる鉄道の駅をつくるのが仕事。名古屋での高校時代、四人の男女の親友と完璧な調和を成す関係を結んでいたが、大学時代のある日突然、四人から絶縁を申し渡された。何の理由も告げられずに――。死の淵を一時さ迷い、漂うように生きてきたつくるは、新しい年上の恋人・沙羅に促され、あの時なにが起きたのか探り始めるのだった。全米第一位にも輝いたベストセラー!

感想・レビュー・書評

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  • 自分が選んだ以上、後戻りはできない。
    多崎つくるもその友人達も定められた場所で、それぞれの道を歩み続ける。
    後戻りができない哀しみを胸に抱えながら。

    この小説はある意味、村上春樹らしくなかった。スピーディな展開。いつも楽しんでいる遊びの比喩も少ない。でも、しっかり深みがある。東京、名古屋、浜松、フィンランドと物語は横断し、かつ哲学的だ。

    個性的であろうとして自分を見失うより、自分が心地よいと思う方を選んでいけばいい。そうすれば自ずと個性は生まれる。そんな勇気をもらえる。

    自分だけが傷ついているのではない。相手も同時に、あるいは違う相手を傷つけているかもしれない。

    私が一番好きな場面はフィンランドで旧友に再会する場面。「すべてが時の流れに消えてしまったわけじゃないんだ」
    どんな諦念が頭をもたげても、信頼とか希望という言葉を心のどこかで信じられるそんな気がした。

    終点を迎え、あたたかい風がほんの少し吹いている。

  • 村上春樹さんの作品の中ではかなり読みやすい方だと思う。

    現実的。

    見上げれば月の横にもうひとつの月があったりすることもないし、意味深な井戸もないし、変な鳥も鳴かないし、絵の中のおっさんがボヨヨヨーンと出て来て話しかけてくることもない。

    特に暗喩らしいものもない。
    読みやすい。スラスラいける。

    途中まではミステリーっぽかったけど、まあさすがに真犯人とかは出てこない。
    なんとなく終了。

    読み終わっても特に何も心に残らなかった。
    初期の作品の方がやっぱり好きだな。

    作者の主人公はだいたい女によくもてて、経済的にも恵まれてる人物が多い。

    あー、うらやましい_(:3 」∠)_

    • 1Q84O1さん
      ひま師匠、春樹読め!
      命令ですw
      ひま師匠、春樹読め!
      命令ですw
      2023/12/04
    • ひまわりめろんさん
      (゚Д゚)ハァ?
      これで十分だわ!
      だいたい『さよなら、愛しい人』なんてタイトル付けてる時点でセンスないわ!
      お前がハードボイルド語るなよっ...
      (゚Д゚)ハァ?
      これで十分だわ!
      だいたい『さよなら、愛しい人』なんてタイトル付けてる時点でセンスないわ!
      お前がハードボイルド語るなよって感じだわ!
      全ハルキストを敵に回す所存だわ!
      2023/12/04
    • 1Q84O1さん
      これが後に語られることになる「村上めろん戦争」の幕開けである…
      これが後に語られることになる「村上めろん戦争」の幕開けである…
      2023/12/05
  • 村上氏の本は他にも読んだような気がしたが、初めてのようだ。アカデミー賞で話題になった作品も村上の作品とこの本を読んでから調べて知り、偶然に驚いたところ。ノーベル賞候補に毎年なっていることから読んでみたというところ。
    この作品はタイトルが不思議で、読み進める内に理解してくる。自殺願望から始まり、持って行き場の無い絶望から始まる。そこを抜け出したと思ったら、また色に関係する友人ができる。夢のような体験があり、現実感のないままこの友人との別れが訪れる。これが疑問のままで終了。
    10数年経過し新たな恋人の勧めで、過去にあった出来事の解明に乗り出す。色の付いた名前の友人達と絶縁となった理由を聞き回るが、肝心の証言者が死んでいて真相が不明。誰が殺したかも不明。新たな恋人の陰に見える男性の正体や、これから二人の将来も不明。何だか疑問が数多く残されてフラストレーションが溜まるのだが、このような意見は少数派のよう。哲学的な内容とフィンランドのような映像美が良いのだろうか?

  • やっぱり村上春樹はいいなあ。

    この文章を読むと一気に引き込まれるんだよね。

    ストーリーとしては、
      わざとかよっ!!
    てくらいに全く伏線が回収されないし(笑)。

    でも、それがいい。
    自分の中でその伏線の描かれた背景を想像する。
    これがハルキストとしての愉しみ方ですよ。

  • 「そのとき彼はようやくすべてを受け入れることができた。魂のいちばん底の部分で多崎つくるは理解した。人の心と人の心は調和だけで結びついているのではない。それは傷によって深く結びついているのだ。痛みと痛みによって、脆さと脆さによって繋がっているのだ。悲痛な叫びを含まない静けさはなく、血を地面に流さない赦しはなく、痛切な喪失を通り抜けない受容はない。それが真の調和の根底にあるものなのだ。」

    高校時代に仲の良かった4人と40前にして再会していく話。

    昔の友人のその後、あの当時はわからなかった不思議、謎と対決する……なんとなく中学ぐらいの時分に読み漁ったスティーブン・キングを思い出した。
    村上春樹の数ある主人公……カティーサークを飲み、パスタを茹で、サンドイッチを丁寧に作り、女の子と寝る……そんな主人公たちの中でわりと多崎つくるに好感が持てたのは文頭の引用部分と下記の部分があったためだと思う。

    「正しい言葉はなぜかいつも遅れてあとからやってくる」

    遅れてやってくるのは少なくとも探し続けているからなのだと思う。

    読めと勧めてくれた友人に感謝したい。

  • 独特の世界観ですね。
    読んでいるとストーリーに魂をもっていかれる感じがします。
    現実と空想の狭間というか、フィクションとノンフィクションの間とでもいうのか。
    言葉にすることが難しい世界観がありました。

    以下本の抜粋になりますが、まさにそんな感じです。
    ”どんな言語で説明するのもむずかしすぎるというものごとが、私たちの人生にはあります”(抜粋)

    高校時代に5人グループに所属していた多崎つくるが、ある日他の4人から縁を切られる。その理由を探すべく、昔の仲間に会いに行く、というお話。
    途中、ミステリっぽさも出てくるのですが、それはあくまでスパイス的な要素になっていて、それ自体はそんなに意味はないんですよね。
    (多崎つくるが脱皮する要素に謎解きは必要ない)

    何故つくるは4人から縁を切られたのか。
    その理由がつくるの中で腹落ちした時、過去のしがらみから解放されていきます。
    昔の仲間に会い、縁を切られた理由を知ることはつくるにとって失われた過去を取り戻すための行動だったのかもしれません。しかし、実際に仲間と会い、懐かしい日々は戻らないことを突き付けられます。この儀式があってこそ、つくるは次の一歩を踏み出すことができたのだと思いました。

    うーーーむ。ふわっとした感想だなぁ。笑

    「ノルウェイの森」の雰囲気に似ていると思たのは私だけでしょうか?メンタル疾患の女の子が出てくるからそう感じるのかなぁ。
    しみじみ。

  • いつか読む、と決めていたからこそ、あえて本書の情報入れないようにしていた。
    本屋で平積みされていたのも覚えているし、私自身いつ読むんだろう、と思ってた。
    だからいざ読み始めたら、主人公と同い年なのに驚いた。
    そんな共通点に限らず、今の自分に必要、という最高のタイミングで出会えることがあるから読書はやめられない。

    村上春樹さんは、「ノルウェイの森」を2回読んだくらいで、私にとって馴染みのない作者。「ノルウェイの森」の衝撃が強すぎて、以降読めなかった。でも、「ノルウェイの森」は3回目をきっと読む。好きか、と聞かれると、そうではない、と答えてしまうのに、囚われてしまう。読むたびに解消度が上がる。1回で全貌を見せてくれない。いや、こちらの力量が足りなかったのだ、と思う。

    ひんやりとした深い孤独に包まれた精神世界。読むと現実世界に戻ってくるのに時間がかかるので、なかなか手を伸ばせなかった。
    読み終わってタイトルを見てみると、随分詰め込んだものだ、とにやりとしたくなる。
    調和のとれた固い結びつきの5人グループで、唯一名前の色を持たなかった青年。それが、多崎つくる、だった。

    他の4人は、赤松慶、青海悦夫、白根柚木、黒埜恵里、とみな名前に色を持つ。
    本書はニューヨークタイムズベストセラー第1位らしく、世界的にも人気な村上春樹さんだけど、漢字がある日本だからこそ、この色のついた名前にまつわる面白さがわかるんじゃないか、なんて思って英訳を少し読んで自分の過ちに気付いた。
    Two boy’s last names were Akamatsu—which means “red pine” – and Oumi – “blue sea”, the girls’ family names were Shirane – “shite root” – and Kurono – “black field.”
    正直、日本語では赤、青、白、黒、と名前の色だけに注目していたから気付かなかったけれど、英訳されたものを見て初めて、なんて格好良い名前なんだ、と驚いた。英訳されることも念頭に置いて書かれたんだろうなあと、感動した。

    内容としては、謎が謎のまま残されていて、あれはいったいどうなったんだ?!のオンパレード。続きが気になって読み進めていただけに、読了後はもやもや。ただ、実際のところ全て種明かしされてスッキリ!なんて、現実の世界ではないよな、とも思う。

    読むのには、まとまった時間と心に余裕が必要でした。

  • 村上春樹さんの作品は、とてもリ読み心地がよく、スッと体に入ってくる感じがして、とても好きです。
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • 村上春樹らしいと言えばそうでしょう。
    シロの死に方。
    灰田の父親の体験談。
    クロに会うためフィンランド渡航。
    つくるの性夢。
    沙羅への想い。

    ホントにつくるは何者なのか。。。
    この小説は何なのか。。。

  • 性夢‥‥要る‥‥?しかも未成年との‥‥?

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著者プロフィール

1949年京都府生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。79年『風の歌を聴け』で「群像新人文学賞」を受賞し、デビュー。82年『羊をめぐる冒険』で、「野間文芸新人賞」受賞する。87年に刊行した『ノルウェイの森』が、累計1000万部超えのベストセラーとなる。海外でも高く評価され、06年「フランツ・カフカ賞」、09年「エルサレム賞」、11年「カタルーニャ国際賞」等を受賞する。その他長編作に、『ねじまき鳥クロニクル』『海辺のカフカ』『1Q84』『騎士団長殺し』『街とその不確かな壁』、短編小説集に、『神の子どもたちはみな踊る』『東京奇譚集』『一人称単数』、訳書に、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『フラニーとズーイ』『ティファニーで朝食を』『バット・ビューティフル』等がある。

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