静かな炎天 (文春文庫 わ 10-4)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167906740

作品紹介・あらすじ

・バスとダンプカーの衝突事故を目撃した晶は、事故で死んだ女性の母から娘のバッグがなくなっているという相談を受ける。晶は現場から立ち去った女の存在を思い出す…「青い影~7月~」・かつて息子をひき逃げで重傷を負わせた男の素行調査。疎遠になっている従妹の消息。晶に持ち込まれる依頼が順調に解決する真夏の日。晶はある疑問を抱く…「静かな炎天~8月~」・35年前、熱海で行方不明になった作家・設楽創。その失踪の謎を特集したいという編集者から依頼を受けた晶は失踪直前の日記に頻繁に登場する5人の名前を渡される。…「熱海ブライトン・ロック~9月~」・元同僚の村木から突然電話がかかってきた。星野という女性について調べろという。星野は殺されており、容疑者と目される男が村木の入院する病院にたてこもっていた。…「副島さんは言っている~10月~」・ハードボイルド作家・角田港大の戸籍抄本を使っていた男がアパートの火事で死んだ。いったいこの男は何者なのか?…「血の凶作~11月~」・クリスマスイブのオークション・イベントの目玉になる『深夜プラス1』初版サイン本を入手するため、翻弄される晶の過酷な一日を描く「聖夜プラス1~12月~」。有能だが不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ第4弾。苦境にあっても決してへこたれず、ユーモアを忘れない、史上最もタフな探偵の最新作。〈甘いミステリ・フェア〉〈サマーホリデー・ミステリ・フェア〉〈風邪ミステリ・フェア〉〈学者ミステリ・フェア〉〈クリスマス・ミッドナイトパーティー〉など、各回を彩るユニークなミステリの薀蓄も楽しめます。好評の「富山店長のミステリ紹介ふたたび」も収録。解説は大矢博子氏。

感想・レビュー・書評

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  • 葉村晶シリーズ、長編が2作続いた後の短編集。
    正直、やっぱりちょっと何か物足りない。
    長編の方が好き。

    四十肩に苛まされ、富山店長には何かとこき使われ、内面と口先の鋭さとは裏腹に芯にある優しさに周囲からつけ込まれる、書店探偵葉村晶の事件簿。

    気になってはいたものの、中々手が出せないでいる『レベッカ』が早く読めよと言わんばかりに最初の1編に出てきたのには驚き。
    そればかりでなく、巻末の”富山店長のミステリ紹介”が意外にも(と言うと失礼かもしれないが)守備範囲が広く、端的ながらうんちくが利いた一味違うブックガイドとなっており、読みたい欲求を掻き立てられる。
    協力者のお名前もあったけど、若竹さん、ブックキュレーターとしての腕もお持ちなのでは。
    あまり他の方の解説とかでも見かけた記憶はないので、書評の場面でも活躍して欲しいなぁ(自分が知らないだけ!?)。

    本書の解説で大矢博子さんが葉村のことをS・J・ローザンのリディア・チンのようと評しているが、この言葉に膝を打った。
    そう。
    自分が葉村晶を読んで最初に思い浮かんだのは”ビル&リディア”シリーズとルヘインの”パトリック&アンジー”シリーズ。

    ”ビル&リディア”シリーズには手を出しているところだけど、刺激されて(言及されているわけでもないのに)”パトリック&アンジー”シリーズにも手を出してしまいたくなってきたなぁ。
    いかんなぁ。。。

    • 111108さん
      fukayanegiさん
      お返事ありがとうございます。

      早いと思いますよ。回り道せず着々とという感じで。合間の絵本のレビューも楽しみです♪...
      fukayanegiさん
      お返事ありがとうございます。

      早いと思いますよ。回り道せず着々とという感じで。合間の絵本のレビューも楽しみです♪

      わぁ、巻末ミステリ紹介読まなかったの悔やまれますね。若竹さん、阿津川さんみたいに一冊丸々書評とかは知らないですけど『古書店アゼリア』でも古書店主がやってるし‥。好きなんでしょうね。それを含めて作品楽しんでます!

      登録?本、今度図書館で予約してきます♪
      2023/01/22
    • fukayanegiさん
      111108さん

      『古書店アゼリア』は葉崎市シリーズの方ですね!
      そちらでもビブリオっぽい感じが出ているとは。

      いや、ほんと最初の頃は王...
      111108さん

      『古書店アゼリア』は葉崎市シリーズの方ですね!
      そちらでもビブリオっぽい感じが出ているとは。

      いや、ほんと最初の頃は王道ミステリ&ハードボイルドだったのにこの辺になってくると阿津川さんの匂い(ミステリへの偏愛。いい意味で。)感じますもん。

      お休みの日毎のレビューを目指しているのですが、間に合わないときは絵本レビューで繋いでいます。暴露w
      そんなこんなで合間に絵本が挟まることがあります。
      2023/01/22
    • 111108さん
      fukayanegiさん

      葉崎市シリーズもぜひ!

      絵本レビューで繋ぐ 暴露w
      けっこう綱渡り的なレビューでしょうか?でも絵本のセレクトも...
      fukayanegiさん

      葉崎市シリーズもぜひ!

      絵本レビューで繋ぐ 暴露w
      けっこう綱渡り的なレビューでしょうか?でも絵本のセレクトも何だか海外ミステリ風味ですね♪
      2023/01/22
  • 9時7分、玄関を出たところでスマホに載せているバス時刻表を見ると出発時刻は9時9分だった。考える暇はなかった。普段は5分の道のりを、私は走った。散歩中のお爺ちゃんおばあちゃんが、目を剥いて私のガニ股走行を眺めている。最初のダッシュは、無酸素系の筋力エネルギーが使われるという。その1-2分後に有酸素系の筋力のエネルギーが使われる。が、こういう場合、無酸素のエネルギーは一瞬で使われて、バス停に近づく頃にはガス欠になりかけていた。ところが、信号待ちとバス特有の遅れのお陰で、バスがちょうど信号が青に変わって出発しようとするところだった。火事場の底力は、このように出るのかもしれない。10メートル手前、私は再びダッシュし手を上げた。バスは止まった。良くテレビや小説では目をするけれども、こういうシチュエーションは初めてだった。ギリギリ乗り込んだ。

    私はバスと岡山までの電車の間は「静かな炎天」という小説を紐解いた。「世界で1番不運な探偵」という副題が付いたテレビドラマを見て買ったものである。10数ページ読んだところで、岡山に着き、高松行きのプラットホームに降りる。階段上ではまだ電車のドアは空いていた。まさか、その電車が都合よく高松行きとは思わずにゆっくり降りると、果たして高松行きマリンライナーだった、と気がついた時にはドアは閉まっていた。ドアに手をかけた時に、そろそろと電車は走り始める。こういうシチュエーションも、小説やドラマでは良く見たが、初めて体験した。これも今読んでいる「静かな炎天」のおかげだろうか。ちょっとだけ不運を貰ったわけだ。

    すみません、わたくし史上最大の前振りをしてしまいました。意味ないことを書くな?いえ、意味はないことは無い。葉村晶シリーズを読むこと、2冊目。ハードボイルド文体は、私を侵食して脳味噌を溶かし、何を書いても下手な真似をしたくなる。私の推しメンだけあって、かなり影響力のある呟きをするのです。文体こそが、この小説の最大のウリなのだ。

    いつの間にやら「悪いうさぎ」から10年と少しが経っていて、葉村晶も40代。四十肩になる。身体が基本のお一人様は私も同じだから、彼女同様私も食事に気をつけ、ストレッチと筋トレを心がけていた。にも関わらず、「なんでこうなる」と嘆く彼女にとても共感した。

    と、なんやかんや書いても一向に作品あらすじに入っていかないが、これも意味がある。この文章構造こそが、この表題作の短編(静かな炎天)の、最大のネタバレだからである。←おお、壮大な前振りだった(^_^;)。

  • 2020/12/04読了
    #このミス作品56冊目

    不運すぎる女探偵・葉村晶シリーズ4弾。
    ワードセンス抜群のコミカルな表現が
    すごい面白い。
    ただ短編とは思えない情報過多で
    スッと頭に入ってこないシーンが多々あり。
    シリーズ最初から挑戦したい。

  • シリーズ4作目にして、6篇の連作短編。
    といってもこのシリーズはこれが初めて。
    でも大丈夫だ。

    NHKのドラマを見て、そんなに期待をせずに見てみたら「面白い」「これは原作に当たらなくては!」と読み始めた。
    もうイメージはシシド・カフカ氏なのだが、本作では四十肩を発症するという、ちょっとイメージとは異なる主人公、葉村晶。
    解説では海外ミステリ のようだ、と評されているが、確かに、このハードボイルドで、洒落っけと、重厚感を併せ持った感じがそれらしい。
    しかし、当たり前だが母語で書かれた作品なので、海外ミステリにありがちな、とっつきにくいような(それが文化の差なのか、外国語を日本語に直す際のニュアンスの差なのか、それとも、「空気」なのかは分からない)感じは、ない。
    『青い影』に登場する『レベッカ』は私も読んだことがあるが、始めはちょっとゴシック小説の雰囲気が読みづらいが、おすすめだ。
    終わり方は決して美しくなく、火事場泥棒憎し、となるが、あえてきれいに終わらない所に、ハードボイルドを見た。

    表題作『静かな炎天』は、ドラマも原作もお見事。
    じりじりと焼けつくような暑さは、「太陽がいっぱい」の有名な台詞を使いたい所だが、そうではない、ミステリ からとった言葉を引用するところがいい。
    暑さも、人一人の面倒を見るのも、いき過ぎれば苦痛である。
    その気持ちは、よくわかる。

    『熱海ブライトン・ロック』は、あの虫を嫌いな人は読まないほうが。
    文字なのに!文字しかないのに!
    心の中で、「ぎゃああああああああああ」と叫んだ気持ちがわかるだろうか。
    なぜ奴らはここまで嫌われるのか。
    経験?
    眉唾物の説に、「かつて私たちの遠い先祖が奴らに食われたため、その記憶が受け継がれている」というものがある。
    エビデンス、根拠はない。だが、信じたくなる。

    冷血ではないクールさとニヒルさ、なのに四十肩。
    この、「生きている」主人公がかっこいい。
    彼女のような踏んだり蹴ったりやられたり、みたり、な仕事はしたくないが、なんだか、毎日ご飯が美味しそうだ。

  • バラエティに富んだ短編6作からなる葉村晶シリーズの短編集。少なからず主人公自身のせいでもあるのだが、主人公の知人達が遠慮なくトラブルに巻き込んでおきながら、当人たちにはまるでそんな認識がない。おいおい、いい加減にしろよと言いたくなるよね。

  • 葉村晶シリーズ。今回は短編集。安定の面白さ。
    とにかく優秀な探偵だ。
    なんだかんだ言って断れないところも人が良いというか。
    最後の話などは、よくもまあこんなに人に図々しくも頼むことのできる人間がいるものだとも呆れそうになった。
    葉村晶のことをうわあたいへんとか思いながら読んだけど、なんとか終わってほっとしたような気がしながら読み終えたかな。

  • 葉村晶シリーズ第4弾。
    常連さん、ご近所さん、既知の人。今回は、身近な人からの依頼、身近な場所での事件が中心。吉祥寺をベースに、葉村が根付きつつあるように感じる。
    人の悪意が強くでるシリーズだが、今回は比較的あかるめ。富山店長の軽さとむちゃぶりで、ドタバタした話も多く、楽しかった。読後感もよい。
    電車移動の大変さがわかるぶん、同情しつつも笑ってしまう。

  • 葉村晶シリーズ。短編集。
    相変わらずの無理難題にもめげずに取り組む晶、そしてしっかり結果を出す晶に感心。
    今回は前作のような酷い怪我を負うことはなかったものの、四十肩に苦しんだり風邪に苦しんだりと大変そう。
    角田港大先生が出てきてくれたのは嬉しい。
    それにしても富山店長の相変わらずの意地悪さと能天気さに段々と苛々してくる。彼もまた大けがしてるのであまり文句も言えないが。でもそれも自業自得なんだけど。
    それでもきちんと仕事をしている晶を見てると、社会で生きていくってこういうことなんだよなぁとも思えてくる。
    こんな理不尽に振り回されていてもきちんと仕事をこなしていく晶に励まされている気がする。

  • 設定が安定したからか、主人公も探偵稼業と雑用に邁進しています
    すっきり解決しないエピソードもありますが、洞察と推理は探偵らしくなっていますね

    かつての同僚が登場する4話、依頼者に振り回され続ける5話、葉村らしさ全開の6話と後半が面白いです
    結局、どっちなのか、どうなったのかが気にはなりますが

    ボソボソと主人公が吐く毒が、作者の本音のようでなりません

  • 初登場時は二十代だったのに、とうとう四十肩になってしまった葉村さん。五十代、六十代の葉村さんも見られるのだろうか。見たいような、見たくないような…。でもやっぱり、小説の登場人物が自分と同じように歳をとり、同じように身体の不調を訴えるのは、不思議な親近感を覚える。自分ももう少し頑張ろうと思う。
    作者の若竹さんの、皮肉の効いた言い回しも健在。蔦の絡まる壁を静脈瘤が浮き出た老女の脚に例えるブラックなセンスは私にはない。
    これまでのシリーズを読んでから、手を出すのがおススメ。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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