名画の謎 旧約・新約聖書篇 (文春文庫) (文春文庫 な 58-4)
- 文藝春秋 (2016年3月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167905781
作品紹介・あらすじ
難解な宗教画が一気に魅力的に!矛盾があるからこそ名画は面白い! 「創世記」からイエスの生涯、「最後の審判」などのキリスト教絵画を平易かつ魅力的に解説。
感想・レビュー・書評
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旧約・新約聖書の数々の場面を描く名画たちを解説している。聖書を引用しながら詳しく説明してくれるので、絵画の内容とともに、キリスト教についても理解がすすむ。旧約・新約聖書、ともに矛盾する記述や、無茶苦茶だと思う記述が頻出するし、それが絵にも表れている。それに対する中野京子さんのツッコミがいちいち笑えて仕方がない。最初のアダムとイブが生まれるところから、矛盾だらけ。一緒に作られたの?それともアダムからイブは作られたの?「阿呆のままで楽園に閉じ込められ、死ぬこともできない身のどこが面白いのか」というツッコミなど、そうだそうだと思う。カインの妻など、勝手に湧いてくるし、アブラハムの酷い男ぶり、ヤコブの母たちが平気で人をだますのも、神やいろいろな人物たちのえこひいきの余りの多さ、どれもやれやれである。ユダヤ人の排他的なところや恨みの歴史が旧約聖書に反映されているとしか思えない。新約聖書に関しては、マリア信仰、マグダラのマリアなど聖書にないことまで想像力豊かに、絵画が描かれている。
とにかく、この本は読み物として最高に面白い。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宗教画の理解のために。
宗教画の鑑賞時に、その素晴らしさは分かっても、
聖書の何の場面かが分からなかったので....
アトリビュートとか勉強になった。
合わせて「名画と読むイエス・キリストの物語」も読むと、より宗教画の理解が深まった。
ティソ作「十字架上のキリストが見たもの」
イエスが最後に見たであろう景色を思うと、
胸に迫るものがある。 -
大変興味深く読んだ。
歯に衣着せぬ作者はだいぶスキ。
ボスの絵はブラック。やっぱり好き。 -
絵画鑑賞をする中で、必ず出会う聖書をテーマにした作品たち。
しかしクリスチャンではない人は、そこまで聖書を読み込んでなければ深くは理解できないもの。
そこにこの本を読めば、魅力的に感じた絵画をもっともっと楽しめるはず。
わかりやすく、他の作品(絵画にとどまらず映画・オペラも)を引き合いに出して語ってくれるので、時代背景含めて面白さが増します。
実は聖書に書かれていないキリストの誕生日が、受胎告知からの逆算で12月25日にされてるのがへぇ〜!でした。
中野京子さんの文章は中毒性がありますね。 -
絵画鑑賞の予習・復習に役立つ。
なんとなくわかったつもり(読みながら、全くわかってなかったと気づく)だったことを、へ〜!! そういう意味だったのかと勉強になりました。でも、いかんせん、キリスト教になじみのない「八百万の神をもつ日本人」なので、きっとすぐに記憶は薄れ、復習に何度も手にとる1冊になるハズ。 -
宗教美術にものすごく心惹かれます。
特にキリスト教。
沙羅双樹の下で涅槃に入った彼より。
我が国に八百万おわす神々より。
なかなかヘヴィな無理難題押し付けてくる唯一神とその周辺の人々の方に、魅力を感じるんですよねー。
支離滅裂にしか見えない言動オンパレードなキャラクタ大放出!な新約・旧約聖書が、絵画になった途端に一切のツッコミを受け付けない神聖さをまとっちゃう感が、すごく…好きなんです…←言い過ぎ
執筆当時の権力者の本意に沿って書かれてる感も興味深いし、聖人のモチーフを教会の意に沿ってしっかり描写しながら実はそれとは相反する画家の寓意もこっそり書き込んでるっていう解釈とかも好きやねん。すごくミステリーしてんじゃねーか!ってなんねん←結局それ
いつかまたイタリアとバチカンに行って、宗教絵画見たいなぁ。特にシスティーナ礼拝堂、あの空間にまた身を浸したい。
県立博物館様、浦添美術館様、
どうかどうか、とりあえず題は問いませんので宗教絵画をキュレートして頂けませんか。
印象派展観に行った時にリクエストしてみよっと。
【それ知らんかったわ〜おもろいわ〜なとこだけメモ】
・唯一神の筈なのに、「われらに似せて人をつくろう」って何でやねん。
・アダムの臍問題
・神はなぜ、アベルを贔屓したのか?(供物に差があった?)
・ノアの箱舟後の神「もう洪水で人類滅ぼしたりしないよん」→ソドムの町…
・バベルの塔は、何故神の怒りの対象になった?(その他の教会群は許されたのに)→ユダヤ人は、彼らの王国を滅ぼしたバビロニアがめっさ嫌いだった(バビロン虜囚)。
→→タロットカードの「塔」は、バベルの塔がモチーフ。正位置逆位置どちらもネガティヴな意味になるのは塔だけ。
・妻をファラオに献上し、息子イサクを神に供物として捧げ、エジプト人の侍女ハガルとの間に成した子イシマエルを砂漠へ追いやったアブラハム氏←
・イサクの息子ヤコブの騙し騙され周辺事情。
・旧約聖書で描かれる親子の物語の軸にあるのは「えこひいき」。
・ユダヤのヒロイン、ユーディト。アッシリア軍の将軍の首を切断!かのサロメとは、剣と大皿で見分けられる。
・描かれた人物たちは、アトリビュートが無ければほとんど断定が難しい。ex.ペテロは短剣、ユダは淡黄色 -
中野京子さんの「名画の謎」シリーズ。
旧約、新約聖書をめぐる神話の数々をモチーフとした絵画をまとめた一冊。
宗教画と聞くと、とっつきにくいイメージを多くの人が持っていると思う。絵画は風景画や、印象派の時代が好きな私も、ちょっと宗教画は敷居が高く感じる。
だけど、この本はそんな人たちにもとても分かりやすく書かれている。
旧約聖書、新約聖書の違いから、そのメイン登場人物や主な役割、など、巻頭で人物相関図もカラーで掲載されており、ビジュアルでまずすぐにその全体像が理解できる作りになっている。
旧約聖書ではアダムとイブ、アブラハム(この人はなかなか食えない人物である)、サムソンとデリラなど。
新約聖書ではイエスキリストとその周辺人物。
バベルの塔、受胎告知、キリストの洗礼、最後の晩餐、ユダの接吻、聖母被昇天、最後の審判、など、聖書の歴史の流れに沿った有名シーンの絵画が20作品掲載されている。
ブリューゲル、レンブラント、ドラクロワ、ルーベンス、ボス、ダヴィンチ、カラヴァッジョ、デューラー…など、1300年代から1800年代まで、描かれた時代自体は前後しながら行き来していく。
宗教画というのは、時代を越えて書き継がれて来た重要なテーマなんだな、ということがよく分かる。
一つ一つの神話のエピソードも、中野さんが端的に分かりやすく、現代風にツッコミを入れてくれながら解説してくれているので、その流れが頭にすんなり入ったし、面白かった。
ルーブルやウフィッツィ美術館で小難しい絵を素通りしてた過去の自分がもどかしい…。この本を読んでから行けばよかったな。
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久しぶりの中野京子さんの本ですが、こんなに面白かったかというくらい面白い。全体的には旧約のほうが神話的色が強く魅力的だ。女の子たちがいいですね。デリラ、ユーディト、サロメ、マグダラのマリア。
ルーベンスのデリラの表情や、ロセッティの赤毛の(聖母)マリア、クリムトのユーディトII/ サロメが好きです。
聖書そのものは、旧約はアブラハムの途中で挫折、新約はマタイとルカだけ読みました。外科医であったルカの視点では、他の福音書と比較して客観的に物事を捉えているからとおすすめされたからと記憶してます。
King James版の古めかしい珍しい聖書でとても気に入っていたのに引っ越しの時に置いてきたのか手元にない。残念。
宗教改革は学校で習った通り、腐敗した教会を建て直すための、つまり暗に良いこと、と刷り込まれていた(わたしだけ?)けれど、この前の神の代理人にアルプス以北の鬱々とした天気のもとで暮らしている人間の考えることは、陽光眩しいイタリアにいる人たちの考えより陰鬱でこれからの暗い世の中になる、みたいな記述を思い出しました。どちらにしろ人間の命は大切にしてほしい。
なんの映画だったか、なるほど無からこの世を創ることは物理学的に可能であることは証明済みだ、だが無から何かを作る意思は物理学では説明できない。その意思こそが神である。という話があって、この考え方もとても好きだと思いました。ただ時間経っているので少しずれているかもしれないです。
やたら潔癖さを求められる、でもそうもいかないよね、という話が繰り返されることでだめなところがあってもいいんだよと言われているみたいなのがいいですね。面倒くさくてもいいんですよって言ってほしかったんですよ!
5/16/2021 -
安定しておもしろいシリーズ。旧約聖書はアダムとイヴに始まり、多くの人が登場してややこしいと思っていたけど、絵画作品と中野さんの解説になると、すっと入ってくるのがすごい。作品としては、磔刑にされたイエスからの視点で描かれたものが印象深かった。
ただ、他のシリーズで解説済みの作品は名前のみの登場だったので、全部載せてくれればなぁ、と。 -
中野京子さんの本をたくさん読んできたおかげで、宗教画と聖書についても知識がついてきました。それでも忘れてしまうので復習が必要です。怖い絵シリーズでも登場した名画もあって思い出せました。知れば知るほどハマる!