死神の浮力 (文春文庫 い 70-2)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 542
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  • Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906474

作品紹介・あらすじ

シリーズ累計115万部、大ヒット作待望の文庫化!娘を殺された作家は、無罪になった犯人への復讐を計画していた。人間の生死を判定する〝死神〟の千葉は、彼と共に犯人を追うが――。

感想・レビュー・書評

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  • 娘を殺された山野辺夫妻は、無罪判決を受けた犯人・本城への復讐を計画。そこへ死神で調査部員の千葉が山野辺のもとへ訪れ【死】の可否判断を行う。復習は成功するのか?そして山野部自身の【死】の判定は?死神と人間界のやり取りが描かれた長編ミステリ。

    前読「死神の精度」に続き連読。
    今から674日前の私に『小説読むのなら伊坂幸太郎だったら大方間違いないよ』と薦めてくれた友人に心から感謝したい。

    伊坂幸太郎、恐れ入った。
    本作品、500ページを超える作品だったため、若干の中弛みはあったものの総括面白かった。連作短編だった死神の精度も良かったが、長編もしっかり楽しめた。

    本作は死神の千葉が7日間の調査によって対象者の死に可否を下す…という設定から、Day 1〜Day 7に加えプロローグとエピローグで構成されている。

    人気作家・山野辺の小学生だった娘が毒殺、しかし犯人の本城は証拠不十分により無罪判決。司法の裁きではなく、自らの手で制裁を企てる山野辺夫妻のセリフに行動に、娘を持つ親として感情を持っていかれた。作中には愛娘が死するまでの描写もあり、なかなか辛かった。

    ただ、その中でも救いは山野辺夫人の存在だ。
    時に主人と共に怒りと悲しみを共有しつつ、主人や千葉と冗談を交えたトークにはホッコリさせられた。何よりサバサバとした性格が良い。素敵なご婦人なのである。

    そして、本作最大の魅力は死神の精度からブレない死神・千葉の一貫したキャラ設定だ。

    過去に参勤交代の経験談を語るシーンは、思わず声を出して笑ってしまった。そして如何なる苦境のシーンでも『ところで音楽は聴けないのか』と気にするところは、もはやコメディである。

    一方で前作に続き本作でも、数多くの千葉語録があった。

    愛娘との思い出を回想し涙を流す運転中の山野辺に対して千葉が放つ。

    「目にワイパーでもつけておけ」

    慰めより沁みる。

    「絶対と言い切れることがあるとすれば、人は死ぬ、ということだけだ。人は必ず死ぬ」

    知ってる。知ってるけど沁みる。

    そして、夫婦の復讐劇の顛末、山野辺の8日目、エピローグどれも秀逸過ぎて善きが過ぎる。

    千葉が憑く対象者も、そして読者はある種死神に救われる物語なのではないだろうか。取り分け私個人としては今もなお感慨に耽る作品である。


    そろそろ今秋に受験する資格試験勉強の準備をはじめなければいけないこのタイミングで、また好きな著者が1人増えてしまった。本棚にずらりと並ぶ未読の伊坂幸太郎作品たち。さて困った。さてはて困ったぞ。

    • Kaniさん
      akodamさん、頑張れ!!
      (๑•̀o•́๑)۶ FIGHT☆ͦ
      akodamさん、頑張れ!!
      (๑•̀o•́๑)۶ FIGHT☆ͦ
      2022/06/05
    • みたらし娘さん
      akodamさん✩
      こんばんは!いつもありがとうございます(^^)
      【死神の浮力】読み終わりました〜!
      参勤交代、わたしも笑いました笑
      千葉...
      akodamさん✩
      こんばんは!いつもありがとうございます(^^)
      【死神の浮力】読み終わりました〜!
      参勤交代、わたしも笑いました笑
      千葉のキャラだからこその面白さですね笑

      面白さだけじゃなくて、犯人の怖さとか、死への考え方とか、最後は切なさもあってとても楽しめました!
      ありがとうございました(*´ω`*)
      2022/06/19
    • akodamさん
      みたらし娘さん、おはようございます!

      本作、読み終えたのですね!
      長編故の感情のアラカルトを、みたらし娘さんと同じように私も堪能しました。...
      みたらし娘さん、おはようございます!

      本作、読み終えたのですね!
      長編故の感情のアラカルトを、みたらし娘さんと同じように私も堪能しました。千葉シリーズ、続編してほしいです。゚(゚´Д`゚)゚。

      コメントとご報告ありがとうございました^ ^
      2022/06/20
  • 伊坂幸太郎さん「死神シリーズ」の2作目。前作は短編集だったが今作は長編。

    登場人物は前作同様、死神の千葉。今作品はテーマである「死」についてより濃厚に描かれている。

    愛しい愛娘を殺されてその復讐劇が物語の本線。
    この作品の面白い導入だなと思ったのが娘が殺された「罪」に対しては裁判で無罪という判決が出た直後、そこから別で「死」に対しての可否が始まるというところ。
    その「可否」の調査する死神千葉の調査対象は復讐を企てる山野辺、ということは「死」は山野辺に訪れるというのが見える。復讐される本城の方にも別の死神がついており本城も死の間際。
    序盤でこの展開が繰り広げられており、どういう結末になるのか?色々推測しながら読み進めた。途中で出てくる色んな人物が怪しく感じられる、箕輪しかり小木沼しかり。そういう目線で読んでいた為、すっかりミステリーの心構えで読んでしまった。どちらかというとファンタジーに近い物語だった。

    テーマは「死」、人間目線と死神目線と条理目線で描かれていく事で不思議なファンタジーになっていく。通常、死=怖い物と捉えられるが、愉快な死神が仕事として死の可否を調査しにくる時点でそれはかなり和らげられている。そして死は当然であり、絶対的な物であるという条理。上手く物語に愉快にポップにのせていて、流石伊坂さんだなと思わされる。

    最後、エピローグにて山野辺の作品は初期作が良かったという者に対して「晩年も悪くなかった」と千葉。山野辺の千葉と過ごした最後の7日間をそう答えている。素敵な台詞だなと思った。

    千葉が最後、新たに調査しにきたのは美樹なのではないか?
    自分はそう読みとりたい。
    そして是非千葉の手で「可」を、前向きで幸せな「死」の判決を与えてもらいたい。
    山野辺と愛娘のいるであろう別の世界で今度こそ新たな幸せを、そうあってほしい。

  • シリーズ第2弾!

    相変わらず、千葉さん、おとぼけ度満載で、すっ飛ばしてる〜
    ええ感じ。

    その人間に死を与えるべきかどうか、死神たちが7日間で、「可」 or 「見送り」を判定!
    でも、適当に決める死神多く、「可」ばかりで、早死に多く、「還元キャンペーン」で、「見送り」推奨!って…
    そんなんで、判定されるの嫌や〜!
    まぁ、別に、何百年も生きたいとも思わんけど、それなりの年齢でお願いします〜m(_ _)m

    主人公の死神 千葉さんは、真面目に仕事するんで、そんなことは、ございません!
    今回は、娘を殺された作家さんが対象!殺した犯人は、頭は切れるが、人の心が分からんサイコパス!
    「死神 VS サイコパス」って銘打って、売り出してたな。

    しかし、ゲーム感覚で、人追い込んで楽しむとか訳分からん〜
    こういう人こそ、「可」にしてや〜!
    でも、「見送り」でも良かったのかもね。(その辺は、本読んで!)

    おとぼけながらも超人で、人とどっか違う千葉さん!面白い!
    続編出ないかな〜!

    面白いけど、人はいずれ死ぬということを再認識はする。
    それまで、どう生きるかも自分次第。
    う〜ん…どうしよ…
    やっぱり、何も考えんと楽しく生きよ〜!(^-^)v






    「……勝手にわたしたちが思っているだけで、保証はないかもしれない。絶対と言えることなんて」
    「絶対と言い切れることがあるとすれば、人は死ぬ、ということだけだ。人は必ず死ぬ」


    「どうせ死ぬのだから、今この瞬間を楽しめ」(こっち推し)

    • ultraman719さん
      2冊ではなく、50冊ぐらいはあるかな?
      2冊ではなく、50冊ぐらいはあるかな?
      2024/03/15
    • yukimisakeさん
      ultramanさんは積み読の神だから…笑
      ultramanさんは積み読の神だから…笑
      2024/03/15
    • ultraman719さん
      神様の言うこと聞きなさい!
      神様の言うこと聞きなさい!
      2024/03/15
  • 死神シリーズ第2弾

    娘を殺された山野辺夫妻が自らの手で殺人犯の本城に復讐をしようとする。しかし、良心を持たないサイコパスな本城は山野辺夫妻より一枚も二枚も上手で、、、そして、その復讐に千葉が死神の仕事として同行する。
    最初は山野辺夫妻の心情や世間、記者達の態度が辛くて、なかなか読み進められなかった。しかし、千葉の少し?ズレた会話や態度に心が少しづつ軽くなり、何より、どんどん加速するように進んでいく話と次々に回収される伏線が軽やかで最後は一気に読んでしまった。
    自転車で追いかけるシーンがハラハラしつつも笑ってしまった。
    死神だけが知る本城のラストに溜飲が下がると共に恐ろしさもあった。きっと本城は20年の間、山野辺に言われた最後の言葉を思い続けるのだろうなぁ。

    読みながら「人間」や「死」について考えさせられる。すごく重いテーマだが、千葉と山野辺夫妻のなんだか噛み合ってるようで噛み合わない会話にまた少し心が軽くなる。

  • 終始続くズレがたまらなく面白いです。人のために面倒くさいことしたいですよね。敬意です。

  • 死神シリーズ第2弾♪
    今度は長編。
    我が子を殺された両親とサイコパスとの対決。
    個人的には第1弾よりこちらの方がさらに好きだった\♡︎/

    内容自体はなかなか重いのだけど、千葉(死神)の存在が緩和剤になって眉間にシワよることなく面白く読めた。
    ほんと千葉のキャラ好きすぎる〜!
    いったい何年前から死神やってるんだろう。
    時代錯誤な単語が飛び出してきてはクスクスさせられる。

    強烈なサイコパス。
    山野辺夫妻の気持ちはすごく分かるけど、やっぱりサイコパスに立ち向かうってそんな簡単にはいかないもんだな〜。
    なんだかんだ言って、千葉が無自覚にも力を貸した結果だと思う。
    ラストはやはりというか、望んだものとは違って切なかったけど山野辺さんらしくて好きでした。
    あと山野辺さんのお父さんの話も良かったな〜!

    シリーズまだ第3弾はないけど、いつかまた千葉さんに会いたいな〜\♡︎/

    • 1Q84O1さん
      mihiroさーん♪
      千葉さんにハマっちゃったみたいですね!
      3弾出るといいですね!
      mihiroさーん♪
      千葉さんにハマっちゃったみたいですね!
      3弾出るといいですね!
      2023/06/14
    • mihiroさん
      1Qさ〜ん(^^)
      千葉さんにハマってしまいました!
      ほんと第3弾伊坂さん描いて欲しい〜〜♡
      1Qさ〜ん(^^)
      千葉さんにハマってしまいました!
      ほんと第3弾伊坂さん描いて欲しい〜〜♡
      2023/06/14
  • 死神の第2弾。今回は長編でやや長いが面白かった。死神の千葉と山野辺夫妻の会話のズレが楽しめた。シリアスな状況なのに。
    「死」に関しては考えさせられる。特に病気の場合、必死にあがらうのか受け入れるのか。自分ならどうするだろう。

  • 死神シリーズの続編。
    私は死神の千葉さんの大ファンです。千葉さんのとんちんかんな返事に今作品もたくさん笑わせてもらいました。

  • 司法を頼らず復讐計画する山野辺夫妻とサイコパス犯人戦い。人に絶望を与え嘲笑う犯人の罠で被害者遺族から容疑者になりピンチ。今回,死神判定に見送・可以外に寿命還元キャンペーンがあり侮れない。

  • 対象の人物を調査し、
    死ぬかどうか「可」「否」を判断する
    死神が主人公のシリーズ二作目
    今回は長編(前作は短編集だった)

    主人公の千葉(死神には配属される地域の、あたりに馴染みのある地名をつける事が多いらしい)は、娘を殺されてしまった男を調査することになり、犯人への復讐に同行することになる。
    彼が調査する日はだいたい雨が降っている。

    伊坂幸太郎さんの作品では
    自分の脳内で「音楽がかかる」作品が
    何作か(斉藤和義や、サンボマスター
    ビートルズとか色々)
    「死神」シリーズもその一つ

    私の場合は「ジョン・コルトレーン・アンド・ジョニー・ハートマン」の
    「They Say It's Wonderful」で

    「ラッシュライフ」を読んだ後に題名と同名の曲の入ったアルバムを買いに行ったこと、この曲が使われているauのcmが雨の場面だった事
    そのせいかいつも同じ曲が頭をよぎる。

    死神達が長い間人間を観察し
    昔のことには詳しいのに、現代のことだと勘違いを起こすのがなんだか違和感があったが、そんなに人間に興味がないからなのだろうと納得する。

    何というか…「死神の精度」のときとは違い長編なので仕方がないのだが、長い…(前作の時はむしろ、早く感じたり…バリエーションを楽しんでいた)
    千葉が話す「以前に、人間達を観察したときに仕入れた知識」の説明が何回も入ってくるのが、ちょっと読んでて辛かった。また、調査対象の男も同様の振り返りがあり扱うテーマに沿った内容であるものの「知識披露」の繰り返しの様に感じてしまった。
    なんかリズムを崩してるような…

    読んでる間、小雨が降り続いてる様なモヤモヤ感

    「どのような基準で可否を判定するのか?」明確な基準がないまま判定している状態が何年も続いているのが不思議、なのに仕事に対しては「ちゃんとしなくては」という千葉、他の死神達よりも真面目
    彼らの考え方を想像するのがなかなか楽しい。
    不明なとこが多いけど。

    死神達は、音楽を好む。
    隙あらばカーラジオやラジカセなどで音楽を聴こうとする千葉
    この本は連休中、外出先に持ち歩いて読んでいて、隙あらば本を読もうとして妻に怒られてしまったので、なんか少しだけリンクしていた。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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