永い言い訳 (文春文庫)

  • 998人登録
  • 3.97評価
    • (83)
    • (125)
    • (70)
    • (10)
    • (1)
  • 124レビュー
著者 : 西川美和
  • 文藝春秋 (2016年8月4日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906702

永い言い訳 (文春文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • ある日突然妻が死んだ。

    親友と旅行中バスの事故で突然妻が死んでしまうが、そのとき夫は愛人といた。

    冷めきった愛のない夫婦。

    愛する妻を失い悲しみに更ける夫を演じる作家のぼくは、ともに亡くなった妻の親友家族とひょんなことから一緒に過ごすようになる。

    妻夏子と親友ゆきの死について、それぞれの視点で語られるが、言うことがまったく食い違っていて、それがとてもリアルで面白かった。

    妻はぼくのことを一体どう思っていたのか、周りの人たちの話を聞くと、「夏子さんはいつも幸夫くん、幸夫くんって言ってましたよ」的な、いいことばかりだったので、実は妻はぼくを愛していたのか?とも思ったが、ある日妻の遺品の携帯の未送信メールを見て愕然とする。


    《もう愛してない。ひとかけらも。》


    私はここで、不覚にも笑ってしまった。
    現実はいつも厳しい(笑)

    クールで冷めた関係しかつくれない人や、相手の心の中にズカズカ入りこんで相手にもとことん自分を知ってもらいたい人。相手がいないとなにもできない依存型の関係...
    当たり前だけどいろんな人がいる。

    この物語は、読み手によっても感想が全然違うんだろうな。
    いつか、真平くんとか、灯ちゃんとかの語りでスピンオフ小説とか書いてくれたらいいな。
    その時幸夫が、どうなってるのかも知りたいし(相変わらず滑稽なダメおじいさんでいてほしい)笑

  • 映画のキャッチコピーが

    妻が死んだ。
    これっぽっちも泣けなかった。
    そこから愛しはじめた。

    なんだかお涙頂戴的な匂いがぷんぷんしましたが、
    そこは西川美和さんです。
    愛するということはそんなに綺麗なことじゃない。

    みえてるものをちゃんとみるほうが本当はむつかしいことなんだよ

    2015年 文藝春秋
    カバー写真:上田義彦
    デザイン:後智仁

  • 人気作家の津村啓こと衣笠幸夫は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。悲劇の主人公を装うことしかできない幸夫は、妻の親友の夫・陽一に、子どもたちの世話を申し出た。妻を亡くした男と、母を亡くした子どもたち。その不思議な出会いから、「新しい家族」の物語が動きはじめる。

  • すでに取り返しのつかなくなった夫婦が、本当に取り返しのつかない状況に陥る。妻が死ぬ。愛のなさがゆえに悲しみを抱くことすらできない、という後悔すら意味をなさない状況で、残された夫たる《ぼく》は、縁あってかつての同級生だったという大宮陽一の家に通い、留守をつとめ、大宮家の二人の子と心を通わせることになる。
    けれど《ぼく》が取り戻すのはまっとうな幸福ではない。遅すぎた妻への愛情などでは決してない。
    物語の始めから終わりまで《ぼく》は醜い言い訳を、繰り返す。けれどその言葉の質は少しずつ変わっていくのだ。ただ言い逃れしようのない《愛するべき日々に愛することを怠ったことの代償》のなかで、この先も永遠に続くであろう言い訳が、いつか真摯に、誠実に語られる日が来ることを願う。
    クズな僕たちはそんなふうにして生きていくほかないのかもしれない。

  • 本のあらすじや、本の帯で書かれている内容は、清々しいようなイメージだったけど、そんな爽やかな本じゃないと思う 笑
    重くて、ちょっと、光がある感じ。
    あ、でも、映画は爽やかだった。

    妻・夏子を突然のバス事故で失った、人気作家の津村啓。
    妻が亡くなっても、涙を流すこともない。
    同じ事故で母親を失った大宮家と出会うことで、少しずつ変化が生まれてくる。
    突然家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか。




    はぁー。西川美和作品は、読了後の疲れがすごい。
    人の内面を書くのが本当に、本当に、上手。
    ドラマを見たりや小説を読んでいる感じではなく、誰かの人生を見てる感じ。
    キラキラした内面じゃなくて、ドロドロしていて、自分の内面と重なる部分も多々あった。
    そうそう、人間って、そんなキレイなもんじゃないよねって思わされる作品。

    ストーリーは全く異なるけど、「夢売るふたり」と同じような感覚。
    不幸の中に少しだけ光があって、その小さな光でも生き続けることができるんだって感じられる作品です。

    最後の方は、自分がなんで泣いているのかわからず、涙を流してた。
    家で読んで良かった笑

    映画は、池松壮亮が良かった。
    本と映画だと、印象が異なると思う。
    本を先に読んだからか、本の方が丁寧に描かれている気がしました。
    映画でも、ビーフシチューの件やってほしかったな。

    ★自分が意識しているより、ずっと早く、ずっと遠くへ、過去は飛び去って行く。手の届かない、遥か彼方に。

  • 以前から気になっていた作品。
    伴侶を突然の事故で亡くしても、悲劇の夫を演じるだけで泣けない主人公。
    一方、妻が事故に遭い、その遺族説明会で怒りわめき狂う男。
    妻を亡くした二人の男、そして母を亡くした子供たちが出会うことで、化学反応が。
    やがて、自己中の主人公は、初めて妻のために涙する。
    そこへ到るまでを、時に一人称で、時には三人称で、視点を変えた複数の語りが、まるで『藪の中』のように綴られる。
    そして、「長い」ではなく「永い」の意味するところは・・・

  • 西川美和ファンで映画も小説も楽しませてもらっている。実際は、楽しむというものではなく突かれている、ある感情を呼び覚まされている、何かを考えさせられもやもやさせられたり、と普通の生活にはあまり出て来ない人間的な感情が出てくる。
    この永い言い訳にも然り。冷めきった夫婦でもパートナーが死んでしまうと、今までを省みてみたり、それからの月日を何も考えずには過ごせないのかもしれない重さがある。人間はどこかで自分と向かい合わなきゃいけない、そう感じた。映画がより楽しみだ。

  • 身近な誰かを急に亡くした時、その人はひどく落ち込み悲嘆に暮れるはずだ、と大抵の人間は考えるし、実際そうである場合が多いだろう。
    でも、悲しめないし、落ち込めない人間だっている。
    この物語の主人公、衣笠幸夫のように。

    衣笠幸夫は、津村啓という筆名で小説家として活動していた。
    妻の夏子との間はすっかり冷えきり、よそに女を作ったりして、のらりくらりと暮らしていたある日、バス事故で突然夏子は帰らぬ人となってしまう。
    メディア等を前に悲しむ演技をするしかない幸夫は、同じバス事故で妻(母)を亡くした大宮家の父子といつしか交流を持つようになり、そして…。

    小川洋子さんが著書で「生きるとは自分の物語をつくることだ」と言っていたことを不意に思い出した。
    その“物語”のなかには当然様々なことがあって、この小説の主人公の幸夫のように、突然妻を亡くす人もいる。そこで悲しむことが出来ない人もいるかもしれない。
    そしてその後、そうなってしまった理由を探したり、そうなってしまったことの言い訳をしたりする。
    生きていればきっとそういうことの繰り返しで、人生の中で起こる様々なことに、理由をつけたり言い訳を探すことを繰り返しながら、自分の物語を築いていくのだと思う。
    そういう意味なら「永い言い訳」というタイトルはとても秀逸だ。

    幸夫は善い男なのか嫌な男なのか分からない、両方の触れ幅があまりにも大きい人間なのだけど(だからこそ、ふとした瞬間に「意外と善い奴なのかも?」と思ったりするんだけど)だからこそ人間くさいと言うか、悲しまずともずっと側にいた妻が突然いなくなるという出来事は、けして小さくはない衝撃を彼に与えたのだろうと感じた。
    自分自身は意識していない部分に与えられた影響が、膨らんで爆発して表に出る瞬間があったりして。

    そして大宮家の人々とふれ合い、時間が過ぎて、幸夫が夏子に贈った言葉は、“永い言い訳”の一部であり、演技でも何でもない本音なのだと思った。

    秋に公開される映画も観たい。

  • 妻を亡くした男の再生の物語。

    様々な人との出会いにより、だんだん人間らしくなっていく主人公。最後は綺麗に終わった感じ。
    最初は主人公に対し、なんて自己中で嫌な男なんだと思ったが、その女々しさがなんとなく気持ち分かると思うこともあり…居た堪れない気持ちになり本を閉じたりもした(^_^;)

  • ■もう一度、ボクは妻を愛する。

    冷めた関係をつづける夫婦と、愛する子どもたちと和やかに暮らす夫婦。高校の同級生だった互いの妻たちはある日、バス事故に遭う。「僕は妻を愛していたのか?」その疑問がやがて家族のカタチを変えていく。

    冷めきった妻との関係、歪みはじめた父子関係、子どもの内側からの叫びに気づけない父親、失った愛を得ようとする男、母を失ったのに泣けない息子ーー。登場人物たちの視点が交錯しながら、ふと浮かびあがる心の機微の描き方がすばらしい。

    人間は、どうしようもなく弱い生き物だ。抱えきれない感情に真正面から向き合えるほど、強くはない。だから無理して、ごまかして、笑う。何かにすがるように献身することだってある。「男にとって、子育ては免罪符だ」というセリフにあるように、結婚してもそれは変わらないのかもしれない。でも、それが人間らしさだと私は思う。

    新婚のまま、一生を終える家族はいない。誰かを愛すること、愛する人と一緒に生涯を共にすること。たとえ夫婦のかたちを失っても、どこかで想いあえている夫婦に、私はなりたい。

全124件中 1 - 10件を表示

西川美和の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
恩田 陸
平野 啓一郎
宮下 奈都
朝井 リョウ
有効な右矢印 無効な右矢印

永い言い訳 (文春文庫)を本棚に登録しているひと

永い言い訳 (文春文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

永い言い訳 (文春文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

永い言い訳 (文春文庫)の作品紹介

妻が死んでも泣けない男のラブストーリー。映画化話題作

予期せず家族を失った者たちは、どのように人生を取り戻すのか――。人を愛することの「素晴らしさと歯がゆさ」を描ききった物語。

永い言い訳 (文春文庫)の単行本

永い言い訳 (文春文庫)のKindle版

ツイートする